BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NICOLA CONTE JAZZ COMBO - - report : NICOLA ...

2009/12/18

THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA-ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ
ニコラ・コンテ-NICOLA CONTE


公演初日リポート:NICOLA CONTE JAZZ COMBO
featuring Fabrizio Bosso, Gaetano Partipilo, Pietro Lussu, Paolo Benedettini, Teppo Makynen & Alice Ricciardi


DJやプロデューサーとして驚くほど多彩な活動を繰り広げているニコラ・コンテが、バンド・リーダー兼ギタリストとしてブルーノート東京に戻ってきました。
グループ名は、ずばり“ニコラ・コンテ・ジャズ・コンボ”。まるで50年代のファッション雑誌から飛び出してきたようなスーツ姿で、スタイリッシュにモダン・ジャズを演奏します。

前回の公演(2008年10月)では、あまりギターを弾かず、音楽監督として全体を俯瞰しながらセッションしている印象が強かったニコラですが、今回はソロにバッキングに、かなりワイルドなプレイを楽しませてくれました。

そんな彼を囲むミュージシャンは、ヨーロッパを代表する気鋭ジャズメンたちです。ニコラに負けず劣らずの声援を浴びていたファブリッツィオ・ボッソは、“ハイ・ファイヴ”以来、約1年ぶりのブルーノート東京への登場。ぼくはジャズ雑誌に勤めていた頃(もう7,8年前でしょうか)、初めて彼のプレイを海外盤で聴き、大いに感激しました。これは逸材だ、よその雑誌で取り上げられる前に紹介しなきゃと思い、イタリアのレコード会社を通じてコンタクトをとり、メールでインタビューしたことがあるのですが、その頃がウソのように現在のボッソはスターです。今回も、ソロ・スペースこそ短かったものの、さまざまなミュートを用いたり(彼が敬愛するウィントン・マルサリスからの影響だと思います)、オープン・ホーンで目の覚めるようなトランペットを聴かせてくれました。

ブルーノート・レーベルから発売された『COMES LOVE』が好評のアリーチェ・リチャルディも、ゲスト・シンガーとしてではなく、あくまでもバンドのヴォーカリストとして、ほとんどのレパートリーに参加します。彼女の来日は、昨年の春におこなわれた「コットンクラブ」のソロ公演以来だと思いますが、そのときは、いわゆるアメリカ製のスタンダード・ナンバーを中心としたステージでした。ぼくはずいぶんカーメン・マクレエ(アメリカを代表するジャズ・シンガー。故人)に歌い方が似ているなあと思いながら聴きましたが、この夜、ニコラとステージに立ったアリーチェは、そのときとは180度、とまではいわないまでも120度ぐらいのイメージ・チェンジを図っていました。ようするに彼女はとてつもなく器用であり、どのようにも歌えるのでしょう。

伊達男たちと淑女の粋な世界は、20日まで続きます。
(原田 2009/12/17)




● 12/17 thu - 12/20 sun.
NICOLA CONTE JAZZ COMBO
featuring Fabrizio Bosso, Gaetano Partipilo, Pietro Lussu, Paolo Benedettini, Teppo Makynen & Alice Ricciardi

ニコラ・コンテ-NICOLA CONTE



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DIONNE WARWICK - - report : DIONNE ...

2009/12/15

ディオンヌ・ワーウィック-DIONNE WARWICK
ディオンヌ・ワーウィック-DIONNE WARWICK


公演初日リポート:DIONNE WARWICK


ついにこの日が来ました。ディオンヌ・ワーウィックの公演です。
‘72年以来、何度か来日しているディオンヌですが、ジャズ・クラブでのパフォーマンスは、もちろん今回が初めてです。世界のエンターテインメントのトップに立つ彼女を、こんな近くの距離で見聴きできるなんて、われわれはなんとラッキーなのでしょう。

愛息デヴィッド・エリオットが見事なオープニング・アクトを務めたあと、待ちに待った女王のステージが始まります。プログラムは、いきなりバート・バカラック・ナンバーで始まりました。さすがディオンヌ、ファンの心を一瞬にしてつかんでしまいます。
「Walk on By」、「I'll Never Fall in Love Again」、「I Say a Little Prayer」等が次々と登場、イントロが出ると同時に会場は沸きに沸きます。
皆さんはこれまで、いろんなライヴでいろんなミュージシャンが歌ったり演奏したりするバカラック・ナンバーを聴いてこられたことでしょう。しかしディオンヌの歌うバカラックには、そのどれとも違う重み、風格があります。ぼくも、ついに、ああやっと“正調”をナマで聴くことができた、という気持ちに満たされました。
だからといって彼女は別に'60年代と同じように歌っているわけではありません。声にはキャリア相応の渋み、年輪が加わり、メロディもフェイクされています。

とはいえ「なんだ、レコード通りに歌うわけじゃないのか」と解釈しては、ライヴを味わう醍醐味が半減します。'60年代には'60年代のディオンヌにしか表現できない世界があり、現在のディオンヌには現在のディオンヌだからこそ表出できる滋味に満ちているのです。

ぼくは2009年12月現在の彼女が歌う数々のラヴ・ソングに、時間を忘れて聴き入りました。ときおりジョークを交えながら、リラックスしつつ、でも丁寧に1曲1曲を歌い上げていくディオンヌ。ものすごい大スターのはずなのに、近寄りがたさは少しもありません。彼女はきっと、オーディエンス全員と握手するような気持ちでステージを繰り広げていたのでしょう。外の寒さを吹っ飛ばす、心底からだが暖まる公演でした。

※以下、マニアックな追加を・・・
デヴィッド・エリオットの父親は故ビル・エリオット(ドラムス)とのこと。ビル・エリオットのプレイは、オルガン奏者ジャック・マクダフの1960年作品『Tough ‘Duff』等で聴くことができます。
ソロ・デビュー前のディオンヌが聴ける音源がCD化されています。オルガン奏者ローダ・スコットの『ファンキー・ソウル・オルガン』という作品です。ディオンヌはザ・シャウターズというコーラス・グループの一員として参加(ディー・ディー・ワーウィックとの姉妹共演)。ゴリゴリのR&Bです。ちなみにドラムスはビル・エリオットが叩いています。
(原田 2009/12/14)




● 12/14mon.-12/16wed.
DIONNE WARWICK

ディオンヌ・ワーウィック-DIONNE WARWICK



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA - - report : THE VAN...

2009/12/06

THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA-ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ
THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA-ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ


公演初日リポート:THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA Established by Thad Jones & Mel Lewis



いままでこのコーナーで、何度「世界的な快挙」、「なんという贅沢」という言葉を使ったことでしょう。
が、今回もそのフレーズを全力で使わなければなりません。

ヴァンガード・ジャズ・オーケストラが、ブルーノート東京で演奏しています。
これは常識を超えたすごいことなのです。なぜなら彼らは毎週月曜日、ニューヨークのジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」にレギュラー出演しているからです。本来なら日本にいる場合じゃないのです。つまり今回の公演は、まったく特別な、通常ならありえない‘出張ライヴ’というわけです。まさしく世界的な快挙です。
またこのオーケストラには、由緒正しい歴史があります。60年代後半から70年代にかけて、デューク・エリントン楽団、カウント・ベイシー楽団に次ぐ‘世界第3位のビッグ・バンド’(ということは、実質1位ということです。エリントンとベイシーは殿堂、別格扱いだからです)と賞賛されたサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラが母体なのです。通称サド=メルは‘78年にサドが脱退してメル・ルイス・オーケストラと改称、その後メルの他界を受けてヴァンガード・ジャズ・オーケストラと名乗るようになりました。今もメンバーは当時の譜面を大切に使いながら、その一方で新たなレパートリーを次々と増やしています。

きくところによると全セット、曲目が異なるとのことですが、ぼくが見た初日のファースト・セットは、サドのアレンジしたナンバーが中心でした。しかも90分以上もの、入魂のパフォーマンスです。「ヴァンガード」はワン・セットが大体60分なので、異例の大サービスといえます。「A THAT’S FREEDOM」に始まり、「LITTLE RASCAL ON A ROCK」、「THE GROOVE MERCHANT」と続くナンバーの数々は、サドの譜面が今もまったく古びていないことを改めて示してくれました。ソプラノ・サックスがリードするサックス・アンサンブルや、ミュート・トランペット+フリューゲルホーン+フルートの組み合わせなどは、もはやジャズ・ビッグ・バンドの定番といえる手法ですが、それを最も早くから、効果的に用いたアレンジャーこそサドなのです。
現ヴァンガード・ジャズ・オーケストラの音楽監督は、トロンボーン奏者のジョン・モスカ。彼がMCで「34年ぶりの来日なんだ」といったのは、サド=メルの最後の日本公演が‘75年11月だったことを踏まえてのものでしょう。もっともそのときのメンバーは、今回の顔ぶれとはひとりもダブっておりません。しかしサウンドの熱気、分厚く味わい深いアンサンブルは、まぎれもなくサド=メル時代から脈々と受け継がれてきたものと言えるはずです。

「ヴィレッジ・ヴァンガード」の名物ビッグ・バンドが、ヴァンガードの約2倍の収容人数を誇るブルーノート東京を満員札止め状態にする・・・これを快挙といわずに何といいましょう!
(原田 2009/12/6)

● 12/6sun.-12/9wed.
THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA Established by Thad Jones & Mel Lewis

ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ-THE VANGUARD JAZZ ORCHESTRA


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DAVID SANBORN - - report : DAVID S...

2009/12/04

デヴィッド・サンボーン-DAVID SANBORN
デヴィッド・サンボーン-DAVID SANBORN


公演初日リポート:DAVID SANBORN GROUP


「おかえりなさい、待ってたよ!」
そう声をかけたくなったファンも多いのではないでしょうか。ミスター・ワン&オンリー、デヴィッド・サンボーンの堂々たる帰還です。
リッキー・ピーターソン、ニック・モロック、リチャード・パターソン、ジーン・レイクというバック・メンバーも、もうすっかりおなじみになりました。気の合うメンバーと、お気に入りの曲を、思う存分ブロウする。そんなサンボーンをクラブで味わえるなんて、アメリカでもなかなかあることではありません。
ぼくは90年代の初めからサンボーンのライヴに接していますが(おそらく20回は聴いていると思います)、年々アドリブがどんどんアグレッシヴになっている気がします。そしてバンド全体のサウンドが、よりブルージーというかR&B的になっているような気がします。セントルイスで暮らしていた10代の頃、ブルースからフリー・ジャズまでなんでも演奏していたという経験が以前にも増して、ごく自然に音に現れているように思うのです。定番の曲であってもアレンジには新味がこらされていて、「FULL HOUSE」では途中からリズム・パターンをJB’sの「DOING IT TO DEATH」風にチェンジ(4拍目を長く引っ張る)、「SOUL SERENADE」では、ジミー・フォレスト(少年時代のサンボーンに大きな影響を与えたサックス奏者)のヒット曲である「NIGHT TRAIN」のフレーズが挿入されていました。
「TIN TIN DEO」は、トランペット奏者ディジー・ガレスピーとキューバの打楽器奏者チャノ・ポソの共作です。いわゆるAABC形式でワン・コーラスが構成されているのですが、サンボーンはこのAA部分だけを使い、アップ・テンポで演奏するのですが、これがまた、ものすごい疾走感なのです。よくチューンナップされた大型レンジローバーでサファリのど真ん中を全速力で走っているような感じ、といえばいいでしょうか。メンバーの誰もが、なにかにとりつかれたようにノリまくります。なかでもジーン・レイクのドラムスの切れ味は絶品でした。かつてサンボーン・バンドにはドン・アライアスという鬼才パーカッション奏者が加わっていました。しかし彼が亡くなった後、その座は空席が続いています。アライアスに代わるプレイヤーはいないということなのでしょうが、レイクのドラムスは打楽器奏者の不在を補って余りある大活躍でした。
新作『ONLY EVERYTHING』の発表も目前のサンボーンですが、その長く輝かしいキャリアの中でライヴ・アルバムは『STRAIGHT TO THE HEART』と『CASINO LIGHTS』だけです。といっても前者は後日スタジオで編集やオーバーダビングを加えたものであり、後者は他のバンドとのコンピレーション形式。つまりサンボーンの生演奏の凄さをフルで味わうためには、ディスクではラチがあかないのです。実際にライヴ会場に足を運ぶしかないのです。
サンボーン・バンドは5日まで「ブルーノート東京」に出演し、他の都市でプレイした後、10日から12日まで再び「ブルーノート東京」のステージに立ちます。ソウルフルでエモーショナルな夜を、存分にお楽しみください。


● 12/3thu.-5sat., 12/10thu.-12sat.
DAVID SANBORN GROUP

デヴィッド・サンボーン-DAVID SANBORN


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHICK COREA , STANLEY CLARKE - - report : CHICK C...

2009/11/28

チック・コリア-CHICK COREA
チック・コリア-CHICK COREA


公演初日リポート:CHICK COREA, STANLEY CLARKE & LENNY WHITE
-POWER OF THREE-






ブルーノート東京に登場するたび大きな話題を巻き起こしてくれるのがチック・コリアです。
この前はジョン・マクラフリンやクリスチャン・マクブライドとの夢のユニット“ファイヴ・ピース・バンド”で猛烈に熱い世界を聴かせてくれました。今回はスタンリー・クラーク、レニー・ホワイトとのアコースティック・トリオ“パワー・オブ・スリー”での出演です。

MCでチック自身も話していましたが、スタンリーとは’72年のいわゆる“第1期リターン・トゥ・フォーエヴァー”からのつきあい。レニーは’73年に始動したいわゆる“第2期リターン・トゥ・フォーエヴァー”のドラマーです。この3人はリターン・トゥ・フォーエヴァー解散後もたびたび共演し、’82年には故フレディ・ハバード、故ジョー・ヘンダーソンを加えて『GRIFFITH PARK COLLECTION』というアコースティック・ジャズの傑作をリリースしています。

3人がステージに歩みを進めるだけで、場内にどよめきが起こります。ぼくの記憶によれば彼らが日本で顔を合わせるのは’83年以来26年ぶり、通算2度目。そのときは「よみうりランドEAST」のこけら落とし公演として、第2期リターン・トゥ・フォーエヴァーの再結成がたった1日だけおこなわれたのでした(ギターはアル・ディメオラ)。伝説のコンビネーションがこれから、目の前で蘇ろうとしているのですから、クラブにつめかけた誰だって興奮を抑えきれないはずです。
もちろん、ぼくもそうでした。いったい何をどのように演奏してくれるのか。この3人の解釈で聴きたい曲は山のようにあります。

そしてチック、スタンリー、レニーは、出血大サービスと呼びたくなる選曲で、アコースティック・ピアノ・トリオの凄みをたっぷり味わわせてくれました。「LA FIESTA」と「SPAIN」が一夜でまとめて聴けるとは思いませんでしたし、チックとゲイリー・バートンのデュオで有名な「BUD POWELL」がまさか、ベースとドラムスを従えてプレイされるとは予想もしていませんでした。しかもビル・エヴァンスの名曲「WALTZ FOR DEBBY」まで聴かせてくれるとは。あの有名なメロディがチック節として生まれ変わっていく瞬間に立ち会うことができたのは、まさに「ライヴの現場」にいる醍醐味といえましょう。リターン・トゥ・フォーエヴァー時代にはエレクトリック楽器を駆使して演奏していた「NO MYSTERY」のアコースティック・ヴァージョンも新鮮でした。ほんとうにチックはファンの聴きたいものをとことんまで知り尽くしている。そんな印象を受けました。

ぼくは初日のファースト・セットに行きましたが、セット・リストを見ると、セカンド・セットではまったくといっていいほど異なる選曲だったようです。本日はどんな名曲が飛び出すでしょうか? わくわくします。

● 11/27fri.-12/2wed.
CHICK COREA, STANLEY CLARKE & LENNY WHITE
-POWER OF THREE-

チック・コリア-CHICK COREA


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