公演初日リポート:ANNA MARIA JOPEK
クリスマスといえば「賑やか」、「パーティ」、「お祭り騒ぎ」といった言葉が浮かんできそうですが、欧米ではむしろ静かに過ごすのが一般的なようです。
今年はポーランドの歌姫、アナ・マリア・ヨペックがブルーノート東京のクリスマスを彩ります。才色兼備のシンガー・ソングライターであり、アコースティック・サウンドを愛してやまない彼女のステージは、しみじみと“聖夜”を味わうのにピッタリといえましょう。
親日家であるアナ・マリアは今回、日本語のMCも聞かせてくれました。それによると、プログラムはすべて「愛の歌」で構成されているのだそうです。正直に申し上げると、ぼくはポーランド語がわかりません。しかしアナ・マリアのバラエティに富んだ歌声(ささやくかのようなバラードから、豊かな声量をフルに使った歌いあげまで)は、言葉の壁を越えていました。「どうしてこんなにきれいなロング・トーンが出るのだろう」、「どうしてこんなに広い声域を出せるのだろう」と思いながら、ぼくは1曲1曲を味わいました。その歌声は、オーディエンスを優しく包むかのように、クラブ全体に響き渡ります。
プログラム後半では、有名なクリスマス・ソング「HAVE YOURSELF A MERRY LITTLE CHRISTMAS」も聴かせてくれました。最近ではクリスティーナ・アギレラも歌っていましたが、アナ・マリアはこれをポーランド語でしっとりと歌いあげます。聴きなれたメロディをポーランド語の歌詞で楽しむのは、実に新鮮な体験です。
バンド・メンバーの中では、クシシュトフ・ヘルヂンの大活躍が特に印象に残りました。ピアノでは往年のハービー・ハンコックを思わせる清新な即興演奏を聴かせ、縦笛ではひたすらリリカルに、かと思えばパーカッションでは躍動的なリズムを送り出すなど、ぼくにとって当日の“隠れMVP”は彼でした。
アンコールはアナ・マリアとギタリストのマレク・ナピュルコフスキのデュオ・・・と思っていたところ、1番が終わった後、2番からは他のメンバーもバック・コーラスでそこに加わります。そのときの全員の楽しそうな表情といったら! メンバーが皆、とても仲が良いからこそ、あれほどまとまったサウンドが生まれてくるのでしょう。
公演は明日まで行なわれます。心暖まるステージを、ぜひご体験ください。
(原田 2011 12.24)
● 12.24sat.-12.26mon.
ANNA MARIA JOPEK
原田和典の公演初日レポート:ANNA MARIA JOPEK
ポーランドの歌姫、アナ・マリア・ヨペックの公演が昨日から始まりました。
実をいうとぼくがポーランド語の歌をライヴで聴くのは今回が初めてです。ポーランドのミュージシャンのパフォーマンスに接するのも、ひょっとしたらジャズ・トランペッターのトマシュ・スタンコ(たしかポーランド大使館で演奏しました)以来かと思います。
アナ・マリアの作品では、最新作『ID』と、パット・メセニーと共作した『Upojenie』、英語詞で歌った『Secret』は聴いておりました。ライヴ映像も、いくつか見ております。この公演にそなえて、ささやかに予習してきたつもりだったのですが・・・・・。
だからライヴは面白い! CDからはうかがいきれなかった面が次々と見えてくるのです。“ポーランドのクール・ビューティ”という個人的な先入観が、歌うことの楽しさを全身から発散するようなアクション、そして彼女の多彩な表情によって溶け出していきます。2本のマイク(1本にはエフェクターがかかっています)を使いながら、ウィスパー・ヴォイスから野太いシャウト(ぼくは椎名林檎を思い出しました)までを自由自在に行き来するアナ・マリアは、まさしく声のアスリートでした。
ぼくはあいにくポーランド語を知らないので、何を歌っているかは正直わかりません。ですが、声の響き、抑揚が実に気持ちよく迫ってきます。曲の途中、日本語で“言葉の壁を越えて、私の世界を楽しんでください”というようなことを歌っていましたが(そうです、即興でメロディをつけて歌っていたのです)、つめかけたオーディエンスにランゲージ・バリアを感じたひとは誰もいなかったはずです。パット・メセニー・ナンバー「Follow Me」を待つまでもなく、ぼくもすっかりアナ・マリアの世界に引き込まれてゆきました。
異例のダブル・アンコールも飛び出した、とびきりフレンドリーな90分。ぼくはこのライヴでさらにアナ・マリアのファンになりました。ファースト・セットとセカンド・セットでは曲目をほぼ100%変えているそうです。公演中、何度もクラブに足を運ぶ方も多いのではないでしょうか。
(原田 2009/5/14)
● ANNA MARIA JOPEK
アナ・マリア・ヨペック
2009 5/14 thu. - 5/17 sun.
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