'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , Ninety Miles - - report : STEFON ...
2011/12/18
公演初日リポート:
STEFON HARRIS, DAVID SÁNCHEZ & CHRISTIAN SCOTT
"Ninety Miles"
いよいよ、この日を迎えました。ヴィブラフォン奏者ステフォン・ハリス、トランペット奏者クリスチャン・スコット、テナー・サックス奏者ダヴィッド・サンチェスのラテン・ジャズ・プロジェクト“ナインティ・マイルズ”の登場です。同名のアルバムが日本で発売されたのは今年の夏だったと思いますが、それを聴いて以来、ぼくは彼らのライヴを待ち焦がれておりました。「来日しないだろうなあ。海外のジャズ・クラブかフェスティバルに行かなければならないのかなあ」と思っていたところ、ブルーノート東京に出演することが決まり、昨日、大盛況の中、熱いセッションが行なわれたのです。
フロント・ラインに立つ3人以外のメンバーは、キューバ勢が集まったCDとは若干異なり、プエルトリコ勢が中心でした。いずれもニューヨークを拠点に活動する面々です。これがまた、CDとは一種違った興奮を演奏に与えていました。ひとことでいえばCDよりもシャープでソリッド、“ニューヨークの空気”が濃厚になっているのです。ソロが白熱するので、CDでは5分ほどの曲が、その3倍にも4倍にも発展します。これもまた、ライヴならではの魅力です。
ステフォンはマレットを2本、3本、4本と持ち替えながら、豊かな音色、シャープなハーモニーを駆使しながら驚嘆すべきプレイを聴かせました。最近はウォーレン・ウォルフ、ジェイソン・アダシウィッツ、トム・ベッカム等、逸材に事欠かないジャズ・ヴィブラフォン界ですが、その兄貴格であるステフォンの演奏は、やはり格別です。クリスチャンは2本のトランペットを持って(いずれもベル部分が上を向いている)、それを使い分けながら表情豊かなブロウを楽しませてくれます。1980年代から活動を続けるダヴィッドは、いまやベテランの風格。肉厚な音で綴られるフレーズには、一音のムダもありません。
トランペットとサックスの前にはマイクも立てられていますが、クリスチャンもダヴィッドも乗ってくるとマイクを離れて自由自在に吹きまくります。その音色は限りなく豊かで、クラブ全体に響き渡ります。「世界のトップに数えられるミュージシャンの生音は、こんなにすごいのか」と感動したオーディエンスの方も、相当数いらっしゃるのではないでしょうか。
公演は本日まで行なわれています。ぜひぜひ、お越しください! 現代のニューヨークの息吹を感じさせるジャズを日本にいながら生で楽しめる機会がすっかり減っている昨今、彼らの生音を浴びることのできる嬉しさは、とても言葉で表現できません。ぼくはこの公演で、ひと足早いクリスマス・プレゼントをもらった気分になりました。
(原田 2011 12.17)
● 12.17sat.-12.18sun.
STEFON HARRIS, DAVID SÁNCHEZ & CHRISTIAN SCOTT
"Ninety Miles"