BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , KRISTINA TRAIN - - report : KRISTIN...

2010/03/31

KRISTINA TRAIN-クリスティーナ・トレイン
KRISTINA TRAIN-クリスティーナ・トレイン


公演初日リポート:KRISTINA TRAIN



ニュー・スターのステージに接するのは本当に気持ちのいいものです。
本日の主人公、クリスティーナ・トレインは、この2月にアルバム『クリスティーナ・トレイン』で日本デビューしたばかり。ノラ・ジョーンズ、プリシラ・アーンに続いて名門ブルーノート・レコードが送り出したシンガー・ソングライターです。

クリスティーナはニューヨークで生まれ、ジョージア州で育ちました。ブルーノート・レコードからデビューの声がかかったのは19歳のときだったといいます。しかし彼女は教育熱心だった母親の意向を受けて、この誘いを断り、大学へ進学しました。しかしブルーノート・レコードは彼女にラヴ・コールを送り続け、音楽活動に専念できるときが来るのを待って契約。そして『クリスティーナ・トレイン』を完成させたのです。

記念すべき初来日公演をブルーノート東京でおこなっているクリスティーナのバンドは、彼女の歌とヴァイオリンに、サド・デブロック(アコースティック&エレクトリック・ギター)、キース・コットン(ピアノ&オルガン)、メリサ・モーガン(バック・ヴォーカル)という、シンプル極まりない編成。ベースもドラムスもありません。しかし、これがいいのです。クリスティーナの力強く、エモーショナルな歌声を、そっとギターやキーボードがサポートします。全身全霊をこめた熱唱が、クラブじゅうに響き渡ります。

レパートリーはもちろん、『クリスティーナ・トレイン』に収められていたものが中心。カントリー、ゴスペル、ブルース等への愛情を感じさせるソングライティングは、すでに完成の域に達しています。観客に話しかけながら進めていくステージングも余裕たっぷり(桜の美しさに感動したとのことです)、堂々としています。10代の頃からクラブで歌い続けてきたというキャリアはダテではありません。キャロリン・フランクリン(アレサ・フランクリンの妹、故人)が歌っていた「IF YOU WANT ME」、ロッド・スチュアートがいたロック・バンド、フェイシズの「JUST ANOTHER HONKY」など、カヴァー曲も充実していました。

クリスティーナはまだスターダムについたばかりです。これからもっともっと輝きを増していくでしょう。しかし、たとえどんなにビッグになったとしても彼女は全身全霊で熱唱し続けるに違いありません。
(原田 2010/3/30)

  
● 3.30tue.-4.1thu.
KRISTINA TRAIN


クリスティーナ・トレイン-KRISTINA TRAIN


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHUCHO VALDES , MICHEL CAMILO - - report : MICHEL ...

2010/03/26

MICHEL CAMILO-ミシェル・カミロ
MICHEL CAMILO-ミシェル・カミロ


公演初日リポート:MICHEL CAMILO & CHUCHO VALDES



カリブが世界に誇る2大ピアニストが昨日から3月29日まで、まだ肌寒さの残る東京で熱いセッションを繰り広げています。

ステージ向かって左側にあるピアノを演奏するのはドミニカ出身のミシェル・カミロ、右側のピアノを演奏するのはキューバ出身のチューチョ・ヴァルデス。
場内はもちろん超満員、異様な興奮が漂っています。これから行われるバトルロイヤルに、誰もが固唾を呑んでいるかのようです。なにしろラテン、ジャズ、クラシック、なんでもこいの御両人です。どんなレパートリーが飛び出すのか予想がつきません。

オープニングは、短いフレーズのかけあいから始まりました。お互いに相手のタイミングを見計らっているかのようです。が、やがて、反復された短いメロディが、聴きなれた“歌”に変化してゆきます。そうです、あのラテンの大スタンダード・ナンバー「EL MANICERO」(邦題「南京豆売り」)です。といっても両者は、ただそのまま名曲を再現するわけではありません。自在に即興を加えながら、イマジネーションのキャッチボールをするかのように、演奏の沸点を高めていくのです。「南京豆売り」はこの日、壮大な変奏曲になりました。

続いてやはりラテン・スタンダードの「BESAME MUCHO」、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスが演奏したジャズ・ナンバー「SOLAR」といった有名ナンバーが続きます。古今東西、さまざまなアーティストに取り上げられてきた定番をあえて並べ、それをとれたての魚をさばくように料理するカミロとチューチョの技には圧倒されるばかりでした。中盤ではふたりのソロ・コーナーもあり、チューチョは「MY FOOLISH HEART」、カミロは「FROM WITHIN」(これは彼のオリジナルですが、ファンならば知らぬ者のない十八番です)でピアノを鳴らしきりました。またプログラム後半ではチューチョ・バンドのリズム・セクションが加わり、ちょっとしたジャム・セッションを楽しませてくれました。

いうまでもないことですが、チューチョもカミロも大変な人気者です。ブルーノート東京に何度も登場し、喝采を浴びてきたことは皆様も御存知かと思います。しかし今回のピアノ・デュオは、単なる大物どうしの顔合わせという域を軽く超えた快感を与えてくれます。1+1を5にも6にもしてくれるマジシャン、それがチューチョとカミロなのです。
(原田 2010/3/26)




● 3.25thu.-3.29mon.
MICHEL CAMILO & CHUCHO VALDES "Piano Masters"



MICHEL CAMILO-ミシェル・カミロ


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOOLS HOLLAND - - report : JOOLS H...

2010/03/23

Jools Holland-ジュールズ・ホランド
Jools Holland-ジュールズ・ホランド

公演初日リポート:JOOLS HOLLAND


ブギ・ウギ、ブルース、R&B、スカ、カリプソ、ラテン、ジャンプ・ミュージック、ビッグ・バンド・ジャズ、そしてゴスペル。
以上のフレーズを見てピンと来た方に、ぜひ体験していただきたいのが、この“ジュールズ・ホランド・アンド・ヒズ・リズム&ブルース・オーケストラ”のステージです。

ジュールズといえば70年代に“スクイーズ”のキーボード奏者としてブリティッシュ・ロック界に新風を巻き起こした存在です。その後はテレビ番組のパーソナリティとしても大成功しました。しかし現在の彼はごきげんにロックし、ロールするブギ・ウギ・ピアニストです。どうしてこんなに左手が動くのだろう、どうしてこんなに力強いベース・ラインが弾けるのだろうと、ぼくはジュールズの指さばきに見とれてしまいました。プロフィールを見るとスクイーズ参加前、8歳の頃からブギ・ウギ・ピアノを弾いていたというのですから、なるほど、ブギ・ウギ奏法が体のすみずみまでしみこんでいるのでしょう。

優れたピアニストであると同時に、メンバーを引き立てる名人であるジュールズは、演奏者それぞれを曲によってフィーチャーしながら、パフォーマンスの熱気を高めていきます。個人的に「おっ、これは見つけものだぞ」と思ったのはウィンストン・ロリンズのプレイです。“リアル”というヴォーカル・デュオや、ジャミロクワイとの共演でも知られる彼ですが、今回はトロンボーンを吹きまくってくれました。豊かな音量はもちろんのこと、4小節なり8小節なりの短いスペースできっちりと起承転結をつけるアドリブ・フレーズ作りのうまさにも、感心させられることしきりです。

トロンボーンにはもうひとり、重鎮リコ・ロドリゲスも参加しておりました。彼がいかに偉大な存在であるか書いていけば、1冊の本ができるはずです(スカの創始者の一人にも数えられています)。とにかくグレイトのひとことに尽きます。しかし実際のリコ氏はとても物腰柔らか、おだやかです。真の巨匠とは、そういうものなのでしょう。彼がリード・ヴォーカルをとったナット・キング・コールのヒット曲「L-O-V-E」は、ブルースの連発で熱くなった場内にほんわかとした暖かみを付け加えてくれました。

ほかにもルビー・ターナー、ルイーズ・マーシャルという、このへんの音楽好きにはたまらないシンガーたちも鳥肌モノの歌声を聴かせてくれましたし、ロージー・ホランドの歌う「GOT MY MOJO WORKING」も楽しいものでした(マディ・ウォーターズが歌って以降、この曲は“タフな男の歌”になってしまった観がありますが、もともとはアン・コールという女性シンガーの持ち歌だったのです)。ドラムスはスクイーズ時代の同僚、ギルソン・レイヴィスが担当。パーカッションを仕込んだ独特のドラム・セットでアンサンブルの底辺をどっしりと支えていました。

ホットでダンサブル、そしてフレンドリーな“ジュールズと仲間たち”。極上の公演は24日まで続きます。
(原田 2010/3/22)

● 3.22mon.-3.24wed.
Jools Holland
and his Rhythm & Blues Orchestra featuring GILSON LAVIS and guest vocalists RUBY TURNER & LOUISE MARSHALL


Jools Holland-ジュールズ・ホランド


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - report : GEORGE ...

2010/03/13

GEORGE DUKE-ジョージ・デューク
GEORGE DUKE-ジョージ・デューク


- report : GEORGE DUKE @ COTTON CLUB



ジョージ・デュークは絶好調です。
プロデューサー、作曲家としても数え切れないほどの栄誉に輝いているジョージですが、やっぱりキーボードを弾いているときの彼は格別です。久々の来日となる今回の公演はずばり、“パフォーマー=ジョージ・デューク”の本領発揮といえるものでしょう。

3月11日と12日には「コットンクラブ」に出演、昨晩は「モーション・ブルー・ヨコハマ」にも登場しました。そして15日月曜、ジョージ・デューク・バンドはブルーノート東京に登場します。ぼくは12日の「コットンクラブ」に行ってきましたが、大変な盛り上がりでした。このテンションを持続して、彼らはブルーノート東京のステージに立つことでしょう。以下は、12日ファースト・セットのリポートです。

「今日は来てくれてありがとう。いろんな種類の音楽をプレイするので、どうか楽しんでいってください」。そういいながら、ジョージ・デュークはキーボードの前に座りました。
それからの約90分間は、ほんとうに「いろんな種類の音楽」の宝庫でした。いわゆる4ビート・ジャズからブラジリアン・ミュージック、サルサ、ファンク、ディスコ、ニューオリンズ風のビート、レゲエ、ブルース、ロックンロール、アフリカン・ミュージックなどの要素を感じさせるナンバーやパッセージが、次々と飛び出してくるのです。

ほかのミュージシャンがたまたま同じようなことをやったとしても、それはとっちらかった、ただ散漫なものになるでしょう。しかしジョージが演奏すると、それはすべて“ジョージ・デュークの音楽”という統一感に彩られます。あらゆる音楽を愛し、プレイしてきた彼だからこそ成しえる離れ業です。ぼくは、いろんなおかずがつまった幕の内弁当を食べるような気持ちで、ジョージのライヴ・パフォーマンスを楽しみました。

もちろん「SWEET BABY」、「SHINE ON」など‘80年代のビッグ・ヒットも取りあげてくれましたし、’76年にビリー・コブハムと組んでいた双頭バンドのレパートリーも聴かせました。自身が育ったサンフランシスコ・ベイ・エリアに捧げた「SAUSALITO」は、サンバのリズムに乗ったアコースティック・ピアノの響きが、ひとあしもふたあしも早い夏を運んでくれたような気分を運んでくれました。

ジョージ・デューク船長が案内する“音楽の航海”。それは本当に気持ちいい体験です。
(原田 2010/3/12)



●3.15mon.
GEORGE DUKE BAND



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND - - report : GORDON ...

2010/03/11

ゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド-GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND-JOE SAMPLE
ゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド-GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND

公演初日リポート:GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND


見れば見るほど面白い、聴けば聴くほど楽しくてたまらない。それがビッグ・ファット・バンドです。

彼らの来日はこれで3度目。ぼくがライヴを見るのも3度目です。が、来るたびにサウンドにエンタテインメント性、いいかえれば華やぎが増しているのがわかります。そもそもメンバーはロサンゼルスきっての、超ハイレベルな凄腕ぞろい。映画音楽、ポップス、ロック、ラテン、なんでもこなしてしまうファースト・コールたちです。主にスタジオで活動を続ける彼らが一同に会し、“オーディエンスの前でジャズをプレイするのが楽しくてたまらない”とばかりにかっこいいナンバーを、圧倒的なテクニックを用いつつも余裕綽々で演奏するのですから、盛り上がらないわけがありません。日本のお客さんとの呼吸もツーカーです。

初めて来日する前、ビッグ・ファット・バンドの存在は本当に一部ビッグ・バンド・ファンの間で知られているに過ぎませんでした。しかし今では、彼らは日本で最も馴染みのあるビッグ・バンドになったような気がします。学生ビッグ・バンド、社会人ビッグ・バンドの間でも彼らの譜面は大評判だとききます。たしかにビッグ・ファット・バンドの勢いあるサウンドは、ぼくらオーディエンスに“何かしなくちゃ!”という気持ちを駆りたたせる何かがあります。

トロンボーン・セクションをフィーチャーした「IT'S NOT POLITE TO POINT」、トランペット・セクションが激しいバトルを演じた「BACKROW POLITICS」、どちらも驚嘆ものの迫力でした。彼らは技巧の上でトップ・クラスであるだけではなく、エゴを捨ててひとつにまとまる点でも最高峰に位置しているのです。どの曲のソリストも充実していましたが、ぼくが特に感心したのはサックス、クラリネット、ピッコロを持ち替えながら熱演を展開したサル・ロザーノです。よどみなく流れるフレーズ、豊富な音量で繰り出される職人芸の数々には、唸らずにはいられませんでした。

もちろんリーダーのゴードン・グッドウィンもピアノ、サックス、指揮で千両役者ぶりを発揮し、日本語を交えたMCで場内を和ませてくれました。秋に向けてニュー・アルバムの制作も進んでいるそうです。ライヴの熱気が封じ込められたCDになればいいなあ、と心から思います。

ぼくは大満足してブルーノート東京をあとにしましたが、ゴードンによると「毎セットごと、もっとよくなるよ。なんたってこんな凄いメンバーが集まっているんだからね」とのことですので、とにかく、どんどんすごくなるビッグ・ファット・バンドのサウンドを浴びに、クラブへお越しください!
(原田 2010/3/10)


● 3.10wed.-3.14sun.
GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND

ゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド-GORDON GOODWIN'S BIG PHAT BAND


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