'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HARGROVE - report : ROY HARGR...
原田和典の公演初日リポート:ROY HARGROVE QUINTET
‘90年代初頭のことです。“注目の天才新進トランペッター、あらわる”的な触れ込みで、ロイ・ハーグローヴが野外のジャズ・フェスティヴァル出演のために来日したとき、ぼくは全セットを聴く機会に恵まれました。そのフェスでロイは、さまざまなグループ(その中にはビッグ・バンドもありました)にゲスト参加したり、ジャム・セッションに乱入してトランペットを吹きまくったのですが、なかでも圧巻はファンク系のミュージシャンが集まったジャム・セッションにおけるプレイでした。メイシオ・パーカー、フレッド・ウェスリー、ピー・ウィー・エリスの“JBホーンズ”を軸とするスペシャル・ユニットに飛び入りした彼は、まさしく火の玉ファンキー小僧でした。ロイは20世紀の終わりにR&Bやヒップ・ホップを取り入れたプロジェクト“RHファクター”を結成してセンセーションを巻き起こします。きっと根っからのファンキー体質なのでしょうね。
昨年はビッグ・バンドを率いて「ブルーノート東京」に登場、貫禄たっぷりのステージで楽しませてくれたロイですが、ことしは少数精鋭というべきメンバーでの登場です。思えばメジャー・デビュー後からロイは一貫してクインテット(5人編成)を率いています。メンバーの入れ替わりもそれなりにあるとはいえ、ハード・バップに基づく4ビート・ジャズを、ここまでカッチリと聴かせるユニットは、そうそうあるものではありません。アルト・サックスのジャスティン・ロビンソンはロイとほぼ同年代ですが(ジミー・スコットのバンドや、ハーパー・ブラザーズの一員として来日したことがあります)。ピアノのサリヴァン・フォートナー、ベースのアミーン・サリーム、ドラムスのモンテス・コールマンは、ロイやジャスティンよりもさらに下の世代です。いつまでも元気いっぱいの若手という印象が強いロイも、この秋で40歳。歳の離れた弟のような年齢のミュージシャンとアイ・コンタクトをとりながら、演奏のテンションをこれでもか、と高めていく姿は、彼がトランペッターとしてだけではなく、音楽監督、指導者としても注目すべき存在であることを改めて伝えてくれました。
メンバー全員が燃え上がる長尺ナンバー「CAMARADERIE」、ラテン・リズムに乗せてロイが踊りながら吹いた「LA PUERTA」、古くからのファンには実になつかしい(ロイのセカンド・アルバムのタイトル曲です)「PUBLIC EYE」などなど、バラエティに富んだ曲目が次々と威勢よく演奏されていきます。近年のロイはトランペットより、いっそう柔らかい音の出るフリューゲルホーンを愛用しているイメージが、ぼくにはあったのですが、このステージでは「SAY IT (OVER AND OVER AGAIN)」(ジョン・コルトレーンの演奏で有名なバラードです)以外、すべてトランペットを吹いてくれました。元気炸裂のアドリブ、パワー全開の音色。やっぱりロイはこうじゃなくっちゃ。
心の底からスカッとさせられたライヴでした。
(原田 2009/6/22)
● ROY HARGROVE QIUNTET
6/22 mon - 25 thu