BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , GIOVANNI MIRABASSI - - report : GIOVANN...

ジョヴァンニ・ミラバッシ - GIOVANNI MIRABASSI
ジョヴァンニ・ミラバッシ - GIOVANNI MIRABASSI


公演初日リポート:GIOVANNI MIRABASSI TRIO



イタリア・ペルージャが生んだ俊英ピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシ。昨年末に発表された最新作『ライヴ・アット・ブルーノート東京』も大好評の彼が、ふたたび日本のホームグラウンドに戻ってきてくれました。

ベースのジャンルカ・レンツィは、もはやミラバッシにとって不可欠なパートナー。あっと驚くような素早いフレーズを、ピアノとのユニゾンで鮮やかに決めてくれます。ドラムスのルクミル・ペレスは新たにこのトリオに加わったキューバ出身の逸材。現在はパリに住み、ジャズ〜R&B〜ラテンをまたにかけて活動しています。

前任のリオン・パーカーは、どちらかというとピアノとベースに絡みつくようなドラミングを展開していましたが、ペレスはむしろ“煽るタイプ”のドラマーです。マッチド・グリップ(左手でドラム・スティックを握るように持つ)による強力なプレイは、このトリオにワイルドな魅力を付け加えていました。今回が初来日のペレス、これから日本で一気に知名度が高まることでしょう。

いろんなタイプの曲で1枚のアルバムや1回のステージに盛り込むのがミラバッシ・トリオの魅力だとぼくは思っているのですが、今回もワルツの「NY #1」から始まり、快調な4ビートの「IT'S US」、8ビートにのせたポップな「WORLD CHANGES」、3人が別々のビートを打ち出しながら盛りあげてゆく「SIX FOR SEX」など、現在の3人の技のショウケースというべき演奏をじっくりと楽しませてくれました。

ラストではスタンダード・ナンバーの「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE」(キース・ジャレットやビル・エヴァンスも演奏しています)も聴かせてくれましたが、イントロ、アドリブ、エンディング、細かなアレンジにいたるまで、すべてにミラバッシ・トリオならではの独創性が発揮されていました。

公演は本日までです。お見逃しなく。
(原田 2011 2.28)

● 2.28mon.-3.1tue.
GIOVANNI MIRABASSI TRIO


ジョヴァンニ・ミラバッシ - GIOVANNI MIRABASSI


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 大西順子 - - report : JUNKO O...

2011/02/26

大西 順子 - JUNKO ONISHI
大西 順子 - JUNKO ONISHI


公演初日リポート:JUNKO ONISHI TRIO



大西順子が気心の知れたメンバーと、本日まで「ブルーノート東京」で圧巻のパフォーマンスを展開しています。彼女のブルーノート公演はいまや恒例になっていますが、話題の新作『バロック』を発表してからは初めての登場です。昨年の秋にはその参加メンバーと共にホール・コンサートを行ないましたが、より親密感のあるクラブで味わう大西順子の世界は格別です。

今回の共演者は、1994年のニューヨーク「ヴィレッジ・ヴァンガード」公演以来、折に触れて一緒にプレイし続けているレジナルド・ヴィール(ベース)と、やはり大西とは90年代初頭からのつきあいとなるグレゴリー・ハッチンソン(ドラムス)。90年代のジャズ界に彗星のようにあらわれた彼らも、すっかり貫禄を増し、大西との組み合わせは文字通りのオールスター・トリオといった感じです。

ぼくがハッチンソンと大西のコンビネーションを初めて聴いたのは確か1993年、五反田で行なわれたホール公演だったと思います。当初予定されていたベテラン・ドラマーのビリー・ヒギンズが病のため来日不可能となり、急遽ハッチンソンが参加したのでした。しかし大西との見事な連携はヒギンズの不在を補って余りあるもので、ハッチンソンは代役の域を超えた熱演で才能を強烈に印象付けてくれました。ぼくは「ブルーノート東京」の椅子に座りながら、今からもう20年も前になろうという当時のステージをダブらせつつ、さらにスケールを増した大西とハッチンソンの“音の対話”に聴き入ったのでした。

トリオが一丸となって疾走する「BACK IN THE DAYS」、ベースの胴体をパーカッション代わりにするだけではなく、スラッピング奏法まで織りまぜてレジナルド・ヴィールが熱演した「THE THREE PENNY OPERA」、往年のアーマッド・ジャマル・トリオに表敬した「DARN THAT DREAM」(左手にブラシを持ち、右手でハンド・ドラミングを繰り広げるハッチンソンが圧巻でした)などなど、リキの入ったパフォーマンスが次々と続きます。いっぽう、「NEVER LET ME GO」では染み入るようなバラード・プレイを聴かせてくれました。先日のロイ・ハーグローヴ公演ではロイみずからヴォーカルをとっていたスタンダード・ナンバーですが、大西のピアノもよく歌っていました。

ぼくはセカンド・セットを拝見しましたが、セット・リストを見るとファースト・セットもセカンド・セットも曲目のダブりは殆どありません。全セット通して聴きに来るファンの方がいらっしゃるというのも、とてもよくわかります。充実したトリオ・ジャズを、近距離でお楽しみください。
(原田 2011 2.25)


● 2.25fri.-2.26sat.
JUNKO ONISHI TRIO

大西 順子 - JUNKO ONISHI


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BILLY WOOTEN , SPEEDOMETER - - report : SPEEDOM...

2011/02/24

スピードメーター - SPEEDOMETER
スピードメーター - SPEEDOMETER


公演初日リポート:SPEEDOMETER featuring BILLY WOOTEN @Nagoya Blue Note



2月24日、「名古屋ブルーノート」に行ってきました。スピードメーター・フィーチャリング・ビリー・ウッテンの公演を聴くためです。

彼らは昨日(26日)「モーション・ブルー・ヨコハマ」に出演し、明日は「ブルーノート東京」のステージに立ちます。が、ウッテンやスピードメーターのCDの解説を書かせていただき、友人や知人に彼らの音楽を勧めてきた自分としては、なんとしてでも“来日第一声”の場に立ち会いたかったのです。
   
「名古屋ブルーノート」に着くと、ステージいっぱいにさまざまな楽器がセッティングされているのが目に付きました。上手(客席から向かって右)にはヴィブラフォンが貫禄たっぷりに場所を占めています。「ああ、この楽器をこの少し後に、ビリー・ウッテンが弾くのだ」と思うと、なんだかドキドキするではありませんか。なにしろウッテンは50年に及ぶキャリアの中で、この日が文字通り初めての日本公演なのです。彼は70年代初頭、ロイ・エアーズとともに人気投票の上位を争った実力者です。しかしここ20数年のロイは、少なくともライヴの場ではヴィブラフォンではなくマレット・シンセサイザーを演奏します。しかしウッテンは昔ながらのヴィブラフォンを使いながら、今を生きるファンたちを熱狂させ、踊らせます。
   
ステージにはまず、スピードメーターが登場します。リーダーでギタリストのレイ・グレイシーは2メートルはあろうかという長身、いっぽうベースのリチャード・ヒンデスは小柄です。ふたりがステージの前面に出て、お揃いのステップを踏みながら演奏すると観客はいっそう、沸きに沸きます。舞台の向かって左側ではホーン・セクションが渾身のブロウを繰り広げます。とくにバリトン・サックスでドスの利いた低音をひねりだすかと思えば、フルートでキャッチーなフレーズを連発したマット・マッケイはMVP級の大活躍でした。
   
ライア・カーリーやマイルス・サンコの歌声をたっぷりフィーチャーしたナンバーが続いた後、いよいよ御大ビリー・ウッテンの登場です。スピードメーターとは『ライヴ・アット・ジャズ・カフェ』という共演アルバムを残しています。マレットを持ち、走るようにしてステージにかけあがった彼が演奏したのは、定番「MONKEY HIPS AND RICE」など4曲。「MONKEY〜」は名盤『ライヴ/ザ・ウドゥン・グラスfeat.ビリー・ウッテン』に入っていたナンバーですね。4本のマレットでハーモニーをつけ、2本のマレットでソロをとるウッテンは、“これぞファンキー・ヴィブラフォン”というべきプレイを聴かせてくれました。ウッテンは自分のソロ・パートがないときも、一瞬だって動きを止めません。ひとりで踊ったり、客席の若い女性とステップを踏んだり、盛り上がるオーディエンスを撮影しながら、全身で音楽の場にいる喜びを発散していました。
   
終演後、バックステージを訪ねると、ウッテンは「日本が大好きになった。もっと早く来ればよかった。もっとたくさんの曲をやりたくてウズウズしているよ」と語ってくれました。横浜、東京公演ではさらに彼の演奏がフィーチャーされるに違いありません。あの名ギタリスト、グラント・グリーンを唸らせたヴィブラフォン・プレイが日本で聴ける喜びを、とことんまで味わいつくしたいものです。
(原田 2011/2/26)


SPEEDOMETER featuring BILLY WOOTEN
DJ:MURO
2.27sun. @BLUE NOTE TOKYO

スピードメーター - SPEEDOMETER


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HARGROVE - - report : ROY HAR...

2011/02/21

ROY HARGROVE - ロイ・ハーグローヴ
ROY HARGROVE - ロイ・ハーグローヴ


公演初日リポート:ROY HARGROVE QUINTET


トランペット・プレイだけではなく、おしゃれなファッション・センスでも人気を集めるロイ・ハーグローヴが、今年も元気な姿を見せてくれました。正統派ジャズからヒップ・ホップ系プロジェクトまで神出鬼没の彼ですが、今回はここ数年、ずっと続いているレギュラー・クインテット(5人編成)による演奏です。

共にフロント・ラインをつとめるジャスティン・ロビンソン(アルト・サックス)はロイとほぼ同時期、1990年代初頭にデビューしたミュージシャン。いっぽうリズム・セクションは若手揃いで、ピアノのサリヴァン・フォートナーは、この12月に24歳になったばかりです。ニューオリンズに生まれ、ニューヨーク移住後はジェイソン・モランに師事。最近は逸材テナー・サックス奏者、トニー・マラビーとも共演していますね。ベースのアミーン・サリームは1979年ワシントンDC出身で、同地のデューク・エリントン音楽院を卒業し、今はニューヨークを拠点に活動しています。かつてジョン・コルトレーンと共演していたジミー・ギャリソン(マシュー・ギャリソンの父)を思わせる、太い生音と強いタッチが印象的です。ドラムスのモンテス・コールマンは2007年からロイと共演し、ラッセル・マローン(ロン・カーター率いるゴールデン・ストライカー・トリオのギタリスト)の新作CDにも参加しています。

かつてロイはジョー・ヘンダーソン、ジャッキー・マクリーン、レイ・ブラウン、デヴィッド・ニューマンなど、今となっては二度と生で聴くことのできない熟練ミュージシャンと共演し、彼らに鍛えられて成長しました。そしていま、ロイは「今度は自分がその立場になる番だ」とばかりに、期待の新星をバンドに加え、バックアップしているのでしょう。

演奏曲はロイと同郷の大先輩、ピアニストのシダー・ウォルトンが書いた「HINDSIGHT」から始まりました。ほかにもデューク・ピアソン作「IS THAT SO?」、ジョン・ヒックス作「AFTER THE MORNING」、ウォルター・ブッカー作「BOOK'S BOSSA」など、いわゆるハード・バップを愛する者にはたまらない選曲が続きます。このへんのナンバーを、かつてさんざんジャズ喫茶で聴いたベテラン・ジャズ・ファンは少なくないのではないかと思います。その曲が今、ロイ・ハーグローヴ・クインテットによって新たな息吹を注がれて、蘇るのです。

ステージ後半になると、ロイは歌手としての魅力も発揮します。味のある歌声で、バラード「NEVER LET ME GO」をしっとりと聴かせてくれました。そして本編ラストでは、もはや定番の「STRASBOURG /St. DENIS」を演奏し、客席をさらに熱狂させます。この曲やアンコールの「SOULFUL」等はまさにクインテットの真骨頂。ヒップ・ホップを通過した者ならではの新鮮なアコースティック・ジャズの世界を楽しませてくれました。
また、アンコール曲のエンディングでは、ちょっとした演出があります。これを体験すれば誰もが、「ああ、ライヴに来てよかったな」と、さらに強く思うことでしょう。
(原田 2011 2.20)


● 2.20sun.-2.23wed.
ROY HARGROVE QUINTET

●2.25fri. はコットンクラブにて公演
●2.26sat. はモーション・ブルー・ヨコハマにて公演
●3.1tue. は 大阪:心斎橋クラブクアトロにて公演


ROY HARGROVE - ロイ・ハーグローヴ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ESPERANZA SPALDING - - report : ESPERAN...

2011/02/16

エスペランサ・スポルディング - ESPERANZA SPALDING
エスペランサ・スポルディング - ESPERANZA SPALDING


公演初日リポート:ESPERANZA SPALDING
-Chamber Music Society-


今年のグラミー賞で最優秀新人賞を獲得したエスペランサ・スポルディングが来日しています。そうです、受賞後初のステージがここ「ブルーノート東京」でおこなわれているのです。

きくところによると、グラミー受賞が報じられてから、公演の電話予約が殺到したとのこと。すでに熱心なジャズ・ファン、フュージョン・ファンの間では実力が知れ渡っているとはいっても、一般的にはまだまだ“売り出し中”というのが、正直なところ、これまでの彼女に対する認知度でした。しかし今回は、「エスペランサって、どんなひとなのだろう。ぜひライヴで聴いてみたい」と、いろんな層のリスナーが集まり、結果、押すな押すなの大盛況となりました。

ステージは最新作『チェンバー・ミュージック・ソサイエティ』同様、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ等の弦楽器をフィーチャーした内容です。オープニング・シーンではコートを着たエスペランサが登場。ソファに深く腰掛け、グラスを傾けながら弦楽アンサンブルの音に耳を澄ませます。それが終わるとコートを脱いで立ち上がり、ウッド・ベースを持って弾き語りを始めます。ここから約90分間、エスペランサは弓弾き、指弾きの両方でベースを操り、英語とポルトガル語で歌い、超絶的なスキャットを聴かせ、ダンスも見せてくれました。曲間はほとんどなく、MCもなし(全曲終了後に、メンバー紹介が行なわれました)。自身の持っているあらゆる面をオーディエンスにアピールするかのような、とても内容の濃いライヴでした。

まだ20代だというのに、ものすごい風格、貫禄です。彼女がスペインのAyvaというレーベルからファースト・アルバム(国内プレスは無し)を発表したとき、ぼくはそのディスク・レビューを書いたことがあります。シカゴではライヴも見ました。うまい奏者だと思いました。しかし、ここまで大ブレイクするとは、恥ずかしながら予想もしていませんでした。現在、エスペランサは“現代屈指のテナー・サックス王”ことジョー・ロヴァーノのバンドにも籍をおいています。名匠ロヴァーノに鍛えられることで、エスペランサの世界はさらに大きく豊かなものになることでしょう。

3月には「最優秀ゴスペル・ソング賞」を受賞したカーク・ウェイラム、4月には「最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞」に輝いたラリー・カールトンが相次いで登場します。グラミー・ウィナーを立て続けに、しかも至近距離で味わうことのできる贅沢。それが可能なのは、世界広しといえどもブルーノート東京だけではないでしょうか。
(原田 2011 2.16)


● 2.16wed.-2.19sat.
ESPERANZA SPALDING
-Chamber Music Society-


エスペランサ・スポルディング - ESPERANZA SPALDING


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