'11 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROBERTA FLACK - - report : ROBERTA...
2010/09/03
公演初日リポート:ROBERTA FLACK
「相変わらずすごい人気だなあ、立錐の余地もない満員とはこういうことをいうんだろうなあ」、「客層が本当に幅広いなあ。祖父祖母から孫の代まで一緒に聴いて楽しめる音楽って、ありそうで実はそんなにないんだよなあ」。
ロバータ・フラックのライヴに足を運ぶたびに、ぼくはこう感じます。本当に彼女はあらゆる層に愛されています。他の登場アーティスト以上に、年齢はおろか国籍も問わないほど客席が多彩です。当日「ブルーノート東京」につめかけたオーディエンスには、デビュー当時からのファンであろう年季の入った方々もいらっしゃいましたし、クラブ・ミュージックやフリー・ソウルの流れでロバータに入門したであろう若いリスナーも数多く見受けられました。軸のブレない、筋の通った彼女の音楽が、いろんな世代を結び付けているのです。
ロバータはパフォーマンス中の写真撮影を好みませんし、ブルーノート東京で使用の許可されたアーティスト写真はン十年前のものです。つまり今現在のロバータの姿はライヴでしか見ることができないのですが、この日の彼女もシックでお洒落でした。ステージには左からバック・シンガーたち、ドラムス、ベース、キーボード、サックス、ギターの各プレイヤーが(だいたい)ヘの字型に位置し、ロバータはバック・シンガーとサックス奏者の間でグランド・ピアノを弾き語ります。ピアノの先頭は客席から向かってステージ左側に向けられています。つまり客席中央からはロバータの左側の横顔と左腕が見えるわけです。
歌声はもう、「往年のレコードと同じか、それ以上に伸びやか」といわせていただきましょう。デビュー40年を超えたアーティストがどうして今もこんなにピュアで張りのある声を保っているのか、いったいどうなっているんだと思うほどです。もちろんレパートリーは“黄金の選曲”というしかないもの。「やさしく歌って」(KILLING ME SOFTLY WITH HIS SONG)、「愛のセレブレーション」(TONIGHT, I CELEBRATE MY LOVE)、「愛のためいき」(FEEL LIKE MAKIN' LOVE)、「愛は面影の中に」(THE FIRST TIME EVER I SAW YOUR FACE)などが次々と、惜しげもなく出てきては客席の喝采をさらいます。
いつも質の高いショウを届けてくれるロバータですが、ぼくが見た昨日のステージでは、以前にも増して笑顔で、(彼女にしては)激しいアクションを交えていたのが印象に残りました。アルト・サックス、ソプラノ・サックス、EWI(管楽器型のシンセサイザー)、フルートを持ち替えながらプレイするアルトゥーロ・タッピンのプレイに立ち上がって手拍子をおくり、ディーン・ブラウン(デヴィッド・サンボーンやブレッカー・ブラザーズ等の共演でおなじみ)のワイルドな超絶ギターに目を細めるロバータ。その優しげな表情を見ることができるのも、ライヴならではの特典といえましょう。
他にも、スイング・ジャズ系スタンダードをファンキーにアレンジした「SWEET GEORGIA BROWN」、キーボード奏者のシェルトン・ベクトンとツイン・ヴォーカルで熱唱した「BABY I LOVE YOU」等、盛りだくさんの内容。まさしくこれは、生で体験する“ベスト・オブ・ロバータ・フラック”です。
(原田 2010/9/2)
● 9.2thu.-9.3fri.
ROBERTA FLACK