THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA - THE VANGUARD JAZZ ...
今回、多数のレパートリー/アレンジされた楽曲を持参して来日した
ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ。
全公演のセットリストをアップしました。
今回、多数のレパートリー/アレンジされた楽曲を持参して来日した
ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ。
全公演のセットリストをアップしました。
公演初日リポート:THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA Established by Thad Jones & Mel Lewis
いままでこのコーナーで、何度「世界的な快挙」、「なんという贅沢」という言葉を使ったことでしょう。
が、今回もそのフレーズを全力で使わなければなりません。
ヴァンガード・ジャズ・オーケストラが、ブルーノート東京で演奏しています。
これは常識を超えたすごいことなのです。なぜなら彼らは毎週月曜日、ニューヨークのジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」にレギュラー出演しているからです。本来なら日本にいる場合じゃないのです。つまり今回の公演は、まったく特別な、通常ならありえない‘出張ライヴ’というわけです。まさしく世界的な快挙です。
またこのオーケストラには、由緒正しい歴史があります。60年代後半から70年代にかけて、デューク・エリントン楽団、カウント・ベイシー楽団に次ぐ‘世界第3位のビッグ・バンド’(ということは、実質1位ということです。エリントンとベイシーは殿堂、別格扱いだからです)と賞賛されたサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラが母体なのです。通称サド=メルは‘78年にサドが脱退してメル・ルイス・オーケストラと改称、その後メルの他界を受けてヴァンガード・ジャズ・オーケストラと名乗るようになりました。今もメンバーは当時の譜面を大切に使いながら、その一方で新たなレパートリーを次々と増やしています。
きくところによると全セット、曲目が異なるとのことですが、ぼくが見た初日のファースト・セットは、サドのアレンジしたナンバーが中心でした。しかも90分以上もの、入魂のパフォーマンスです。「ヴァンガード」はワン・セットが大体60分なので、異例の大サービスといえます。「A THAT’S FREEDOM」に始まり、「LITTLE RASCAL ON A ROCK」、「THE GROOVE MERCHANT」と続くナンバーの数々は、サドの譜面が今もまったく古びていないことを改めて示してくれました。ソプラノ・サックスがリードするサックス・アンサンブルや、ミュート・トランペット+フリューゲルホーン+フルートの組み合わせなどは、もはやジャズ・ビッグ・バンドの定番といえる手法ですが、それを最も早くから、効果的に用いたアレンジャーこそサドなのです。
現ヴァンガード・ジャズ・オーケストラの音楽監督は、トロンボーン奏者のジョン・モスカ。彼がMCで「34年ぶりの来日なんだ」といったのは、サド=メルの最後の日本公演が‘75年11月だったことを踏まえてのものでしょう。もっともそのときのメンバーは、今回の顔ぶれとはひとりもダブっておりません。しかしサウンドの熱気、分厚く味わい深いアンサンブルは、まぎれもなくサド=メル時代から脈々と受け継がれてきたものと言えるはずです。
「ヴィレッジ・ヴァンガード」の名物ビッグ・バンドが、ヴァンガードの約2倍の収容人数を誇るブルーノート東京を満員札止め状態にする・・・これを快挙といわずに何といいましょう!
(原田 2009/12/6)
● 12/6sun.-12/9wed.
THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA Established by Thad Jones & Mel Lewis
公演初日リポート:DAVID SANBORN GROUP
「おかえりなさい、待ってたよ!」
そう声をかけたくなったファンも多いのではないでしょうか。ミスター・ワン&オンリー、デヴィッド・サンボーンの堂々たる帰還です。
リッキー・ピーターソン、ニック・モロック、リチャード・パターソン、ジーン・レイクというバック・メンバーも、もうすっかりおなじみになりました。気の合うメンバーと、お気に入りの曲を、思う存分ブロウする。そんなサンボーンをクラブで味わえるなんて、アメリカでもなかなかあることではありません。
ぼくは90年代の初めからサンボーンのライヴに接していますが(おそらく20回は聴いていると思います)、年々アドリブがどんどんアグレッシヴになっている気がします。そしてバンド全体のサウンドが、よりブルージーというかR&B的になっているような気がします。セントルイスで暮らしていた10代の頃、ブルースからフリー・ジャズまでなんでも演奏していたという経験が以前にも増して、ごく自然に音に現れているように思うのです。定番の曲であってもアレンジには新味がこらされていて、「FULL HOUSE」では途中からリズム・パターンをJB’sの「DOING IT TO DEATH」風にチェンジ(4拍目を長く引っ張る)、「SOUL SERENADE」では、ジミー・フォレスト(少年時代のサンボーンに大きな影響を与えたサックス奏者)のヒット曲である「NIGHT TRAIN」のフレーズが挿入されていました。
「TIN TIN DEO」は、トランペット奏者ディジー・ガレスピーとキューバの打楽器奏者チャノ・ポソの共作です。いわゆるAABC形式でワン・コーラスが構成されているのですが、サンボーンはこのAA部分だけを使い、アップ・テンポで演奏するのですが、これがまた、ものすごい疾走感なのです。よくチューンナップされた大型レンジローバーでサファリのど真ん中を全速力で走っているような感じ、といえばいいでしょうか。メンバーの誰もが、なにかにとりつかれたようにノリまくります。なかでもジーン・レイクのドラムスの切れ味は絶品でした。かつてサンボーン・バンドにはドン・アライアスという鬼才パーカッション奏者が加わっていました。しかし彼が亡くなった後、その座は空席が続いています。アライアスに代わるプレイヤーはいないということなのでしょうが、レイクのドラムスは打楽器奏者の不在を補って余りある大活躍でした。
新作『ONLY EVERYTHING』の発表も目前のサンボーンですが、その長く輝かしいキャリアの中でライヴ・アルバムは『STRAIGHT TO THE HEART』と『CASINO LIGHTS』だけです。といっても前者は後日スタジオで編集やオーバーダビングを加えたものであり、後者は他のバンドとのコンピレーション形式。つまりサンボーンの生演奏の凄さをフルで味わうためには、ディスクではラチがあかないのです。実際にライヴ会場に足を運ぶしかないのです。
サンボーン・バンドは5日まで「ブルーノート東京」に出演し、他の都市でプレイした後、10日から12日まで再び「ブルーノート東京」のステージに立ちます。ソウルフルでエモーショナルな夜を、存分にお楽しみください。
● 12/3thu.-5sat., 12/10thu.-12sat.
DAVID SANBORN GROUP