'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , AL DI MEOLA - - report : AL DI M...
2010/05/12
公演初日リポート:AL DI MEOLA
あっという間のライヴでした。これほど充実したステージには、今後いつ接することができるのだろう。そうつぶやきたくなるほど充実した、ある意味神がかり的な80分を味わいました。アル・ディ・メオラとワールド・シンフォニアの面々に、ありったけの花束を捧げたい気持ちです。
来日直前のメッセージで、ディ・メオラは、この多国籍集団を「今まで自分が持った中で最高のバンド」、「このバンドで日本に来ることにかつてないほどの喜びを感じている」、「このバンドのことを、どうかみんなに言いふらしてほしい」と語っていました。これ、誇大でも何でもないです。本当に凄いユニットなのです。彼はこのバンドに心から自信と誇りを持っています。そしてギタリストとしての全身全霊を賭けています。それがひしひしと伝わる、実に気合の入ったステージでした。
前半は録音したばかりのニュー・アルバム(今年中に発表予定)からのナンバーが中心でした。まだ正式な曲名もついていないとのことですが、おそらくディメオラは、最新のユニットによる最新の曲を日本のファンに届けたくてうずうずしていたのでしょう。ナイロン弦のアコースティック・ギターにはシンセサイザーが仕込まれていて、それがギター本来の音と微妙にダブったり、コントラストを描いたりしながら(ギターの前には生音を拾うマイクも立っています)、とてつもないグルーヴを生み出します。エロチックなアコーディオン、繊細にして大胆なパーカッション、名脇役と呼びたくなるサイド・ギター、シンコペーションの利いたベース、すべてが極上でした。アストル・ピアソラに通じるタンゴの世界あり、フラメンコやショーロ的めくるめく世界あり。組曲風、交響楽的なサウンド展開の中に、いろんな音楽の要素が取り込まれ、消化され、ぐつぐつと煮込まれてワールド・シンフォニアならではの響きになってゆくのです。
プログラム後半、ディ・メオラは立ち上がり、ポール・リード・スミスのエレクトリック・ギター“プリズム”に持ち替えました。この楽器、ものすごく色合いがきれいです。ぜひ写真をご覧いただければと思いますが、工芸品のような趣があります。その美しいギターに指を走らせながら、ディ・メオラはとんでもないフレーズを奏でていきます。なるほど、確かに超絶技巧です。しかしそれは彼の雄大な音楽像の、ほんの一部でしかありません。どんな速弾き、大テクニックよりも、音楽そのものの器がデカイのです。
彼が世に出るきっかけとなったリターン・トゥ・フォーエヴァーや、スーパー・ギター・トリオでのプレイもセンセーショナルでした。ヤン・ハマーやミンゴ・ルイスがいた頃のバンドも圧倒的でした。しかし今のディ・メオラを聴くと、それも過去の通過点のひとつだったとしか思えません。このところディ・メオラの国内盤CDは出ていませんが、じつのところ彼の絶頂のプレイは海外盤のみで入手できる近作にこそある、と、ぼくは思っています(いくつかは会場で販売中です)。往年の超名盤『Tour De Force』と並ぶ、いや、それを凌ぐスケールの大きさです。
皆さん、とにかくこの公演を聴き逃す手はありません。ワールド・シンフォニアは、情熱と感動の“音楽旅行”に我々オーディエンスを連れていってくれるのです!
(原田 2010/5/11)
● 5.11tue.-5.15sat.
AL DI MEOLA