公演初日リポート:THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA directed by DENNIS MACKREL special guest LEDISI
ブルーノート東京、本年度のカウントダウン&ニュー・イヤーはビッグ・バンド・ジャズの王道を行く“ザ・レジェンダリー”カウント・ベイシー・オーケストラがお供します。スイング感、楽しさ、華やかさ、輝き、どれをとってもこれ以上年末年始にふさわしい存在はないといっていいでしょう。
ぼくはさっそく昨日おこなわれた初日のファースト・セットに行ってまいりましたが、とにかく気合の入ったステージです。新コンダクターに就任したデニス・マクレルの意気込みが全メンバーに伝わっているのでしょう、「APRIL IN PARIS」のような大オハコ・ナンバーも格別、新鮮に響きます。デニスの物腰柔らかなMC、ハリのある指揮ぶりもすっかり板についていて、「名門オーケストラの歴史は、こうして受け継がれていくのだなあ」と、なんともいえない感銘を受けました。
デニスは創設者カウント・ベイシー存命時代のベイシー楽団で、最後のドラマーを務めていまました。その後、サド・ジョーンズやフランク・フォスターがコンダクターの座を受け継いだときも、彼は心地よいリズムを送り出しておりました。しかし今回はドラムスを叩かず、指揮に専念しています。彼はいま、ベイシー楽団を率いることに全力を注いでいるのでしょう。
前半はインストゥルメンタル・ナンバーが続きます。フォスターの編曲した「IN A MELLOW TONE」では、サックス・セクションが見事なソリ(ソロの複数形)を披露。この響きこそアール・ウォーレンやマーシャル・ロイアルがいた頃から脈々と受け継がれてきたベイシー・サウンドのひとつです。
続いて、先日亡くなったサックス奏者、ジェームズ・ムーディに捧げて「HEY JIM」が演奏されました。ぼくの知る限りムーディとベイシーの直接的なつながりはありませんが、’50年代初頭のムーディ・バンドに編曲を提供していたのがクインシー・ジョーンズでした。そこでの業績が認められて後年、クインシーはベイシー楽団のメイン・アレンジャーのひとりに抜擢されるのです。ここでもデニスいわく“世界一のサックス・セクション”が圧巻でした。セロニアス・モンクの「WELL,YOU NEEDN’T」を意識したに違いない「WAY OUT BASIE」、デニスの代表的な作編曲として知られる「AND THAT'S THAT」は2代目リーダー、サド・ジョーンズ時代のレパートリーですね。このあたりの選曲は、ベイシー存命中と没後、オーケストラの両方の時代を知っているデニスならではのチョイスといったところでしょうか。
後半はレディシのヴォーカルが大きくフィーチャーされます。ゲストで2、3曲出てくるというのではない、十二分に満喫させてくれる時間と内容でした。R&Bの大御所として知られる彼女ですが、今回は身も心もジャズ・シンガーになりきっているようです。火を噴くようなスキャットは、熱心な彼女のファンをも驚かせ、興奮させることでしょう。
ベイシー楽団とレディシは今年の秋、「ブルーノート・ニューヨーク」でも共演し、大好評だったとききます。今、ニューヨークと同じセッションが日本で開催されることは殆どありません。ぜひ皆様、名門ビッグ・バンドとホットなヴォーカルの組み合わせで年末年始をお過ごしくださいませ。
(原田 2010 12.26)
● 12.26sun.-12.31fri.
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
directed by DENNIS MACKREL
special guest LEDISI