BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 松居慶子 - - report : KEIKO M...

2010/12/18

松居 慶子 - KEIKO MATSUI
松居 慶子 - KEIKO MATSUI


公演初日リポート:KEIKO MATSUI
-The Second Annual Keiko Matsui Christmas Show-


ワールドワイドに活躍するスムース・ジャズ界のスター、松居慶子のクリスマス・シーズン公演が始まりました。

彼女のウェブサイトを見ると、「よくもまあ、こんなに多くのライヴを!」といいたくなるほど、ツアーを繰り返していることがわかります。このブルーノート東京公演の前にも3週間のヨーロッパ・ツアーに出ていました(そのあたりのエピソードは、ぜひ実際の公演に足を運んで、彼女自身のMCでお楽しみください)。バンドの音がさらに緊密感を増したところで来日してくれた、といっていいでしょう。

1曲目は「MY FAVORITE THINGS」。ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」からのナンバーですね。一時期はJRのテレビコマーシャルでも使われていました。この曲を松居慶子は情熱的なアレンジで演奏します。エッジの立ったアコースティック・ピアノの音が、場内に響き渡ります。続く「DOLL」ではステージ前方に配置されたシンセサイザーを演奏。彼女はその他、曲によってショルダー・キーボードも弾き、客席に乱入してファンを大いに熱狂させました。

中盤では、来年1月25日に全米発売されるニュー・アルバム『THE ROAD...』からのナンバーも演奏されました。前作『MOYO』以来、約4年ぶりのレコーディングになるそうです。ニューヨークとロサンゼルスで録音し、リチャード・ボナとの合作も含むとのことですが、「THE ROAD...」、「AWAKENING」と収録曲が“プレミア演奏”されると、いやがおうにもリリースが待ち遠しくなります。もちろん新作には現在の松居慶子バンドによる演奏もたっぷり収められているとのことなので、こちらも楽しみです。

プログラム後半では、このライヴならではの特別企画としてクリスマス・ソングを演奏。「WE THREE KINGS」、ボサノヴァ調の「SANTA CLAUSE IS COMING TO TOWN」などを立て続けに楽しませてくれました。パーカッションのスティーヴ・リードがいつの間にかサンタクロースの帽子をかぶり、愛嬌をふりまいていたのもよかったですね。数々の小物を取り入れたパーカッション・セットを操るスティーヴのプレイは見ていて愉快、聴いて心地よく、松居慶子バンドのサウンドに深い奥行きを加えておりました。
(原田 2010 12.17)


● 12.17fri.-12.19sun.
KEIKO MATSUI
-The Second Annual Keiko Matsui Christmas Show-


松居 慶子 - KEIKO MATSUI


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - report : SAM MOO...

2010/12/14

サム・ムーア - SAM MOORE
サム・ムーア - SAM MOORE


公演初日リポート:SAM MOORE



ワン・アンド・オンリーの“ミスター・ソウルマン”、サム・ムーアが元気な姿を見せてくれました。
ホーン・セクション、リズム・セクション、バック・コーラス(みなさん、お綺麗です。サムの好みなのでしょうか)で構成された大所帯を従えての、貫禄あふれるステージです。音楽監督(バンマス)はサム・ファンにはもうすっかりおなじみ、ひょうきんベーシストのイヴァン・ボドリーが担当します。

インストゥルメンタルの「PETER GUNN」等、ノリノリのナンバーが続いたところで、「HOLD ON, I'M COMING」のメロディが演奏されます。途端、客席のボルテージは急上昇。本日のメイン・イヴェント、サム・ムーアのステージが始まるのです。以前の公演におけるサムは、「HOLD ON, I'M COMING」に乗って舞台に現れても、決して歌詞を歌いませんでした。「過去、飽きるほど歌ってきたので、もう歌う気はないんだ」というようなことを語っていたインタビューを読んだことがあります。しかしこの日は、軽くですが、ワン・コーラス歌ってくれました。たったひと声で、サムは観客をひきつけてしまいました。

「I THANK YOU」などサム&デイヴのヒット曲はもちろんのこと、ベン・E・キングの「DON'T PLAY THAT SONG」、レイ・チャールズの「I'VE GOT NEWS FOR YOU」等のR&Bクラシックスもサム流に解釈。ジャコ・パストリアスのアルバムにゲスト参加したときに歌った「COME ON, COME OVER」が出てきたのも嬉しかったですね。イヴァンのベースも、目を閉じて聴けば“伝説の天才”ジャコが弾いているかのように響きます。
サムは、たまにマイクから離れて生声で歌うのですが、これもまた絶品なのです。ゴスペルで鍛え、激動のR&B〜ソウル・ミュージック・シーンを疾走した持ち主の喉は、今も楽器の音を突き破って届いてくるほど鮮やかで、生き生きとしています。

熱いヴォーカルと、見事にまとまったバック・バンド、そしてファンの心を知り尽くした選曲。これまでサムの来日公演に何度も足を運んできた方、そして初めてサムを聴こうという方、両方を満足させてくれる内容だと思います。
(原田 2010/12/13)




● 12.13mon.-12.15wed.
SAM MOORE


サム・ムーア - SAM MOORE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , BOB JAMES , FOURPLAY , HARVEY MASON - - report : FOURPLA...

2010/12/06

フォープレイ - FOURPLAY
フォープレイ - FOURPLAY


公演初日リポート:FOURPLAY



新生フォープレイが、最新作『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』を携えてブルーノート東京に戻ってきました。

ボブ・ジェームス、ネイザン・イースト、ハーヴィー・メイソンという不動の顔ぶれに、今年から新ギタリストとしてチャック・ローブが参加。正直に申し上げて日本では前任のリー・リトナー、ラリー・カールトンほどの知名度は持ち合わせていませんが、西海岸にベースをおくふたりとは異なり、ニューヨークに生まれ育ち、モダン・ジャズの強いバックグラウンドを持つ(ジム・ホールに師事し、スタン・ゲッツのバンドで本格的なプロ入りを果たしました)チャックの加入は間違いなくフォープレイに新風を吹き込んでいます。

黒いスーツ、赤いネクタイで統一した4人がステージに向かうだけで、超満員の場内は拍手と声援でいっぱいになります。オープニングにはアルバム『スノウバウンド』から「ANGELS WE HAVE HEARD ON HIGH」を演奏、ひと足早いクリスマスを届けてくれた後は『X』から「EASTERN SKY」をプレイ。ネイザンのスキャット・ヴォーカルも冴えに冴えています。きくところによると彼はこの夏、アキレス腱を切ってしばらく活動停止していたそうですが、ステージに立つ姿はすっかり復調、元気そのものです。3曲目からはお待ちかね、『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』からのナンバーが続きます。MIDIピアノを自由自在に駆使するボブ、愛用の緑色のソリッド・ギターとアームのついたセミアコ・ギターを持ち替えるチャック(ステージにはアコースティック・ギターも置いてありましたが、初日のファースト・セットでは弾きませんでした)、流れるようなスティックさばきでサポートに徹するハーヴィー、笑顔を絶やさずに超絶フレーズを決めるネイザン。ソロ活動も盛んな4人ですが、やはりフォープレイとして演奏するときの気持ちは格別なのでしょう、彼らの“一緒にプレイする喜び”が伝わってくるようなステージでした。

来年、フォープレイはアルバム・デビュー20周年を迎えます。グループができた当初、ボブはあるインタビューでこう語っていました。「モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のような存在になるのが目標だ」。MJQは結成されてから22年後に一度解散しました。しかしフォープレイはこのまま20年、25年、30年と突っ走ってくれるような気がします。
なお、彼らは 12/10fri、新日本フィルハーモニックオーケストラとの競演という一夜限りの歴史的スペシャル・パフォーマンスがあります。こちらもお見逃しなく。
(原田 2010/12/5)


● 12.5sun.-12.8wed.
FOURPLAY

● 12.10 fri.
FOURPLAY Symphonic Special Night
すみだトリフォニーホール

フォープレイ - FOURPLAY


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHICK COREA , CHICK COREA & JOHN McLAUGHLIN - - report : CHICK C...

2010/12/04

チック・コリア - CHICK COREA
チック・コリア - CHICK COREA


公演初日リポート:CHICK COREA TRIO
featuring CHRISTIAN McBRIDE & BRIAN BLADE



「ニュー・トリオ、ニュー・ミュージック!」
すっかりスリムになったチック・コリアが発するこの一声から、“新・黄金トリオ”によるステージが始まりました。ベースはクリスチャン・マクブライド、ドラムスはブライアン・ブレイドです。あらゆるタイプの音楽をこなす3人ですが、今回のステージはオール・アコースティック。そして猛烈にスイングするモダン・ジャズに彩られていました。

オープニングは、トランペット奏者ケニー・ドーハムの書いた「LOTUS BLOSSOM」。ぼくの記憶に間違いがなければ、ケニーは60年代後半にジョー・ヘンダーソンと双頭ビッグ・バンドを組んでいました(レコーディングは残っていません)。そこでピアノを弾いていたのがまだ20代半ばだったチックです。この曲も当時、よく演奏されていたのではないでしょうか。チックの指は鍵盤上を軽快に走り、マクブライドのベース・ラインがそれにぴったりとついてゆきます。ブレイドは先の細いスティックを使い、シンバルをあらゆる方面から叩いてサウンドにバラエティを加えます。

3人の醸し出す響きは限りなく生音に近いものでしたが、それが会場内にくまなく拡がったときの快感には言葉が見つかりません。マクブライドは“これぞウッド・ベース”というべき胴や弦の鳴りをふんだんに聴かせ、ブレイドの一打一打は空気と溶け合います。生音のしっかりしたプレイヤーが集まっているところにも、このニュー・トリオの大きな魅力があるのです。

名匠アーマッド・ジャマルに捧げた「YOU’RE MY EVERYTHING」、チックがこよなく尊敬するセロニアス・モンクの「I MEAN YOU」等、気合の入った演奏が最後まで続きます。そして本編ラストでは、チックの名を高めた初期の代表作『NOW HE SINGS、NOW HE SOBS』からタイトル曲が披露されました。この曲が作られたのは今から40年以上も前のことですが、メロディ、ハーモニー共に少しも歳月を感じさせません。マクブライドやブレイドがチックのピアノに絡みつくようなプレイを演じ、この古典に新鮮味を加えてゆきます。なるほどこれは、確かに“ニュー・ミュージック”です。

アンコールに飛び出したのは、ジョー・ヘンダーソンの書いた「ISOTOPE」。先日おこなわれたスタンリー・クラーク・トリオの公演ではオープニングで演奏されていたナンバーですが、チック・コリア・トリオが取りあげるとより渋く、ブルージーな感じになります。そこがぼくにはとても粋に感じられました。

今回のライヴもいつものチック公演と同じように、開演前後のBGMがありません。ステージ上のライトも一定です。あたかもニューヨークのライヴ・スポットにいるような気分で、ニュー・トリオのパフォーマンスを味わわせていただきました。
(原田 2010/12/4)



● 12.3fri.-12.4sat., 12.9thu.-12.12sun.
CHICK COREA TRIO
featuring CHRISTIAN McBRIDE & BRIAN BLADE


チック・コリア - CHICK COREA


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , VINCENT GALLO - - report : VINCENT...

2010/12/01

VINCENT GALLO - ヴィンセント・ギャロ
VINCENT GALLO - ヴィンセント・ギャロ


公演初日リポート:VINCENT GALLO

俳優、映画監督、画家、ミュージシャンなどさまざまな顔を持つ男がヴィンセント・ギャロです。「天は二物を与えた」どころか、ギャロの場合、天から三物も四物も与えられ、しかも、いずれも高く評価されているのですから、心憎い限りです。『Essential Killing』という作品で本年度のヴェネチア国際映画祭で最優秀主演男優賞に輝いたのも記憶に新しいですね。

今回はミュージシャンとしてのギャロが120%満喫できるクラブ公演です。俳優として知られるようになる前から音楽活動をしていたというだけあって、ギターもヴォーカルもキャリアの深みを感じさせ、いわゆる“役者さんの音楽”だと思って接すると吹っ飛ばされるほどのインパクトを受けることでしょう。曲によってはベースやドラムスも演奏し、さらにメロトロンまで弾いておりました。メロトロンというのは1960年代後半から70年代前半にかけて、主にプログレッシヴ・ロックの世界で使われた楽器で(といっても、ジャズ畑でもハービー・ハンコック等が演奏しておりましたが)、元祖サンプリング・マシーン的な楽器です。鍵盤を押すと中に入っているテープがまわり、ストリングスのような音やフルートのような音を出します。理屈の上ではデジタル・シンセでも似たような響きは出せるはずなのですが、あえてメロトロンを持ってくるあたり、ギャロの“ヴィンテージ志向”と音楽オタクぶりを感じ、なんだか彼が一層身近に感じられました。

オープニング・ナンバーでギャロはオーディエンスに背中を向け、アンプにギターを近づけながら演奏します。2曲目からは正面を向いてくれるかなと思ったのですが、それはかなわず、ドラムスを叩いているとき以外は基本的に背中、もしくは横顔しか客席からは見えなかったはずです。ヴォーカルはつぶやくように、ささやくように披露されました。その歌声には晩年のチェット・ベイカーの歌唱を思わせる退廃的な美しさがありました。映画「ティファニーで朝食を」からの「MOON RIVER」、キング・クリムゾンの「MOONCHILD」等のカバーも絶品で、ぼくはなんだか霧深き月夜をさまよっているような気分になりながら、ギャロの一音一音に耳を傾けてしまいました。他にも、2001年にリリースしたアルバム『When』からのナンバーも数曲演奏がありました。

曲間のMCもおじぎもなく、最後に「サンキュー、グッドナイト」と言っただけ。しかし、このそっけなさがいいのです。曲目やメンバーを丁寧に紹介し、深々とおじぎをし、有名曲で観客を乗せ、何度もアンコールに応えるだけがライヴ・パフォーマンスではありません。ぼくはギャロの“つっぱり”が、すごく気持ちよいものに感じられました。“俺はちっともつっぱってないよ”と返されそうですが・・・。
彼にはいつまでも、ヴィンセント・ギャロという美学を貫き通してほしいものです。
(原田 2010 11.30)


● 11.30 tue. - 12.2 thu.
VINCENT GALLO

*** 本公演はアーティストの意向により、ライブの写真及びセットリストの掲載がございません。



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