BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 本田雅人 - - report : 本田...

本田雅人 - MASATO HONDA
本田雅人 - MASATO HONDA


公演初日リポート:本田雅人 B.B.STATION -Big Band Night-


本田雅人率いるビッグ・バンド、B.B.Stationが待望の再登場を果たしました。
とにかくこのバンドは小気味よく、痛快です。選りすぐりのハイレベルなミュージシャンが一丸となって乗りに乗り、超絶技巧のフレーズを次々と鮮やかにキメてゆきます。中心人物の本田雅人はリズム・セクションとホーン・セクションの間に立ち、アルト・サックスを存分に吹きまくり、大半のレパートリーの作曲やアレンジを担当、MCもこなします。マルチな音楽家であり、エンターテイナーである「本田雅人の世界」が、ドッカーンと強烈に浮かび上がってくるのです。

リズム・セクションは梶原順(ギター)、櫻井哲夫(ベース)、則竹裕之(ドラムス)、そしてピアノとキーボードの佐山雅弘で構成されています。この凄腕メンバーが一堂に会するというのも貴重な出来事だと思います。とくに櫻井と則竹のリズム隊は、フュージョン系のサウンドにおいては日本最高峰のひとつといえるのではないでしょうか。ぼくの年代だと、どうしても「元カシオペア〜元JIMSAKUのベーシストと元T-SQUAREのドラマーが一緒に演奏している」という興奮を抑えきれないのですが、80〜90年代を知らない若いファンも絶対に、彼らの生み出すグルーヴに驚嘆の声をあげたことでしょう。ホーン・セクションにも中川英二郎(トロンボーン)、エリック宮城(トランペット)、吉田治、アンディ・ウルフ(サックス)等、「彼らがいなければ日本のビッグ・バンド界はまわっていかないのではないか」といいたくなるようなスターたちが揃っています。

2001年のアルバム『CROSS HEARTS』に入っていた「STOP! THE FUNK」のビッグ・バンド・ヴァージョンも聴けましたし、T-SQUARE時代の人気曲「MEGALITH」も大人数でプレイされると迫力倍増です。また、「みんなSwing」ではホーン・セクション全員のソロがフィーチャーされました。ジョージ・ガーシュイン作の古典的なナンバー「‘S WONDERFUL」を取りあげていたのには驚きましたが、コード、メロディともに「誰の書き下ろし?」と思わせるほど斬新にリメイクされていました。

B.B.Stationの公演は本日も続きます!
(原田 2011 7.16)


● 7.15fri.-7.16sat.
本田雅人 B.B.STATION
-Big Band Night-


 本田雅人 - MASATO HONDA


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BOB JAMES - - report : BOB JAM...

2011/07/08

ボブ・ジェイムス - BOB JAMES
ボブ・ジェイムス - BOB JAMES


BOB JAMES TRIO featuring Shadu Shah Chaidar & Lewis Pragasam
@Motion Blue Yokohama


数え切れないほど来日しているボブ・ジェームスですが、今回の公演ほどアコースティック・ピアノを弾きまくったことはないのではないでしょうか。「ボブ・ジェームスのピアノをタップリ聴きたい」、「あのタッチを全身で満喫したい」・・・・・そんなあなたに150%お勧めしたい公演が、今回のライヴです。6弦エレクトリック・ベースは今年の春にクアラルンプールで共演したときに一発で気に入ってしまったという気鋭のシャドゥ・シャー・チャイダー、ドラムスはボブとの来日経験もある名手ルイス・プラガサムです。

「ブルーノート東京」には本日から登場しますが、ぼくは昨日、ひと足早く「モーション・ブルー・ヨコハマ」で聴いてまいりました。ここは「ブルーノート東京」より規模が小さいため、さらに親密感があり、文字どおりミュージシャンに肉薄できるところがポイントです。ボブがここに出演するのは7、8回目だそうです。

オープニングは、ホレス・シルヴァーが作曲した「THE JODY GRIND」。シルヴァーといえば1950〜60年代に大活躍したモダン・ジャズのスターですが、ここ10数年は体調を崩しており、実質的には引退状態が続いています。しかし彼の曲は今も多くのミュージシャンにとりあげられ、ファンにも愛されています。ファンキーなメロディが印象的なこの曲を、ボブはエレガントに聴かせてくれました。

次はなんだろう、と思っていたら、演奏の途中でようやくわかりました。ペトゥラ・クラークの歌でヒットした60年代のポップス「DOWNTOWN」です。ボブはこの曲のハーモニーを変え、リズムもレゲエ風にして解釈します。名アレンジャー、ボブの面目躍如といったところでしょうか。ベース、ドラムスとのシンプルなピアノ・トリオ編成であっても、しっかりと編曲をほどこし、鮮やかな“キメ”を挿入しながらプレイするのです。

「NARDIS」は、初期のボブが最も影響を受けたピアニストであるというビル・エヴァンスの演奏で知られるナンバー。彼は1962年のファースト・アルバム『ボールド・コンセプションズ』でこの曲をとりあげて、近作『テイク・イット・フロム・ザ・トップ』で再演していましたが、今回はもちろん後者のアプローチです。ひとことでいえば、テンポやキーがコロコロと変わります。基本的にはファンク調ですが、ときおり4ビートのパートが挿入されていました。

今回のライヴでは、ボブのソロ・ピアノも味わうことができました。スタンダード・ナンバーの「I'M GLAD THERE IS YOU」です。まるでクラシックの小品のようなアレンジとタッチに、彼のルーツを見る思いでした。

以上の曲はすべて他人の書いたナンバーですが、もちろんオリジナル曲も聴かせてくれました。あのアルバムのタイトル曲も演奏してくれましたし、あの定番もピアノ・トリオならではの解釈に生まれ変わっていました。それに関してはぜひ、実際にクラブに足を運んでいただき、確認していただければと思います。

(原田 2011 7.7)


● 7.8fri.-7.10sun. @BLUE NOTE TOKYO
BOB JAMES TRIO
featuring Shadu Shah Chaidar & Lewis Pragasam




'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SADAO WATANABE - - report : SADAO W...

2011/07/04

渡辺貞夫 - SADAO WATANABE
渡辺貞夫 - SADAO WATANABE


公演初日リポート:Sadao Watanabe presents
SADAO WATANABE N.Y. QUARTET

渡辺貞夫のライヴはいつも華やかです。入り口のドアを開けると花束が並び、客席さまざまな層のファンで埋め尽くされます。愛用のサックスを持ちながら、人ごみをかきわけるようにして今夜の主役が登場すると、ざわざわした客席は一気に静まり、かわって猛烈な拍手が沸き起こります。

昨日のファースト・セットは目下の新作『イントゥ・トゥモロー』からの曲が中心でしたが、ぼくが見たセカンド・セットは、録音してきたばかりという次回作からのオリジナル曲が中心でした。おそらく会場にいる大半のひとが、それらレパートリーを初めて聴いたことでしょう(ぼくもそうです)。震災を受けて書き下ろしたというナンバーもいくつか披露してくれました。が、一貫して客席になごやかな雰囲気が感じられたのは、耳馴染みのない曲であっても、根底には常に渡辺貞夫ならではの親しみやすく、暖かいメロディ・ラインが流れているからでしょう。次回作のタイトルや発売日は近日中に決定されることと思いますが、それを聴くのが早くも楽しみになってきました。

共演のアーロン・ゴールドバーグ(ピアノ)、マット・ペンマン(ベース)、ジョー・ダイソン(ドラムス)は、つねに渡辺貞夫の動きから目を離していません。なにしろ、彼らが生まれる前から第一線で活動しているジャズ・レジェンドです。とくにダイソンの表情からは、「この巨匠から、ジャズの奥深さを盗めるだけ盗んでやろう」的な貪欲さが感じられました。彼は今年21歳の若さ。往年のジャズ・ドラマーのように、シンバル・レガートでリズムをキープしながらオカズ(合いの手)を入れるタイプではなく、むしろオカズの合間にシンバルでアクセントをつけていくのですが、その大胆不敵なプレイは明らかに渡辺貞夫を刺激していました。

ステージでは、新曲に加えて「TOKYO DATING」、「EPISODE」といった旧作も聴かせてくれました。「TOKYO DATING」は、1985年に録音されたアルバムのタイトル曲ですね。そこで御大と共演していたのは、ジェームス・ウィリアムス(ピアノ)、チャーネット・モフェット(ベース)、ジェフ・テイン・ワッツ(ドラムス)という当時の気鋭たち。彼らが日本で親しまれるようになった背景には、渡辺貞夫の尽力があったのです(ウィリアムスは若くして亡くなってしまいましたが)。

ゴールドバーグ、ペンマン、ダイソンの存在も、今回の公演を機にさらに日本のジャズ・ファンに身近なものとなるでしょう。
(原田 2011 7.3)


● 7.3sun.-7.6wed.
Sadao Watanabe presents
SADAO WATANABE N.Y. QUARTET


渡辺貞夫 - SADAO WATANABE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 吉田兄弟 - - report : 吉田兄...

2011/06/28

吉田兄弟 - YOSHIDA BROTHERS
吉田兄弟 - YOSHIDA BROTHERS


公演初日リポート:吉田兄弟



吉田兄弟がクラブで聴ける!
これは大ニュースでしょう。通常、彼らの日本における公演はホールで行なわれているからです。
ステージと客席の距離の近さに兄の吉田良一郎も弟の吉田健一も驚いていたようですが、それはぼくらオーディエンスにとっても同様です。超高速で動く左手、力強い右手のバチさばき等が間近で鮮明に見ることができるだけではなく、フレーズの合間に出る掛け声などもマイクを伝わらずに生々しく聴こえてきました。兄弟がクラブに登場するのはアメリカ・ツアー以来とのことでしたが、演奏が進むうちに「クラブでセッションする楽しさ」を思い出したのでは、と勝手に想像しています。

兄弟をサポートするのは、キーボード奏者の井上鑑と、パーカッション奏者の仙波清彦。ふたりとも1970年代から第一線で活動するベテランです。アコースティック・ピアノとキーボードを鮮やかに使い分ける井上のプレイも見事でしたが、ドラム・セットに和太鼓を仕込んだ仙波の一打一打にも聴きほれました。音の腰が強くて、リズムに粘りがある。このふたりにサポートされて演奏する吉田兄弟は本当に気持ちいいだろうな、と思いました。

前半は吉田健一の作曲が並びました。2曲の兄弟共演を経て、「月光」を井上のアコースティック・ピアノとデュオで演じた後は、吉田良一郎の作曲が続きます。チョーキングやグリッサンドを用いたソロ・パフォーマンス「彩雲」で熱狂させ、エレクトリック・パーカッションを用いた「紅い鳥〜RED BIRD〜」では一転、しみじみと旋律を奏でます。

チック・コリア作「アルマンドズ・ルンバ」をデュオで聴かせた井上と仙波がステージを去った後、超大作三味線二重奏の「津軽じょんがら節」が始まります。まさしく技と技、気迫と気迫のぶつかりあい。「日本の曲って、かっこいいなあ」と、思わず声をあげたくなりました。

アンコールでは「Overland Blues」を演奏。井上の弾くブギ・ウギ風ピアノと、兄弟の三味線が絶妙に混じりあいます。この6月下旬の二日間は、「ブルーノート東京史上、初めて三味線が鳴り響いた日」として、ヒストリーに刻まれることでしょう。
(原田 2011 6.27)


● 6.27mon.-6.28tue.
-Love for Japan- YOSHIDA BROTHERS


吉田兄弟 - YOSHIDA BROTHERS


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , AMY HANAIALI'I - - report : AMY HAN...

2011/06/24

エイミー・ハナイアリイ - AMY HANAIALI'I




AMY HANAIALI'I @COTTON CLUB


明日6月25日(土)からハワイの歌姫、エイミー・ハナイアリイの公演が始まります。それに先駆けて、ぼくは「コットンクラブ」で、彼女のステージを満喫してまいりました(「コットンクラブ」には、本日まで出演)。
ハワイの音楽というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? ぼくは単純にファルセット、スティール・ギター、ウクレレ、腰ミノなどが頭に浮かびます。大橋節夫とハニー・アイランダーズ(戦後に大きな人気を集めた日本のハワイアン・バンド)の影響かもしれません。しかしエイミーのサウンドは、それとは一味違います。ひとことでいえば、ジャズ、ポップス、ロック等の要素を大きく導入したものなのです。だからこそ彼女は、ハワイのミュージシャンとして初めて全米ヒット・チャートに進出することができたのでしょう。

「私はジャズを聴いて育ったようなものです」と、MCでエイミーは言っていました。親戚にはジャズ・ミュージシャンもいるそうです。そしてナット・キング・コールで有名な「ROUTE 66」、レオン・ラッセルやジョージ・ベンソンが歌った「THIS MASQUERADE」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「ONE NOTE SAMBA」等を歌い、ジョージ・ガーシュインの名曲「THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME」では客席に入り込み、オーディエンスとコミュニケーションをとりながら、会場を盛り上げました。

もちろん伝統的なハワイアン・ナンバーや、自身のオリジナル曲もたっぷり聴かせてくれました。ハワイのヒロにいるとき、バンの中で雨宿りをしていて思いついたという「IN HILO TOWN」は、リズムもメロディも実にキャッチーで、エイミーの歌にあわせて一緒に歌いたくなるほどでした。

エイミーはただ音楽を聴かせるだけではなく、積極的にファンに語りかけ、一緒にステージを作っていくタイプのシンガーです。「いきなり英語で語りかけられたら、どうしよう」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。バンドのベーシスト、スティーヴ・ジョンソンは日本語ペラペラなので、すべて通訳してくれます。
どうぞ皆さん、つかの間のハワイ旅行へ!
(原田 2011.6.23thu)



● 6.25sat.-6.26sun. @BLUE NOTE TOKYO
AMY HANAIALI'I


エイミー・ハナイアリイ - AMY HANAIALI'I



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