'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHRISTOPHER CROSS - - report : CHRISTO...
2011/01/08
公演初日リポート:CHRISTOPHER CROSS
場内が沸きに沸いたカウント・ベイシー楽団+レディシのカウントダウン、そして1月2日に行なわれたベイシー楽団の単独公演に続き、昨日からはクリストファー・クロスが選りすぐりのメンバーを集めたバンド(サックス奏者はデヴィッド・マン)と共に心暖まるライヴを繰り広げています。
30年以上のキャリアを持っているにもかかわらず、オリジナル・アルバムは(クリスマス・アルバムを含めても)わずか9枚という、大の寡作家として知られるクリストファーですが、彼にとってはライヴ・ステージで、ファンの反応をじかに感じながら歌うことこそ最大の喜びなのでしょう。大ヒット・チューンを中心に、アルバムからのやや渋めの楽曲も織り交ぜたパフォーマンスは、数え切れないほどの舞台に立ち、観客の心を知り尽くした者だけが表現できる深み、楽しさ、優しさに溢れていました。
他のメンバーに少し遅れて、黒いジャケットを着たクリストファーが登場します。帽子をよく見ると、鳥の羽根が刺さっています(フラミンゴの羽根ではなかったようですが)。かつて「歌とルックスのギャップが激しい」といわれたこともありますが、今の彼を見ると誰もが前言撤回したくなることでしょう。とにかく立ち居振る舞いが粋なのです。そして一度聴いたら忘れることのできない、あの美声。殆どの曲でリード・ギターをこなしながら、伸びやかな高音ヴォーカルを響かせるクリストファーは、文句なしのかっこよさです。「OPEN UP MY WINDOW」や「I KNOW YOU WELL」ではキーボード奏者のキキ・エブセンとヴォーカル・デュオを聴かせてくれましたが、こちらもうっとりしてしまうほど素敵なハーモニーでした。
“ジェフ・ベックで有名な「CAUSE WE'VE ENDED AS LOVERS」(哀しみの恋人達)みたいな曲だよ”とクリストファー自ら紹介した「RAINY DAY IN VANCOUVER」は、彼にしては珍しいインストゥルメンタル・ナンバー。伸びやかなギターの音色が、切なげなメロディをシットリと奏でていきます。歌手としての評価の影に隠れがちですが、クリストファーは本当にギターの達人です。この日はストラトキャスター、レス・ポール(トレモロ・アームつき)、アコースティック・ギターを使いわけて演奏しましたが、それぞれの特性を知り尽くしたかのようなソロ、コード(和音)を聴くと、「もし美声に恵まれていなかったとしても彼はギタリストとして音楽界で成功したに違いない」と思えてきます。
いうまでもなくライヴではお待ちかね、「ARTHUR'S THEME」(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)、「RIDE LIKE THE WIND」(風立ちぬ)といった不朽の定番も披露されました。もちろんイントロが流れただけで、ファンの間ではため息と拍手が巻き起こります。それにしても映画会社の方かレコード会社の方かわかりませんが、「アーサーのテーマ」に「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」という邦題をつけたスタッフは本当に冴えていると思います。この曲を頭に描いてニューヨークに出かけたことのあるファンも、多数いらっしゃるのではないでしょうか。
(原田 2011 1.7)
● 2011 1.7fri.-1.10mon.
CHRISTOPHER CROSS