公演初日リポート:STANLEY CLARKE TRIO
with HIROMI & LENNY WHITE
2009年に最も話題を呼んだジャズ・アルバムの1枚が『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』です。スタンリー・クラーク、 上原ひろみ、 レニー・ホワイトという人気者が揃っているのですからヒットしたのも当然でしょうが、多くのリスナーはCDの充実ぶりに感銘を受けると同時に、「ライヴはもっとすごいことになりそうだ」と思ったのではないでしょうか。満を持してブルーノート東京に登場した3人は、すさまじい音の渦で満場のオーディエンスを圧倒しました。
オープニングは伝説のテナー・サックス奏者、ジョー・ヘンダーソンが書いた「ISOTOPE」。スタンリーとレニーは1970年代初頭、ジョーのバンドにいたことがあるので、いわば彼らの原点に立ち返った選曲といえましょうか。上原のプレイも単音からブロック・コードまで自由自在。ソロ・ピアノ・パフォーマンスのときと変わらない力強い左手の低音が耳に残ります。彼らはプログラム後半にも、ジョーの「BLACK NARCISSUS」を取り上げました。もしジョーが生き返って、彼らと共演したらいったいどうなるのだろうと思いながら、フレーズのひとつひとつを味わわせていただきました。
2曲目はCDのオープニングに入っていた「PARADIGM SHIFT」。もともとドラマティックなナンバーだったのに、今回のライヴではさらにそのスケールが前後左右に広がったという印象を受けました。この日のPAはミュージシャン側からの要望でしょうか、各楽器に深いリヴァーブがかけられていました。それがまた、曲の幻想的な雰囲気を高めます。この曲に限らず、スタンリーはほぼ全レパートリーで長大なソロをとります。弦を単に速く弾くだけではなく、引っ張り、叩き、和音やハーモニクス(倍音)を混ぜながら展開されるプレイは、視覚的にも大きなインパクトがありました。あの大きなウッド・ベースの指板の上を彼の大きな手、長い指が踊るように駆け巡るのです。レニーとのデュオで繰り広げられた「TAKE THE COLTRANE」は、まさしくベースとドラムスの超絶技巧のぶつかりあいでした。
ラスト2曲には、日本を代表する面々で構成されたホーン・セクションが参加。事前に告知されていなかっただけに、ちょっとしたサプライズに出会ったような気分です。チャーリー・パーカーの「CONFIRMATION」を下敷きにした「3 WRONG NOTES」など、まるでビッグ・バンドのようなサウンドで楽しませてくれました。嵐のような拍手と声援、ミュージシャンとオーディエンスの満面の笑顔。またひとつ、ブルーノート東京史上に残るステージが生まれました。
(原田 2010 11.26)
● 11.26fri.-11.28sun.
STANLEY CLARKE TRIO with HIROMI & LENNY WHITE
公演初日リポート:NICOLA CONTE JAZZ COMBO
featuring Nailah Porter, Flavio Boltro, Gaetano Partipilo, Pietro Lussu, Paolo Benedettini & Andrea Nunzi
プロデューサー、リミキサー、DJ等、多方面で活躍を続けるニコラ・コンテ。彼がいちミュージシャンとして、ステージで演奏する貴重な姿を拝めるのが、今おこなわれているブルーノート東京公演です。
リーダーを除く男性メンバー全員、スーツにネクタイという恰好。しかしニコラだけがノーネクタイで、ネッカチーフを巻いています。さすが伊達男、ファッション面でも期待を裏切りません。ステージのやや左で、ストゥールに腰掛けながらギターをつまびく彼の姿には、“リアルタイムで仲間と共に、音楽を創造する喜び”が満ち溢れているかのようです。
ニコラはいつも凄腕メンバーを連れてきてくれますが、今回もトランペット奏者のフラヴィオ・ボルトロを始めとする第一級の面々が揃っています。ぼくが初めてボルトロの演奏をCDで聴いたのは1990年代の初めでしょうか。その頃から音色、フレーズともに傑出していましたが、近年の彼はそこにほどよい円熟味が加わり、“脂の乗った”という言葉がぴったりの境地に達しています。彼の次の世代にあたるファブリッツィオ・ボッソの躍進も、ボルトロにいい刺激を与えているのかもしれません。
そのボルトロが会心のソロを聴かせるオープニング曲「MOORS」で、ライヴの幕は開きました。マイルス・デイヴィスの「SO WHAT」やジョン・コルトレーンで有名な「IMPRESSIONS」に通じる、モード・ジャズ草創期のサウンドをしのばせるナンバーです。
2曲目の「MAIDEN VOYAGE」からは、ヴォーカリストのナイラ・ポーターが大きくフィーチャーされます。どこかカサンドラ・ウィルソンに通じる、低く丸みのある声の持ち主です。彼女はこの後、1曲としてステージを離れることなく、マックス・ローチ&アビー・リンカーンの「FREEDOM DAY」、カル・マッセイ(キャル・マシー)の「QUIET DAWN」など、他のミュージシャンが殆どカヴァーしない曲を交えながら、アンコールの「CARAVAN」まで、歌いきりました。
ナイラの存在が注目され始めたのは2009年ぐらいからなので、まだまだ新人と言っていいと思います。この夜、ブルーノート東京にいらしたお客さんのなかにも彼女の歌を初めて生で聴いた方は多かったことでしょう(ぼくもそうです)。しかし、ライヴが終わるころには、どのファンの心にもナイラの存在感が深く刻まれたはずです。
ライブ前のDJセットで盛り上げてくれるのは、日本が世界に誇るレコード番長・須永辰緒。昨日は、ストレート・アヘッドなジャズ中心の選曲で会場をあたためてくれました。残り2日の登場ではどのような選曲で楽しませてくれるか、注目です。本日のみ、がらりと変わって沖野修也の登場(この2人のどちらかが DJ で、とニコラからの指名だったらしいです)というのも、また目が離せません。
(原田 2010 11.22)
● 11.22mon.-11.25thu.
NICOLA CONTE JAZZ COMBO
featuring Nailah Porter, Flavio Boltro, Gaetano Partipilo, Pietro Lussu, Paolo Benedettini & Andrea Nunzi
11.18 thu. ボージョレーヌーボー解禁
今年のヌーボーは昨年に引けず劣らずの当たり年となりました。
造り手は完全なる自然派ワインの巨匠、マルセル・ラピエール。
野いちごを砕いた様なフレッシュな味わい、程よい凝縮感。
☆ 2010 BEAUJOLAIS NOUVEAU MARSEL LAPIERRE
2010/ボージョレーヌーボー マルセルラピエール
GLASS ¥1,400
DECANTER ¥3,500
BOTTLE ¥6,000
ヴィオディナミ農法の先駆者、偉大なる造り手マルセル・ラピエール氏。
残念ながら10月に他界。
今年のヌーボーは彼の遺作となりました。
(ブルーノート東京・ソムリエ)
公演初日リポート:INCOGNITO -Transatlantic Tour-
リズム・セクション、ホーン・セクション、ヴォーカル陣が総勢10名。彼らがステージに所狭しと並ぶだけで、なんともいえない賑やかな雰囲気が生まれます。
人気ジャズ・ファンク・グループ、インコグニートが今年もエネルギー全開のショウを繰り広げています。
30年間、このバンドを率いているリーダーのブルーイは、MCでこう言いました。「ぼくたちのライヴはコンサートではなく、ショウなんだ。生命をセレブレイトする場なんだ」。「のってるかい!」というブルーイの日本語シャウトに導かれるように観客が沸き、バンドが爆裂しはじめます。「1曲目から、まるでアンコールのような盛り上がり」というフレーズは、こういうときに使うものなのでしょう。
続いては最新作『トランスアトランティック・RPM』からのナンバー、「1975」。1975年は音楽家ブルーイの運命を決定付けました。“アース、ウィンド&ファイアー”やスティーヴィー・ワンダーを知り、ラジオで聴いたロバータ・フラックとダニー・ハサウェイのデュオに魅了された記念すべき年なのです。そして「スティーヴィー・ワンダーは自分にとって、単なるミュージシャンにとどまらない特別な存在なんだ」というMCの後に、「AS」のインコグニート流カヴァーがプレイされます。インコグニートの取りあげたスティーヴィー・ナンバーとしては既に「DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING」の大ヒットがありますが、この「AS」も実に美味。こうした選曲、先輩ミュージシャンへの愛に溢れたMCを聴いていると、ブルーイは本当に音楽少年のまま、大好きな音楽をプレイする喜びに包まれたまま年齢を重ねてきたんだな、と思わずにはいられません。
常に優れたヴォーカリストを擁しているインコグニートですが、今回の公演に参加したヴァネッサ・ヘインズとロレイン・ケイト・プライス、そしてトニー・モムレルは皆がリード・ヴォーカルをとれるのも強みですが、3人の声が重なったときのハーモニーがまた、美しいのです。ブルーイのヴォーカルはうまさというよりもユーモアで聴かせているところもありますが、ギター・プレイは細やかで的確です。ラテン調の人気曲「COLIBRI」におけるリズム感は、ちょっとやそっとじゃ真似のできないものでしょう。とれたての野菜をその場で切り刻んでいるかのような、シャキシャキしたギター・カッティングの気持ちよさ。これを目の前で味わえるのは、文字通りライヴの醍醐味です。
「多くのミュージシャンが日本に来ることを夢見ている。夢の叶わないひともいるなかで、私は何度も日本で公演できている。本当に光栄だ」とブルーイ。『トランスアトランティック・RPM』の楽曲と、これまでの定番を程よくブレンドしたステージは、インコグニートの新たな魅力をすべてのオーディエンスに届けてくれるはずです。
(原田 2010 11.16 )
●11.16tue.-11.21sun.
INCOGNITO -Transatlantic Tour-
イタリアから新しいコンセプトのワインがB1バーに到着!
容量100mlの気軽に携帯できる、手のひらサイズの紙パックエコワイン。
ストローを差してカジュアルに。グラスに移してもOK、
味わいは当店ソムリエも絶賛保証!
11月より販売中(B1バーのみ)。
☆ ONE GLASS(ワングラス)
100ml 500円(税込)
左から
ヴェルメンティーノ(白)
ピノ・グリージョ (白)
サンジョヴェーゼ(赤)
カベルネ・ソーヴィニョン(赤)