BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RUFUS - - report : RUFUS ...

2011/06/23

ルーファス - RUFUS
ルーファス - RUFUS


公演初日リポート:RUFUS
featuring AMANDA MAIDEN, INDIRA MILINI KHAN & PHUNNE ROBINSON STONE
"The Daughters of Funk"

ナイル・ロジャース&シックの公演が大盛況のうちに終わり、あの強烈な「ファンク台風」もひとまず過ぎ去ったかな、と思っていたら、さっそく次の大型台風が登場です。今年初の真夏日に突入した東京を、さらに熱く燃え上がらせたのはルーファスの皆さん。

今回の公演には、これまでにない大きな特徴があります。ヴォーカルを「ドーターズ・オブ・ファンク」が務めているのです。日本語にすると「ファンク娘」といったところでしょうが、とにかくそのメンバーが豪華です。ステージ向かって右からトニー・メイデンの娘、アマンダ。殆どの曲でリード・ヴォーカルをつとめます。そして中央にいるのがチャカ・カーンの娘、ミリニ・カーン(実際はマリーニという発音に近いようです)。小柄ですが、信じられないような声量の持ち主です。そして左には、ファン・ロビンソン・ストーンがいます。そうです、あのカリスマ、スライ・ストーンの娘です。もちろんステージでは「THANK YOU」など父親の曲を歌って盛り上げました。

最初はいささか硬さも感じられた娘たちですが、ステージ運びの巧みなトニー・メイデンに導かれるように、徐々にヒートアップしていきます。アスク・ルーファス(ルーファスの前身グループです)時代からのレパートリーであるという「ANY LOVE」あたりからエンジン全開になり、「HOLD ON TO A FRIEND」、「STAY」、「EARTH SONG」と続いたアコースティック・コーナー(トニーはアコースティック・ギターを弾きました)では、実力派シンガーぶりをたっぷり味わわせてくれました。

かつて若きチャカ・カーンがリード・ヴォーカルを取っていた「TELL ME SOMETHING GOOD」を、ミリニの歌声で聴くのもオツなものです。本編ラストでは「AIN'T NOBODY」も披露。ブルーノート東京では毎年のようにピーボ・ブライソンが歌っているナンバーですが、もともとはルーファスのヒット曲ですね。

2世代が同じステージに立っている風景は、今では決して珍しいものではありません。しかしチャカの娘が、かつてチャカのいたバンドで、いま彼女のかわりに歌っている、という情景は実に感動的です。ぼくは何度も「ファンクは、こうやって伝承されていくのだなあ」と、しみじみしてしまいました。
(原田 2011 6.22)



● 6.22wed.-6.24fri.
RUFUS
featuring AMANDA MAIDEN, INDIRA MILINI KHAN & PHUNNE ROBINSON STONE
"The Daughters of Funk"


ルーファス - RUFUS


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RON CARTER - - report : RON CAR...

2011/06/17

ロン・カーター - RON CARTER
ロン・カーター - RON CARTER


公演初日リポート:RON CARTER
-Golden Striker Trio-
featuring Russell Malone & Mulgrew Miller



ロン・カーター率いるザ・ゴールデン・ストライカー・トリオの来日ステージが昨日から始まっています。

前回の公演ではジャッキー・テラソンがピアノを弾いていましたが、今回はマルグリュー・ミラー(ピアノ)、ラッセル・マローン(ギター)、そしてロンというオリジナル・ラインナップによる公演です。このトリオが最初のアルバム『ザ・ゴールデン・ストライカー』を発表したのは2003年のことですが、2011年の彼らは老舗ユニットの風格すら感じさせます。

改めていうまでもないとは思いますが、ザ・ゴールデン・ストライカー・トリオの特徴はドラムスが入っていないということです。その昔、ギター〜ピアノ〜ベースという楽器の組み合わせは大変ポピュラーなものでした。1940年代にはアート・テイタムやナット・キング・コールが、50年代にはオスカー・ピーターソンやタル・ファーロウが、この編成で数々の名演を残しています。しかし、それ以降の“トリオ編成によるジャズ”はドラムスがピアノやギターに替わることが多くなりました。その背景には、ジャズ界の流れが、よりハードなものに移り変わったということもあるのでしょう。

「もう、ギター〜ピアノ〜ベースという編成は歴史上のものになってしまったのだろうか」。少なくないジャズ・ファンがそう思っていたところに、ザ・ゴールデン・ストライカー・トリオは颯爽と登場しました。ドラムスの不在を補って余りあるスイング感(なにしろロンのリズム感は卓抜です)と、ドラムスがないからこそ際立つであろう室内楽的でエレガントな音作りは、現代ジャズ界における清涼剤のひとつといえましょう。

各楽器のアンプやマイクによる増幅を最小限にしているのも、このトリオの魅力です。3つの楽器が、決して大声を出すことなく、気のおけない会話を繰り広げている・・・といえばいいでしょうか。「イエーイ、のってるかい!」というタイプの音楽ではないですが、じっくり耳を傾ければ傾けるほど、心にじんわりと入り込んでくる“アート”が、ザ・ゴールデン・ストライカー・トリオの世界なのです。

発足当時、このトリオをみたときは、ともすればロンよりも若い世代のマルグリューやラッセルが御大の貫禄に圧倒されているようにも思えました。しかし現在の彼らにその心配はありません。グループの司令塔であるロン、そして一段とスケールを増したマルグリューとラッセル。彼らの技の応酬が、今夜も「ブルーノート東京」を静かに熱狂させることでしょう。
(原田 2011 6.16)


● 6.16thu.-6.19sun.
RON CARTER
-Golden Striker Trio-
featuring Russell Malone & Mulgrew Miller

● Father's Day Special Plan


●6.20mon. はコットンクラブにて公演

ロン・カーター - RON CARTER


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , AZYMUTH - - report : AZYMUTH

2011/06/15

アジムス - AZYMUTH
アジムス - AZYMUTH


公演リポート:AZYMUTH



ホセ・ロベルト・ベルトラミ(ジョゼ・ホベルト・ベルトラーミ:キーボード)、アレックス・マリェイロス(ベース)、そしてイヴァン・コンチ(ドラムス)。
名前を見ただけで「音が聴こえてくるようだ」というファンも多くいらっしゃるのではないでしょうか。ブラジルが誇るフュージョン・グループ、アジムスのステージです。

とはいっても、彼らは「フュージョン・ミュージック」という言葉が定着する遙か前、1970年代中期に本格的な活動を開始しました。長寿グループにはありがちなことですが、その間にはメンバー・チェンジも経験しました。ベルトラミが脱退していた時期もあります。しかし現在は黄金期のメンバーによる活動に戻っています。「やっぱり、この3人が揃ってこそのアジムスなんだ」という気持ちは、ぼくら聴き手だけではなく、メンバー自身にも強く存在しているのでしょう。

横並びで演奏する彼らは、とくにアイ・コンタクトをとるわけでもなく、ごくごく淡々と楽器をプレイします。しかし各楽器の呼吸は見事に一致し、それぞれのメンバーが他のメンバーのフレーズに対して絶えず反応していることがわかります。長年のキャリアを積んだバンドならではの技のやりとりが、客席の熱気を徐々に高めていきます。「IN MY TREEHOUSE」など、最新作『オーロラ』からのナンバーも聴かせてくれましたし、ジョアン・ジルベルトの数少ない自作のひとつである「HOBALALA」では全員の(タンバ・トリオを思わせる)コーラスを、アントニオ・カルロス・ジョビンの「AGUAS DE MARCO」ではベルトラミのアコースティック・ピアノを楽しむことができました。

もちろん他の曲では、ベルトラミ特製のフェンダー・ローズ・プレイも満喫することができました。このふくよかで、柔らかく、浮遊感のある響きは、今後デジタル・シンセがいくら進化しようとも絶対に表現できないのではないかと思います。ベルトラミがフェンダー・ローズを弾くと、それだけで場内に涼やかな風が舞い込んでくるようです。

アンコールでは、彼らの日本における人気を決定付けたといっても過言ではない「VOO SOBRE O HORIZONTE(Fly Over The Horizon)」が演奏されました。現在、30代半ば以上の洋楽少年少女なら誰でも一度は聴いたことがあるであろう伝説のFM番組「クロスオーバー・イレブン」のオープニング・テーマ・ソングですね。ぼくも1980年代初頭、この曲で初めてアジムスの名を知り、サウンドの気持ちよさにすっかり魅了されてしまったひとりです。まさか「クロスオーバー・イレブン」のテーマが生で聴けるなんて、と思いながら、ぼくは頭の中でメロディを必死に追いかけました。

アジムスの「ブルーノート東京」公演は昨日で終了しましたが、本日からは「コットンクラブ」に登場します。梅雨時を吹き飛ばすブラジリアン・グルーヴを、どうぞお楽しみください!
(原田 2011.6.15)




● 6.14tue.-6.15wed.
AZYMUTH

●6.16thu.-6.17fri. はコットンクラブにて公演

AZYMUTH - アジムス


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MIKE STERN - - report : MIKE ST...

2011/06/06

マイク・スターン - MIKE STERN
マイク・スターン - MIKE STERN


MIKE STERN BAND featuring RANDY BRECKER, TOM KENNEDY & DENNIS CHAMBERS @Motion Blue Yokohama

マイク・スターン、ランディ・ブレッカー、トム・ケネディ、デニス・チェンバース。この4人が、ただいま日本に来ています。本日は「コットンクラブ」に出演、8日からはいよいよ「ブルーノート東京」に登場します。

ぼくは昨日、「モーション・ブルー・ヨコハマ」で行なわれた初日を見てきました。“やっぱり来日第一声を聴きたい”というファン、ギター・フリークがあらゆるところからつめかけたのでしょう、すごい熱気でした。窓から海が見えるシチュエーションの中で、マイクたちの熱い演奏を聴く。これは、「モーション・ブルー」公演ならではの醍醐味です。

エレクトリック・ベースのトム・ケネディはセントルイス出身。もともとはアコースティック・ベースを演奏していました(今も別のバンドでは演奏することがあるそうです)。17歳の頃にエレクトリックを始め、84年からニューヨークを拠点に活動。ステップス・アヘッドに所属したり、アル・ディメオラ、デイヴ・ウェックル等と共演してきました。マイクのDVD『パリ・コンサート』でもトムのプレイが聴けますね。ちょっと固めの音で、5弦ベースをブリブリ鳴らすプレイは、ソリストを刺激してやみません。デニス・チェンバースのドラムスとの相性も絶妙です。

デニスは、今から20年ほど前に存在したボブ・バーグ=マイク・スターン・バンドのメンバーでもありました。当時の彼らは1曲30分などというとんでもないステージを披露していました。現在のマイクやデニスのプレイは、さすがに当時に比べて洗練されています。しかしパワー、エネルギーは相変らずです。ふたりの技の応酬には今も、“殺気”という言葉がふさわしいといえます。

本編が終わった後も、アンコールが終了した後も、大きなスタンディング・オベイションが巻き起こりました。初日のファースト・セットから4人はオーディエンスをノック・アウトしたのです。「ブルーノート東京」での最終日まで、彼らはこのテンションを持続しながら、さらに発展した音楽を聴かせてくれることでしょう。

(原田 2011 6.5)


● 6.6mon. @COTTON CLUB
MIKE STERN BAND featuring RANDY BRECKER, TOM KENNEDY & DENNIS CHAMBERS

● 6.8wed.-6.11sat. @BLUE NOTE TOKYO
MIKE STERN BAND featuring RANDY BRECKER, TOM KENNEDY & DENNIS CHAMBERS

● 6.11sat. MIKE STERN GUITAR CLINIC @BLUE NOTE TOKYO



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DIONNE WARWICK - - report : DIONNE ...

2011/06/03

ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK
ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK


公演初日リポート:DIONNE WARWICK


会場に着くと、いつもよりもさらにフォーマルでシックな雰囲気が感じられます。スーツをパリッと着こなした方も目立ちます。なにしろ世紀のエンターテイナー、ディオンヌ・ワーウィックの公演です。聴く側としても目いっぱい気合を入れて、おしゃれして、襟を正して、至高のパフォーマンスに触れたくなろうというものです。

場内が暗くなり、バンド・メンバーが登場します。全員がスーツ姿で、蝶ネクタイをしめています。少し遅れて、貴婦人ディオンヌが姿を現しました。ステージに立ち、まずトーク。「Gambare, Nippon!」というそのMCの中でのメッセージは感動すら覚え、強い想いをもっての来日であることを感じました。1曲目は「WALK ON BY」。いきなり大ヒット・ナンバーが飛び出して、客席は一気に盛り上がります。5度のグラミー賞に輝き、あの「WE ARE THE WORLD」の中心人物でもあるディオンヌですが、ステージ上の彼女には大スターの気取りや、近づきにくいところはまったくありません。名曲を次々と歌い、トークで観客をなごませ、ユーモアたっぷりのジェスチャーを交えながら、楽しく親しみやすい“ディオンヌ・ワールド”を繰り広げてゆきます。とにかく、歌われる曲のほとんどすべてが大ヒット・ナンバーなのです。いかにディオンヌが長い間、世界中で愛されてきたかを痛感させられました。そして、そんな彼女が今、この時世に日本に来て、しかも至近距離で歌ってくれることに感謝したくなりました。

ステージ中盤ではボサ・ノヴァ〜ラテン系のナンバーを中心に熱唱。ブラジル出身のパーカッション奏者、レナート・ブラザの技も光ります。「DO YOU KNOW THE WAY FROM SAN JOSE」は大ヒットした往年のヴァージョンとは異なり、サルサ風のアレンジで歌われました。

プログラム後半は“バラード・タイム”といったところでしょうか。新作『ONLY TRUST YOUR HEART』からのレパートリーを中心に、決して60〜70年代には求め得なかったであろう円熟の歌声を聴かせてくれました。

公演はあさってまで続きます。不世出のエンターテイナー、ディオンヌのステージは、すべての音楽ファンに笑顔と優しさを運んでくれることでしょう。
(原田 2011.6.2)




● 6.2thu.-6.4sat.
DIONNE WARWICK


ディオンヌ・ワーウィック - DIONNE WARWICK


<<前のページへ 2425262728293031323334