BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , OMAR SOSA - - report : OMAR SO...

2010/08/03

OMAR SOSA - オマール・ソーサ
OMAR SOSA - オマール・ソーサ


公演初日リポート:OMAR SOSA AFRO-ELECTRIC QUINTET



変貌しつづける男、オマール・ソーサ。毎年のように日本にやってくる人気者の彼ですが、一度たりとも前回と同じステージを行なったことはありません。各年のライヴに共通していることはただひとつ、“どんな予想をも裏切る、スリリングな音を提供してくれる”ことだけです。

今年の公演は、オマール・ソーサ・アフロ・エレクトリック・クインテットの日本デビュー・ステージとなりました。「マイルス・デイヴィスの名盤『カインド・オブ・ブルー』にインスパイアされた音楽をやるようだ」、「これまで以上にアコースティックとエレクトリックの要素をブレンドしたものとなるらしい」、「トランペットとサックスをフィーチャーして、よりオーソドックスなジャズ・サウンドを表現するのではないか」・・・・メンバーの登場を待ちながら、ぼくは前評判をあれこれ頭の中で整理していました。

が、ステージにあらわれた彼らは、どんな予想も裏切ってくれました。エフェクターを通した楽器群、サンプリングを多用したサウンドに引きずり込まれていたら、あっという間に時間が経過していました。ドイツ出身のジョー・クラウス、モザンビーク出身のチルド・トーマス、アメリカ出身のピーター・アプフェルバウムとマーク・ギルモア、そしてキューバが世界に誇るオマール・ソーサ。この強力な連合軍は、文字通りオマールのいうところの「異なる音楽文化との出会いへの探求」へと聴くものを連れて行ってくれるのです。

アコースティック・ピアノとキーボードを自在にあやつるオマールのプレイが充実していたことはいうまでもありませんが、個人的にはアプフェルバウムの貫禄にも圧倒されました。ぼくが初めて彼をライヴで見たのはもう20年近く前、移転前の旧「ブルーノート東京」に、彼が故ドン・チェリーのバンドの一員として出演したときでした。そのときは“勢いあふれる気鋭の若者”という感じでしたが、いまや誰の追随も許さない雄弁なマルチ・インストゥルメンタリストといった趣です。さすがチェリーの目に狂いはなかったと思うと同時に、この逸材を見事に使いこなすオマールの器の大きさも改めて感じました。

いまやオマール・ミュージックに欠かせない存在といえるマーク・ギルモアも相変わらずヘヴィー級のドラミングでソリストを煽りたてておりました。彼によく似た名前のドラマーにマーカス・ギルモアがいますが(7月下旬、ニコラス・ペイトンのバンドで「コットンクラブ」に出演していました)、別人です。マークのほうがふた世代ほど上で、いわゆるブラック・ロック・コーリション(リヴィング・カラーを生んだ団体です)に所属して頭角を現しました。’90年代後半に英国に移りドラムンベースなどのクラブシーンの中心で活躍、現在はストックホルム在住とのことです。あくまでもジャズが根底にあるマーカスに対して、マッチド・グリップ(スティックを上から握るように持つ)で叩きまくるマークのスタイルにはよりロックの影響も感じられますが、どちらにせよ21世紀のリズムを牽引しているドラマーの中にふたりのギルモアがいることは間違いありません。
(原田 2010/3)




● 8.2mon.-8.4wed.
OMAR SOSA AFRO-ELECTRIC QUINTET

オマール・ソーサ - OMAR SOSA


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOYCE - - report : JOYCE w...

2010/07/29

ジョイス - JOYCE
ジョイス - JOYCE

公演初日リポート:JOYCE with special guest CELSO FONSECA



ジョイスが“日本のホームグラウンド”、ブルーノート東京に帰ってきました。
いつも素敵な仲間を連れてきてくれるジョイスですが(彼女の交友範囲の広さは、数々のコラボレーション・アルバムでおなじみのことでしょう)、今回はセルソ・フォンセカを迎えたステージです。しかも、ステージをともにするのはなんと初めてらしいです。

前半はジョイスのバンドによるパフォーマンスが続きます。夫君トゥチ・モレーノのドラムスは相変わらず繊細でシャープ、まるでジョイスのヴォーカルに相槌を打つようなプレイです。ジョイスとトゥチは演奏の場を離れても大の仲良しなのですが、ドラムスと歌声の絶妙なコンビネーションに接すると、「このふたり、知り合ってからずっと愛し合っていて、口げんかすら一度もしていないんだろうな」と思えてきます。これこそまさしく“おしどりカップル”というべきでしょう。

ピアニストが参加したのも今回の公演の特徴です。ガンガン、ジャズ・フレーズ満載のプレイでアドリブをとっているので、相当ジャズの素養のあるミュ−ジシャンなのだろうと思って奏者の顔を見たらなんと、エリオ・アルヴェスではないですか。ニューヨークを拠点に活動する、ブラジリアン・ミュージックとモダン・ジャズを自在に行き来する才人です。ぼくはReservoirというレーベルから出ているリーダー・アルバムを聴いて、すっかり彼のファンになったのですが、生演奏に接する機会は今の今までありませんでした。ジョイスのギターとエリオのピアノが一体となって生み出されるハーモニーは、とても豊かで美しいものでした。エリオは10月、渡辺貞夫のバンドで再登場する予定です。ぜひチェックしていただければと思います。

セルソが登場したのは、プログラムの中盤になってから。ギターを抱えた長身が相変わらず絵になります。黒のジャケット、白いシャツ。そのさりげない着こなしはファッション・モデルのようです。シンガー・ソングライター、サウンド・クリエイターとしての評価も高い彼ですが、今回はアントニオ・カルロス・ジョビンの「SHE'S A CARIOCA」(英語で)、ギターのチューニングを変えて(6弦の張りをゆるくして)バーデン・パウエルの「CONSOLACAO」などを味わわせてくれました。

ラストはマルコス・ヴァーリの定番「SAMBA DE VERAO」(サマー・サンバ)。マルコス本人も5月に来日してこの曲を聴かせてくれたばかりですが、ジョイスとセルソの共演で聴く“夏のサンバ”には、また違った魅力があります。セルソの声にジョイスの声がそっと重なり、やがてハーモニーを描いてゆきます。「前もってハモろう」と決めていたというよりは、「一緒にステージに立っているうちになんとなくハモってしまった」感じなのがいいですね。日本人が、いきなりふたりで歌おうとしたら、どうしてもユニゾンになってしまうような気がします。だけど彼らはごく自然に「ハモれて」しまうのです。ブラジル音楽がどうしてあんなに豊かな和音を持っているのか、その謎を知ったような気分になりました。
(原田 2010/7/28)


● 7.28wed.-8.1sun.
JOYCE with special guest CELSO FONSECA


ジョイス - JOYCE


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ADRIAN BELEW - report : ADRIAN BE...

2010/07/25

エイドリアン・ブリュー - ADRIAN BELEW-
エイドリアン・ブリュー - ADRIAN BELEW

report : ADRIAN BELEW POWER TRIO



中学生のとき、ぼくはエイドリアン・ブリューに初めてノックアウトされました。キング・クリムゾンの来日公演の模様をFMで聴いて、「なんてすごいんだ! どういう指使いで弾いているんだ!」と驚いて以来、この印象的な名前はずっとぼくのなかに強く刻まれています。

その後、彼のソロ・アルバムや、クリムゾン以外の参加アルバムを聴くようになり、エイドリアンが単なる超絶ギタリストにとどまらない、愛すべきメロディ・メイカーであることも知り(大のビートルズ・フリークなのだろうと思います)、ますます彼が身近に思えるようになりました。
そのエイドリアンが、今、「ブルーノート東京」で最新の境地を披露しています。以前に登場したときよりもさらにスピード感アップ、いったいどこまで行ってしまうのだろうと手に汗握らずにいられないスリリングにして過激なライヴを、入れ替えなしの1ステージ制で楽しませてくれます。

とにかくオープニングから、“パワー・トリオ”の名にふさわしい力感みなぎるプレイが続きます。複雑なユニゾンを見事にこなし、普通ならトリッキーに聴こえてしまうであろう急激なテンポの変化も、笑顔をうかべながらこなしてしまうメンバーの余裕に惚れ惚れします。ジュリー・スリックは、おそらくジェフ・ベックのバンドにいたタル・ウィルケンフェルドと余裕で肩を並べる“女子ベース界のエース”でしょう。ドラムスのマルコ・ミンネマンはドイツ出身。エイドリアンと共演し始めてまだ間もないそうですが、御大自身が「8本の腕を持つ男」と紹介するほど猛烈なオクトパス・ドラミングで興奮させてくれます。おそらくワン・ストロークで16分音符8つぐらい叩いているのではないでしょうか。尋常ではない手数なのです。通常のドラム・セットの横に、わざわざ叩くためのバスドラを別個に置き、重低音を轟かせる姿も、たまらなくかっこいいものでした。なんでも彼はマイク・ケネリー(エイドリアン同様、フランク・ザッパとの交流があった)、クリムゾンの歴代メンバーでもあるジョン・ウェットンやトレイ・ガンとの親交も深いとか。あなたがチャド・ワッカーマンやテリー・ボジオのファンなら、必ずマルコのドラムスに釘づけになるはずです。

エイドリアンのプレイは“ギターという巨峰を征服した”というしかないものでした。エフェクターやループ等も使っていましたが、1台のギターであんな多彩な音が出せるとは! アンコールではクリムゾンの人気レパートリーである「THELA HUN GINGEET」も聴かせてくれましたが、新曲、オリジナル曲だけでぼくは満腹感を味わうことができました。

ロック・ファンだけではなく、「今、起こっている面白い音楽」をお求めの方、すべてにお勧めいたします!
(原田 2010/7/24)

● 7.24sat..-7.27tue.
ADRIAN BELEW POWER TRIO

ADRIAN BELEW - エイドリアン・ブリュー


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RONNIE CUBER - - report : RONNIE ...

2010/07/22

ロニー・キューバー - RONNIE CUBER
ロニー・キューバー - RONNIE CUBER


公演初日リポート:RONNIE CUBER'S B-3 BAND


バリトン・サックスはビッグ・バンドに欠かすことのできない楽器です。
だいたいステージでは向かって右手前方、サックス・セクションのいちばん右側にいるのがバリトン・サックス奏者です。決して目立つパートは与えられていませんが、バリトンが重厚な低音でハーモニーを支えると、そのアンサンブルは輝きを増します。

そんな“縁の下の力持ち”であるバリトン・サックスの、さまざまな持ち味を味わわせてくれるのがロニー・キューバーです。彼のプレイを聴くと、この大きな楽器が実はどれほど魅力的なソロ楽器であるか、華やかな存在でもあるかがわかっていただけることでしょう。

キューバーは過去何度もブルーノート東京に登場しています。ビッグ・バンドの一員としてやってきたこともありますし、2008年にはスティーヴ・ガッドのバンドで出演して大好評を博しました。ガッドのバンドはドラムス、ギター、オルガン、そしてバリトン・サックスという編成でしたが、今回のロニー・キューバーズ・B-3バンドの楽器構成もそれと同じです。ガッド公演にいらっしゃった皆様なら、100%以上満足できるセッティング、プログラムだと思います。

今回のサポート・メンバーは、いずれもソウル・ジャズ界で名を轟かせる面々です。ギターのエド・チェリーはディジー・ガレスピーのバンド出身、伝説のオルガン奏者ジョン・パットンと長く演奏していました。ドラムスのグレッグ・バンディも数多くのオルガン奏者から愛されており、ファラオ・サンダース、ジョー・ヘンダーソン等、サックス奏者との共演でも知られています。オルガンのダニー・ミクソンは、’70年代にチャールズ・ミンガスのバンドでピアノを弾いていました。ほかにR&Bグループ、パティ・ラベル&ブルーベルズの伴奏や、サックス奏者ハンク・クロフォード(デヴィッド・サンボーンに絶大な影響を与えた)等のサポートもこなしています。今回はハモンド・オルガンの名器B-3に専念し、グルーヴ感そのもののソロとバッキングを聴かせてくれました。

以上のツワモノ3人をバックにしたキューバーは、大きなバリトン・サックスを自由自在にあやつり、あるときは軽やかに、またあるときは重低音を響かせてファンを圧倒します。楽器編成から全曲ソウル・ジャズ〜ブルース系のナンバーになるのかなあ、と予測していたのですが、実際のところはファンキー・ナンバーだけではなく、ジャズ・スタンダード、バラード、そして「枯葉」こと「AUTUMN LEAVES」も織り交ぜた、とてもバラエティに富んだものでした。

公演は23日まで続きます。入れ替えなしの1日1ステージ。心ゆくまで、バリトン・サックスの醍醐味をどうぞ!
(原田 2010/7/22)


● 7.21wed.-7.23fri.
RONNIE CUBER'S B-3 BAND


ロニー・キューバー - RONNIE CUBER


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , TITO JACKSON - - report : TITO JA...

2010/07/16

ティト・ジャクソン-トリビュート・トゥ・マイケル・ジャクソン- - TITO JACKSON-A Tribute to MICHAEL JACKSON-
ティト・ジャクソン-トリビュート・トゥ・マイケル・ジャクソン- - TITO JACKSON-A Tribute to MICHAEL JACKSON-

公演初日リポート:TITO JACKSON performing the JACKSON 5's Greatest Hits
-A Tribute to MICHAEL JACKSON-

ティト・ジャクソンは、ぼくにいわせれば“音楽の流れを変えた男”です。

父親が「絶対に触るな」とクローゼットの中にしまいこんでいたギターをいたずらしているうちに、腕前が上達。いつしか彼のプレイにあわせて兄弟たちが歌い出しました。が、ある日、ティトはギターの弦を切ってしまいます。

ギター・ケースを開けた父親は激怒しました。「誰だ、オレの楽器をいたずらしたのは!」
ティトは正直に事のなりゆきを告白しました。父親はいいました。「じゃあ、オレの前で演奏してみろ」。

ティトはおそるおそるギターを弾き、兄弟がコーラスをつけました。その瞬間、父親は自分の息子たちをプロのミュージシャンにしようと決意します。ジャクソン5やジャクソンズの歴史はここから始まりました。マイケル、ジャネット、ジャーメイン、ラトーヤ等の華々しいソロ活動も、起点をさかのぼればここに行き着くはずです。
ティトのいたずらが、20世紀最大のエンタテインメント・ファミリーを生んだのです。

ティトはマイケルの5歳年上ですから、今年で57歳。相変わらずギターを片時も離さず、お気に入りの仲間たちと、お気に入りのレパートリーを奏でています。それを至近距離で体験できるのは、まさにクラブ・ギグの醍醐味といえましょう。

ステージ前半は、最近の彼の主軸となっているブルース・ナンバーが中心。マディ・ウォーターズで有名な「HOOCHIE COOCHIE MAN」、ルイ・ジョーダンのヒット曲「CALEDONIA」等もおりまぜながら、ティト・ジャクソンは円熟の境地を味わわせてくれました。そして後半は皆様おまちかね、ジャクソン5〜ジャクソンズ時代の定番の数々。少年時代のマイケルのハイトーン・ヴォイスをどうやって再現するのかなと思っていたら、そこは3人の女性シンガーがそれぞれ担当し、ティトはギターとコーラスで存在感を示します。

本当に心暖まる素敵なステージでした。皆さんもぜひ、“お兄ちゃんの魅力”をライヴでどうぞ!
(原田 2010 7/15)


● 7.15thu.-7.19mon.
TITO JACKSON
performing the JACKSON 5's Greatest Hits
-A Tribute to MICHAEL JACKSON-

ティト・ジャクソン-トリビュート・トゥ・マイケル・ジャクソン- - TITO JACKSON-A Tribute to MICHAEL JACKSON-


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