公演初日リポート:FFELIX CAVALIERE'S RASCALS
栄光のブルー・アイド・ソウル・グループ“ラスカルズ”の顔、フェリックス・キャヴァリエが来日しています。
明日から始まる「ブルーノート東京」公演に先がけ、9月7日「コットンクラブ」で行なわれたファースト・ステージに潜り込んでまいりました。この4月にはラスカルズのオリジナル・メンバーが集結してニューヨークでライヴをおこなったそうですが(なんとブルース・スプリングスティーンも乱入したそうです)、この公演はキャヴァリエ親子と注目のバンド“スモール・タイム・ロックスターズ”が合流した、いわば21世紀のラスカルズです。
基本的な楽器編成はフェリックスのオルガン&キーボードに、ギター、ベース、ドラムスという、ラスカルズ以来おなじみのフォーマット。そこに愛娘のアリア・キャヴァリエがヴォーカル&タンバリンで加わります。ぼくはフェリックスの音楽(ラスカルズも、ソロ活動後も)にはずっと“男くさい”、“無骨”、“逞しい”といったイメージを持っていたのですが、アリアのコーラスが加わるとサウンドはぐっと柔らかに、ふくらみを伴って響きます。
しかしフェリックスの持つパッション、ソウル・スピリットは不変です。大抵のピアノ〜オルガンの弾き語りアーティストは、椅子に座ってパフォーマンスをします。しかしフェリックスは立ちっ放しで、まるで鍵盤にくらいつくかのようにオルガンを弾き、コクのある声で次々と熱いシャウトを届けるのです。2曲目の「MUSTANG SALLY」(ウィルソン・ピケットの大ヒット曲)が終わる頃には頬を汗が伝い、スティーヴン・マンディルが会心のギター・ソロを披露すれば、オルガンのまわりをぐるぐる廻りながらダンスを始めます。
歌っているか、弾いているか、踊っているか、客席を煽っているか、MCをしているか。ステージ上のフェリックスは、気持ちいいほどこの5つの行動に専念していました。「GROOVIN’」、「A GIRL LIKE YOU」、「HOW CAN I BE SURE?」、「GOOD LOVIN’」・・・名曲が次々と出てきます。本編ラストでは、「世界の平和と幸せのために」と前置きして、あの「PEOPLE GOT TO BE FREE」を披露。先日、矢野顕子トリオが「ブルーノート東京」でこの曲を素敵にカヴァーしていましたが、フェリックスの自作自演で聴く感激はまた格別です。
それにしてもガッツにあふれたステージでした。彼から音楽をとってしまうと一体何が残るのだろう?と思ってしまったほどです。MCで「トゥーサウザンド・イレヴン!」とシャウトしていたフェリックス。精力家の彼はひょっとしたらすでに、誰よりも先駆けて先に2011年にたどりついているのかもしれませんね。
文頭でブルー・アイド・ソウル云々と書いてしまいましたが、個人的には目の色などどうでもいいです。燃えるソウルマン、フェリックスのステージをどうか、汗の飛んでくるような距離でお楽しみください!
(原田 2010/9/7)
● 9.9thu.-9.11sat.
FELIX CAVALIERE'S RASCALS
TERRI LYNE CARRINGTON "MOSAIC PORJECT"
"ガールズ・パワー炸裂!!"
すごいバンドでした。
ジャズありファンクあり、その変幻自在な音楽性は将来的にも楽しみなプロジェクトです。
女性のお客様のご来店が非常に多く、ステージと客席の一体感もまた非常にマッチしていた夜でした。
● 9.4sat.
TERRI LYNE CARRINGTON:THE MOSAIC PROJECT
featuring ESPERANZA SPALDING,NONA HENDRYX,TINEKE POSTMA,INGRID JENSEN,HELEN SUNG & PATRICIA ROMANIA
公演初日リポート:ROBERTA FLACK
「相変わらずすごい人気だなあ、立錐の余地もない満員とはこういうことをいうんだろうなあ」、「客層が本当に幅広いなあ。祖父祖母から孫の代まで一緒に聴いて楽しめる音楽って、ありそうで実はそんなにないんだよなあ」。
ロバータ・フラックのライヴに足を運ぶたびに、ぼくはこう感じます。本当に彼女はあらゆる層に愛されています。他の登場アーティスト以上に、年齢はおろか国籍も問わないほど客席が多彩です。当日「ブルーノート東京」につめかけたオーディエンスには、デビュー当時からのファンであろう年季の入った方々もいらっしゃいましたし、クラブ・ミュージックやフリー・ソウルの流れでロバータに入門したであろう若いリスナーも数多く見受けられました。軸のブレない、筋の通った彼女の音楽が、いろんな世代を結び付けているのです。
ロバータはパフォーマンス中の写真撮影を好みませんし、ブルーノート東京で使用の許可されたアーティスト写真はン十年前のものです。つまり今現在のロバータの姿はライヴでしか見ることができないのですが、この日の彼女もシックでお洒落でした。ステージには左からバック・シンガーたち、ドラムス、ベース、キーボード、サックス、ギターの各プレイヤーが(だいたい)ヘの字型に位置し、ロバータはバック・シンガーとサックス奏者の間でグランド・ピアノを弾き語ります。ピアノの先頭は客席から向かってステージ左側に向けられています。つまり客席中央からはロバータの左側の横顔と左腕が見えるわけです。
歌声はもう、「往年のレコードと同じか、それ以上に伸びやか」といわせていただきましょう。デビュー40年を超えたアーティストがどうして今もこんなにピュアで張りのある声を保っているのか、いったいどうなっているんだと思うほどです。もちろんレパートリーは“黄金の選曲”というしかないもの。「やさしく歌って」(KILLING ME SOFTLY WITH HIS SONG)、「愛のセレブレーション」(TONIGHT, I CELEBRATE MY LOVE)、「愛のためいき」(FEEL LIKE MAKIN' LOVE)、「愛は面影の中に」(THE FIRST TIME EVER I SAW YOUR FACE)などが次々と、惜しげもなく出てきては客席の喝采をさらいます。
いつも質の高いショウを届けてくれるロバータですが、ぼくが見た昨日のステージでは、以前にも増して笑顔で、(彼女にしては)激しいアクションを交えていたのが印象に残りました。アルト・サックス、ソプラノ・サックス、EWI(管楽器型のシンセサイザー)、フルートを持ち替えながらプレイするアルトゥーロ・タッピンのプレイに立ち上がって手拍子をおくり、ディーン・ブラウン(デヴィッド・サンボーンやブレッカー・ブラザーズ等の共演でおなじみ)のワイルドな超絶ギターに目を細めるロバータ。その優しげな表情を見ることができるのも、ライヴならではの特典といえましょう。
他にも、スイング・ジャズ系スタンダードをファンキーにアレンジした「SWEET GEORGIA BROWN」、キーボード奏者のシェルトン・ベクトンとツイン・ヴォーカルで熱唱した「BABY I LOVE YOU」等、盛りだくさんの内容。まさしくこれは、生で体験する“ベスト・オブ・ロバータ・フラック”です。
(原田 2010/9/2)
● 9.2thu.-9.3fri.
ROBERTA FLACK