公演初日リポート:秋吉敏子クインテット
featuring ルー・タバキン with Monday満ちる
2003年にオーケストラの解散公演を「ブルーノート東京」で開催した秋吉敏子が、8年ぶりにクラブに戻ってきました。
今回の編成はクインテット(5人編成)。長年のパートナーであるルー・タバキン(テナー・サックス、フルート)以外は、マイク(マイケル)・ロドリゲス(トランペット)、ポール・ギル(ベース)、アーロン・キンメル(ドラムス)と、すべて注目の若手です。後半ではここに、愛娘のMonday満ちるがヴォーカルで加わりました。キンメルは、当初来日予定だったエディ・マーシャルが急逝してしまったためのエキストラ的参加ですが、ビリー・ヒギンズを思わせる軽妙なシンバル・ワークが印象に残りました。
オープニングは「LONG YELLOW ROAD」。秋吉敏子を代表する、名刺がわりといえるナンバーです(彼女はMCで、“Signature Number”と言っていました)。古くは1961年の凱旋来日時にピアノ・トリオによる吹き込みがあり、その後もオーケストラによるレコーディングを残しています。しかしクインテットでこの曲を聴くのも新鮮です。タバキンのテナー・サックスに、伸びやかな音でハーモニーをつけるロドリゲスを聴いて、「今夜のライヴは面白いものになるぞ」と、あらためて強く思いました。
オーケストラを率いるときの秋吉敏子は、実はそれほどピアノを弾いていません。むしろピアノの椅子から離れて立ち、バンド・メンバーを指揮している姿が目立ちます。しかしコンボ(小編成のバンド)では、ソロにバッキングに、ピアノをたっぷりと聴かせてくれます。ベース、ドラムスとのトリオで演奏された「I KNOW WHO LOVES YOU」では、彼女が敬愛してやまないバド・パウエル流のプレイを楽しませてくれました。今のジャズ界はピアニストが花ざかりですが、ここまでガチッとビ・バップを演奏する(演奏できる)存在は多くありません。「ああ、やっぱりビ・バップはいいなあ」と、ぼくは秋吉敏子のバップ・フレーズを聴いて溜飲を下げました。
いっぽうタバキンは、ソニー・ロリンズの愛奏曲としても知られる「AUTUMN NOCTURNE」でテナー・サックスの、ヴィクター・ヤング作「DELILAH」でフルートの妙技を満喫させてくれました。オーケストラの頃のレパートリーはほぼすべてが秋吉敏子のオリジナル曲だったので、タバキンの演奏するスタンダードを生で聴くのは新鮮です。Monday満ちるは、計4曲を披露。出産の経験を基にしたという「EARLY DOWN」は、まるで70年代のディー・ディー・ブリッジウォーターやマッコイ・タイナーを思わせるモーダルなナンバーで、演目にいっそう豊かなバラエティを加えていました。
そしてエンディングは、近年の秋吉敏子のライヴに欠かせない「HOPE」。“長く黄色い道”に始まり、“希望”で締めくくられる、まさしくオール・アバウト秋吉敏子というべきプログラムでした。
(原田 2011 11.1)
● 11.1tue.-11.4fri.
秋吉敏子クインテット
featuring ルー・タバキン with Monday満ちる
★11.3thu.(1stショウ&2ndショウ)は20歳未満の方にもご入場いただける特別公演
一般¥8,400(税込)/20歳未満¥4,200(税込)