BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NILE RODGERS & CHIC - - report : NILE RO...

2010/04/25

ナイル・ロジャース-NILE RODGERS
ナイル・ロジャース-NILE RODGERS


公演初日リポート:NILE RODGERS & CHIC


とても4月とは思えなかったここ数日の寒さがウソのように、きのうの東京は晴れ渡りました。
ナイル・ロジャース&シックのゴキゲンなファンキー・サウンドを迎えるのに、これほどふさわしい気候はなかったのではないでしょうか。

昨年は“ジャズ・クラブでお花見を”というコンセプトのもと、特別に持ち込まれた桜の木をバックにハッピー&ダンサブルなセッションを繰り広げてくれた彼ら。しかし今年は、ミュージシャン自身が暖かな春を運んできてくれたようです。

今回のツアーは、「LE FREAK(おしゃれフリーク)」、「GOOD TIMES」をはじめとする泣く子も踊り出す大ヒット曲や、恒例の“ギター・コンテスト”(ライブ中にアーティストから参加を呼びかけられた時に立候補して、「LE FREAK(おしゃれフリーク)」をバンドと一緒に弾く。各セットの優勝者は5月2日に行なわれる決勝大会に出て、そこで勝利したひとにはナイルのサイン入りギターがプレゼントされる)に加え、もうひとつ大きな目玉があります。ナイルの音楽生活を総括したボックス・セットの発売予告を兼ねて、彼が手がけた数々の歴史的ナンバーが、シック名義で日本初披露されたのです。今回、新たにメンバーに加わったメキシコ出身のメリッサ・ヒメネスがマドンナの定番「LIKE A VIRGIN」を歌い、ドラマーのラルフ・ロールはデヴィッド・ボウイのビッグ・ヒット「LET'S DANCE」でソウルフルな喉を響かせます。

そのほかにも、知ってる曲が出るわ出るわ・・・・。プログラムのおしまいで、ナイルは「今夜やった曲は全部オレが書いてプロデュースしたんだぜ! 信じられるかい?」とオーディエンスに語りかけていましたが、本当に彼の才能には驚かされるばかりです。しかもそれが決してお高くとまった芸術的なものではなく、常にダンサブルでハッピー、庶民的なのですから本当に嬉しくなってしまいます。長年にわたって誰もが口ずさむような曲を書き続けているナイルのようなミュージシャンのほうが、小難しいことをやって一部にありがたがられる向きよりもよほど高度で尊い。ぼくはそう思います。

白を基調にしたメンバーのコスチュームも実にお洒落でした。見ても聴いても踊っても最高。やっぱり彼らはとことんchicな連中です。
(原田 2010/4/24)




● 4.24sat.-4.26mon., 4.30fri.-5.2sun.
NILE RODGERS & CHIC


ナイル・ロジャース-NILE RODGERS


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , GIOVANNI MIRABASSI - - report : MIRABAS...

2010/04/22

ジョヴァンニ・ミラバッシ-GIOVANNI MIRABASSI
ジョヴァンニ・ミラバッシ-GIOVANNI MIRABASSI


公演初日リポート:MIRABASSI, RENZI & PARKER TRIO



前回登場したとき、彼らはジョヴァンニ・ミラバッシ・トリオと名乗っていました。
しかし今回は、“ミラバッシ、レンジ、パーカー・トリオ”という、各メンバーの名前を並べたユニット名での出演です。

3人が繰り広げる音の会話、それこそ彼らのステージの特徴です。メンバーの誰一人が入れ替わっても、あの香り高い世界は生まれ得ないでしょう。テーマ・メロディを奏でるのはピアノが中心ですが、ベースやドラムスが単なる伴奏に甘んじていないのは、彼らのパフォーマンスに接すればわかります。全員が演奏の主役なのです。また、レパートリーの殆どは、3人が持ち寄ったオリジナル曲で構成されています。その点でも、今回の“改名”は大成功だったといえます。

アイスランドの火山噴火の余波で今だヨーロッパの空路は安定していません。きょうアップされた movie の中のメッセージで "3 days travel " と本人たちが言ってましたが、“ミラバッシ、レンジ、パーカー・トリオ”は陸路でヨーロッパを移動し、香港経由の飛行機で来日したとのこと。しかし演奏に疲れはまったく見られず、というか、むしろこちらに元気を与えてくれるほど颯爽としたものでした。ぼくが見た初日セカンド・セットは、何かにとりつかれたかのようにテンションの高いプレイが90分近くにわたって続きました。前回、エレクトリック・アップライト・ベースを弾いていたジャンルカ・レンジは今回、コントラバスを使用し、重厚な音色と超絶技巧で酔わせてくれましたし、ドラムの各部位(シンバルやタムの縁なども含む)を使って、多彩なビートを打ち出すレオン・パーカーは今回も“リズムの化身”ぶりを存分に発揮していました。もちろんミラバッシのフレーズは流麗そのもの、頭を鍵盤に近づけ、両手の間に挟むようにして弾くスタイルはどこかビル・エヴァンスを連想させます。

前回より4ビートのナンバーやラテン調の曲が増えたのも、個人的には嬉しいところです。ジョン・コルトレーンの演奏で有名な「IMPRESSIONS」とアメリカン・スタンダードの「ALONE TOGETHER」に斬新なアレンジをほどこし、しかもメドレーとして聴かせてくれたのにも驚きました。きけば今回の公演は3日間ともライヴ・レコーディングされているとのこと。それも演奏の気合に拍車をかけているのでしょうか。

本日、明日「ブルーノート東京」にいらっしゃる方は、ぜひ盛大に彼らの熱演を盛り上げていただければと思います。CDに皆様の拍手が入るかもしれませんよ。
(原田 2010/4/21)


● 4.21wed.-4.23fri.
MIRABASSI, RENZI & PARKER TRIO


ジョヴァンニ・ミラバッシ-GIOVANNI MIRABASSI


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROBERT CRAY - - report : ROBERT ...

2010/04/13

ロバート・クレイ-ROBERT CRAY
ロバート・クレイ-ROBERT CRAY



- report : ROBERT CRAY


ロバート・クレイ・バンドをクラブで、しかも約1週間にわたって聴ける!
たいへんな快挙です。昨年は野外フェスティヴァルのために来日し、素晴らしいパフォーマンスでファンを沸かせたそうですが、今、それが至近距離で体験できるのです。ニュアンスに富んだ絶品のギター・プレイ、熱いヴォーカルにぼくは、全身で浸りました。

MC第一声でクレイは‘We are the Robert Cray Band!’ といいました。ここにもぼくは感銘を受けました。自分ひとりがスターで他のミュージシャンは入れ替え可能な伴奏者、という認識ではなく、あくまで4人揃ってひとつのユニットなのだ、ということなのでしょう。クレイは何度も各ミュージシャンの名前を紹介し、曲が終わると彼らと打ち合わせて次の曲を決めるシーンもありました。メンバー全員が互いを信頼し、心の底から音楽に興じている様子が、ありありと伝わってきます。

ロバート・クレイ=ブルースという公式は不動のものです。しかし彼がブルースに魅了されたきっかけは、それまでのブルースマンとは違います。1953年生まれの彼はビートルズに感銘を受け、ジミ・ヘンドリックスに触発され、そのルーツをたどっていくうちにブルースへ深入りしました。ビートルズとジミには、「ブルースから影響を受けている」というほかに「自分でつくった歌を自分で歌う」という共通点もあります。クレイが歩んできた道はまさにそれ、いいかたをかえれば彼は「ブルース畑を中心に活動を続けているシンガー・ソングライター」であるのです。

ぼくが見た初日ファースト・セットのプログラムは基本的に新曲中心でしたが、その間にアルバート・キングを魅了した「PHONE BOOTH」、エリック・クラプトンもとりあげた「BAD INFLUENCE」など、いまや古典的となったナンバーを巧みに挟み込みます。もちろん、100万枚を売りあげた大ヒット曲「SMOKING GUN」も聴かせてくれました。R&B、ファンク、ゴスペル等の影響を感じさせる曲作り、火を噴くようなギター、そして力強いヴォーカル。そのすべてが一体となった“ロバート・クレイの世界”に、心底酔いしれました。

ぼくがクレイを初めて聴いたのは‘80年代のことでした。そのときは「ずいぶんスマートなブルースマンが登場したなあ」と思ったものですが、いまクレイの音楽をじかに浴びると、「こんなにゴツく、逞しく、熱い音楽は久しぶりだなあ」と感じるのですから不思議なものです。それだけ世の中がヤワになってきたということなのかもしれません

が、とにかくロバート・クレイ・バンドは今も旬です。17日までの公演中、ひとりでも多くの方に、このガッツあふれるサウンドを体験していただきたいと思います。
(原田 2010/4/12)


● 4.12mon.-4.17sat. (4.14wed.OFF)
ROBERT CRAY



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SOPHIE MILMAN - - report : SOPHIE ...

2010/04/10

ソフィー・ミルマン-SOPHIE MILMAN
ソフィー・ミルマン-SOPHIE MILMAN



- report : SOPHIE MILMAN


ソフィー・ミルマンが約2年ぶりに「ブルーノート東京」でライヴを繰り広げています。

2006年の日本デビュー以来、人気がうなぎのぼりの彼女。今回の公演も超満員であることはいうまでもありません。若い女性ファンが多いのも特徴です。「ソフィー、かわいい!」という声も飛んでおりました。

実際のソフィーは小柄、華奢といっていいでしょう。なのに舞台に立つと、とても大きく見えます。シンガーとして、パフォーマーとして、さらにスケール感を増しています。力強い歌声が、カッチリとアレンジされたバンドのサウンドと見事にかみ合っておりました。

レパートリーはニュー・アルバム『テイク・ラヴ・イージー』からの曲が中心。加えて、これまでのアルバム『ソフィー・ミルマン』、『メイク・サムワン・ハッピー』からのナンバーも楽しませてくれました。オープニングはスタンダード・ナンバーの「DAY IN,DAY OUT」。インストゥルメンタルで演奏されることは殆どありませんが、ヴォーカリストには人気があるようで、先日はロバータ・ガンバリーニがとりあげておりました。英語で歌われたボサ・ノヴァの定番「AGUA DE BEBER」も新鮮でしたし、ブルース・スプリングスティーンの「I'M ON FIRE」をジャジーに歌いこんでいたのも聴きものでした。アンコールでは、名ピアニストの故オスカー・ピーターソンに捧げて「TENDERLY」を、ポール・シュローフェルのピアノとのデュオで披露。オスカーは、ソフィーが初めてライヴで聴いたジャズ・ミュージシャンなのだそうです。

「日本は大好きな場所。ここに戻ってくることができて嬉しい」とMCで語っていたソフィー。オーディエンスへの感謝をこめたステージは、どのオーディエンスにも強い印象を残したことでしょう。今後、さらに来日が増えそうな予感がします。
(原田 2010/04/9)

● 4.9fri.-4.11sun.
SOPHIE MILMAN


ソフィー・ミルマン-SOPHIE MILMAN


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , HELEN MERRILL - - report : HELEN M...

2010/04/03

ヘレン・メリル-HELEN MERRILL
ヘレン・メリル-HELEN MERRILL


公演初日リポート:HELEN MERRILL


3月下旬から4月中旬にかけてのブルーノート東京は、フィーメイル・ヴォーカル・ウィークです。
先日は新星クリスティーナ・トレインの初来日公演が行なわれたばかりですが、昨日からは“最も日本人の心にしみこむジャズ・ヴォーカリスト”ヘレン・メリルが円熟の歌声を聴かせています。初めての来日からちょうど50年となる、アニヴァーサリー的ライヴです。

バック・メンバーは、長く彼女の伴奏を務めているテッド・ローゼンタール(ピアノ)に、ジム・ホールとの共演でも知られるスティーヴ・ラスピーナ(ベース)、テリー・クラーク(ドラムス)。「素晴らしいミュージシャンと一緒に公演できて幸せだ」と、舞台上でヘレンは何度も言っていました。

これまで数えきれないほどの名盤を残してきたヘレンですが、今なお語り草になっている1枚に『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン(原題は単にHELEN MERRILL)』があります。ぼくが見たきのうのファースト・セットでは、同アルバムから「BORN TO BE BLUE」、「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」、「S' WONDERFUL」の3曲を聴かせてくれました。古典・聖典といわれるアルバムからの曲を、その本人が目前で歌っている・・・それを至近距離で体験できる機会は、そうあるものではありません。自身の心から愛する曲を長年の間、大切に大切に歌い続けているヘレン。彼女の音楽に寄せる愛情が伝わるひとときでした。

音楽を愛し、歌を愛し、日本のオーディエンスを愛するヘレン・メリル。キャリア60年を経てもなお、ステージに立ち、ラヴ・ソングを歌い続ける彼女の“歌手魂”に、ひとりでも多くのひとが触れてくださることを願います。
(原田 2010/4/2)


● 4.2fri.-4.8thu.(4.5mon.OFF)
HELEN MERRILL


ヘレン・メリル-HELEN MERRILL


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