BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RON CARTER - - report : RON CAR...

2012/12/11

ロン・カーター - RON CARTER
ロン・カーター - RON CARTER


公演初日リポート:
RON CARTER BIG BAND



ロン・カーターは、半世紀以上にわたってジャズ界に君臨しているベーシストです。華麗なプレイによってベース=地味、というイメージを崩したひとりである、といっても過言ではないでしょう。リーダー・アルバムも、ベース奏者としては異例なほど多く出ています。いわゆるジャズ・コンボによる作品のほかにも、無伴奏ソロからバッハ集、弦楽四重奏との共演などなど、その幅広さは他の追随を許しません。

しかしロンにはまだ、チャレンジしていないことがありました。それはビッグ・バンドによるリーダー作を作ることです。2010年、彼はニューヨークの気鋭ミュージシャンを集め、最も信頼するアレンジャーのひとりであるボブ・フリードマンに編曲を依頼して『ロン・カーター・グレイト・ビッグ・バンド』を完成させました。かつてギル・エヴァンス『クールからの脱出』、マイケル・マントラー『ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ』、ベニー・カーター『セントラル・シティ・スケッチズ』等のオーケストラ作品に参加してきたロンですが、自身でビッグ・バンドを率いる喜びは格別のようです。

今回の来日公演でも、プレイにMCに、彼の張り切りようが大いにうかがえました。クールでスタイリッシュなイメージのある彼が笑顔でジョークを飛ばし、ステージを去るときには大きく手を振って観客の声援に応えるのです。

オープニングはファンにはおなじみ、「LOOSE CHANGE」。タイトルは“小銭”という意味ですね。自身のコンボでは何度も演奏しているナンバーですが、聴き慣れたメロディがビッグ・バンドで表現されると、一段と新鮮味が生まれます。ソプラノ・サックスがリードするサックス・セクションの響きが、ちょっと往年のサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラみたいだな、と思ったら、ソプラノを吹いているのはサド=メルの重鎮メンバーだったジェリー・ダジオンではないですか。テナー・サックスのスコット・ロビンソンもサド=メル人脈だし、やはりテナーのウェイン・エスコフェリーはミンガス・ビッグ・バンドでも演奏経験があります。

トランペットのグレッグ・ギズバートも現在のジャズ・ビッグ・バンド界に欠かせない存在、しかもトロンボーン・セクションにはヴァンガード・ジャズ・オーケストラの中心人物であるダグラス・パーヴァイアンスの姿も見られるのですから、これはもう、フルバン好きなら一瞬のまばたきも惜しくなるほどのラインナップといえましょう。

現在のロンはビッグ・バンドのほか、ピアノ+ギター+ベースというトリオ編成にも意欲を注いでいます。今回のライヴではトリオによる「MY FUNNY VALENTINE」もフィーチャーされました。ギター はラッセル・マローン、ピアノは新星ドナルド・ヴェガです。ニカラグアに生まれ、14歳でアメリカに移住。ケニー・バロンにジャズ・ピアノを師事し、2008年にソロ・デビューを果たしました。自身のアルバムではラテン・ジャズ寄りのプレイを聴かせてくれましたが、ロンとの共演ではクラシックのバックグラウンドを感じさせるフレーズ作りが印象に残ります。

ロン・カーター・ビッグ・バンドのブルーノート東京公演は13日まで続き、14日と15日は「コットンクラブ」でトリオによるライヴが行なわれます。巨匠ベーシストの円熟の極致を、ぜひどうぞ。
(原田 2012 12.10)


● 12.10mon.-12.13thu.
RON CARTER BIG BAND
☆ 参考:セットリストはこちら


インコグニート - INCOGNITO


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , LEON WARE - - report : LEON WA...

2012/12/09

リオン・ウェア - LEON WARE
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公演初日リポート:LEON WARE & Friends
"Celebrating Mr. Ware's 50th anniversary year in music biz!"
featuring CHANTÉ MOORE & AMP FIDDLER




祝、音楽生活50周年!
マーヴィン・ゲイとコラボレーションをおこない、マイケル・ジャクソンやマックスウェルに曲を提供し、ソロ活動でも数多くの名作を世に放つ“ザ・レジェンド”、リオン・ウェアが「ブルーノート東京」をソウルフルに染め上げています。しかも今回は、彼を敬愛してやまない鬼才キーボード奏者=アンプ・フィドラーと、歌姫シャンテ・ムーアも同行するという、豪華このうえないプログラムです。

まずはフィドラーのプレイとヴォーカルがフィーチャーされます。バッチリ決まった髪形とサングラス、スーツの着こなしがおしゃれです。先日もジョージ・デュークがショルダー・シンセサイザーを弾いていましたが、フィドラーのそれはより小型です。キーボードと歌をユニゾンさせ、「2004年以来の登場なんだ。みんなにまた会えて嬉しいよ」と観客に語りかけながら、クラブ内の熱気を高めていきます。

つづいてはシャンテ・ムーアが登場。数年前にはピーボ・ブライソンとの共演ステージでも楽しませてくれた彼女ですが、今回も伸びやかな歌声、小鳥がさえずるような超高音でファンを魅了します。その超高音のバックで、野太い低音のバスドラを入れるのは名手リッキー・ローソン。イエロージャケッツの初期メンバーで、マイケル・ジャクソン、フィル・コリンズ等の歌伴もこなしたドラマーです。ドラムがいいと、歌も演奏も一層引き締まる。リッキーの存在は、それを改めて証明してくれます。

「あとはもう、主役を待つのみ」となったタイミングを見計らうかのように、巨星リオン・ウェアが登場しました。音楽生活50周年ということは、相当、高齢なはずです。しかしその歌声や動きの艶っぽいこと。ソウルフルとエロチックを共存させながら、「I WANNA BE WHERE YOU ARE」、「IF I EVER LOSE THS HEAVEN」、「AFTER THE DANCE」、「MUSICAL MASSAGE」、「I WANT YOU」等を立て続けに聴かせてくれました。作者本人が目の前で、次々と名曲を自作自演してくれるのです。その場にたちあえるぼくらファンは、なんてラッキーなのでしょう。フィドラーのキーボード、リオンの歌にハーモニーをつけたニッキー・グリアーも大きな存在感を放っていました。

心の底から暖まるメロウな夜をありがとう。ぼくは、そんな気持ちでいっぱいです。公演は本日まで。ぜひどうぞ!
(原田 2012 12.8)


● 12.8sat.-12.9sun.
LEON WARE & Friends
"Celebrating Mr. Ware's 50th anniversary year in music biz!"
featuring CHANTÉ MOORE & AMP FIDDLER
☆ 参考:セットリストはこちら


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CLARKE/DUKE 4 - - report : CLARKE/...

2012/12/05

クラーク/デューク 4 - CLARKE/DUKE 4
クラーク/デューク 4 - CLARKE/DUKE 4


公演初日リポート:
CLARKE/DUKE 4 "BRING IT!" TOUR


キーボードの魔術師とベースの魔術師が、久しぶりにここ東京で再会を果たしました。ジョージ・デュークとスタンリー・クラークの黄金コンビが意気込みも新たに結成した“クラーク/デューク4”、そのお披露目公演が「ブルーノート東京」で昨日から開催されています。

メンバーは両巨頭のほかに、もうひとりのキーボード奏者であるボビー・スパークスとドラムスのヘンリー・マクダニエル。ボビーは4歳からオルガンを始め、9歳の頃にはジャズ、R&B、ゴスペルを演奏していたそうです。’90年代初頭に人気R&Bシンガー、カーク・フランクリンの音楽監督に就き、ジョージ・ベンソン、マーカス・ミラー、ロイ・ハーグローヴらとも共演。今後がさらに楽しみな鬼才です。いっぽうのヘンリーは、まだ21歳の若さ。3歳のころからドラムスを叩き始め、19歳のときにシカゴで行なわれたドラム・コンテストで優勝。ボビー同様、ジャズ、R&B、ゴスペル、なんでもこいの凄腕です。このふたりを起用したジョージ・デュークとスタンリー・クラークは、本当に冴えています。

オープニングの「WILD DOG」からスタンリーのエレクトリック・ベースが火を噴き、ジョージのキーボードが炸裂します。コード(和音)を交えたスタンリーのプレイは、メロディアスにしてワイルド。リード・ギターのように観客を煽ります。その後ろでボビーは、シンセサイザーを用いてゴキゲンなベース・ラインを作り出します。続く「SILLY PUTTY」では早くもジョージの得意 技、ショルダー・キーボードによるプレイを満喫させてくれました。スタンリーと顔を見合わせながら、ベンドを利かせたロング・トーンを連発するジョージ。ぼくは彼の演奏をいろんなバンドで聴いてきましたが、スタンリーと組んでいるときの表情は、とりわけ生き生きしているように感じられます。

中盤では、ふたりが最初に組んだ伝説的ユニット“クラーク/デューク・プロジェクト”の大ヒット曲である「SWEET BABY」を披露。「待ってました!」といわんばかりの歓声がクラブ中 に広がります。ジョージの深みのある歌声に、スタンリーのアコースティック・ベースが絡みます。続いてはなんと、アコースティック・デュオによる「AUTUMN LEAVES」。ふたりのバックグラウンドにある ジャズの要素が、強く前に出たパフォーマンスでした。

「さあ、次はまったく違うタイプの曲をやるよ!」という前振りで始まったのは、スタンリーの大定番「SCHOOL DAYS」。あの大きな手、長い指が、エレクトリック・ベースの上を存分に駆け巡ります。そしてアンコールにはジョージ一世一代のファンク・ナンバー「REACH FOR IT」が飛び出し、会場の熱気はさらにさらに高まりました。

公演は7日まで続きます。「寒さを吹き飛ばすような熱い音楽で、思いっきりノッてみたい」という方は、何をさしおいてもぜひどうぞ!
(原田 2012 12.4)


● 12.4tue.-12.7fri.
CLARKE/DUKE 4 "BRING IT!" TOUR
☆ 参考:セットリストはこちら


CLARKE/DUKE 4 - クラーク/デューク 4


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DAVID SANBORN - - report : DAVID S...

2012/11/26

デヴィッド・サンボーン - DAVID SANBORN
デヴィッド・サンボーン - DAVID SANBORN


公演初日リポート:
DAVID SANBORN "Anthology" @Motion Blue YOKOHAMA



アルト・サックスのカリスマ、デヴィッド・サンボーンの「ブルーノート東京」公演が近づいてきました。ぼくは待ちきれず、24日の「モーション・ブルー・ヨコハマ」公演に潜入してきました。サンボーンが、ここに登場するのは今回が初めてとのことです。

近年はブルース〜R&B色の濃いステージを繰り広げていたサンボーンですが、今回のツアーは最新リリース『アンソロジー』発売記念。この2枚組CDは、ソロ・デビューした1975年以来、現在までに吹き込まれた数多くの名演の中からサンボーン本人が選曲したナンバーを集めた“究極のベスト・アルバム”です。そこに収められている新旧の楽曲がライヴで味わえるという、すべてのファンにとって待ちに待ったプログラムが、今おこなわれている一連の公演なのです。

バック・メンバーはリッキー・ピーターソン(キーボード)、ニック・モロック(ギター)、リチャード・パターソン(ベース)、ジーン・レイク(ドラムス)という、“サンボーン・ファミリー”的な面々。’90年代からサンボーンのライヴに通いつめていたぼくのようなファンには、旧友と再会したように嬉しくなる顔ぶれです。故ドン・アライアスが担当していたパーカッションの座は空席のままです。これは「彼に替わる打楽器奏者はいない」というサンボーンの意志なのでしょう。

曲目はおそらく日替わりになると思いますが、この日は「CHICAGO SONG」、「RUN FOR COVER」、「STRAIGHT TO THE HEART」などをたっぷり聴かせてくれました。サンボーンが、いわゆるフュージョン・サックスの頂点に登りつめた頃のナンバーです。「10年ぶりに演奏する曲もあるんだよ」とMCで語っていましたが、サンボーンのフレーズ作りは当然“現在”のものですし、リズム・パターンをはじめとするアレンジにも変化が加えられており、単なるヒット・ソングの再演になっていなかったのは、さすがです。

ラストは、「この曲については、もう説明する必要はないよね」という前置きのあと、「THE DREAM」です。サンボーンの十八番中の十八番ですが、今回はサックスの後ろ に、リッキー・ピーターソンのバック・コーラスがつきます。果てしなく伸びていきそうなサンボーンの音色、リッキーの歌声、リズム・セクションの入魂のプレイ。そのすべてが一体となって、横浜の夜に響き渡りました。

サンボーン・バンドは最上のコンディションを維持しつつ、11月30日から「ブルーノート東京」に登場します。
(原田 2012 11.24)


● 11.30fri.-12.3mon. @BLUE NOTE TOKYO
DAVID SANBORN "Anthology"


デヴィッド・サンボーン - DAVID SANBORN


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NATALIE COLE - - report : NATALIE...

2012/11/23

ナタリー・コール - NATALIE COLE
ナタリー・コール - NATALIE COLE


公演初日リポート:
NATALIE COLE



現代を代表する大エンターテイナー、ナタリー・コールが今年も元気な姿を見せています。伸びやかな声、上品なステージ・マナー、語りかけるようなMC、粋なドレスの着こなし。実にエレガントです。

ナタリーのライヴには、彼女自身の歌声に加え、大きな聴き所があります。バンド・メンバーによるインストゥルメンタル・ナンバーです。この日はジョシュ・ネルソン(ピアノ)、アンソニー・ピュリッツィ(ギター)、エドウィン・リヴィングストン(ベース)、ロバート・ミラー(ドラムス)がアドリブをたっぷり交えながらスリリングなアップ・テンポ曲を届けました。アンソニーの速弾きは、“目にもとまらぬ”といった感じです。

場内が暖まってくると同時に、スター・タイムが始まります。キラキラ光る特製のマイクを持ったナタリーは満面の笑顔で「コンニチワ」といい、続いて「THE BEST IS YET TO COME」を歌います。フランク ・シナトラがとりあげたことでも知られるナンバーですが、これを“ナタリー節”で聴くのもオツなもの。サンバ風の「SUMMER SUN」、敬愛するエラ・フィッツジェラルドの持ち歌である「A TISKET A TASKET」等を、快調に歌いこなします。「日本の皆さんにまたお目にかかれて嬉しい。私はブルーノートで歌うのが大好き。お客さんが心から音楽を愛していることが伝わってくるから」というナタリーのMCが示すとおりの、誠実で熱のこもったパフォーマンスです。

中盤ではマイケル・フランクス作「TELL ME ALL ABOUT IT」、セルジオ・メンデス&ブラジル’66で有名な「LIKE A LOVER」を、しっとりと歌い上げました。そしてラスト・パートは、父親ナット・キング・コールゆかりのナンバーを集めたコーナーです。アラン・ブロードベント(ブルーノート東京には、チャーリー・ヘイデン・カルテット・ウエストの一員として出演したことがあります)の編曲を使った「YOU GO TO MY HEAD」を歌い終えた後、ステージ背後にスクリーンが登場します。客席は「ついにこの曲が来た!」と、沸きに沸きます。そうです、「UNFORGETTABLE」です。スクリーンに映し出された父ナット・キング・コールと、目の前にいるナタリーがデュエットします。熱心なファンにはすっかりおなじみの演出ですが、見るごとに新たな感銘を与えてくれるところは、さすが“本物のエンタテインメント”です。ナタリーもいつの間にか父の享年を超えてしまいました。しかし今も彼は彼女にとって永遠の目標であり、最高の男性のひとりなのでしょう。

実はセットリストの秘話を耳にしました。その日にナタリーが何を歌いたいと要望しても対応できるよう、バンドは相当な数の持ち曲を用意しているそうで、さらに昨年の公演では連日午後に新たな曲をナタリー本人とバンド全員でリハーサルし、その夜のセットリストに取り入れていたと聞きました。ジャズ、R&B、A.O.R.からハード・ロックまで、オーディエンスの雰囲気にあわせステージでチョイスされる曲目もあるそうで、各ステージでどのような演奏の披露に巡り会うか、大きな楽しみのひとつです。公演は、来週の水曜まで続きます(月曜はオフ)。
(原田 2012 11.22)


● 11.22thu.-11.28wed. (11.26mon.OFF)
NATALIE COLE
☆ 参考:セットリストはこちら


インコグニート - INCOGNITO


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