BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , KYLE EASTWOOD - - report : KYLE EA...

2011/02/10

KYLE EASTWOOD - カイル・イーストウッド
KYLE EASTWOOD - カイル・イーストウッド


公演初日リポート:KYLE EASTWOOD @COTTON CLUB


この2月11日から14日にかけて、ブルーノート東京ではカイル・イーストウッドのグループがステージを飾ります。ここでは、2月9日におこなわれたコットンクラブ公演をレポートさせていただきましょう。

メンバーはエレクトリック・ベースと変形ウッド・ベース(別名CZECH-EASE)を弾くカイル、トランペットのグリーム・フラワーズ、サックスのグリーム・ブレヴィンス、キーボードのアンドリュー・マコーマック、ドラムスのマーティン・ケインという、ファンにはおなじみの面々。皆、黒のコスチュームで統一しています。まるでファッション雑誌のモデルのようなメンバーたちですが、やはりひときわ光るのがカイルのハンサムぶりです。といっても優男というイメージではなく、なんともいえない逞しさ、骨太さを感じさせます。ますます父親クリント・イーストウッドの若い頃に似てきたな、という感じを個人的には受けました。

演奏曲は、春にリリースが予定されている新作からのナンバーを中心に、これまでの人気レパートリーや大ヒット映画「硫黄島からの手紙」のテーマ曲「LETTERS FROM IWO JIMA」を織り交ぜたもの。「SAMBA DE PARIS」、「CAFÉ CALYPSO」、「MARCIAC」など、当日演奏された曲名を並べるだけでも、近年のカイルの目指している方向性が伝わってくるようです。かつて『メトロポリタン』というアルバムを発表したカイルですが、彼の音楽に対する意欲はジャンルや国籍を超えて広がるばかりです。今度のニュー・アルバムも、多彩な響き、さまざまなリズムを集めたものになっていることは間違いないことでしょう。

新作発表前に、そこに収められているナンバーがいち早く聴けるのはライヴの場に足を運んだオーディエンスだけが味わえる喜びです。カイルは何年もの間、このバンドを大切に育て、サウンドをまとめあげてきました。ロマンティックでメロディアスなカイル・イーストウッドの音楽。バレンタイン・デイにふさわしい響きが、ここにあります。(原田 2011/2/9)


● 2.11 fri. - 2.14 mon. BLUE NOTE TOKYO
KYLE EASTWOOD
- St. Valentine's Day -




'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , LEE RITENOUR , MIKE STERN - - report : LEE RI...

2011/02/05

リー・リトナー - LEE RITENOUR
リー・リトナー - LEE RITENOUR


公演リポート:LEE RITENOUR & MIKE STERN with THE FREEWAY JAM BAND featuring SIMON PHILLIPS,JOHN BEASLEY & MELVIN DAVIS
@MOTION BLUE YOKOHAMA



2月4日の関東地方は、とても気持ちのよい気候でした。きくところによると、3月並みの暖かさだったそうです。

そんな暖かいさなか、沸騰するように熱いライヴが「モーション・ブルー・ヨコハマ」で繰り広げられました。東西フュージョン〜コンテンポラリー・ジャズを代表するスター、リー・リトナーとマイク・スターンの共演です。ロサンゼルスを拠点とするリトナー、ニューヨークを拠点とするスターンが一緒にライヴで演奏するのは、まさしくこの「モーション・ブルー・ヨコハマ」が、文字通り最初のことでした。しかしふたりは十数年前からの友人であり、会うごとに「いつか共演したいね」と話し合っていたそうです。しかし人気者の二人だけに、なかなかスケジュールの調整がつかず、今の今までライヴが延び延びになっていた、というわけです。

オープニングはジェフ・ベックの名曲「FREEWAY JAM」から始まりました。リトナーのCD『シックス・ストリング・セオリー』でふたりが共演していた曲ですね。もちろんライヴということもあって即興度は倍増、アドリブ・パートも目いっぱいとりながら演奏が進みます。リトナーのソロではスターンが、スターンのソロではリトナーがバッキング(伴奏)をつけるのですが、これがまた絶妙な按配でソリストのプレイに絡みます。お互いを笑顔で見つめながら、ものすごい速さでギターをかきならす両者に、客席のいろんなところから歓声や掛け声が沸き起こります。

次に演奏した「LAY IT DOWN」は、CDではリトナーとジョン・スコフィールドとの共演曲でした。それをリトナーとスターンの共演で聴くというのも、このライヴならでは、といえます。ふたりは決して「俺が、俺が」というプレイをしません。互いのプレイにすかさず反応しながら、演奏をよりエキサイティングな方向に高めてゆきます。今回のステージに際し、あえて“フリーウェイ・ジャム・バンド”というユニット名を名乗ったのも、単なるギター・バトルではなく、メンバー5人全員が作り出す“バンドの音”を楽しんでもらいたいという意向があるのでしょう。たしかに、ジョン・ビーズリーのキーボード、メルヴィン・デイヴィスの7弦ベース(ギターより弦が多いのです)、サイモン・フィリップスのドラムスも、ふたりのギタリストに負けず劣らずの存在感を示していました。ザ・フー、TOTO、ジェフ・ベック等と演奏してきたカリスマ・ドラマー、サイモンの超絶技巧と巨大なドラム・セットをクラブ規模の会場で見ることができるのも、公演の大きな魅力のひとつです。

フリーウェイ・ジャム・バンドは本日「コットンクラブ」で公演し、7日から「ブルーノート東京」に登場します。今度この5人がいつ顔を揃えるか、まったく予想がつきません。ぜひ来日公演に足を運んで、彼らのバンド・サウンドを満喫していただけたらと思います。



● 2.7mon.-2.10thu. BLUE NOTE TOKYO

LEE RITENOUR & MIKE STERN with THE FREEWAY JAM BAND featuring SIMON PHILLIPS,JOHN BEASLEY & MELVIN DAVIS




'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PEABO BRYSON - - report : PEABO B...

2011/02/02

ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON
ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON


公演初日リポート:PEABO BRYSON with special guest CHANTÉ MOORE



1年で最もロマンティックな時期であるバレンタイン・シーズンに、今年もピーボ・ブライソンはラヴ・ソングの花束を持ってきてくれました。「ピーボのライヴを見なければバレンタインの来た気がしない」と、息せききってこの公演に駆けつけた常連ファンのみなさんも多いのではないでしょうか。

もちろんオープニング・ナンバーでは恒例の“全員握手”がおこなわれます。全米No.1ヒットを持つグラミー・ウィナー、大スターのピーボが、客席をくまなくまわって握手してくれるのです。その大きく暖かい手には、彼がいままで身につけてきたさまざまな音楽経験がしみこんでいるかのようです。オーディエンスはもちろん大喜び、握手の後は熱唱につぐ熱唱でクラブの熱気をどんどん高めていきます。

毎年、心のこもったショウを聴かせてくれるピーボですが、彼は登場ごとにガラリと音楽性を変えるようなアーティストではありません。自分の心から愛する曲を厳選し、長い時間をかけてじっくり歌いこんでゆくタイプです。スティングの「SET THEM FREE」、シャーデーの「KING OF SORROW」あたりはここ数年、必ずとりあげているナンバーですが、その熟成された歌唱はカヴァー・ヴァージョンの域を超えています。まさしくピーボは、こうした曲を自分の血肉としているのです。

“デュエットの達人”ピーボは毎回、素敵な女性シンガーを連れてきてくれます。今回、パートナーを務めたのはシャンテ・ムーアです。ピーボとは2世代ぐらい離れているのではないかと思いますが、実力者どうしのコンビネーションに年齢の差は感じられません。シャンテはソロ・ナンバー「LOVE'S TAKEN OVER」でトレードマークといえる超高音を響かせ、ピーボの十八番「TONIGHT, I CELEBRATE MY LOVE」でも、オリジナル・ヴァージョンで歌ったロバータ・フラックとは一味ちがう軽やかな歌声で見事なハーモニーを聴かせました。

アップ・テンポのナンバーで観客を乗せ、ギターの弾き語りで酔わせ、バラードでうっとりさせ、デュエットで心を奪い去るピーボ。今回も彼の心憎いほどのエンタテインメントに、120%の満足を味わいました。
(原田 2011 2.1)


● 2.1tue.-2.5sat.
PEABO BRYSON with special guest CHANTÉ MOORE


ピーボ・ブライソン - PEABO BRYSON


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , EARL KLUGH - - report : EARL KL...

2011/01/27

アール・クルー - EARL KLUGH
アール・クルー - EARL KLUGH


公演初日リポート:EARL KLUGH


アコースティック・ギターでフュージョンを演奏した元祖がアール・クルーである、といっていいでしょう。1970年代に彼がデビューしたときの状況は、まさに“彗星のような”という形容がぴったりでした。

彼は優しく、暖かく、さわやかなサウンドで、多くの聴き手をジャズ〜フュージョンの世界に案内してきました。その親しみやすさは今もまったく変わっていません。音作りはさらに熟成され、テクニックには一層の磨きがかかっています。流行や時流にとらわれず、自分の信じる音楽を追求し続ける姿勢には頭が下がります。

この日のステージは、近作『The Spice of Life』からの曲に‘70年代からの定番を交えたプログラムでおこなわれました。オープニングでいきなり、ドラマーがマーチング・リズムを打ち出します。大定番のひとつ「CABO FRIO」です。しかしアールの指先からは、往年のレコードにはなかったフレーズが次々と飛び出してきます。「2011年のCABO FRIO」に接して、ぼくはすっかりいい気分になりました。続く「OCEAN BLUE」は伝説のギタリスト、ウェス・モンゴメリーへのアールなりのトリビュートといったところでしょうか。ウェスの1960年代後半のアルバムに入っていそうな曲調を、ウェス譲りの親指を使ったオクターヴ奏法を披露します。指弾きによる美しい音色がトレードマークのアールですが、親指だけによるプレイもまた魅力的です。

ほかにもベース、ドラムスとのトリオによる「SAY A LITTLE PRAYER」、無伴奏ソロによる「LIKE A LOVER」など、とにかく盛りだくさんの内容でした。バンド・メンバーにも大きくスポットが当てられていて、初期からの人気レパートリーである「DR. MACUMBA」ではキーボード奏者のデヴィッド・スプラッドリーがヴォコーダーで客席を煽ります。ベースのアル・ターナーは「MOVIN'」でリード・メロディをとり、ドラムスのロン・オーティスも自身のソロ・アルバムからの「TAKE TIME」で思う存分活躍の場が与えられます。

もうひとつ忘れてはならないのがソプラノ・サックス、アルト・サックス、フルート、ピッコロに加え、口笛まで吹いたネルソン・ランジェールの貢献です。GRPに何枚もアルバムを残している彼ですが、来日は久しぶりではないでしょうか。オリジナル曲の「SONORA」は、ヘンリー・マンシーニの「ひまわり」やジョニー・マンデルの「いそしぎ」に通じる、こよなく美しいメロディを持つナンバー。ネルソンは口笛でしっとりと、文字通り歌いあげるように聴かせてくれました。「こんなふうに口笛が吹けたらどんなに楽しいだろう」と、ついうらやましくなってしまったのはぼくだけではないでしょう。
(原田 2011 1.26)



● 1.26wed.-1.29sat.
EARL KLUGH


●1.31mon. はコットンクラブにて公演


EARL KLUGH - アール・クルー


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RICHARD BONA - - report : RICHARD...

2011/01/22

RICHARD BONA - リチャード・ボナ
RICHARD BONA - リチャード・ボナ


公演初日リポート:RICHARD BONA


リチャード・ボナのバンドは文字通りの多国籍集団です。そしてライヴには、さまざまなタイプのオーディエンスがつめかけます。ジャズ〜フュージョン・ファン、ワールド・ミュージック・ファン、ポップス・ファン、ベース・ファンなどなど。ベーシストとして、シンガー・ソングライターとして、バンド・リーダーとして、エンターテイナーとして、今日もボナは風通しの良い音作りで楽しませてくれるのです。

ステージに登場したボナはいきなり、4弦のフレットレス・ベースを手にします。そして猛烈に弾き始めました。ウェザー・リポート(ジャコ・パストリアス)の「TEEN TOWN」です。「ジャコがいなければ、ぼくはベースを弾いていなかっただろう」とインタビューで語っているほどのジャコ・フリークであるボナですが、ジャコ・ナンバーを弾く彼の表情は、いつもよりもさらに嬉しそうです。それでいて指は目まぐるしく、狂いなくフレット上を動いています。ジャコが演奏する「TEEN TOWN」は何十種類も出回っていますが、ボナが手本にしたのはウェザー・リポートのアルバム『ヘヴィー・ウェザー』に入っているヴァージョンのようです。

この1曲でファンの心を完全に掴んだあと、シンガー・ソングライター=ボナの、めくるめく世界が展開されます。5弦のベースに持ち替え、彼以外の誰にも真似のできない弾き語りを披露します。もはや彼の右腕といっていいであろうエティエンヌ・スタドウィックのキーボードが渋く光り、逸材オベド・カルヴェアは足カウベル(カウベルとフット・ペダルで踏む)を取り入れたドラム・プレイでボナのベースと絡み合います。

ぼくがオベドの演奏を初めて聴いたのはイスラエル出身のサックス奏者、エリ・デジブリのCD『ライヴ・アット・ルイス649』だったと思います。メロディ楽器の一音一音にあいづちを打つような“聴き上手”、キメの細かいドラム演奏に圧倒されました。そこでは4ビート・ジャズを演奏していたのですが、ボナのバンドにおける叩きっぷりも見事なものでした。カントリー&ウエスタン風フレーズとファンキーなリズムが融合した「AFRICAN COWBOY」は、ボナがMCで語ったところによると「オベドに捧げた曲」なのだそうです。

後半では、ボナの一番の人気曲といっていいでしょう「O SEN SEN SEN」も登場。会場はさらに盛り上がり、アンコールまでハイテンションなプレイが続きました。ボナの得意技であるループを使ったひとりコーラスはありませんでしたが、逆にいえばそれを必要としないほど、今のボナ・バンドは充実しているのです。
(原田 2011 1.21)

● 1.21fri. - 1.24mon.
RICHARD BONA


● 1.25tue. はコットンクラブにて公演

RICHARD BONA - リチャード・ボナ


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