'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BOB MINTZER BIG BAND - - report :BOB MINT...
2012/06/21
公演初日リポート:
BOB MINTZER BIG BAND
with special guest KURT ELLING
バーデン・パウエル、パット・メセニー、ジョン・コルトレーンの曲が一同に会するライヴなど、いまだかつてあったでしょうか。あっと驚く名曲の数々を、最高にかっこいいアレンジとタイトなアンサンブルで聴かせてくれる凄腕集団、それがボブ・ミンツァー・ビッグ・バンドです。
イエロージャケッツのサックス奏者としても人気を集めるミンツァーですが、彼のもうひとつの活動の主軸には常にビッグ・バンドがあります。バディ・リッチやジャコ・パストリアスのビッグ・バンドにプレイや作編曲で貢献し、’83年頃に自身のビッグ・バンドを結成(確か最初はホーン・マン・バンドと名乗っていたはずです)。『カモフラージュ』、『インクレディブル・ジャーニー』あたりを、全フレーズを覚えこんでしまうぐらい聴き込んだというビッグ・バンド好きは世界中にいるはずです。『オマージュ・トゥ・カウント・ベイシー』では遂にグラミー賞を受賞し、“ミンツァー・ビッグ・バンドここにあり”を更に幅広いファン層へと印象づけました。
「ニューヨークとロサンゼルスから友人たちをたくさん連れてきたよ」と、MCでミンツァーは語りました。メンバーの大半は、ざっと見たところ彼と同世代でしょうか。あの激動の’70年代に、一緒に腕を磨いたであろう百選練磨のツワモノが揃っています。ドラムスはジャコ・ビッグ・バンドの同僚であり、スタン・ケントン、メイナード・ファーガソンのフルバンでも腕を振るった名手ピーター・アースキン。ピアノはイエロージャケッツの盟友、ラッセル・フェランテが担当します。サックス・セクションにはアルト・サックスのボブ・シェパードやテナー・サックスのボブ・マラックの顔も見えます。トランペットのボブ・ミリカンも含めて、“ボブ率”が高いのもミンツァー・バンドの特徴です。
プログラム中盤には、スペシャル・ゲストとしてヴォーカリストのカート・エリングが登場しました。アルバム『ライヴ・アット・MCG』でも共演していた両者ですが、いざ目前で味わうジョイントは格別です。カートは相変らずオシャレで、黒いシャツと紫色のポケットチーフがよく似合います。共演1曲目はパット・メセニーの「MINUANO」。これに歌詞をつけ、歌おうというのですから大胆不敵です。実に聴きやすく美しいメロディですが、いざ口ずさもうとなると半音のとり方が異様に難しいこのナンバーを、カートは易々と歌いこなします。しかも途中で音階を1オクターヴあげます。普通の男性ならキーが高すぎて声が出ず、ひっくり返ってしまうところでしょう。しかしカートはノリノリで、全身でリズムをとりながら歌いこなします。世界一流のプロの真骨頂を見せられたような気分です。彼はまた、ジョン・コルトレーン作「至上の愛」のパート2、「RESOLUTION」にも歌詞をつけて歌いました。
「ビッグ・バンドの公演ということは、ひょっとしてミンツァーのソロが少ないのかな?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、その心配は無用です。太い音でテナー・サックスをバリバリと、たっぷり聴かせてくれます。アンサンブル・ファン、アドリブ・ファンの両方を満足させてくれるのが、ボブ・ミンツァー・ビッグ・バンドなのです。
(原田 2012 6.20)
● 6.20wed.-6.23sat.
BOB MINTZER BIG BAND
with special guest KURT ELLING