BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/03

2012/03/30

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHICKENSHACK - - report : CHICKEN...

CHICKENSHACK - チキンシャック
CHICKENSHACK - チキンシャック


公演初日リポート:
CHICKENSHACK -Reunion Tour-



1986年にレコード・デビューし、‘95年まで活動を続けた人気ユニット“チキンシャック”が遂に再結成しました。「サックス奏者の土岐英史、ギター奏者の山岸潤史、キーボード奏者の続木徹が、一緒にバンドを組んでいた」ということ自体が信じられない若いファンの方も多いのではないでしょうか。バンドスタンドにはその3人に加え、初期メンバーであるデレク・ジャクソン(ベース、ヴォーカル)、後期メンバーである鶴谷智生(ドラムス)が登場します。十数年のブランクなど、まったく感じさせません。昨日の夜に別れた面々がその翌日に再会するようにごく自然に、彼らのライヴは始まりました。

1曲目「A SILENT LOVE」のイントロから、猛烈な拍手と歓声が巻き起こります。テーマ・メロディが終わる頃にはリズム・セクションの爆裂が始まっていて、デレクは飛び跳ねてベースを弾き、鶴谷も上体を大きく浮かせてシンバルを叩きます。山岸はからだ全体で演奏し、チョーキングするときはギターの弦だけではなく顔も上に引っ張られているような表情をします。それを笑顔で眺めている土岐は、いざ自身のソロになると何かにとりつかれたような入魂のブロウを披露。続木のキーボードからはブルース・フィーリングが滴るかのようです。
続いては、お待ちかねの「TOFU」。このギター・カッティングの小気味よいこと! チキンシャックが始まった頃、日本には数多くのフュージョン・バンドがいました。しかしここまでファンキーでソウルフルな音を出していたグループはなかったと記憶します。結成当時出演していた六本木の「テンプス」にちなんだ「AT TEMPS」も2曲目と同じくファースト・アルバムからのナンバーですね。土岐はカデンツァ(エンディング近く、ひとりで即興演奏する部分)で、ジャズの名曲「ラウンド・ミッドナイト」のメロディを引用しました。本当にチキンシャックは、夜が似合うグループです。

その後もスタイリスティックスのカヴァー「BETCHA BY GOLLY WOW」、デレクと観客がコール&レスポンスをおこなった「SLOW MOTION」(途中、デレクが2代目ドラマーの故マーヴィン・ベイカーの魂に“安らかに”と呼びかけるシーンもありました)等が続き、アンコールでは遂にあの「FLOWERS FOR LENA」が登場。客席の盛り上がりは最大限に達します。なんて艶やかな(エロい)サウンドなんでしょう。からだがとろけていくようです。

ぼくは残念ながら‘80年代の六本木を知りませんし、バブルの恩恵を受けるには幼すぎました。しかしチキンシャックのエキサイティングで魅力的なパフォーマンスは、当時を知るひと、知らないひとの両方を、等しく楽しませてくれるはずです。再始動した彼らが、今後も精力的な活動を繰り広げてくれることを心から望みます。
(原田 2012 3.30)


● 3.30fri.-3.31sat.
CHICKENSHACK -Reunion Tour-
☆ 参考:セットリストはこちら


CHICKENSHACK - チキンシャック


2012/03/28

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CLEMENTINE - - report : CLÉ...

クレモンティーヌ - CLEMENTINE
クレモンティーヌ - CLEMENTINE


公演初日リポート:
CLÉMENTINE



日本のアニメ・ソングに取り組んだ“アニメンティーヌ・シリーズ”で、さらにファン層を大きく広げた歌姫、クレモンティーヌがブルーノート東京に戻ってきてくれました。今回もサービス精神、エンタテインメント性満載のステージです。

近年の代表曲「CHOCOLAT ET SWEETS」などでオーディエンスをフレンチ・ポップスの世界に誘った後、29日の公演のスペシャル・ゲストに登場する細野晴臣が作曲した「ハイスクールララバイ」、「風の谷のナウシカ」が歌われます。イモ欽トリオ、安田成美のオリジナル・ヴァージョン(を御存知の方は、多分ぼくと同世代でしょう)ではシンセサイザーがたっぷり使われていましたが、クレモンティーヌはこれをアコースティック楽器主体のボサ・ナンバーに生まれ変わらせてしまいました。「アレンジや歌詞の使用言語によって、曲の印象がこんなに変化するのか」と、ぼくは改めて驚きました。

その後も「上を向いて歩こう」、「スーダラ節」、「サザエさん」などが次々と登場し、会場を大いに沸かせました。考えてみればこうした曲を書いた作家たちは、皆ジャズの洗礼を受けています。「上を〜」を作った中村八大はオスカー・ピーターソン系のジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートしました。「スーダラ節」を書いた萩原哲晶は戦後のジャズ史に名前を残すクラリネット奏者です。そして「サザエさん」を書いた筒美京平もジャズ・ピアニストとしての経歴があり、作曲家としてデビューする前、レコード会社に務めていたときはヴァーヴ(ジャズの名門レーベル)の日本発売のディレクターだったともききます。ジャズの素養を持った作家の書いた日本語の有名曲を、ジャズのフィーリングを損なわずにボサ・ノヴァ化した・・・それもアニメンティーヌ・シリーズの成功の秘訣かもしれません。

バック・メンバーでは、いまやクレモンティーヌのライヴになくてはならないパーカッション奏者、Jorge Bezerra(元ザヴィヌル・シンジケート、7月に “The Syndicate”公演で再び登場予定)の活躍がひときわ目を惹きました。陽気そのもののキャラクターで、笑顔をふりまきながら、とんでもなくグルーヴ感のあるリズムを生み出す彼の存在が、いかにバンドの音楽を活気づけているか。このリズムを聴けば、ミュージシャンもオーディエンスも誰でもハッピーになれます。いつもオシャレな彼ですが、ぼくが見たときはハートが大きく描かれたTシャツ、赤と黒のストライプの靴下を着用。今日のライヴでもJorgeは徹底的に皆様を楽しませてくれることでしょう。
(原田 2012 3.27)


● 3.27tue.-3.28wed.
CLÉMENTINE
☆ 参考:セットリストはこちら

クレモンティーヌ - CLEMENTINE


2012/03/23

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HARGROVE - - report : ROY HAR...

ロイ・ハーグローヴ - ROY HARGROVE
ロイ・ハーグローヴ - ROY HARGROVE


公演初日リポート:
ROY HARGROVE QUINTET



ベスト・ドレッサーとしても知られるトランペッター、ロイ・ハーグローヴが今年も姿をみせてくれました。帽子、ベスト、ネクタイ、メガネ、全部見事にコーディネートされています。五日間で計10公演、どのライヴに足を運んでも満足を与えてくれることでしょう。

ぼくがロイのグループを聴く楽しみのひとつに、“選曲の妙”があります。今ではあまり演奏されなくなってしまった、隠れた名曲を引っ張り出してきて、心憎いほどのアレンジで聴かせてくれるのです。しかもロイは1950年代や60年代に生まれたレア・ナンバーだけではなく、その後に作曲されたナンバーにも新たな息吹を注ぎます。

ぼくが聴いた初日のファースト・セットでは、ジェームズ・ウィリアムス作「ALTER EGO」と、アート・テイラーのバンド“テイラーズ・ウェイラーズ”のテーマ・ソングであった「MR. A.T.」が嬉しい驚きでした。ウィリアムスは1980年代、ウィントン・マルサリスと一緒にアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍していたピアニスト、テイラーは40年代から90年代半ばまで現役活動を続け、マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズ、セロニアス・モンク等、数多くの巨匠と共演したドラマーです。ふたりとも既にこの世のひとではなく、こうした楽曲が今、演奏されるチャンスは殆どありません。しかしハーグローヴはしっかりと、知られざる名曲を現在のファンに届けてくれました。

伝説的アルト・サックス奏者、チャーリー・パーカーの演奏で有名な「ザ・ソング・イズ・ユー」のコード(和音)に基づく「THIS SONG WAS」も、火の出るような熱演でした。ここまでビ・バップ・スタイルの演奏をこなせるミュージシャンは、ひょっとしたらロイ以下の世代には殆どいないかもしれません。ロイはデビューが早かったので、いわゆるビ・バップ世代(ディジー・ガレスピー、ミルト・ジャクソン、J.J.ジョンソン、アート・ブレイキー、レイ・ブラウン等)の晩年にギリギリ間に合っています。とても怖い先輩であったであろう彼らに鍛えられたことは、ロイにとってかけがえのない財産になったはずです。

今は亡き巨匠たちから渡された“ジャズのバトン”を、ロイは確実に受け取っています。今の彼は、ジャズの魅力を積極的に次の世代に伝えていると思います。ロイ・ハーグローヴ・クインテットが若手ミュージシャンの登竜門になる日も近いのではないでしょうか
(原田 2012 3.22)


● 3.22thu.-3.26mon.
ROY HARGROVE QUINTET
☆ 参考:セットリストはこちら


ロイ・ハーグローヴ - ROY HARGROVE


2012/03/22

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , VICENTE AMIGO - - report : VICENTE...

ビセンテ・アミーゴ - VICENTE AMIGO
ビセンテ・アミーゴ - VICENTE AMIGO


公演初日リポート:
VICENTE AMIGO @すみだトリフォニーホール & ブルーノート東京



世界の一流アーティストを、コンサート・ホールとクラブの両方で聴く。これはなかなか体験できることではありません。通常、ミュージシャンがツアーを組む場合、ホールばかりか、もしくはクラブばかりで公演することが多いからです。先日のテイク6に続き、今度はヴィセンテ・アミーゴがホールとクラブ両方に登場しました。天井が高く、生の楽器の音が空気ととけあって響き渡るコンサート。ホール。楽器のアタック音、奏者の呼吸までがダイレクトに感じられるクラブ。フラメンコの伝統を重んじながら、常にコンテンポラリーなサウンドを取り入れ続けるヴィセンテの音楽は、そのどちらにもふさわしく、そのどちらで聴いても満足を与えてくれるものです。

ぼくがヴィセンテの存在を初めて知ったのは、ジャンルを超えてさまざまなギタリストを集めた書籍で、でした。彼を紹介するライターが、異様に熱のこもった文章を書いていたので、面白そうだなと思って『魂の窓』というアルバムを買ったのです。聴いてすぐに気に入りました。ものすごいテクニックの持ち主だということは、ただちにわかりましたが、それをうわまわるポップ・センス、歌心に惹きつけられました。その中にパット・メセニーに捧げた「ケリド・メセニー〜親愛なる友へ」という曲があったのも、ヴィセンテと自分の距離を近づけました。

すみだトリフォニーホールでのコンサートは、最初からダブル・アンコールの最終音まで“静かな熱狂”に包まれていました。右手の動きは神技と呼ぶにふさわしく、信じられないようなソフトな音から、エッジの立った鋭い音まで自由自在です。半数近くがソロ演奏でしたが、エレクトリック・ベース、パルマ(手拍子)、カホン(打楽器の一種)等を加えたバンド・サウンドがまた見事でした。ニュアンスに富んだポリリズムに触れていると、なぜか“スペインから見渡すアフリカ”というフレーズが浮かんできました。最後、千数百人の聴衆によるスタンディング・オベーション、拍手大喝采のシーンは感動的でした。

いっぽう「ブルーノート東京」でのライヴは、聴衆の数こそすみだトリフォニーホールには及びませんが、ステージの一挙一動を至近距離で見守る聴衆と、その親密感を楽しんでいるかのようなヴィセンテを始めとしたミュージシャンたちの情熱的なパフォーマンスが印象的でした。

聞くところによると、普段はクラブにて演奏をしないヴィセンテが、今回なぜブルーノート東京出演の決断に至ったか、それはパット・メセニーとチック・コリアに “ブルーノート東京は特別な場所だ。是非出演した方がよいのでは” という進言があったとのことです。それらアーティストのいちファンとして、とても嬉しいお話ですね!今後もこのような“縁”が実を結んだことによるミラクルを期待しつつ、いちアーティストの魅力をホールとクラブ両方の環境で味わえる公演の開催も、再び楽しみに待つとしましょう。
(原田 2012 3.16)


● 3.16fri.
VICENTE AMIGO @すみだトリフォニーホール


● 4.26thu.
JIN OKI with special guest MIYAVI @BLUE NOTE TOKYO





2012/03/18

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BEN L'ONCLE SOUL - - report : BEN L'O...

ベン・ロンクル・ソウル - BEN L'ONCLE SOUL
ベン・ロンクル・ソウル - BEN L'ONCLE SOUL


公演初日リポート:
BEN L'ONCLE SOUL
DJ JIN(3.17sat.), MURO(3.19mon.)



フランス生まれのソウル・マン、ベン・ロンクル・ソウルが待望の初来日を果たしました。フランス・モータウンに所属。国内盤はこれから登場するとのことですが、場内は超満員で補助席が出るほど。客席の反応も圧倒的なまでに良く、誰もが彼の海外盤をみっちり聴いて予習万端でライヴに備えてきたかのようでした。

皆、彼のステージを心から待ちわびていたのです(ベンと同じようなメガネ、蝶ネクタイ、帽子、サスペンダーをしているオーディエンスも見受けられました)。
ベン・ロンクル・ソウル(ソウルおじさんベン)というのは、もちろん芸名です。目の前で見る彼は“おじさん”というよりも青年です。母親が大のソウル・ミュージク・ファンだったので、幼い頃からオーティス・レディング、ジェームズ・ブラウン、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴ等を聴いていました。初めて見たライヴはプリンスの公演だったそうです。

身も心もソウル・ミュージックに奪われてしまったベンですが、彼はレコードを集めたりライヴに足しげく通う、いち“音楽リスナー”にとどまることがありませんでした。情熱がこうじて、往年のソウル・ミュージックを意識したナンバーを自作自演するようになり、バンドを組んでステージに立ってしまったのです。そしてソウルの名門、モータウンと契約し、ソウルの伝道師として世界を飛び回って現在に至るのです。

彼のシャウト、ダンス、パフォーマンスにはいろんな先輩ソウル・マンへのリスペクトが感じられます。ジェームズ・ブラウンやオーティス・レディングの映像を繰り返し見て、ひょっとしたら鏡の前に立って彼らの動きをコピーしていたのかもしれませんし、「CRAZY」が、曲想・ダンスともどもアイク&ティナ・ターナー版「プラウド・メアリー」にインスパイアされていることは間違いのないところでしょう。一瞬も休むことなくステージを動きまわり(客席にも乱入し)、オーディエンスを煽り、ユーモラスなMCを繰り広げ、シャウトするベン。「全身全霊」という言葉にふさわしいライヴでした。

バック・メンバーでは左利きのドラマー、ロイック・ジェラルドの的確なビートが印象に残りました。またキーボードのガビン・レシエルは、ワーリッツァー・ピアノ、フェンダー・ローズ、ハモンドB3、ホーナー・クラヴィネット等の音色を再現し、その時代時代のソウル・ミュージックの匂いをふりまくことに大きく貢献していました。

ホーン・セクションではジュリアン・デュシェに、思いっきり驚かされました。なんとトランペットとバリトン・サックスを兼任するのです。トランペットとサックスを両方プレイする奏者はごく稀にいますが、あの大きくて重くて肺活量のいるバリサクをあれほどブリブリ吹きまくるとは(しかも床に寝そべってブロウしていました)。いろんな意味でこの公演は、ぼくにとって衝撃的でした。月曜日(19日)の公演もお見逃しなく!
(原田 2012 2.27)


● 3.17sat. & 3.19mon.
BEN L'ONCLE SOUL
DJ JIN(3.17sat.), MURO(3.19mon.)
☆ 参考:セットリストはこちら


ベン・ロンクル・ソウル - BEN L'ONCLE SOUL


2012/03/15

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - report : BILLY C...

ビリー・チャイルズ - BILLY CHILDS
ビリー・チャイルズ - BILLY CHILDS


公演初日リポート:
BILLY CHILDS QUARTET
featuring STEVE WILSON, SCOTT COLLEY & BRIAN BLADE



アコースティック・ピアノもエレクトリック・キーボードも自由自在。作曲やアレンジにも才能を発揮し、ヴォーカリストのサポートも得意。ジャズ、フュージョン、ポップス等を幅広くこなし、クラシック音楽の素養もたっぷり。
それが今夜の主人公、ビリー・チャイルズです。これまで共演してきたミュージシャンにはクリス・ボッティ、ダイアン・リーヴス、フレディ・ハバードなど錚々たる名前が並びます。何度も来日し、グラミー賞も3度受賞していますが、リーダーとしての日本公演は今回が初めてとのことです。

他のメンバーにも凄腕が並びます。サックスのスティーヴ・ウィルソンは80年代後半、アウト・オブ・ザ・ブルーというバンドにケニー・ギャレットの後任として抜擢され、一躍注目を浴びました。その後もチック・コリアのオリジン、ミンガス・ビッグ・バンド等で活躍したり、クリスチャン・マクブライドやマルグリュー・ミラーと演奏しています。

ベースのスコット・コリーはジム・ホールのバンドで頭角を現し、近年はCAM JAZZというレーベルから面白いリーダー・アルバムを次々と発表しています。ドラムスのブライアン・ブレイドについて、もう説明は不要でしょう。チャイルズのバンドでは、ブライアン自身のプロジェクト(アメリカーナ的なフェロウシップ、シンガー・ソングライターとしての一面にスポットを当てたママ・ローザ)ではなかなか聴くことのできない、4ビートのジャズ・ドラミングをたっぷりと味わうことができます。

チャイルズはすべてアコースティック・ピアノで演奏しました。
ぼくが見た初日のセカンド・セットは、ほとんどがチャイルズの自作で占められていました。「けっこう難しい曲なんだよ」と本人もMCで語っていましたが、たしかにどれも、超絶的なハイ・テクニックを要するナンバーです。チャイルズの頭の中には、こんなに複雑なリズムやメロディが渦巻いているのだろうか、と、ぼくは演奏を聴きながら驚きました。しかし各プレイヤーは余裕綽々でそれをこなし、ブレイドは掛け声をあげながらドラムスを叩きます。気持ちいいではないですか。

チャイルズはまた、スタンダード・ナンバーの「IT NEVER ENTERED MY MIND」をトリオで、アンコールでは「MY FUNNY VALANTINE」をソロで聴かせてくれましたが、これも凝りに凝ったものでした。弾いていくうちに楽想がどんどん飛躍していくのでしょう、まるで壮大なピアノ・ソナタを思わせるプレイになっていくのです。

公演は16日まで行なわれます。チャイルズの演奏は、ジャズ・ファンだけではなく、クラシック・ファンにも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
(原田 2012 3.14)


● 3.14wed.-3.16fri.
BILLY CHILDS QUARTET
featuring STEVE WILSON, SCOTT COLLEY & BRIAN BLADE

☆ 参考:セットリストはこちら


ビリー・チャイルズ - BILLY CHILDS


2012/03/13

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , STACEY KENT - - report : STACEY ...

ステイシー・ケント - STACEY KENT
ステイシー・ケント - STACEY KENT


公演初日リポート:
STACEY KENT



アメリカに生まれ、英国を拠点に活躍。フランス語に堪能で、ブラジリアン・ミュージックにも造詣が深い。才色兼備の“ジャズ・ソングバード”、ステイシー・ケントが遂にブルーノート東京に登場しました。

冒頭はスタンダード・ナンバーの「IT MIGHT AS WELL BE SPRING」。冒頭の1コーラスを、ステイシーはピアノだけを伴奏に、スロー・テンポでじっくりと歌います。ここだけで観客は彼女の世界に引き込まれたことでしょう。ぼくもそうです。このままスローで続いていくのかなと思ったら、やがてボサ・ノヴァのリズムになり、ジム・トムリンソンがテナー・サックスでソロを吹き始めました。暖かな音色、流れるようなフレーズ作りは、故スタン・ゲッツが蘇ったかのようです。「まるで春のよう」というには、まだ肌寒さの残る毎日ですが、この曲ひとつでステイシーたちはクラブに春を運んでくれました。

いっぽう、やはりスタンダード・ナンバーである「THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME」では全編をスロー・テンポで聴かせました。ぼくがステイシーのライヴを見るのはこれが初めてなのですが、よく伸びる歌声、巧みなマイクの使い方、伴奏との呼吸の合わせ方のうまさ等に間近に接すると、「なるほど、これは人気が出て当然だ」と思います。

その後、ステイシーと親交の深いベストセラー作家、カズオ・イシグロが作詞した「THE ICE HOTEL」、「POSTCARD LOVERS」を続けて披露。ここでもトムリンソンがまろやかなプレイを聴かせます。彼とステイシーは公私共にパートナーシップを築いていますが、ステージ上でも本当に仲むつまじいです。「おしどり夫婦」という、最近はあまり使われない言葉を思い出しました。

この後はしばらくボサ・ノヴァ・ナンバーが続きました。ステイシーは14歳の頃にスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共演盤『ゲッツ/ジルベルト』を聴いて以来、すっかりボサ・ノヴァに魅せられてしまったとのことです。アントニオ・カルロス・ジョビン作「DREAMER」(VIVO SONHANDO)ではギターの弾き語りも聴かせてくれました。マルコス・ヴァーリの「SO NICE」(SAMBA DE VERAO)も歌いましたが、先日ステイシーはマルコスと一緒にこの曲を歌って大感激したそうです(ステイシーは英語、マルコスはポルトガル語で)。

公演は本日まで行なわれます。人気と評価がうなぎのぼりのシンガー、ステイシーのライヴをぜひ、お楽しみください。
(原田 2012 3.12)


● 3.12mon.-3.13tue.
STACEY KENT
☆ 参考:セットリストはこちら


ステイシー・ケント - STACEY KENT


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