BlueNote TOKYO
ARCHIVE 2012/07

2012/07/29

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , LARRY CARLTON - - report : LARRY C...

ラリー・カールトン - LARRY CARLTON
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公演初日リポート:LARRY CARLTON QUARTET
featuring GREG MATHIESON, ABRAHAM LABORIEL & KEITH CARLOCK



フュージョン〜コンテンポラリー・ジャズ・ファン垂涎のプログラムが、ただ今おこなわれています。不滅の人気を誇るギター・ヒーロー、ラリー・カールトンが、なんと’70年代後半〜’80年代前半のレパートリーを目の前で演奏してくれるプレミア級のライヴです。

クルセイダーズから独立したカールトンは、1978年に『夜の彷徨』をリリース。この中の「ROOM 335」が大ヒットを記録し、彼の名は大きく広まりました。その後も『ストライクス・トワイス』、『夢飛行』といった快作を連発。どれもがフュージョンの金字塔といっていいでしょう。

場内はもちろん、立錐の余地もないほどの満員。カールトンがステージに歩み寄るだけで、ものすごい声援と拍手が響き渡ります。いきなりガンガン盛り上げていくのかと思ったら、最初は無伴奏ソロから始まりました。客席はシーンと静まり返り、ギターの美しい音色がクラブを満たしてゆきます。そして次に彼自身がベースのエイブラハム・ラボリエル、キーボード奏者のグレッグ・マティソンといった“戦友”たち、そしてドラムスのキース・カーロックを紹介して、4人揃ってのセッションが始まります。

“おや、この聴き慣れたイントロは?”と思うやいなや、オーディエンスは大騒ぎ。そうです、「ROOM 335」の最新ヴァージョンです。「335がなければカールトンのライヴは成立しない」といわれるほどの定番ナンバーですが、マティソンやラボリエルと一緒にプレイするこの曲をナマで聴けるとは、まさか思いませんでした。

その後も、愛娘に捧げた「SONG FOR KATIE」(この日が誕生日だったそう)、「RIO SAMBA」、「SLEEPWALK」(もともとは’50年代にサント&ジョニーという二人組が流行らせたナンバーで、’80年代にカールトンがリバイバル・ヒットさせました)等の定番から、通好みのナンバーまで次々と登場します。あれから30年が経ち、カールトンもマティソンもラボリエルも、外見上はそれなりに年齢を重ねています。しかし曲やプレイの鮮度はまったく失われていません。最年少(1971年生まれ)のカーロックは、これまでスティング、ダイアナ・ロス、リチャード・ボナ等と共演し、スティーリー・ダンのツアー・メンバーも務めたことのある凄腕です。彼の的確で無駄のないドラム・プレイも、このステージの大きな聴きどころでした。

公演は31日まで続きます。また9月にはカールトンの盟友であるボブ・ジェームスが、やはり’70年代のレパートリーに的を絞ったスペシャル・ライヴを「ブルーノート東京」で行ないます。こちらもぜひチェックしてください!
(原田 2012 7.28)

<LARRY CARLTON QUARTET JAPAN TOUR スケジュール>

● 7.28sat.-7.31tue.【東京】Blue Note Tokyo


●8.2thu.【名古屋】Nagoya Blue Note


●8.3fri.【福井】Heartopia Harue


8.4sat.【富山】Mirage Hall


8.6mon.【大阪】Umeda Club Quattro

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2012/07/27

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NEW COOL COLLECTIVE - - report : NEW COO...

ニュー・クール・コレクティヴ - NEW COOL COLLECTIVE
ニュー・クール・コレクティヴ - NEW COOL COLLECTIVE


公演初日リポート:
NEW COOL COLLECTIVE


一段と暑くなってまいりました今日この頃ですが、「ブルーノート東京」では本日まで、クールな男たちのファンキーでダンサブルなパフォーマンスが繰り広げられています。結成18年を迎えるオランダの精鋭集団、ニュー・クール・コレクティヴのライヴです。

リーダーはアルト・サックス奏者のベンジャミン・ハーマン。度重なる来日ですっかりおなじみの彼はまた、大の親日家でもあり、日本のジャズが大好きだそうです。ファッション・モデルとしても活動しており、この日もスタイリッシュそのものの着こなしで楽しませてくれました。短く刈りそろえた髪、粋なスーツ姿でサックスを吹く姿は、どこか1950年代のリー・コニッツ(クール・ジャズの鬼才サックス奏者)に通じるものがあります。

ふたりのパーカッション奏者をフィーチャーした分厚いリズム、一度聴いただけで覚えてしまいそうなほど親しみやすいメロディ。ぼくはそれこそニュー・クール・コレクティヴの魅力だと思っているのですが、今回も新作『EIGHTEEN』からの曲を中心に、メロディアスでリズミカルな世界をたっぷり楽しませてくれました。ジャズをベースに、ラテン、ファンク、ブーガルー、スカ、それにインド音楽の要素まで感じさせる彼らの音楽は、とにかく多彩。1曲ごとに、音の世界旅行をしているような気分になれるといっても、決して大げさではないでしょう(複数のメンバーによる男くさいコーラスも雰囲気最高でした)。

ラストではなんと、ショパンの「葬送行進曲」をスカで披露。あの暗いメロディが徐々に活気を帯びて、最後には「007のテーマ」まで挿入されました。当然、客席は大盛り上がり。名古屋ブルーノート→北海道ジョイン・アライヴ→そしてブルーノート東京と続く今回の国内ツアーは、ニュー・クール・コレクティヴ史上に残る快挙となることでしょう。29日にはフジ・ロック・フェスティバルに出演。ファンキー・パーティは、まだまだ終わりません!
(原田 2012 7.3)


● 7.26thu.-7.27fri.
NEW COOL COLLECTIVE
☆ 参考:セットリストはこちら


7.29sun.【苗場】FUJI ROCK FESTIVAL '12


ニュー・クール・コレクティヴ - NEW COOL COLLECTIVE


2012/07/20

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DIONNE WARWICK - - report : DIONNE ...

ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK
ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK


公演初日リポート:
DIONNE WARWICK


世界の大エンターテイナー、ディオンヌ・ワーウィックのショウが昨日から始まっています。

なにしろ数々のミリオン・セラーを持つ大御所です。そのステージを至近距離で味わえること自体、世界的にも稀です。人間国宝と言っていいでしょう。それだけにぼくは、いささか緊張の面持ちでクラブに足を運びました。

しかしディオンヌは、素敵なトークと軽快な振る舞いで、一気に場の空気を和ませてくれます。「昔の歌も最近の歌も、ミリオン・セラーの曲もそうでない曲も歌います。知っている曲があったら一緒に口ずさんで、手拍子してくださいね。Hang Loose!」
気楽に楽しんでね、というわけです。「何を歌うかは、当日来てくださったお客様だけにお知らせしたい」という要望から、ここではタイトルを挙げませんが、とにかく名曲のオンパレードです。ぼくは「ああ、この曲もディオンヌの持ち歌だったのか」、「こんな曲もディオンヌのヴォーカルで聴けるのか」等、感慨深くライヴを楽しみました。

もちろん、彼女の名前を世界に広めたバート・バカラックのナンバーも数多く登場します。半世紀前のレコードとは歌い方が異なるところもありますが、音楽が生き物である以上、当然のことだと思います。ぼくは今のディオンヌにも深い魅力を覚えます。昔は「歌を歌っている」という雰囲気だったのが、今は「歌を完全に自分の一部にしている」という感じなのです。

伴奏ミュージシャンたちの演奏も、サポートのお手本というべき見事なものでした。「歌を引き立てる」ということを熟知している腕利きが集まると、こんなに気持ちいい音が出せるのです。もちろんディオンヌの歌声も冴え渡っていました。あの巧みなマイクの使い方は、多くの歌手志望者の参考にもなることでしょう。
公演はあさってまで続きます。こんなぜいたくで安らかなひとときが、東京にいながらにして楽しめる・・・これは本当にすごいことです。
(原田 2012 7.19)


● 7.19thu.-7.21sat.
DIONNE WARWICK


ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK


2012/07/17

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JAZZANOVA LIVE featuring PAUL RANDOLPH - - report : JAZZANO...

ジャザノヴァ - JAZZANOVA
ジャザノヴァ - JAZZANOVA


公演初日リポート:
<BROOKLYN PARLOR presents "GOOD MUSIC PARLOR" LIVE at BLUE NOTE TOKYO>
JAZZANOVA LIVE featuring PAUL RANDOLPH
DJ :DJ KAWASAKI (7.16mon.) / Shuya Okino(Kyoto Jazzz Massive) (7.17tue.)



店内に入ると、いきなり「WORLD IS A GHETTO」のかっこいいカヴァー・ヴァージョンが耳に飛び込んできました。目をステージ右側に向けると、DJ KAWASAKIがターンテーブルを回しています。客席はもちろん超満員。「今日のライヴは、すごいものになりそうだ。思いっきり楽しんでやろう」という気持ちが、いやがおうにも高まります。

ジャザノヴァは6人のDJ/プロデューサーで結成された音楽集団で、ことし発足15年を迎えます。この5月にリリースされた最新作『ファンクハウス・スタジオ・セッションズ』は、選りすぐりのミュージシャンとともにバンド形式でレコーディング。今回の公演は、そのライヴ・ヴァージョンといっていいでしょう。ジャザノヴァの頭脳であるステファン・ライゼリンク(パーカッション)、アクセル・ライネマー(ラップトップ)に加え、セバスチャン・シュトゥッドゥニツキー(キーボード)、カール・ミハエル・グラビンガー(ドラムス)といった若きグルーヴ・マスターが脇を固めます。

お待ちかねのポール・ランドルフは2曲目から登場。単に“ランドルフ”名義でも活動しているアメリカ・デトロイト出身のシンガー/ベーシストです。「華がある」といえばいいのでしょうか、彼がステージに上がると場内は花が咲いたように明るくなり、熱気も格段にアップします。彼のオーディエンスの乗せ方、あおり方は、多くの日本人シンガーの参考になるのではと思います。

ファースト・アルバムに入っていた「NO USE」もランドルフが歌うと、よりディープに、艶っぽくなります。ぼくの個人的なジャザノヴァ・フェイヴァリットである「LITTLE BIRD」を取りあげてくれたのも嬉しかったですね。CDではホセ・ジェイムズが歌っていましたが、ランドルフの解釈もそれに負けず劣らずの逸品でした。もちろん最新の定番といっていい「I HUMAN」、「LET IT GO」も聴かせてくれました。

新しいリスニング・ライフを提案するイベント「グッド・ミュージック・パーラー」は、この第二回目も大成功だったといっていいでしょう。第3弾は8月17日、エレクトリック・エンパイアの公演です。皆様、ぜひお越しください!
(原田 2012 7.16)


● 7.16mon.-7.17tue.
<BROOKLYN PARLOR presents "GOOD MUSIC PARLOR" LIVE at BLUE NOTE TOKYO>
JAZZANOVA LIVE featuring PAUL RANDOLPH
DJ :DJ KAWASAKI (7.16mon.) / Shuya Okino(Kyoto Jazzz Massive) (7.17tue.)
☆ 参考:セットリストはこちら


ジャザノヴァ - JAZZANOVA


2012/07/14

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PHIL WOODS QUINTET - - report : PHIL WO...

フィル・ウッズ - PHIL WOODS
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公演初日リポート:PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN



昨年3月、震災直後に来日し、感動的なパフォーマンスを繰り広げたフィル・ウッズ・クインテットが再び戻ってきました。

メンバーは御大ウッズ(アルト・サックス)に、ブライアン・リンチ(トランペット)、ビル・メイズ(ピアノ)、スティーヴ・ギルモア(ベース)、ビル・グッドウィン(ドラムス)という不動のラインナップ。ウッズいわく、「スティーヴやビルとは、もう38年間一緒に演奏している」とのこと。確かに1975 年の『The New Phil Woods Album』では既に、この二人の名前を見ることができます。

ウッズは今年で81歳を迎えます。しかしトーンは相変らず艶やかで、プレイにはリード・ミスひとつ見当たりません。アドリブ・ソロに入ると、他の曲のメロディを次々と引用しながら、ファンを沸かせます。オープニングの「BOHEMIA AFTER DARK」では、チャーリー・パーカーが愛奏した「WEE」や「PARKER’S MOOD」の一節が挿入されました。歌心たっぷりのフレーズと、ふとあらわれるユーモア。まさに“生涯現役”の名に恥じない存在がウッズなのです。

続く「I'M A FOOL TO WANT YOU」は、フランク・シナトラやビリー・ホリデイの絶唱で知られるナンバーです。インストゥルメンタルでは余り取りあげられていないような気がしますが、ウッズはこの曲をラテン・リズムで料理します。アレンジはブライアン・リンチが担当。秋吉敏子オーケストラ、ホレス・シルヴァー・クインテット、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ、エディ・パルミエリ・バンド等、数々の名門で腕を磨いてきた彼は今、トランペット奏者として、音楽家として絶頂を迎えているようです。中盤、ワン・ホーンで演奏されたサド・ジョーンズ作「ELUSIVE」でも、絶好調のプレイを味わうことができました。

ウッズといえばチャーリー・パーカーの熱烈な信奉者として知られていますが、同時にジョニー・ホッジス、ベニー・カーターを深く敬愛しています。特にカーターからは息子のように可愛がられ、日本でも共演コンサートを開いたことがあります。「A WALKIN' THING」は、そのカーターの隠れ名曲です。ぼくはこれをコンテンポラリー盤『Jazz Giant』というアルバムで知り、どうしてこんないい曲が殆どカヴァーされないのだろうと不思議に思っていました。が、この日に聴いたウッズの解釈は、その気持ちを吹っ飛ばすものでした。乗りに乗ったウッズは、「NATURE BOY」、「SURREY WITH THE FRINGE ON TOP」、「VOLGA BOATMEN」、「THE CONTINENTAL」等のメロディを挿入しながらアドリブを続けます。

なにしろウッズは60年に及びキャリアを持っています。その間、フリー・ジャズ風の演奏をしたこともありますし、フュージョン的なアプローチに取り組んだこともあります。でも今の彼はビ・バップに没頭し、ひたすらスイングすることに情熱を注いでいます。それがたまらなく爽快なのです。
(原田 2012 7.13)


● 7.13fri.-7.15sun.
PHIL WOODS QUINTET
featuring BRIAN LYNCH, BILL MAYS, STEVE GILMORE & BILL GOODWIN
☆ 参考:セットリストはこちら


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2012/07/11

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ANGELA JOHNSON - - report : ANGELA ...

アンジェラ・ジョンソン - ANGELA JOHNSON
アンジェラ・ジョンソン - ANGELA JOHNSON


公演初日リポート:
BROOKLYN PARLOR presents
"GOOD MUSIC PARLOR" LIVE at BLUE NOTE TOKYO
ANGELA JOHNSON with special guest CHRISTIAN URICH from TORTURED SOUL


新宿・ブルックリンパーラーで毎週火曜日に行なわれているDJイベント「グッド・ミュージック・パーラー」。「それぞれが、思い思いにくつろぎの時間を過ごせる場」として、人気を呼んでいます。その「グッド・ミュージック・パーラー」が、ついにブルーノート東京に進出しました。DJたちによる選りすぐりのナンバー、ブルックリン・ビールの飲み放題プランに加え、今の音楽シーンに欠かせない若手中堅アーティストのソウルフルでダンサブルなライヴがフィーチャーされます。その第1回アーティストとして選ばれたのが、アンジェラ・ジョンソンです。

アンジェラについての説明は、もう不要かもしれません。1990年代にヒップホップ/R&B ユニット“クーリーズ・ホットボックス”の一員として注目を浴び、現在はソロで多彩な活動を続ける女性シンガーです。この日のアンジェラは、真赤な上着を着て登場。リズムをとるたびに、大きなイヤリングがスポットライトに反射し、輝きを放ちます。歌声は「マイク、いらないんじゃないの?」と思えるほど豊かで迫力があります。とにかく彼女は、オーディエンスの目を離させようとはしません。曲と曲との間には盛んに話しかけ、間奏のときも「調子はどう?」、「楽しんでる?」等のフレーズで観客を煽ります。曲によってはキーボードの弾き語りも披露しましたが、これもまた実に聴きごたえのあるものでした。

中盤には、お待ちかねのスペシャル・ゲスト、元クーリーズ・ホットボックスの一員にして、トーチャード・ソウルの顔であるクリスチャン・ユーリックがステージに上がります。「これはもう、クーリーズの再結成よ!」とアンジェラは嬉しそうな声をあげます。アンジェラとクリスチャンは、グループの名を不動のものにした「MAKE ME HAPPY」等、なつかしいレパートリーを連続で(曲の間をおかずに)聴かせてくれました。クリスチャンのタイトなドラムス、アンジェラの厚みのあるシャウト。どのお客さんも大満足したのではないでしょうか。

その後、再びアンジェラのソロ・コーナーがあり、アンコールではクリスチャンが再登場、マイケル・ジャクソンの「WANNA BE STARTING SOMETHING」をとりあげて、場内をさらに盛り上げました。公演は明日金曜日まで続きます。

今後「グッド・ミュージック・パーラー」では、7月16日と17日にジャザノヴァ、8月17日にはエレクトリック・エンパイアの公演がフィーチャーされる予定。秋以降のラインナップも構想中とのことです。音楽ファンなら喜ぶこと間違いなしの当イベントを、お見逃しなく!
(原田 2012 7.10)


● 7.10tue.-7.12thu.
BROOKLYN PARLOR presents
"GOOD MUSIC PARLOR" LIVE at BLUE NOTE TOKYO
ANGELA JOHNSON with special guest CHRISTIAN URICH from TORTURED SOUL

☆ 参考:セットリストはこちら


アンジェラ・ジョンソン - ANGELA JOHNSON


2012/07/08

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , THE SYNDICATE - - report : THE SYN...

ザ・シンジケート - THE SYNDICATE -80th birthday celebration of Joe Zawinul-
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公演初日リポート:THE SYNDICATE
-80th birthday celebration of Joe Zawinul-



7月7日といえば、もちろん「七夕」です。が、同時に、不世出のキーボード奏者、故ジョー・ザヴィヌルの80回目の誕生日でもあります。

ザヴィヌルはオーストリアのウィーンに生まれ、50年代後半にアメリカ・ニューヨークへやってきました。そしてダイナ・ワシントンやキャノンボール・アダレイのバンドで演奏し、マイルス・デイヴィスの傑作『イン・ア・サイレント・ウェイ』、『ビッチェズ・ブリュー』等にも協力しています。1971年にはサックス奏者ウェイン・ショーターらと“ウェザー・リポート”を結成、ジャコ・パストリアスやピーター・アースキンの才能も広く世に知らしめました。また’80年代後半からは新グループ“ザヴィヌル・シンジケート”を率いて世界をツアー。あのリチャード・ボナも、このバンドで注目を集めたひとりです。

本日までブルーノート東京に登場している“ザ・シンジケート”は、ザヴィヌル・シンジケートで大活躍した鬼才ドラマー、パコ・セリーを中心とするグループです。キーボードを担当したのはディー・ディー・ブリッジウォーターの伴奏や、リュック・ベッソン監督映画への音楽提供もこなすティエリー・エリス。ぼくは彼に“アコースティック・ピアノの名手”というイメージを持っていたのですが、この日はシンセサイザーをバリバリ弾きこなしました。彼がいかにザヴィヌルを愛し、強い影響を受けてきたかが伝わるようなプレイでした。

エミール・パリジャンは、ソプラノ・サックスに専念しました。しかし彼の吹奏はウェイン・ショーターとはまったく異なるものでした。マウスピースを口の横でくわえたり、あごを引いて先の部分だけくわえながら、音色に変化を加えていくのですが、それがなんというか、“いわゆるジャズのサックス”とは違う響きを生み出しているのです。うねりまくる彼のサックスも、ぼくにはこのバンドの大きな魅力でした。

そしてパコ・セリーのドラムスはあいかわらず“驚嘆”のひとことでした。彼が右利きか左利きか、ぼくはあいにく存じ上げておりませんが、左手の巧みなコントロールにはいつも舌を巻きます。「MADAGASCAR」の冒頭ではドラム・ソロを聴かせてくれました。左手親指と薬指でスティックをはさみ、人差し指と中指を軽く添えながらプレイするのですが、ちょっと見た感じ、スティックの動きが止まっているようなのです。しかしその間、ものすごく細かい、粒の揃った音符がスネア・ドラムから叩きだされます。つまり、あまりにも動きが速すぎて、肉眼ではその動きが目に入らないのです。彼のドラムスとジョルジュ・ベゼーラ(クレモンティーヌのバンドでも来日している、陽気なおじさんです)のパーカッションが生み出すポリリズムは、本当に痛快で気持ちいいものでした。

生前のザヴィヌルは大変、音楽に厳しい方だったとききます。しかし、“ザ・シンジケート”の熱演には両手の親指を立てて喜んでいることでしょう。
(原田 2012 7.7)


● 7.7sat.-7.8sun.
THE SYNDICATE
-80th birthday celebration of Joe Zawinul-
☆ 参考:セットリストはこちら


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