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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - report : "To Gro...

2010/06/12

ザ・ミュージック・オブ・グローヴァー・ワシントンJr.-The Music of Grover Washington Jr.
ザ・ミュージック・オブ・グローヴァー・ワシントンJr.-The Music of Grover Washington Jr.

公演初日リポート:Celebrating The Music of Grover Washington Jr.
"To Grover with Love"



ミュージック・シーンの“裏方”として絶大な信頼を得るキーボード奏者&プロデューサーが、今から10数年前に亡くなったサックス奏者のレパートリーを演奏する。
もちろんその“裏方”がジェイソン・マイルスで、サックス奏者がグローヴァー・ワシントンJr.なのですから、充実したプログラムにならないわけがありません。しかし、この来日が発表されたとき、正直言ってぼくはこうも思いました。

「これはまた、ずいぶん渋いステージだな。ジェイソンは、日本ではまだ有名ミュージシャンになろうとしている途中だし、若いリスナーはグローヴァーの現役時代を知らないはずだ。お客さんがいっぱい来てくれるといいけれど」。
ぼくの余計な思いは、クラブに入った瞬間に杞憂となりました。超満員の大熱狂です。演奏の高まりにあわせるように、観客がグワッと盛り上がります。オーディエンスが、バンド・メンバーの一員となったかのように一体化しています。

ぼくは「ジェイソン、グローヴァー、ごめんなさい」と、ただちに考えを改めました。ジェイソンはすでにここ日本で十分な人気アーティストであり、グローヴァーの音楽はしっかり受け継がれ、聴き継がれていました。このライヴにつめかけた幅広い客層や、イントロが飛び出すだけで湧き上がる拍手と声援に接して、それをはっきり認識しました。

サックスは、エリック・ダリウス(グローヴァーの死と入れ替わるようにシーンに登場しました)と、アンディ・スニッツァーが担当しました。ふたりとも決してグローヴァーのコピーをせず、自分のスタイルを貫いていたのも好感が持てました。メタル・マウスピースを使って鋭い音でブロウするエリックのアルト・サックス、細かいフレーズを使いながら次第に“アウト”していくアンディのテナー・サックス、どちらも「すがすがしい」という言葉がピッタリのパフォーマンスでした。スペシャル・ゲストのラルフ・マクドナルドは決して派手なプレイをしませんでしたが、ステージの後方に彼の姿があるだけでバンド全体の重心が下がるような気がします。ラルフとバディ・ウィリアムスがリズムを引き締めてくれるから、サックス奏者もジェイソンもギター奏者のニック・モロックも、奔放に演奏できるのでしょう。

これまでジェイソンは『グローヴァー・ワシントンJr.・トリビュート』、『イヴァン・リンス・トリビュート』、『ウェザー・リポート・トリビュート』等のアルバムを発表しています。しかしこれはみんな邦題、英文タイトルにはトリビュートのトの字もありません。かわりに記載されているのはLoveやCelebratingといった単語。この日のジェイソンたちはたしかに、偉大なるグローヴァーの音楽をいっぱいの愛と共にセレブレイトしていました。
(原田 2010/06/11)




● 6.11fri.-6.14mon.
Celebrating The Music of Grover Washington Jr.
"To Grover with Love"
starring Jason Miles, Andy Snitzer, Eric Darius, Nick Moroch, Gerald Veasley & Buddy Williams with special guest Ralph MacDonald

ザ・ミュージック・オブ・グローヴァー・ワシントンJr.-The Music of Grover Washington Jr.