'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , HANK JONES - - report : HANK JO...
2010/02/18
公演初日リポート:HANK JONES "THE GREAT JAZZ TRIO"
こんなにうれしそうにピアノを弾くひとを、ぼくは他に知りません。
現役ミュージシャン生活が70年を超えている大ベテランなのに、飽きるほどピアノという楽器を弾き続けているはずなのに、それでも彼は、本当に幸せそうに、誤解を恐れずに言えばお気に入りのおもちゃで遊ぶように、楽器と戯れているのです。
巨匠、ハンク・ジョーンズが今年も日本のファンに元気な姿を見せてくれています。1曲ごとにMCをはさみ、観客の声援に笑顔でこたえながら、色とりどりのレパートリーを楽しませてくれます。
“さまざまなタイプのジャズに適応できる、類稀な柔軟性の持ち主”といわれて久しいハンクですが、ぼくは彼をあくまでもスイング系のピアニストだと認識しています。もっとマニアックな言い方を許していただけるなら、ジミー・ジョーンズやエリス・ラーキンスと同じラインに位置するスタイリストだと思っています。ぼくにとってハンクのライヴの楽しみは、どんな歌もの(もともとミュージカルや映画で、ヴォーカル・ナンバーとして発表された曲。もしくはポピュラー・シンガーが創唱した曲)を取り上げてくれるのか、という点につきます。初日のファースト・セットでは「MY FOOLISH HEART」、「DARN THAT DREAM」などを演奏してくれましたが、とにかく絶品という言葉しか浮かびません。その曲と共に歴史を歩んできたアーティストならではのコク、深みが一音一音に反映されているのです。
コールマン・ホーキンス、チャーリー・クリスチャン等、数多くのミュージシャンが名演を残した「STOMPIN’ AT THE SAVOY」が聴けたのも嬉しかったですね。40年代や50年代にはよく演奏されたのに、最近では殆ど省みられることがない曲を、ハンクは見事、こんにちに蘇らせてくれました。スロー・テンポとミディアム・テンポの中間というのか、非常に微妙なテンポで、ゆったりとスイングするピアノ・タッチが実に素敵でした。
残念ながら、ハンクがこよなく敬愛するデューク・エリントンのナンバーは聴けませんでしたが(ハンクが弾く「PRELUDE TO A KISS」など、工芸品の趣です)、それは別の日に堪能できることでしょう。
なにしろ何千曲ものレパートリーを持つハンクです。全ステージが“名曲の宝庫”になることは間違いありません。
(原田 2010/2/20)
● 2.17wed.-2.22mon.(2.21sun.OFF)
HANK JONES "THE GREAT JAZZ TRIO"