'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HARGROVE - - report : ROY HAR...
2010/02/24
公演初日リポート:ROY HARGROVE QUINTET
人気トランペッター、ロイ・ハーグローヴの公演が昨日から始まっています。2009年6月以来、約8ヶ月ぶりの再登場です。やや短めのスパンですが、つまりそれはいかに彼のステージが待ち望まれていたか、ということでしょう。
オリジナル曲からスタンダード・ナンバーまで、バラードから4ビート・ジャズ、ファンク的なものまで多種多彩なプログラムで楽しませてくれるのがロイのライヴです。何が飛び出すかわからない、そこも大きな魅力なのですが、ぼくが見た初日のファースト・セットでも、彼は大きな驚きをもたらしてくれました。
1950〜60年代のブルーノート・レーベルで大活躍したミュージシャンたちの、古典的なナンバーに新たな光を与えたのです。
デューク・ピアソンの「THE FAKIR」のような渋い曲を、ロイはどこで見つけてきたのでしょう。ピアソンといえばブルーノートを代表するピアニスト、アレンジャーであり、プロデューサーとしても活躍したことがあります(ハービー・ハンコックの『SPEAK LIKE A CHILD』は、彼のプロデュースです)。しかし「THE FAKIR」は、ピアソンがブルーノートを離れ、一時的にアトランティックに吹き込んでいた頃のアルバム『PRAIRIE DOG』に収められていた曲です。エキゾチックといいましょうか、ファンキーといいましょうか、ちょっとたそがれた雰囲気の曲調に、ロイのトランペットが見事に調和します。
後半ではホレス・シルヴァーの「KISS ME RIGHT」を聴かせてくれました。作者本人の演奏はブルーノート盤『DOIN’ THE THING』に収められています。シルヴァーの代表作といえば「SONG FOR MY FATHER」、「NICA’S DREAM」等がよく知られていますが、あえてこの曲に目をつけるロイはさすがです。
エンディング・テーマ前に演奏された「LOW LIFE」は、伝説のトランペット奏者ドナルド・バードの曲。バードの代表作『FUEGO』に入っていたナンバーですね。往年のジャズの熱気を象徴するようなファンキー・チューンですが、ロイは颯爽と、現代によみがえらせてくれました。さらに嬉しかったのは、ベース・ソロが終わり、エンディング・テーマに戻る前に、ロイが、やはり伝説のミュージシャンであるソニー・クラークの隠れ名曲「VOODOO」のメロディを引用していたことです。彼がいかに先輩ミュージシャンの音楽を研究しているか、こんなところからもわかります。伝統への敬意なしに真の前進はありえない、ということなのでしょう。
なんだか長々とウンチクを傾けてしまいましたが、とにかくロイは今も成長を続けています。彼の最新クインテットによるパフォーマンスを、存分にお楽しみください。
(原田 2010/2/23)
●2.23tue.-2.26fri.
ROY HARGROVE QUINTET