'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOOLS HOLLAND - - report : JOOLS H...
2010/03/23
公演初日リポート:JOOLS HOLLAND
ブギ・ウギ、ブルース、R&B、スカ、カリプソ、ラテン、ジャンプ・ミュージック、ビッグ・バンド・ジャズ、そしてゴスペル。
以上のフレーズを見てピンと来た方に、ぜひ体験していただきたいのが、この“ジュールズ・ホランド・アンド・ヒズ・リズム&ブルース・オーケストラ”のステージです。
ジュールズといえば70年代に“スクイーズ”のキーボード奏者としてブリティッシュ・ロック界に新風を巻き起こした存在です。その後はテレビ番組のパーソナリティとしても大成功しました。しかし現在の彼はごきげんにロックし、ロールするブギ・ウギ・ピアニストです。どうしてこんなに左手が動くのだろう、どうしてこんなに力強いベース・ラインが弾けるのだろうと、ぼくはジュールズの指さばきに見とれてしまいました。プロフィールを見るとスクイーズ参加前、8歳の頃からブギ・ウギ・ピアノを弾いていたというのですから、なるほど、ブギ・ウギ奏法が体のすみずみまでしみこんでいるのでしょう。
優れたピアニストであると同時に、メンバーを引き立てる名人であるジュールズは、演奏者それぞれを曲によってフィーチャーしながら、パフォーマンスの熱気を高めていきます。個人的に「おっ、これは見つけものだぞ」と思ったのはウィンストン・ロリンズのプレイです。“リアル”というヴォーカル・デュオや、ジャミロクワイとの共演でも知られる彼ですが、今回はトロンボーンを吹きまくってくれました。豊かな音量はもちろんのこと、4小節なり8小節なりの短いスペースできっちりと起承転結をつけるアドリブ・フレーズ作りのうまさにも、感心させられることしきりです。
トロンボーンにはもうひとり、重鎮リコ・ロドリゲスも参加しておりました。彼がいかに偉大な存在であるか書いていけば、1冊の本ができるはずです(スカの創始者の一人にも数えられています)。とにかくグレイトのひとことに尽きます。しかし実際のリコ氏はとても物腰柔らか、おだやかです。真の巨匠とは、そういうものなのでしょう。彼がリード・ヴォーカルをとったナット・キング・コールのヒット曲「L-O-V-E」は、ブルースの連発で熱くなった場内にほんわかとした暖かみを付け加えてくれました。
ほかにもルビー・ターナー、ルイーズ・マーシャルという、このへんの音楽好きにはたまらないシンガーたちも鳥肌モノの歌声を聴かせてくれましたし、ロージー・ホランドの歌う「GOT MY MOJO WORKING」も楽しいものでした(マディ・ウォーターズが歌って以降、この曲は“タフな男の歌”になってしまった観がありますが、もともとはアン・コールという女性シンガーの持ち歌だったのです)。ドラムスはスクイーズ時代の同僚、ギルソン・レイヴィスが担当。パーカッションを仕込んだ独特のドラム・セットでアンサンブルの底辺をどっしりと支えていました。
ホットでダンサブル、そしてフレンドリーな“ジュールズと仲間たち”。極上の公演は24日まで続きます。
(原田 2010/3/22)
● 3.22mon.-3.24wed.
Jools Holland
and his Rhythm & Blues Orchestra featuring GILSON LAVIS and guest vocalists RUBY TURNER & LOUISE MARSHALL