その男との出逢いは、ロスのリトル東京のバーだった。
ロクに何者かわからずに話し始めると、ピアニストだと言う。

どんなピアノを弾くんだい？と僕が聞くと、男はいきなり、片隅に置いてあるピアノへと歩いて行った。そして椅子をどかすと、深呼吸して、いきなり両腕をピアノに叩き付けた。
まるでアスリートのように、激しく、凄まじいパワーとスピードで鍵盤を「攻撃」するかのような演奏スタイル。間近で見ていても、その指の動きは肉眼で捉えることができない。
みるみるうちに吹き出す汗。

たまたま出逢った男のために、 寂れたバーの、安物のピアノで、たった数人の観客のために、その男はエネルギー全てを絞り出すようなパフォーマンスをしてくれた。

演奏が終わった瞬間、僕は思わず彼に抱きついていた。
それが、僕とエリック・ルイスの初対面だった。

エリックの演奏は、いつも僕を遠い世界へと連れて行ってくれる。今まで聴いたことのない音、観たことのないパフォーマンスで、見知らぬ世界を魅せてくれるのだ。

だから次も、またその次も僕はエリックのライヴへと足を運ぶ。 何度体験しても、二度と同じような光景を観ることはない。 毎回毎回、驚くほどに違う音を聴かせ、違う感情を揺さぶってくるのだ。

これからエリック・ルイスがどこへ行き、どんな世界を見せてくれるのか、それは誰にも予想がつかない。 ただひとつわかっていることは、それはとんでもなく刺激に満ちた、最高な世界だということだけだ。

PROFILE：北村 龍平

17歳でオーストラリアへ渡り映画製作を学ぶ。
長編第一作のバイオレンス・アクション「ヴァーサス」が世界的評価を受ける。

小山ゆう原作の時代劇アクション大作「あずみ」、高橋ツトム原作のSF「アライヴ」、堤幸彦監督との競作「荒神」、人気ドラマシリーズ の映画化「スカイハイ」、ゴジラ50周年記念超大作「ゴジラ・ファイナル・ウォーズ」、クレイジー・ラブストーリー「ラブデス」など次々と話題作を発表。

その活躍は映画だけにとどまらず、長渕剛のコンサートドキュメント「桜島」、世界的大ヒットビデオゲーム「メタルギア・ソリッド：ザ・ツイン・スネークス」、浅田次郎原作、藤原紀香主演のドラマ「月のしずく」などジャンルやフィールドを超える。

2008年、初のハリウッド作品であるクライヴ・バーカー原作の超絶ホラー「ザ・ミッドナイト・ミート・トレイン」を発表。

2009年には、岩井俊二プロデュース・脚本による横浜開港150周年上映作品「BATON」を発表。

ハリウッド・日本・アジアを拠点に多数の企画を進行中の映画監督。
www.notorious01.com