BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , -Love for Japan- , CESARE PICCO , HOPE AT SUNRISE PROJECT , 溝口肇 - - report : -Love f...

2011/05/31

チェーザレ・ピッコ - CESARE PICCO
チェーザレ・ピッコ - CESARE PICCO


公演初日リポート:-Love for Japan-
Andrea Pompilio presents "HOPE AT SUNRISE PROJECT"
CESARE PICCO featuring HAJIME MIZOGUCHI

アンドレア・ポンピリオ・プレゼンツ "HOPE AT SUNRISE PROJECT"の初日が、大盛況のうちに終わりました。

あの3.11が起こったとき、アンドレアは海外でのバケイションを終え、成田空港に戻るところでした。しかし飛行機は空港に入ることなく旋回を続け、グアムに到着しました。何が起きたのか知ったアンドレアは愕然としました。やがて、友人のピアニスト、チェーザレ・ピッコから安否を尋ねる電話がありました。そしてさらに数日後、彼からひとつの音源が送られてきました。曲には「HOPE AT SUNRISE」というタイトルがつけられていました。

オープニングを飾るのは、そのチェーザレ・ピッコの無伴奏ソロです。ピアノだけではなく、ピアニカを用いたり、マレットでピアノ内部の弦を叩くなど、けっこうアグレッシヴなパフォーマンスを見せてくれましたが、音楽は常にメロディアスでロマンティック。そこが彼のいいところですね。ラフに着こなした白いシャツと、黒いグランド・ピアノの対比も鮮やかです。鍵盤の上を指が駆け巡っているかのようなアップ・テンポ曲「NESSUNO COME TE」にも興奮させられました。

続いて、チェロ奏者の溝口肇が登場します。彼のオリジナル「SEASON'S GREETINGS」の後、今回のライヴ・イヴェントのテーマ曲である「HOPE AT SUNRISE」が演奏されました。このふたり、数日前に出会ったばかりとのことですが、何年も一緒に共演してきたかのような呼吸で旋律を奏でるあたり、さすがプロ中のプロです。

後半は溝口と、4人の若手チェロ奏者による演奏が続きます。チェロ・クインテットというよりは、“チェロのアカペラ”と呼びたくなるものでした。溝口がリード・ヴォーカルで、ほかのメンバーがバック・コーラスをつけているという感じです。チェロの音って人間の声に似ているな、と思いながらアコースティック楽器の響きを堪能させていただきました。バッハの有名な「無伴奏チェロ組曲第1番」が“伴奏つき”で演奏されたのにも驚きましたし、溝口を代表する作品である「世界の車窓から」(同名テレビ番組のテーマ・ソング)を生で聴けたのも、うれしかったですね。ラストには再びチェーザレが登場、溝口との即興演奏も聴かせてくれました。

"HOPE AT SUNRISE PROJECT"、本日は古武道のステージです。明日は大貫妙子が登場します。このプロジェクトの発展を願ってやみません。
(原田 2011 5.30)


● 5.30mon.
-Love for Japan-
Andrea Pompilio presents "HOPE AT SUNRISE PROJECT"
CESARE PICCO featuring HAJIME MIZOGUCHI

● 5.31tue.
-Love for Japan-
Andrea Pompilio presents "HOPE AT SUNRISE PROJECT"
KOBUDO -古武道-

● 6.1wed.
-Love for Japan-
Andrea Pompilio presents "HOPE AT SUNRISE PROJECT"
TAEKO ONUKI

● 7.12tue.
-Love for Japan-
Journey back Home
-音楽と朗読でお連れする「こころの旅」-
音楽:溝口肇、谷川賢作、石井聖子
朗読:谷川俊太郎、レイチェル・チャン

CESARE PICCO - チェーザレ・ピッコ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MARLENE - - report : MARLENE...

2011/05/25

マリーン - MARLENE
マリーン - MARLENE


公演初日リポート:MARLENE "INITIAL"


場内が暗くなると同時に、スクリーンに映像が映し出されます。マリーンの最新作『イニシャル』のジャケット撮影のシーンです。スタジオでポーズを決めるマリーンに、歯切れ良いカメラのシャッター音が響きます。スタイリング・プロデュースはドン小西、ジャケット写真は加納典明が担当。ふたりのインタビューも見ごたえ、聴きごたえがありました。

やがてミュージシャンが次々と舞台にのぼり、パフォーマンスが始まります。オープニングは代表曲のひとつ「ESP」。ほかにも「SUMMER NIGHT」、「IT’S MAGIC」など往年の定番がガンガン飛び出します。80年代に日本フュージョンの洗礼を受けたぼくは、マリーンがワン・フレーズ歌うだけで、そのメロディを条件反射的に口ずさんでしまうことを抑えきれません。が、昔とはアレンジが違います。ノリが違います。歌声に、よりコクが増しています。

ロング・セラーを続行中の『マリーンsings熱帯JAZZ』に続くアルバム企画が持ち上がったとき、マリーンは「ぜひフュージョンをやりたい」と思ったそうです。理由は、「フュージョンこそ私の原点だから」。そして旧知のギタリストである安藤正容(T-SQUARE)にプロデュース、キーボード奏者の安部潤にアレンジを依頼し、セルフ・カヴァーを含むアルバム『イニシャル』を完成させました。

CDのクリアーでタイトなサウンドも魅力的でしたが、ライヴでは当然ながら、よりワイルドになります。安藤や安部をはじめとする凄腕ミュージシャンたちの白熱したやりとりを受けて、マリーンはからだ全身で歌いまくります。ダンサブルなナンバーでは熱くシャウトし、「LOVIN’ YOU」(非常に面白い和音が使われていました)や新曲「COME FLY WITH ME」などバラード系の曲ではしっとりと歌詞を表現。もちろんフレンドリーなMCもたっぷり楽しませてくれました。

ライヴを見ればCDも聴きたくなり、CDが気に入ればライヴに必ず行きたくなる。それが現在のマリーンといえましょう。
(原田 2011.5.24)



● 5.24tue.-5.25wed.
MARLENE "INITIAL"

マリーン - MARLENE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOE SAMPLE - - report : JOE SAM...

2011/05/15

ジョー・サンプル-JOE SAMPLE
ジョー・サンプル-JOE SAMPLE


公演初日リポート:JOE SAMPLE & THE CREOLE JOE BAND
featuring RAY PARKER Jr., JUNE YAMAGISHI & C.J.CHENIER



2010年、ジョー・サンプルにインタビューいたしました。そのときに彼は、力強く語ってくれました。
“次に考えているのはルイジアナ州の音楽にちなんだプロジェクトなんだ。私は子供の頃からララ・ミュージックに親しんできたからね。ララ・ミュージック、知っているかな? 今はザディコと呼ばれているけれど、大昔にはそんな言葉はなかったんだ。それに取り組みたいんだよ。バンド名はクリオール・ジョー・バンドに決めた。レイ・パーカーJr.も協力してくれることになったし、いいメンバーが集まりそうだ。シンガーが見つかったら、すぐにでもバンドを起動したいね”。

それから約1年を経て、ついにクリオール・ジョー・バンドが正式発足、ここブルーノート東京でプレミア・ライヴを聴かせてくれました。ここ十数年のサンプルのライヴに訪れていたファンは、当日の楽器の配置に多少なりとも驚かれたことでしょう。いつもなら舞台左側にあるアコースティック・ピアノがなく、サンプルは向かって右側の小さなキーボードの前に座ります。しかも冒頭の2曲ではそれにも触れることなく、アコーディオンを演奏しました。そこには、フュージョンの大物ピアニストというスーツを脱ぎ捨て、全身でアメリカ南部の音楽に浸るひとりの男の姿がありました。

サンプルと同等、もしくはそれ以上にフィーチャーされていたのがふたりのシンガーです。アコーディオンとヴォーカルのC.J.シェニエは、“ザディコの王者”と呼ばれる故クリフトン・シェニエの息子。クリフトンの『バイウー・ブルース』というアルバムを、それこそ穴が開くほど聴いてきたぼくにとっては、それだけで感動がこみあげてきます。しかしC.J.も、もう50代。野太いシャウト、貫禄たっぷりの節回しは、彼が二代目キングの域に達していることを伝えてくれました。インストルメンタル・ナンバー「ZYDECO BUGALOO」(デトロイトのR&Bグループ、コントゥアーズが歌った「DO THE SEE SAW」の歌なしヴァージョン。C.J.はレス・マッキャンのレコードで覚えたのでしょう)も圧巻でした。

バンド内の紅一点、シャロン・マーティンは浅草ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバルにも登場したことのあるシンガー。ゴスペル、R&B、トラディショナル・ジャズ、なんでもありのシンガーです。この日はザディコの定番「DON'T MESS WITH MY TOOT TOOT」で会場を熱狂させました。

アコーディオンと並ぶザディコの花形楽器、ラブボード(RUB-BOARD)はC.J.のいとこ、気鋭のジェラール・シェニエが演奏。彼の「こすり」は、バンドに強烈なスイング感を加えていました。
ニューオリンズに移住して久しい山岸潤史のギターも唸り、レイ・パーカーJr.はスライド・ギターを中心にプレイ。嬉しそうな表情で鍵盤に指を走らせるサンプルを見ていると、こちらもつい微笑まずにはいられません。

先日の NHK BS1出演時にサンプルは語ってました。
「今こそ、日本に来なければならない時だ。」
そんな思いを持っての来日は本当に嬉しい。
公演は19日まで続きます(16日はオフ)。
(原田 2011.5.14)





● 5.14sat.-5.19thu. (5.16mon. OFF)
JOE SAMPLE & THE CREOLE JOE BAND
featuring RAY PARKER Jr., JUNE YAMAGISHI & C.J.CHENIER

● 5.22sun. 大阪公演 イオン化粧品 シアターBRAVA!


ジョー・サンプル-JOE SAMPLE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 大西順子 , 渡辺香津美 - - report : 渡辺 ...

2011/05/08

渡辺 香津美 - KAZUMI WATANABE
渡辺 香津美 - KAZUMI WATANABE


リポート:渡辺 香津美 meets 大西 順子 -DUO-



渡辺香津美と大西順子のデュオ・ライヴが実現するとは、誰が想像できたでしょう。
どんなレコーディングでも、どんなジャズ・フェスティバルでも、ふたりのセッションは行なわれていませんでした。15年ほど前、NHKの紅白歌合戦で、日野皓正・元彦の兄弟や宮川泰と一緒に、吉田拓郎のバックを務めたのが、渡辺香津美と大西順子のほぼ唯一の共演だったとのことです。
「いったいどんな演奏になるのだろうか?」、「異種格闘技のようなものになるのだろうか?」と、わくわくしながら会場に向かったのは、ぼくだけではないはずです。

プログラムは「STELLA BY STARLIGHT」、「‘ROUND MIDNIGHT」のようなジャズ・スタンダード曲、そしてふたりが持ち寄ったオリジナル曲で構成されましたが、そのオリジナル曲の選曲がまた、とんでもないのです。渡辺側が「遠州つばめ返し」、「UNICORN」を持ちこめば、大西側は超大作「THE THREEPENNY OPERA」を持ってきます。およそ、デュオには向かない“難曲”ばかりです。並のミュージシャンがおいそれと手を出せば、指をつってしまうようなナンバーばかりです。しかしそこに、ぼくは「このライヴを単なる一夜のセッションに終わらせてなるものか」という、ふたりの高いミュージシャンシップ、チャレンジ精神を見ました。エレクトリック・ベースやドラムスがタイトなビートを打ち出しているはずの渡辺ナンバーを大西がアコースティック・ピアノで表現し、ホーン・セクションが暴れまわっているはずの大西ナンバーで、エフェクターを駆使した渡辺の自由奔放なエレクトリック・ギターがうねる。「面白いじゃないか!」と、ぼくは快哉をあげました。

渡辺がソロを弾いているときは当然、大西がバッキングを担当し、大西がソロを弾いているときはその逆になるのですが、その受け渡しの素早さ、巧みさも大きな聴きどころのひとつでした。「STELLA」や「MUSICAL MOMENTS」では4小節ずつソロを交換しあうのですが、互いのフレーズに触発されて、どんどん演奏が白熱していくのが手に取るようにわかりました。

一日限定の貴重なライヴでしたが、近いうちに連続公演が行なわれることを心から楽しみにします。
(原田 2011.5.7)




● 5.7sat.
KAZUMI WATANABE meets JUNKO ONISHI -DUO-


渡辺 香津美 - KAZUMI WATANABE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 上原ひろみ - - report : HIROMI ...

2011/04/25

HIROMI UEHARA - 上原 ひろみ
HIROMI UEHARA - 上原 ひろみ


先日「コットンクラブ」で圧倒的なソロ・パフォーマンスを聴かせたばかりの上原ひろみが、昨日から「ブルーノート東京」で熊谷和徳とのデュオを繰り広げています。

「ピアノとタップダンス? どうやって一緒に演奏するの?」という声もきこえてきそうですが、百聞は一見にしかずとは、まさにこのことです。ぼくはふたりのデュオを大きな会場で聴いたことがありますが、今回はクラブ規模でのライヴなので臨場感倍増、迫力500パーセント増しです。ふたりの一挙一動はもちろん、息遣いやかけ声までがダイレクトに飛び込んできます。

客席から見てピアノの左側に1枚、右側に4枚の板があります。ここをフルに使って、熊谷和徳はタップをします。ジャケットの下には、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの名盤『A NIGHT IN TUNISIA』のジャケットがプリントされたTシャツを着ています。踊るたびにジャケットがゆれ、Tシャツに書かれている“JAZZ”という文字が浮かびあがります。彼と上原ひろみのコンビネーションは、本当に自由自在です。あるときはピアノとユニゾンでステップを踏み、またあるときは床をするようなフットワークで上原のサポートに廻ります。そしてまたあるときは、ピアノとの4小節交換(4小節ずつ、アドリブ・ソロを渡しあうこと)で、何人ものドラマーが一緒に演奏しているかのようなストンピングを聴かせてくれました。

確かに2本の足で踏んでいるのです。しかしひとつのステップで6つか7つの音が出ていたのではないでしょうか。けっこうじっくりと彼の足使いを見ることができたのですが、どうしてあんな多彩なサウンドが出せるのか、不思議でなりません。熊谷は故郷・仙台に捧げたソロ・ナンバーも聴かせてくれましたが、観客の手拍子を受けながらのアドリブには、開いた口がふさがりませんでした。

もちろん上原ひろみのプレイも相変らずエンジン全開です。グラミー賞にも輝き、「笑っていいとも」のテレフォンショッキングに出るほどのスターであるのに、演奏への情熱、アドリブにかける気迫は高まるばかりです。演奏中の彼女は炎のかたまりです。いまにも鍵盤から黒煙があがりそうです。
1+1が20にも30にも拡がるデュオ・ワールド。それが上原ひろみと熊谷和徳の共演なのです。

アンコール終了直後に"グラミー受賞祝い"のサプライズ・ケーキが登場し、ご本人が本当に驚いていたシーンがまたこれも印象的でした。
(原田 2011.4.24)


● 4.24sun.-4.27wed.
HIROMI UEHARA × KAZUNORI KUMAGAI



● 4.27wed. 2nd show の模様はアーティストの意向により、
Ustream(ユーストリーム)BLUE NOTE TOKYO チャンネル
http://www.ustream.tv/channel/bluenotetokyo
で生中継いたします。是非ご覧ください。


上原 ひろみ - HIROMI UEHARA


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