'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PHIL WOODS QUINTET - - report : PHIL WO...
2011/03/27
公演初日リポート:PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN
アルト・サックスの人間国宝、“Mr.ダイジョブ”ことフィル・ウッズが元気な姿をみせてくれました。日本の人を励ますため、周囲の反対を押し切っての "強行来日" を果たしてくれた、と聞きました。その彼が「ブルーノート東京」に登場するのは約20年ぶり。久々の帰還を歓迎するように、場内には溢れんばかりのオーディエンスがつめかけました。
1曲目は「BOHEMIA AFTER DARK」。伝説のベース奏者、オスカー・ペティフォードが書いた曲ですね。50年代にはキャノンボール・アダレイやズート・シムズも演奏していましたが、最近はあまり取り上げられていないのが不思議です。こうした“隠れ名曲”を発掘するのは、ファンにはおなじみのウッズの得意技。数々のメロディを引用しながら、まさしく“ウッズ節”というべきアドリブで酔わせてくれました。もちろん20代、30代の頃の爆走感はうかがえませんが、79歳にして、ここまで往年の輝きを保っていることは驚きに値します。
ウッズの近作はあまり日本ではリリースされていませんが、イタリアのPhilologyというレーベル(熱心なウッズ・ファンが設立した)からは数多くの新譜が発表されています。そうした作品では、よりバラード・プレイに重点がおかれていることが多いのですが、この日も「ANOTHER TIME, ANOTHER PLACE」、「SOUVENIR」などで絶品のバラードを聴かせてくれました。作曲は、ウッズの大先輩であるベニー・カーターです。カーターはウッズの才能を早くから認め、共演アルバムも残しています(80年代の終わりには一緒に来日しました)。カーターは90代まで現役活動を続けましたが、ウッズもまだまだ第一線を走り続けてくれることでしょう。
“私はオールド・マンだからね、薬を飲む時間をもらうよ”というユーモア交じりのMCの後は、サイドメンをフィーチャーしたナンバーが続きます。ここでファンは、今回の公演がなぜ単なるフィル・ウッズ・クインテットではなく“フィル・ウッズ・クインテット・フィーチャリング・ブライアン・リンチ、ビル・メイズ、スティーヴ・ギルモア&ビル・グッドウィン”なのかに気づくわけです。見方を変えればメンバー全員が主役なのですね。熱演する彼らをステージ袖から見守るウッズの表情は、「どうだい、私のバンドのメンバーは最高だろう?」といいたげな自信に溢れたものでした。
その後、御大は再びアルト・サックスを手に、歌心いっぱいのプレイで楽しませてくれました。客席からは自然に手拍子が巻き起こります。ミュージシャンも、オーディエンスも、みんな笑顔です。
音楽の力ってすごいなあ。そう心から感じさせてくれるステージでした。
(原田 2011 3.26)
● 3.26sat.-3.27sun.
PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN