'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FIVE CORNERS QUINTET - - report : FIVE CO...
report : FIVE CORNERS QUINTET
この5月に最新ライヴ・アルバム『Jazz Heat, Bongo Beat! -The Helsinki Sessions-』が発売されたばかり。文字通り“今が旬”のバンド、ファイヴ・コーナーズ・クインテットがブルーノート東京に帰ってきました。
スタジオ録音ではスタイリッシュかつファッショナブルなサウンドで魅了する彼らですが、ステージに立つと牙を剥きだしにした狼へと変貌します。アドリブは渦を巻き、グルーヴ感も急上昇。1曲あたりの演奏時間も長くなり、ときには組曲的といえるほどドラマティックな展開をみせます。次々と飛び出す火を噴くようなソロに接すると、「これこそライヴの醍醐味!」と興奮せずにはいられません。
特定のリーダーはいないようですが、まとめ役はMCも兼ねたテッポ・マキネンでしょうか。彼のドラム・セットは、いまどきありえないほどシンプルです。シンバルは鋲のついたもの(シズル・シンバルといいます)1枚しかありません。しかしそのサウンドは多彩です。スティック、マレットを自在に使い、ハイハットの上に小型のタンバリンをおき、タムの縁を叩き、シェイカーを振り、全身でリズムを打ち出します。「‘50〜'60年代のモダン・ジャズに思いを馳せながらも、決してその焼き直しではない」グループの音作りに、彼のドラムスが大きく貢献していることはいうまでもありません。
マイケル・ブレッカー的なベンド・フレーズ(音程を段階的に変化させる)を効果的に用いたティモ・ラッシーのテクニシャンぶりは、ライヴで見るとインパクト倍増。ユッカ・エスコラのトランペットとの音色のブレンドも絶妙です。トリビュート・アルバムを出すほど故フレディ・ハバードを敬愛しているユッカですが、この夜の彼はまるで往年のフレディが乗り移ったかのように情熱的でした。ユッカは1978年生まれですから今年で32歳。最も“ラッパが良く鳴る”時期に突入しているようです。
大入袋が出そうなほど満員だった場内には、1曲終わるごとに巨大な喝采が轟きました。ワールド・デビューから5年、ファイヴ・コーナーズ・クインテットの成長と躍進は留まるところを知りません。
(原田 2010/5/30)
●5.29sat.-5.31mon.
FIVE CORNERS QUINTET