'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOE SAMPLE - - report : JOE SAM...
2012/09/12
公演初日リポート:
JOE SAMPLE & THE CREOLE JOE BAND
ジョー・サンプル率いる、最高にハッピーなパーティ・バンド“クレオール・ジョー・バンド”が、ブルーノート東京に戻ってきてくれました。前回は「日本のファンに一刻も早く、このグループの音を聴いてほしい」ということで、アルバム発表にかなり先駆けたステージでしたが、今回の公演はアルバム発表直後と言うこともあって、さらに盛り上りました。サウンドはいっそう強靭にまとまり、メンバーの息もぴったり。前回を見逃した方も、このたび初めてご覧になる方も、みんな笑顔になれること間違いなしだと思います。
ジョーはテキサス生まれですが、両親や親戚はルイジアナ州出身なのだそうです。そのため幼い頃からニューオリンズ・ミュージックに親しみ、ホーム・パーティではジャンバラヤやガンボが食卓に並んだとのことです。ルイジアナ特産の音楽“ザディコ”も、彼のルーツのひとつです。クレオール・ジョー・バンドの音楽性は、ジョーが培ってきたジャズ〜フュージョン〜ソウル・ミュージックのセンスで、ザディコを料理したものともいえましょう。
演奏は、バンドのテーマ曲というべき「CREOLE JOE」から始まります。ジョーは椅子に座って黙々とアコーディオンを弾き、レイ・パーカー・ジュニアはステージを動き回ってエンターテイナーぶりを発揮します。ぼくは、新作アルバムに入っている「ZYDECO ZOO」という曲が大好きなのですが、これもしっかりプレイしてくれました。アルバムでは男性ヴォーカルがフィーチャーされていましたが、この日はエリカ・フォールズがリード・ヴォーカルを担当。彼女の伸びやかで、コシのある歌声で聴く「ZYDECO ZOO」も格別です。
エリカはまた、ゴスペル・バラード風の「SUGAR ON THE FLOOR」でもスポットライトを浴びました。彼女はジョーのほかにも、ドクター・ジョン、アーマ・トーマス、ワーデル・ケセルグといった地元の巨匠、およびスティング等とも共演しています。「ニューオリンズを代表する若手女性シンガー」という評価が定着して久しい彼女ですが、「世界のエリカ」になるのは時間の問題でしょう。リード・ヴォーカルよし、ハモリよし、しかも声のダイナミクス(抑揚)がハンパなく豊かなのです。
また「ZYDECO BUGALOO」では、ダグ・ベローテのドラム・ソロも楽しむことができました。彼もネヴィル・ブラザーズ、ヘンリー・バトラー、アラン・トゥーサンといったニューオリンズのカリスマたちと共演を重ねてきました。ぼくは「彼はジョニー・ヴィダコヴィッチのお弟子さんなのかな?」と思って聴いていたのですが、リッキー・セバスチャン(やはりニューオリンズ出身)が師匠とのことです。ソロのときは徹底的に華やかにプレイし、サポートのときはあくまでもソリストを盛りたてる彼のドラミングも、このバンドの魅力のひとつです。
「ジョー・サンプル=フュージョン、ジャズの大御所アーティスト」というのは、確かに事実です。しかしクレオール・ジョー・バンドは、ブラック・ミュージック・ファンはもちろん、「気持ちいい音楽」、「かっこいい音楽」を求めるファンすべてに訴えることでしょう。このバンドでのジョーは、ひとりの音楽好きの少年に戻っています。
(原田 2012 9.11)
● 9.11tue.-9.12wed.
JOE SAMPLE & THE CREOLE JOE BAND
☆ 参考:セットリストはこちら