BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MARCOS VALLE - - report : MARCOS ...

2010/05/25

マルコス・ヴァーリ-MARCOS VALLE
マルコス・ヴァーリ-MARCOS VALLE



- report : MARCOS VALLE @ COTTON CLUB

本日から「ブルーノート東京」にブラジルの涼風が吹きます。マルコス・ヴァーリ・ウィズ・ロベルト・メネスカルの公演がおこなわれるのです。昨日は「コットンクラブ」に登場し、予想通り息のあったプレイを満喫させてくれました二人だけに、「ブルーノート東京」における演奏も思いっきり盛り上がることでしょう。ここでは「コットンクラブ」公演をレポートさせていただきます。

ステージはまず、マルコスのパフォーマンスから開始されました。不滅の定番「SUMMER SAMBA」が、すっかりジャジーなアレンジになって登場します。ここで観客は、いきなりアンコールのような盛り上がりです。昨年の「ブルーノート」公演ではキーボードの他にギターも聴かせてくれましたが、今回はロベルトに敬意を表してか、ギターを弾きませんでした。しかしその分、あの特徴のあるフェンダー・ローズ(エレクトリック・ピアノの一種)による弾き語りがたっぷりフィーチャーされました。昨年はトランペット奏者がフロントに加わっていましたが、今年はサックス奏者ゼ・カヌート(ガル・コスタとの共演でも知られるベテラン)の味わい深いソロが彩りを添えていました。

パトリシア・アルヴィをフィーチャーした2曲のあと、いよいよホベルト・メネスカルの登場です。マルコスはMCでこう言っておりました。「僕はボサ・ノヴァ第二世代だけど、ホベルトは第1世代。昔からずっと僕のアイドルで、グッド・フレンドだよ」。

白いエレクトリック・ギターを持ったホベルトが弦をつまびくと、「O BARQUINHO(小舟)」が始まります。指弾きによるギターの音色と、潤いのあるフェンダー・ローズの響きが見事に調和します。マルコスもホベルトも微笑をたたえながら淡々と演奏するのですが、実は相当に高度なテクニックを駆使したプレイを軽々としています(ホベルトの左手の動きは、おいそれと真似できないような気がします)。技巧的なことをシンプルに表現する彼らは本当にプロ中のプロだなあと、ぼくは改めて感銘を受けました。

文中ではあえて触れませんでしたが、ここで触れた曲のほかに、あの有名なメロディーも、この定番も、あの隠れ名曲もたっぷりとりあげてくれました。ぜひクラブに赴いて、マルコスとホベルトがおくる“自作自演の世界”に酔いしれていただければと思います。
(原田 2010/5/24)

● 5.25tue.-5.28fri.
MARCOS VALLE with ROBERTO MENESCAL



〜・〜プロフィール・原田和典 〜・〜
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



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2010/05/12

アル・ディ・メオラ-AL DI MEOLA
アル・ディ・メオラ-AL DI MEOLA



公演初日リポート:AL DI MEOLA



あっという間のライヴでした。これほど充実したステージには、今後いつ接することができるのだろう。そうつぶやきたくなるほど充実した、ある意味神がかり的な80分を味わいました。アル・ディ・メオラとワールド・シンフォニアの面々に、ありったけの花束を捧げたい気持ちです。

来日直前のメッセージで、ディ・メオラは、この多国籍集団を「今まで自分が持った中で最高のバンド」、「このバンドで日本に来ることにかつてないほどの喜びを感じている」、「このバンドのことを、どうかみんなに言いふらしてほしい」と語っていました。これ、誇大でも何でもないです。本当に凄いユニットなのです。彼はこのバンドに心から自信と誇りを持っています。そしてギタリストとしての全身全霊を賭けています。それがひしひしと伝わる、実に気合の入ったステージでした。

前半は録音したばかりのニュー・アルバム(今年中に発表予定)からのナンバーが中心でした。まだ正式な曲名もついていないとのことですが、おそらくディメオラは、最新のユニットによる最新の曲を日本のファンに届けたくてうずうずしていたのでしょう。ナイロン弦のアコースティック・ギターにはシンセサイザーが仕込まれていて、それがギター本来の音と微妙にダブったり、コントラストを描いたりしながら(ギターの前には生音を拾うマイクも立っています)、とてつもないグルーヴを生み出します。エロチックなアコーディオン、繊細にして大胆なパーカッション、名脇役と呼びたくなるサイド・ギター、シンコペーションの利いたベース、すべてが極上でした。アストル・ピアソラに通じるタンゴの世界あり、フラメンコやショーロ的めくるめく世界あり。組曲風、交響楽的なサウンド展開の中に、いろんな音楽の要素が取り込まれ、消化され、ぐつぐつと煮込まれてワールド・シンフォニアならではの響きになってゆくのです。

プログラム後半、ディ・メオラは立ち上がり、ポール・リード・スミスのエレクトリック・ギター“プリズム”に持ち替えました。この楽器、ものすごく色合いがきれいです。ぜひ写真をご覧いただければと思いますが、工芸品のような趣があります。その美しいギターに指を走らせながら、ディ・メオラはとんでもないフレーズを奏でていきます。なるほど、確かに超絶技巧です。しかしそれは彼の雄大な音楽像の、ほんの一部でしかありません。どんな速弾き、大テクニックよりも、音楽そのものの器がデカイのです。

彼が世に出るきっかけとなったリターン・トゥ・フォーエヴァーや、スーパー・ギター・トリオでのプレイもセンセーショナルでした。ヤン・ハマーやミンゴ・ルイスがいた頃のバンドも圧倒的でした。しかし今のディ・メオラを聴くと、それも過去の通過点のひとつだったとしか思えません。このところディ・メオラの国内盤CDは出ていませんが、じつのところ彼の絶頂のプレイは海外盤のみで入手できる近作にこそある、と、ぼくは思っています(いくつかは会場で販売中です)。往年の超名盤『Tour De Force』と並ぶ、いや、それを凌ぐスケールの大きさです。

皆さん、とにかくこの公演を聴き逃す手はありません。ワールド・シンフォニアは、情熱と感動の“音楽旅行”に我々オーディエンスを連れていってくれるのです!
(原田 2010/5/11)

● 5.11tue.-5.15sat.
AL DI MEOLA


AL DI MEOLA-アル・ディ・メオラ


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2010/05/10

マリーン sings 熱帯JAZZ
マリーン sings 熱帯JAZZ


公演初日リポート:MARLENE sings NETTAI JAZZ



灼熱のプロジェクト“マリーンsings熱帯JAZZ”が、ブルーノート東京に帰ってきました。
昨年6月に行なわれた公演は、いずれも超満員。連日、客席は総立ちだったとききます。アジアを代表する情熱の歌姫と、日本のトップ・ラテン・ジャズ・ビッグ・バンドの共演が、手の届きそうな近距離で楽しめるのですから、誰だってエキサイティングな気分になるはずです。
そして今回、各メンバーが忙しいスケジュールをやりくりした末に、待ちに待ったアンコール公演が実現したのです。

初日がおこなわれた5月9日は「母の日」でした。ステージにはカーネーションが飾られ、マリーンも真赤なドレスで登場。オープニングの「AIN'T NO MOUTAIN HIGH ENOUGH」からエンジン全開です。舞台上でのマリーンの表情は本当に多彩です。けっこう激しい身ぶり手ぶりもみせるのですが、それも実に自然なのです。その歌の主人公になりきっているかのようなアクションを交えながら、歌詞を観客に送り届ける彼女は、シンガーであると同時にアクトレスであり、そして圧倒的なエンターテイナーである、といえましょう。MCでもオーディエンスを大いに沸かせていました。

もちろん凄腕ミュージシャンが揃っている熱帯JAZZゆえ、充実したソロ・プレイも味わうことができました。木幡光邦(トランペット)、中路英明(トロンボーン)、奥山勝(ピアノ)、小池修(アルト・サックス)、宮本大路(バリトン・サックス)に加えて、アルト・サックス、ソプラノ・サックス、フルートでフィーチャーされたスティーヴ・サックスの大活躍ぶりにも唸らされました。リーダーのカルロス菅野もパーカッションやMCに大活躍、「SMILE」におけるマリーンとのヴォーカル・デュオも聴きものでした。

本編ラストは、待ってましたの「MAS QUE NADA」。もちろん場内は総立ちとなり、マリーンと観客のコール&レスポンスは永遠に続きそうな勢いでした。3度目の“マリーンsings熱帯JAZZ”がブルーノート東京で催されるのも、そう遠いことではないでしょう。
(原田 2010/5/9)



● 5.9sun.-5.10mon.
MARLENE sings NETTAI JAZZ


マリーン sings 熱帯JAZZ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RON CARTER - - report : RON CAR...

2010/05/04

ロン・カーター-RON CARTER
ロン・カーター-RON CARTER


公演初日リポート:RON CARTER with RUSSELL MALONE & JACKY TERRASSON - THE GOLDEN STRIKER TRIO -


“ミスター・ベース”、ロン・カーター率いるゴールデン・ストライカー・トリオの公演が始まっています。

重鎮、巨匠、名手などなど、彼を形容するフレーズには限りがありません。が、ぼくはここに“超人”という言葉を敬意と共に付け加えたいと思います。スケジュールを見ると、ロンは5月1日までスティーヴ・キューン(ピアノ)のバンドでニューヨークの「バードランド」に出演していました。“ゴールデン・ストライカー・トリオ”の「ブルーノート東京」における初日が昨日5月3日。ニューヨークと東京の間には約14時間の時差がありますから、「バードランド」での公演を終えたロンはただちに飛行機に乗って成田空港に到着、「ブルーノート東京」のステージに立ったことになります。

これを超人といわず何といいましょう。しかし彼は本当にタフです。キューンのバンドとはまったく音楽性の違うゴールデン・ストライカー・トリオで、とても初日とは思えないほど、よくまとまり、よくなじんだ音の会話を聴かせてくれました。まさしくプロフェッショナル中のプロフェッショナルです。

これまで『ゴールデン・ストライカー』、『イッツ・ザ・タイム』というアルバムを発表しているゴールデン・ストライカー・トリオですが、今回の公演はCDと違ってロン、ラッセル・マローン(ギター)、ジャッキー・テラソン(ピアノ)という顔合わせです。もちろんこの3人が日本で揃って共演するのは初めて。クラシック畑での経験も豊富なテラソンの起用は、とくにスロー・バラードで効果をあげていました。超満員のオーディエンスが、文字通り物音ひとつたてずにシンと静まり、達人たちの妙技に酔いしれたのです。

本日5月4日はロンの誕生日です。我々ファンにとっても、ロン自身にとっても、忘れられないバースデイ・コンサートになることでしょう。また5月5日は、「Real Jazz Experience for Children」と題する家族向けのプログラムが予定されています。かつて息子に「First Trip」という曲を書いたことのあるロンです。ハートウォーミングなステージになることは間違いありません。

親日家としておなじみのロンですが、来日するたびに、彼と日本のファンの距離はより近くなっているようです。
(原田 2010/5/3)



● 5.3mon.-5.8sat.
RON CARTER with RUSSELL MALONE & JACKY TERRASSON - THE GOLDEN STRIKER TRIO -


ロン・カーター-RON CARTER


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SATORU SHIONOYA - - report : SATORU ...

2010/04/28

塩谷 哲-SATORU SHIONOYA
塩谷 哲-SATORU SHIONOYA


report:SATORU SHIONOYA TRIO Live 2010



津軽三味線奏者・上妻宏光との“AGA-SHIO”や、ソロ・ピアノ作品『ソロ・ピアノ=ソロ・ソルト』も大好評の塩谷哲が、井上陽介(ベース)、山木秀夫(ドラムス)との最強トリオで「ブルーノート東京」に戻ってきてくれました。

約2年ぶりの登場になりますが、1曲目の一音目から恐ろしいほど息がピッタリです。「この3人は、前世からバンドを組んでいたんじゃないの?」と思えるほどです。塩谷の曲はメロディアスでリズミカルなので、聴いているととても楽しいのですが、随所に“キメ”が盛り込まれていて、演奏するほうはウカウカしていられないだろうな、と思うこともたびたびです。でもこの3人は笑顔をふりまきながら、どんなテクニックを要する曲も余裕綽綽で聴かせてくれます。

前回も十分、気持ちよい気分を味わわせてくれましたが、今回の公演は、より自由度が増しているように感じられました。各メンバーがちょっとしたきっかけを出すだけで音楽の流れが変わっていく、といえばいいでしょうか。CDに収められていたナンバーも、演奏がどんどん長くなって、発展してゆきます。音楽は生き物なんだなあ、と改めて思わせてくれる瞬間です。あえてジャンル分けすれば“ジャズ”となるのでしょうが、なにしろ全メンバーが幅広い活動をしている凄腕ばかりです。彼らの自由な感性を通したジャズは、どこまでも風通しのよい響きに覆われています。新曲「DELICIOUS BREEZE」や、『ソロ・ソルト』に入っている「慈愛(組曲「工場長の小さな憂鬱」より)」のトリオ・ヴァージョンが聴けたのも嬉しかったですねえ。

定評のあるMCも乗りが倍増、というか、ますます磨きがかかっているように感じられました。演奏で唸らせ、楽しませ、MCで爆笑の渦に巻き込む。塩谷哲は才人サウンド・クリエイター、ピアニストであると同時に、すばらしいエンターテイナーでもあるのです。

アンコールでは塩谷が“宇宙人”と呼ぶ盟友・小曽根真が飛び入り参加。塩谷と1台のピアノをわけあいながらすさまじいインプロヴィゼーションを繰り広げました。
とてつもない満足感を与えてくれる塩谷哲トリオの公演は 4/29 まで。お見逃しなく!
(原田和典 2010/4/28)


● 4.27tue.-4.29thu.
SATORU SHIONOYA TRIO Live 2010


塩谷 哲-SATORU SHIONOYA


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