BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RAMSEY LEWIS - - report : RAMSEY ...

2010/09/29

ラムゼイ・ルイス - RAMSEY LEWIS
ラムゼイ・ルイス - RAMSEY LEWIS


公演初日リポート:RAMSEY LEWIS "Colors―The Ecology of Oneness"
-A Suite for Jazz and New Media-


ラムゼイ・ルイス、入魂の公演が昨日から始まっています。

ヒット曲だけでステージを組めるほど楽曲に恵まれているラムゼイですが、今回は書き下ろしのナンバー「Colors―The Ecology of Oneness - A Suite for Jazz and New Media -」のワールド・プレミアがメインです。

「ブルーノート東京」の大きな入り口ドアを開け、階段を下りて、クロークにたどりつくと、スタッフの方が本公演のテーマについてラムゼイが解説したパンフレットを手渡してくれます。客席でそれを読みながら「いったいどんな内容になるのだろう」とわくわくしていると、ラムゼイ・ルイス・トリオの面々が登場しました。むろん全員がビシッとスーツ姿で決めています。思えば1956年、ラムゼイの最初のアルバム名は『ジェントルメン・オブ・ジャズ』でした。時が流れても、ラムゼイは常に、「バンド・メンバー全員が紳士たれ」と命じているのでしょう。

この組曲がどういうコンセプトで作られたかについては、ぜひ「ブルーノート東京」のホームページや、ライヴ前に配られるパンフレットをごらんいただければと思います。ぼくがそこに付け加えることは、なにもありません。内容は全8楽章で構成されていて、約1時間にわたって奏でられました。連続演奏するのではなく、楽章ごとにポーズ(休止)をおき、メンバーは深々とおじぎをします。プレイ中、背後のスクリーンには大地、植物、人間、動物、花などの画像が映し出されます。ラムゼイはもともとクラシック音楽への造詣が深く、そのクラシカル〜シンフォニック指向は最近、とみに高まっているような気がします。ぼくは30年来の彼のファンですが、「あんまりシンフォニックな組曲を聴かせられても、それはそれで個人的にはしんどいなあ」という気持ちも、正直なところありました。

しかしそれは杞憂でした。やっぱりラムゼイは聴き手を楽しませ、和ませる達人です。クラシック、ファンク、ラテン、ゴスペルの要素がほどよく混ざり合った響き、ポップでキャッチーなメロディ展開は、理屈抜きでこちらの体を揺らしてくれます。とくに快かったのは第7楽章にあたる「YELLOW:JUBILATION“ANIMALS”」です。このメロディ、これこそ長年にわたり世界中で愛されてきたラムゼイ・ルイス節のエッセンスではないでしょうか。もちろんステージ後半では、あの大ヒット曲「THE IN CROWD」等も聴かせてくれました。

当日は昼からリハーサルをおこない、一旦ホテルに戻ってからまた「ブルーノート東京」に戻って開演直前までリハーサルを重ねていたとききます。この来日ステージに寄せるラムゼイ・ルイス・トリオの気迫と情熱は、尋常ではありません。彼らのパッションを、ぜひ至近距離で浴びてください!

また10月2日(土)の12時半から、ラムゼイのトーク・ショウもおこなわれます。ピアニスト、作曲家、教育者、コメンテーター等、幅広い活動を続ける彼を、さらに身近に感じることのできる貴重な機会です。こちらもぜひ、お越しくださいませ。
(原田 2010/9/28)


● 9.28tue.-10.2sat.
 RAMSEY LEWIS "Colors―The Ecology of Oneness"
 -A Suite for Jazz and New Media-


ラムゼイ・ルイス - RAMSEY LEWIS


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2010/09/24

リー・リトナー - LEE RITENOUR
リー・リトナー - LEE RITENOUR


公演初日リポート:LEE RITENOUR "6 STRING THEORY"
-50th Anniversary Celebration-

場内が暗くなると同時に、リー・リトナーが放った数々のヒット・チューンがメドレー形式で流れます。どんな曲がかかるのかはあえて伏せさせていただきますが(その場にいるオーディエンス限定のお楽しみということで・・・)、名曲、定番が目白押しです。

このギタリストが音楽界に刻んできた足跡に改めて感服していたら、いつの間にかリトナー・バンド全員がバンドスタンドにあがり、演奏を始めました。1曲目に選ばれたのは、あの「CAPTAIN CARIBE」。いうまでもなくリトナーの十八番であり、70年代フュージョン界の国歌的なナンバーです。リトナーは笑顔を浮かべながら、相変わらずの艶やかなトーンとタイトなピッキングで、この名曲に今日の息吹を注いでいきます。

続いてブラジル音楽好きのキャラクターを全開したアントニオ・カルロス・ジョビンのカヴァー「STONE FLOWER」、フルアコ・タイプのエレクトリック・ギターを弾きまくる自作「WES BOUND」と、ファン垂涎のナンバーが続きます。「WES BOUND」はタイトル通り伝説のジャズ・ギタリストであるウェス・モンゴメリーに捧げた曲ですが、リトナーはウェス風の親指奏法はもちろんのこと、スライド・プレイも交えながら、曲をどんどん発展させていきます。かつてボブ・マーリーに捧げた『ア・ツイスト・オブ・マーリー』というアルバムを制作したことのあるリトナーですが、この日は数あるマーリーの代表曲の中から「GET UP, STAND UP」も取りあげました。

もちろん新作『シックス・ストリング・セオリー』からのナンバーも聴かせてくれました。アルバムはB.B.キング等、数多くのギタリストとの共演セッションで占められていましたが、「LAY IT DOWN」のライヴ用にアレンジされたヴァージョンはよりハードに、エッジの立ったものになっていました。

新メンバーに選ばれたラリー・ゴールディングスは、メイシオ・パーカーやジョン・スコフィールドとの共演でも知られるキーボード奏者。最近はジェームズ・テイラーとも活動しています。リトナー・バンドではキーボードやオルガンの他に鍵盤ハーモニカもプレイし、多才ぶりを強く印象づけました。リトナーとは長年の好パートナーであるメルヴィン・デイヴィスはベースの他に貫禄たっぷりのスキャット・ヴォーカルも披露し、“アース、ウィンド&ファイアー”のメンバーだったソニー・エモリーは見ても聴いても楽しめるドラム・プレイで喝采をさらいました(「SMOKE 'N' MIRRORS」での蛍光スティックを使った超絶ソロには、誰もが驚嘆することでしょう)。

ところで今回の公演は、リトナーのギター生活50周年を記念するスペシャルなライヴです。と書くと、「リトナーってそんなにトシだったっけ」といわれそうですが、そうではありません。それほど幼い頃から彼はギターに親しみ、弾き続けてきた結果の50年なのです。リトナーの“ギターの旅”は、これからさらに雄大に、パワフルに続いていくことでしょう。
(原田 2010/9/23)


● 9.23thu.-9.27mon.
LEE RITENOUR "6 STRING THEORY" -50th Anniversary Celebration-


リー・リトナー - LEE RITENOUR


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2010/09/21

ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO
ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO

公演初日リポート:FABRIZIO BOSSO QUARTET with ROBERTO CECCHETTO "SPIRITO LIBERO"



ニコラ・コンテ・ジャズ・コンボやハイ・ファイヴの一員としての出演で、すっかり「ブルーノート東京」に欠かせない存在となったファブリッツィオ・ボッソがついに自身のバンドで登場しました。しかも今回はボッソよりひと世代上にあたるイタリア・ギター界の中堅、ロベルト・セチェート(ボッソの発音は“シェセート”に近い)をスペシャル・ゲストに迎えてのステージです。

ぼくが今から10年近く前、エンリコ・ラヴァの『エレクトリック・ファイヴ』というCDでロベルトのギターを初めて聴きました。第一印象は、“ものすごくセンスのいい伴奏をするなあ”。彼は他にも、パオロ・フレズともよく共演しています。つまりボッソ登場以前の、最も優れたイタリアン・ジャズ・トランペット奏者とされるふたりとプレイしてきたのです。そんなロベルトが、いま最も旬なトランペッターのひとりであるボッソと、目の前でライヴを繰り広げるのですから、これが興奮せずにいられましょうか。
楽屋から客席に向かう間、“もう待ちきれない”とばかりにボッソはトランペットを吹き始めます。大きな生音がクラブ中にひびきわたり、いきなりハイトーンが炸裂します。と思ったら一転、低音でリフ(短いフレーズ)を繰り返し、バンド・メンバーたちに鋭いまなざしを向けました。やがてベースのルカ・ブルガレッリがボッソと同じフレーズをユニゾンで弾き、そこにドラムスのロレンツォ・トゥッチがアフロ風ビートで絡みます。3分ほど過ぎたところで、ぼくはようやく気づきました。これはディズニー映画の主題歌「SOMEDAY MY PRINCE WILL COME(いつか王子様が)」ではないか、と。それほどボッソのアレンジは、この曲の従来のイメージ(3拍子、可憐、ソフト)を崩すものでした。こんな刺激的な「王子様」、聴いたことがありません。

2曲目の「BOSSAND」ではロベルトのギターが炸裂します。今回のバンドにはピアニストのルカ・マヌッツァがいるからでしょうか、あえてコード(和音)のプレイを控え、単音によるアドリブに的を絞って演奏しているように感じられました。が、これがまた美味なのです。ジョン・スコフィールドをさらに辛口にしたような音色、そして粘っこいフレージングには、ロベルトの底力がたっぷり反映されていました。続く「BLACK SPIRIT」はコード部分とモード(音階)部分を巧みにミックスし、そのうえ転調が混ざるというアクロバティックなナンバー。これをボッソたちは超アップ・テンポの4ビートでこなします。疾走感あふれる展開を、余裕綽々でこなすボッソのロング・ソロは文句なしに鳥肌モノでした。

ほかにも3種類のミュート(ストレート、ハーマン、プランジャー)を駆使する曲あり、エフェクターを使う曲あり。ラストでは必殺のバラード「NUOVO CINEMA PARADISO(ニュー・シネマ・パラダイス)」で締めくくる等、とにかく盛りだくさんのステージでした。1本のトランペットでこんなに多彩な世界を創れるんだよ、というボッソの自信にあふれた声がきこえてくるようでした。客席はもちろんフルハウス状態。ボッソは、自己のグループにおいても、「ブルーノート東京」のオーディエンスを見事にノックアウトしたのです。
(原田 2010/9/20)


● 9.20mon.-9.22wed.
FABRIZIO BOSSO QUARTET
with ROBERTO CECCHETTO "SPIRITO LIBERO"

ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , THE SOUND STYLISTICS - - report : THE SOU...

2010/09/18

ザ・サウンド・スタイリスティックス - THE SOUND STYLISTICS
ザ・サウンド・スタイリスティックス - THE SOUND STYLISTICS


公演初日リポート:THE SOUND STYLISTICS



アメリカにはザ・スタイリスティックスという老舗の男性ヴォーカル・グループがありますが、昨日から「ブルーノート東京」に出演しているザ・サウンド・スタイリスティックスはUKを代表する凄腕ミュージシャンが集まったジャズ・ファンクのドリーム・チームです。

もともとはレコーディングのためのプロジェクトだったそうですが、「一緒に演奏しているとあまりにも気分がいいので、ライヴ活動も始めることにした」とのこと。ぼくの20年間の音楽ライター歴で判断するに、こういうバンドにハズレはありません。ミュージシャンたちの「俺はこいつと演奏したいんだ!」、「俺はこのバンドが好きなんだ!」という意志は必ず音になって現れ、その音にこめられた情熱が、聴き手の心に一直線に届くからです。

ステージ上に6人の管楽器奏者が並ぶ図は本当に壮観でした。2本ずつのトランペット、トロンボーン、サックスが、山のように盛られたかっこいいフレーズをビッグ・トーンで次々と奏でていきます。それをオルガン、ギター、ドラムス、ベース、パーカッションで構成されたリズム隊がタイトにサポートし、演奏はやがて火の出るような展開となります。

テナー・サックス、バリトン・サックス、フルートを使い分けながらアンサンブルに彩りを加えるアンドリュー・ロス、ダン・カーペンターの突き刺さるようなハイノート・トランペット、“ザ・グルーヴ・ギャングスタ”という異名の通り、怖いほどノリまくっていたパーカッション奏者のピーター・エクフォード、みんなファンクの神が乗り移ったかのようでした。元インコグニートのドミニク・グローヴァーはトランペットのほか、指揮やMCでも大活躍。彼の仕切りの元で、全メンバーが羽根を伸ばしてプレイしているのです。

ジャズ・ファンク好きはもちろんのこと、シカゴやチェイス等のブラス・ロック・ファン、70年代のメイナード・ファーガソン・オーケストラやバディ・リッチ・オーケストラのファン、デオダートのファン、タワー・オブ・パワーのファンなど、あらゆるグルーヴ・ミュージック好きが喜ぶに違いないサウンドで、クラブは満たされました。

もちろん硬軟たくみな名手揃いだけあって、単にノリ一発のナンバーだけをプレイしていたわけではありません。リズム・セクションだけのナンバーがあるかと思えば、トロンボーン・バトルをフィーチャーした曲もあり、フルートとフェンダー・ローズでシットリと迫るナンバーもありました。だけど、どんな曲にも強烈なグルーヴが脈打っています。

彼らはまだまだ、日本では有名になろうとしている最中です。耳ざといひとが集まったのでしょう、客席のノリは最高でしたが、残念ながら有名ベテラン・アーティストが出演するときのような満員御礼ではありませんでした。しかし「ネーム・ヴァリューではなく、音楽そのもの」を聴きにくる方なら、ザ・サウンド・スタイリスティックスの熱演に裏切られることは絶対にないといえましょう。(原田 2010 / 9/17)


● 9.17fri.-9.19sun.
THE SOUND STYLISTICS


ザ・サウンド・スタイリスティックス - THE SOUND STYLISTICS


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ELIANE ELIAS - - report : ELIANE ...

2010/09/13

イリアーヌ・イリアス - ELIANE ELIAS
イリアーヌ・イリアス - ELIANE ELIAS


公演初日リポート:ELIANE ELIAS



ピアノとヴォーカル、ブラジル音楽とジャズ、スタンダード・ナンバーと自作曲・・・・いろんなものを“両輪”にしながら、イリアーヌは自身の音楽に磨きをかけています。

彼女が久々に「ブルーノート東京」に出演を果たすという情報が伝わってきたのは、今年の初夏ごろだったでしょうか。「今回はジャズでいくのか、それともボッサ中心でいくのか」、「ピアノ主体だろうか、それともヴォーカルが中心だろうか」などなど、ぼくはあれこれ想像をめぐらせました。そして来日メンバーが正式に発表されました。イリアーヌ、その夫君であるマーク・ジョンソン(ベース)のふたりに加え、ブラジル・サンタクルース生まれのヒカルド・ヴォート(ギター。先ごろテリ・リン・キャリントンのバンドで「ブルーノート東京」に出演したエスペランサ・スポールディングのバンドでも活動しています)、リオ出身のハファエル・バラータ(ドラムス。ホーザ・パッソス、レニー・アンドラーヂ、イヴァン・リンスらと共演)というメンバーを見たとき、ぼくは「今回はブラジリアン・ミュージック色が濃厚になりそうだな」と思いました。

それは、ある意味正解でした。ジルベルト・ジルの「LADEIRA DA FRAGUISA」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「CHEGA DE SAUDADE」、ジョアン・ドナートの「BANANEIRA」といったブラジル・ナンバーを次々と聴かせてくれたからです。しかも「I THOUGHT ABOUT YOU」や「MAKE SOMEONE HAPPY」などアメリカ生まれのスタンダード・ナンバーも快いボッサにして聴かせてくれました。

しかし、いったん間奏パートに入ると、イリアーヌの持っている“ジャズ・ピアニストの血”が騒ぐのでしょう、エキサイティングな即興フレーズが次から次へと飛び出します。意外なほど強いタッチで、スピード感にあふれたアドリブが展開されてゆくのです。一時はハービー・ハンコックからの強い影響がうかがわれたこともありますが、今の彼女のピアノは“イリアーヌ・スタイル”としかいいようのないものです。ヴォーカル・パートをしっとりと味わわせてくれる一方で、ピアノ・ソロ部分になると何かに取り付かれたようにホットな指さばきで圧倒するイリアーヌ。他のメンバーの好演もあいまって、この日のステージはすべて、“1曲で何度もおいしい”パフォーマンスで占められていました。

4人ともよほど乗っていたのでしょうか、最後は異例のダブル・アンコールで締めくくられました。そのなかのひとつが、ジャズの名トランペット奏者であるケニー・ドーハムがブラジル旅行の印象を基に書いた「UNA MAS」を基にした「STAY COOL」である、というのも心憎いですね。もともとインストゥルメンタルとして書かれた曲を、ダンサブルかつ小粋なヴォーカル・ナンバーに衣替えしたイリアーヌ。ライヴはいつも超満員、高い人気を保ち続けている彼女ですが、今回のステージは、いつもよりさらに見逃せない、聴き逃せないものになっているといっていいでしょう。
(原田 2010/9/12)


● 9.12sun.-9.14tue.
ELIANE ELIAS



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