BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , N'DAMBI - - report : N'DAMBI

2010/08/23

エンダンビ - N'DAMBI
エンダンビ - N'DAMBI


公演初日リポート:N'DAMBI


押しも押されもせぬ超大物のステージを体験するのも楽しいものですが、スターへの階段を登っている途中の気鋭がステージから放つ覇気・新鮮味にはまた、こたえられない魅力があります。

シンガー・ソングライター、エンダンビが本日まで「ブルーノート東京」に出演しています。あのエリカ・バドゥと才能を認め合う仲であり、彼女のバック・ヴォーカルも務めたことがある実力派です。’99年にソロ・デビュー後、2005年には『ウイアード・カインダ・ワンダフル』が国内リリースされて、耳ざとい日本の音楽ファンの心をつかみました。ぼくは「ブルーノート」公演初日にお邪魔しましたが、リスナーが彼女に寄せる高い注目、熱い期待を裏付けるかのようにクラブは満員。エンダンビ・サウンドがますます多くのファンに支持されていることがわかって、さらに嬉しくなりました。

演目は昨年の秋に発売された新作『ピンク・エレファント』からのナンバーが中心。「L.I.E」、「WHAT IT TAKES」、「CAN'T HARDLY WAIT」などが次々と目の前で再現されていきます。ときに振り付けを交えながら熱唱するエンダンビの姿は、文字通り“精悍”という言葉がふさわしいものです。ときおり、照明の関係で姿がシルエットのように見えるところがあるのですが、背が高く、姿勢のいい彼女は本当に絵になる存在です。

観客と盛んにコミュニケーションをとりながらステージを進めていくエンダンビ。“愛し合いながらも別れなくてはならなかったふたりの物語”と前置きして歌われた「OOO BABY」は10分に及ぶ渾身の熱唱で、個人的にはこれだけでもクラブに足を運んだ甲斐がありました。ぼくはライヴもディスクもどちらも大好きな音楽ファンなのですが、“このステージ上でのエンダンビの感情の高ぶりは決してディスクに刻まれることはないだろうな。また今日もライヴの醍醐味に出会ってしまった”と、しんそこ思いました。

ちなみにエンダンビとは中央アフリカの言葉で“Most beautiful”という意味なのだそうです。彼女はこれからさらに、美しい世界を我々に届けてくれることでしょう。
(原田 2010/8/22)


● 8.22sun.-8.23mon.
N'DAMBI


エンダンビ - N'DAMBI


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 矢野顕子 - - report : AKIKO Y...

2010/08/18

矢野顕子 - AKIKO YANO
矢野顕子 - AKIKO YANO


公演初日リポート:AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカー。この“黄金トリオ”の公演が、昨日から始まっています。去年に続いて「ブルーノート東京」のステージに立った3人ですが、今回も本当に興味をそそりまくる、聴き応えが波のように押し寄せてくるようなサウンドで楽しませてくれます。

メロディとメロディの間からまた別のメロディが浮かび上がり、ハーモニーとハーモニーの間をまた別のハーモニーが漂う感じといえばいいでしょうか。硬軟も伸縮も自在のトリオ・ミュージックが味わえるのです。オープニングの「A BEAUTIFUL MORNING」は、この9月に「ブルーノート」初登場を果たすラスカルズのレパートリー。これを100%矢野顕子トリオのカラーに染めて、オーディエンスの心をわしづかみにします。

続いてボックス・トップスの「THE LETTER」(あの娘のレター)、沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」、ベンチャーズ歌謡の「京都慕情」などを、ワン&オンリーに解釈。間奏に入ると、彼らの持っている“即興魂”が一気に噴出します。矢野のアドリブ・フレーズにすかさずウィルが反応し、クリスが鋭い一打を入れる・・・・国籍、言語、ジャンル、すべて飛び越えた響きは、ただただ爽快です。

ヴォーカリストとしても高い評価を集めるウィル・リーは、ラルフ・マクドナルドが作曲し、グローヴァー・ワシントンJr.とビル・ウィザースのコンビで大ヒットした「JUST THE TWO OF US」でベースの弾き語りを披露。6月にライアン・ショウが「ブルーノート東京」で歌ったことも記憶に新しいナンバーですが、まさかこれをウィルの渋い歌声で聴くことになろうとは思いませんでした。「ウィル・リーのリード・ヴォーカルにバック・コーラスをつける矢野顕子」が味わえるなんて、なんと贅沢でレアな体験なのでしょう。

後半では再びラスカルズの「PEOPLE GOT BE FREE」が演奏され、ラストの「ROSE GARDEN」では3人とも“これでもか、これでもか”というほど超絶フレーズのてんこ盛りでした。実力者同士だからこそ織り成すことのできる、ユーモアたっぷりの真剣勝負は21日まで続きます(19日はオフ)。

(原田 2010 /8/17)

● 8.17tue.-8.21sat.(8.19thu.OFF)
AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

矢野顕子 - AKIKO YANO


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HAYNES - - report : ROY HAY...

2010/08/14

ロイ・ヘインズ - ROY HAYNES
ロイ・ヘインズ - ROY HAYNES


公演初日リポート:ROY HAYNES 85
& THE FOUNTAIN OF YOUTH BAND


御年85歳の巨匠、ロイ・ヘインズがその名も“ファウンテン・オブ・ユース”(若さの秘訣)というバンドを率いて来日中です。しかも今年は彼がボストンからニューヨークに本拠地を移して65周年という記念すべき節目でもあります。

トランペット奏者グレアム・ヘインズの父親、目覚しい注目を集めているドラムス奏者マーカス・ギルモアの祖父としても知られるロイ・ヘインズですが、やはり彼自身が持つオーラ、エネルギー、パッションは格別です。サイドを務めるジャリール・ショウ(サックス)、マーティン・ベハラーノ(ピアノ)、デヴィッド・ウォン(ベース)は皆、ロイとは祖父と孫ほど年齢が離れていますが、ジャズの歴史を体現するロイと一緒に演奏することは、彼らにとってかけがえのない経験なのではないかと思います。

チャーリー・パーカーが愛奏したスタンダード・ナンバー「STAR EYES」、パット・メセニーの「QUESTION AND ANSWER」、セロニアス・モンクの「TRINKLE TINKLE」、スタン・ゲッツの名演で知られる「SUMMER NIGHT」(今の季節にふさわしい選曲ですね)など、珠玉の名曲が次々と登場します。そして改めて、ロイが彼ら全員と共演してきたという事実に驚かされます。年齢の話を繰り返して恐縮ですが、彼と同世代のドラマー、たとえばフィリー・ジョー・ジョーンズやマックス・ローチはおろか、年下のエルヴィン・ジョーンズやアート・テイラーも天に召されてしまいました。しかしロイは今なおドラム・セットに向かい、ジャズ・シーンに活を入れ続けているのです。

サイドメンが引き上げた後、ロイはひとりでステージに残り、ヴォーカルやダンスを披露しました。彼のヴォーカル・アルバムはかつて出たことがないので、これはまさしくライヴ限定、その場にいるオーディエンスだけが味わえる“かくし芸”といったところでしょうか。「明日はまた違う曲をやるよ。みんな、また来てくれるよな?」という呼びかけに、大きな歓声と拍手が沸き起こったのはいうまでもありません。
(原田 2010/8/13)


● 8.13fri.-8.16mon.
ROY HAYNES 85
& THE FOUNTAIN OF YOUTH BAND


ロイ・ヘインズ - ROY HAYNES


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CLEMENTINE - - report : CLÉ...

2010/08/09

クレモンティーヌ - CLEMENTINE
クレモンティーヌ - CLEMENTINE

公演初日リポート:CLÉMENTINE


いつも大好評のクレモンティーヌの公演が、今年もおこなわれています。今回は最新作『アニメンティーヌ』を引っさげてのステージです。ぼくは8月8日、初日のファースト・セットを楽しみました。

この日に限り午後4時開演、20歳未満の方も入場可ということで、親子連れが目立ちます。また、女性限定の企画「YUKATA de JAZZ」(浴衣で御来場いただいたお客様にオリジナル・カクテルがプレゼントされる)実施中ということもあって、浴衣姿の女性も数多く目につきました。いつも華やかな客席が、より一層、華やかに感じられます。

そしてライヴの演目も、ブルーノート東京21年の歴史を通じて“最異色”の範疇に入るものだったのでは、と思います。なにしろ主なレパートリーが「天才バカボン」、「サザエさん」、「崖の上のポニョ」、「うる星やつら」、「ドラえもん」等、アニメの楽曲だからです。しかしこれが趣味の良いボサ・ノヴァやサンバにアレンジされ、陰影豊かなコード(和音)がつき、フランス語で歌われるとあら不思議、味わいタップリのお洒落ナンバーになるのです。

考えてみれば、こうしたアニメ・ソングの作曲家は多方面にわたる音楽経験を十分に積んだ重鎮たちです。「ポニョ」を作曲した久石譲のペンネームが、ジャズ〜ポップスの編曲家であるクインシー・ジョーンズから来ているという話をどこかでお聞きになった方もおられるのではないでしょうか。「バカボン」(クレモンティーヌは「天才バカボン」のサビから歌い始め、その後「元祖天才バカボン」のメロディにつなげていました)の作曲家である渡辺岳夫は、フランスでクラシックを学んでいたことがありますね。

どの曲も感慨深いものがありましたが(もっとも、ぼくがリアルタイムで「うる星やつら」や「ドラえもん」を見ていた頃はまだ、アニメという言葉がなくて単に“テレビ漫画”と呼んでいました)、個人的に驚いたのは、やはり「バカボン」でしょうか。原曲の譜割りを2倍にして(つまり1小節だったところを2小節に伸ばして)、ゆったりとした乗りをかもし出しつつ歌うクレモンティーヌ、そして伴奏バンドは、この曲から新たな魅力を引き出してくれました。

もちろん「男と女」、「マイ・ウェイ」、「オー・シャンゼリゼ」等、フレンチ・テイストあふれるナンバーもたっぷり。彼女の魅力を、いろんな一面から楽しむことができました。今回の来日で、クレモンティーヌはさらに多くのファンを獲得することでしょう。
(原田 2010/8/8)


● 8.8sun.-8.11wed.
CLÉMENTINE

クレモンティーヌ - CLEMENTINE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , TONY DESARE - - report : TONY DE...

2010/08/06

TONY DESARE - トニー・デセール
TONY DESARE - トニー・デセール


公演リポート:TONY DESARE


伸び盛りのエンターテイナー、トニー・デセールの技のすべてを味わった!
そうビックリマークつきで書きたくなるほど、爽快で満腹感溢れるステージで、トニーはファンをもてなしてくれました。

オープニングではまず、ギターのエド・デッカーとベースのスティーヴ・ドイルが登場。二人が小気味よいビートを刻む中、颯爽とトニーが登場します。CDジャケットをごらんになればわかるように、貴公子然としたルックスの持ち主であるトニーですが、間近で見ると、彼が決して近寄りがたい2枚目ではないことがわかります。ハンサムなのに、なんともいえない「親しみやすさ」があるのです。
さっそくピアノを弾きながら歌うのだろうと思ったら、そのままマイクを握って立って歌い始めました。うっすら目を閉じながら、歌詞にあわせて左手を動かします。そこには、たった数小節で、すっかり歌の主人公になりきっているトニーがいました。

続いてトニーはピアノの椅子に座ります。あとはもう、トニー・デセール・トリオの妙技に酔いしれるのみです。ピアノ、ギター、ベースのトリオは古くから弾き語りピアニストにとって“黄金のメニュー”でした。その開祖というべきナット・キング・コールを筆頭に、バディ・グレコ、ペイジ・キャヴァノー、チャールズ・ブラウンなど多くの巨星が、ギターとベースをバックにピアノで弾き語りました。そんな由緒正しいフォーマットを現代に継承し、サムシング・ニューを付け加えようとしているところもトニー・トリオの魅力です。

彼らのプログラムは本当に多彩です。「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」、「JUST IN TIME」のようなスタンダード・ナンバーはいうまでもなく、プリンスの「KISS」をジャジーに聴かせ、「AUTUMN LEAVES」ではソロ・ピアノで唸らせ、キング・コールの当たり曲「SWEET LORRAINE」はなんと、ベースとヴォーカルのデュオで披露。もちろん自作の曲も聴かせてくれましたが、ヴァースから歌われる「A LITTLE BIT CLOSER」ときたら、まるで40年代のミュージカル映画のラヴ・シーンに出てきそうなメロディアスなバラードで、あらためてトニーがいかにアメリカン・エンタテインメントの歴史に愛情を持って接しているかが伝わってくるようでした。最後にはチャック・ベリーのロックンロール「JOHNNY B. GOODE」を、まるでドクター・ジョンか?と思えるようなニューオリンズR&Bスタイルで楽しませてくれました。

すでに3枚のアルバムを米国のジャズ・チャートに送り込んでいるトニーですが、今後、彼はさらに、数え切れないほどの名誉と賞賛を手にすることでしょう。公演は本日までです。ワン・ショウでたっぷり楽しめます。ぜひどうぞ!
(原田 2010/8/7)



  
●8.5thu.-8.7sat.
TONY DESARE

トニー・デセール - TONY DESARE


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