BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHANO DOMINGUEZ - - report : CHANO D...

2012/01/16

チャノ・ドミンゲス - CHANO DOMINGUEZ
チャノ・ドミンゲス - CHANO DOMINGUEZ


公演初日リポート:CHANO DOMÍNGUEZ QUARTET



スペインを代表する、いや、もう世界を代表するジャズ・ピアニストといっていいでしょう。豊かなイマジネーションと素晴らしいリズム感を持つ鬼才、チャノ・ドミンゲスの公演がブルーノート東京で行われています。

ぼくが初めて彼のCDを聴いたのは1990年代の終り頃でした。あまりにも粒立ちのよいピアノの音色に、一目ぼれ(一聴ぼれ)してしまいました。当時、ぼくはジャズ雑誌の編集長をしていたのですが、さっそくスペイン在住のライターと連絡をとり、チャノにインタビューしてもらったことを昨日の出来事のように思い出します。

そのチャノ・ドミンゲスが今、日本で演奏している。それだけでも個人的には快挙なのですが、演奏内容がまた、濃厚にして甘美で、なんともいえない艶っぽさに溢れています。メンバーもベースのマリオ・ロッシ(ブラッド・メルドー・トリオにいたドラマー、ホルヘ・ロッシの兄弟)、ドラムスのギジェルモ・マクギル、歌と打楽器のブラス・コルドバという、「よくぞ連れてきてくれました」といいたくなるほど充実したラインナップ。チャノの曲にはピアノとベースがユニゾンで演奏するパートが多いのですが、チャノとマリオの息は、憎らしくなるほどピッタリです。変幻自在のチャノのアドリブを堅実にサポートしつつ、抜けのよい低音でバンド・アンサンブルに重みを加えるマリオのプレイは「ベーシストの鑑」と呼びたくなるものでした。

今回の演奏曲目は、マイルス・デイヴィスの名盤『KIND OF BLUE』からのナンバー(全5曲)が中心です(3月にはこのテーマで新譜リリース予定もあるようです)。チャノは2009年、同アルバムの吹き込み50年を機に、この古典をアレンジし、世界の数あるライヴ・ステージで披露しています。もちろん才人チャノのことですから、あのレコードの単純なコピーをするわけがありません。原曲に敬意を示しながら、自身の感性で、まったく新しいものに作り変えているのです。組曲のような展開をみせる「FLAMENCO SKETCHES」、新たなリフが付け加えられた「SO WHAT」、手拍子(パルマ)が飛び出す「FREDDIE FREELOADER」、コルドバの朗々としたスペイン語ヴォーカル(カンテ)がフィーチャーされた「BLUE IN GREEN」などなど、マイルスのオリジナル・ヴァージョンに親しんでいるファンほど、チャノのとんでもない編曲能力に驚かされたことでしょう。

なんだか夢を見ているような1時間40分でした。ぼくにとっては先日のマヌ・カッチェ公演と並ぶ、2012年のベスト・ライヴ・パフォーマンスのひとつです。公演は18日まで続きます。“鬼才の世界”を、ぜひ至近距離で堪能してください!
(原田 2012 1.16)


● 1.15sun.-1.18wed.
CHANO DOMÍNGUEZ QUARTET


チャノ・ドミンゲス - CHANO DOMINGUEZ