BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DEE DEE BRIDGEWATER - report : DEE DEE B...

2009/11/24

ディー・ディー・ブリッジウォーター-DEE DEE BRIDGEWATER\
ディー・ディー・ブリッジウォーター-DEE DEE BRIDGEWATER\


公演初日リポート:DEE DEE BRIDGEWATER "To Billie with Love" - A Cerebration of Lady Day



この7月、ジャズ・シンガーとして新たな一歩を踏み出したチャイナ・モーゼスが初来日し、ダイナ・ワシントンに捧げるステージを繰り広げたのは記憶に新しいところです。そして今、ディー・ディー・ブリッジウォーターが、ビリー・ホリデイを讃えるプログラムで出演しています。
つまりぼくらは2009年、「ブルーノート東京」で“ジャズ界を代表するヴォーカリスト親子”による、“2大グレイト・シンガー・トリビュート”を期せずして体験できることになったわけです。

ステージに登場したディー・ディーは、’70年代のデビュー当初を思わせる坊主頭。名盤として知られるファースト・アルバム『アフロ・ブルー』のジャケット写真を思い出した方も多いのではないでしょうか。マイクを持つやいなや、嵐のような拍手と歓声が巻き起こります。常連のオーディエンスもかなりいるようです。「どんなことがあっても、ディー・ディーの公演だけは聴きのがすわけにはいかない!」。そんな熱いヴァイブレーションが、客席のいたるところから感じられました。

1曲目はビリー・ホリデイの代表的な自作曲である「GOD BLESS THE CHILD」です。しょっぱなからディー・ディー節が爆発、ゴスペル調のアレンジにのって逞しくシャウトします。「これがアタシのGOD BLESS THE CHILDよ!」と力強く宣言しているかのような歌いっぷりは、クラブの温度を確実に何度か上昇させました。アイラ・コールマン(ディー・ディーとは9年間、一緒に演奏しているとのことです)の弓弾きベースをフィーチャーした「DON'T EXPLAIN」、ビリーの初レコーディング(1933年)からの1曲「YOUR MOTHER'S SON-IN-LAW」など伝説の名歌手ゆかりのナンバーが、独創的な編曲によって次々と息を吹き返してゆきます。

ライヴ後半では、「STRANGE FRUIT」も歌われました。ディー・ディーは、こう前置きしました。ビリー・ホリデイに因んだプログラムを構成するなら、この曲を避けるわけにはいかない。この歌はアメリカ南部のレイシズムを描いたものである。それも私の国の歴史の一部なのだ、と。歌詞をかみしめるように歌うディー・ディーの横で、クレイグ・ハンディのサックスが悲鳴のように響きます。ところでディー・ディーは去る3月、シカゴで、マックス・ローチとオスカー・ブラウンJr.(ともに故人)が書いた組曲「WE INSIST!」の再演にも参加しました(元のダンナさんであるトランペット奏者、セシル・ブリッジウォーターと共演したようです)。この組曲も一種の「STRANGE FRUIT」であると、ぼくは思っています。

ディー・ディーのビリー・ホリデイ・トリビュート・アルバムは2010年2月に発売される予定です。25日までブルーノート東京で、27と28日にはコットンクラブで2ヶ月早い“予習”を体験できます。
(原田 2009/11/23)




● 11/23mon.-11/25wed.
DEE DEE BRIDGEWATER
To Billie with Love - A Celebration of Lady Day -

ディー・ディー・ブリッジウォーター-DEE DEE BRIDGEWATER\


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , DEE DEE BRIDGEWATER - - ビリーホリデイ...

2009/11/22

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公演レビュー : DEE DEE BRIDGEWATER


ディー・ディー・ブリッジウォーターの公演が近づいてきました。昨年はブルーノート東京の20thアニバーサリーを祝う多彩なプログラムで楽しませてくれましたが、今年は没後50周年を迎える“ジャズ・ヴォーカルの女王”ビリー・ホリデイに因んだステージです。
そこで今回はビリー・ホリデイについて書いてゆきます。

彼女は1915年にペンシルヴァニア州フィラデルフィアに生まれ、メリーランド州ボルチモアで育ちました。ルイ・アームストロングのレコードに感動したことをきっかけに、ジャズに関心をもつようになったといわれています。18歳のときにベニー・グッドマン・バンドの一員として初レコーディングを果たし、’30年代半ばから後半にかけてはテディ・ウィルソン(スイング・ピアノの最高峰といわれています)やテナー・サックス奏者レスター・ヤングと数々の素晴らしいレコーディングを残しています。また、短期間ですがカウント・ベイシー・オーケストラで歌っていたこともあります。

ぼくがビリーの歌を最初に聴いたのは今から20年以上も前のことです。が、第一印象は決してよいものではありませんでした。でも面白いものです。寝ぼけているような歌だなあとか、どこにメリハリがあるんだか、ちっとも美声じゃないなとか思いながらなんとなく聴いていくうちに、だんだんハマっていき、気がつくとレコードを次から次へと集めたくなる・・・だんだんと、そんな気分になっていくのですから。

ビリーの歌は、タイミングが突拍子もありません。切れるところでつながり、つながるところでふと切れる。それが予想もつかないスリルをもたらします。メロディは伴奏の上を漂うように歌われ、ボーっとして聴いていると管楽器のようにも響いてきます。決して声を張り上げることなく、楽器の真似事をわけでもなく、ただただ自分の心に忠実に、歌詞を大切に表現される歌の数々。彼女なら処方箋を読んでもジャズになるはずです。

ビリーはまた、「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」、「ドント・エクスプレイン」等、いくつもの印象的なオリジナル曲を書いています。つまりシンガー・ソングライターの元祖でもあるわけです。そのドラマティックな生涯はダイアナ・ロスの主演で映画化されたこともありますし(’72年公開『ビリー・ホリデイ物語』)、U2の「エンジェル・オブ・ハーレム」はビリーに捧げられた1曲として知られています。ジャニス・ジョプリンもエリカ・バドゥも“ビリー・ホリデイ・チルドレン”だと、ぼくは考えています。

ディー・ディーは「ビリー・ホリデイ賞」を獲得し、ビリーのあだ名に因んだ『レディ・デイ』というミュージカルにも出演しています。彼女にとってビリーの存在は体の一部なのでしょう。スキャットをせず、マイクの前で淡々とけだるそうに歌うビリーと、スキャットを得意として、全身を大きく動かしながら歌うディー・ディーのスタイルは、一種対照的ですが、それだけにディー・ディーがビリーゆかりの名曲をどう解釈するのか、興味がつのります。ジャズ・ヴォーカル・ファンならずとも、絶対に見逃せない公演になることでしょう。
(原田 2009/11/22)




● Billie Holiday - ♪ Strange Fruit






● ♪ "Oh, Lady Be good" - Dee Dee Bridgewater & The Italian Big Band



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ASHFORD & SIMPSON - report : ASHFORD &...

2009/11/20

ASHFORD & SIMPSON-アシュフォード&シンプソン\
ASHFORD & SIMPSON-アシュフォード&シンプソン\


公演初日リポート:アシュフォード&シンプソン-ASHFORD & SIMPSON



あっ、本物だ!

そう声がでかかってしまいました。まさに待望、それ以外にどんな言葉がありましょうか。あまりにも偉大なヴォーカル・デュオ、そしてソングライターであるアシュフォード&シンプソンの、まさかの日本初公演が今、開催されています。

ふたりは数年前からニューヨーク・マンハッタンの72丁目で「シュガー・バー」というライヴ・スポットを経営していて、そこで定期的にステージを重ねています。ぼくもN.Y.に行くときは是が非でも見たいと思っていたのですが、どういうわけか予定が合わず(彼らの出ていないときにぶつかってしまうのです)、あの愛とソウルの世界にいつ生で接することができるのか、ひょっとしたら聴けずに終わるんじゃないかとも感じていたものです。

しかし、彼らは今、日本に来て、素晴らしいショウを繰り広げてくれています。何度も書きますが初来日です。これまで、プロモーターは何をしていたのでしょう。そう毒づきたくもなりますが、アシュフォード&シンプソンは常に全盛期を維持しています。トップ・フォームのまま、この国を訪れてくれたのです。昨日のふたりも、“旬”のステージをたっぷり楽しませてくれました。外はまるで冬のような寒さでしたが、往年のレコードとまったく変わらない、エモーショナルで熱い歌声、愛に溢れた動きのひとつひとつに、こころとからだがどんどん暖まっていくのがわかりました。

聴きどころだらけの内容でしたが、個人的に最もグッときたのは「LET'S GO GET STONED」に始まるセクションです。食うのにも困っていた時代、レイ・チャールズの目に留まり、彼に提供した「〜STONED」が大ヒットしてハンバーガーも心おきなく食べられるようになったとのこと。モータウンの総帥ベリー・ゴーディから送られてきたデトロイト行き飛行機のファースト・クラス・チケット。それらを曲の間に語るアシュフォードの語りはまるで牧師のよう、シンプソンのアコースティック・ピアノもゴスペル風に聴こえます。マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの歌で有名な「AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」や、シャカ・カーン(と発音していました)やホイットニー・ヒューストンによるカバーで流行った「I'M EVERY WOMAN」を、アシュフォード&シンプソンの自作自演で味わう喜びはまた格別です。最高の食材が、目の前で鮮やかに料理されていく場面に立ち会っているような快感に包まれました。
(原田 2009/11/19)


● 11/19thu.-11/22sun.
ASHFORD & SIMPSON

ASHFORD & SIMPSON-アシュフォード&シンプソン\


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , OTTMAR LIEBERT - report : OTTMAR LI...

2009/11/17

オットマー・リーバート-OTTMAR LIEBERT
オットマー・リーバート-OTTMAR LIEBERT


公演初日リポート:OTTMAR LIEBERT & LUNA NEGRA


アコースティック・ギターの魔術師、オットマー・リーバートが自身のバンド“ルナ・ネグラ”を率いてブルーノート東京に出演中です。
オットマーはドイツ出身ですが、現在はニューメキシコ州サンタフェに住んでいます。演奏する音楽は、彼自身がヌーヴォー・フラメンコと呼んでいるもので、フラメンコをベースにボサ・ノヴァ、ジャズ、インド音楽等の要素も感じさせます。ニュー・エイジ・ミュージックの旗手としても高く評価されていて、これまで5度のグラミー賞ノミネートに輝いています。

この日、オットマーが用いたのは、ナイロン弦のアコースティック・ギターのみ。彼は曲によって何本もギターを持ち替えるタイプではなく、ピックやアンプも使いません。

ステージに登場したオットマーが最初にすることは、「履物を脱ぐ」ことです。そうです、彼は裸足で演奏するのです。クラシック・ギタリストのように右足を台の上に乗せ、背筋をピンと伸ばしながら、哀愁のこもった美しいメロディを次々と奏でます。粒立ちの良い単音に、時おりコード(和音)がアクセントとして加わります。ギタリストの中にはコード奏法を重視するタイプもいますが、オットマーのプレイの根底には、あくまでも“うた”があるのでしょう。「彼は声のかわりにギターで歌っているのだな」と、ぼくは感じました。

ジョン・ゲイゲンはフレットレス5弦エレクトリック・ベースとシンセサイザーを演奏し、ドラムスのマイケル・シャベスは打楽器もいろいろプレイしながらサウンドに厚みを付け加えます。「アコースティック楽器とエレクトリック楽器の共存は思いのほか難しいものである」という話をぼくは他のミュージシャンからきいたことがありますが、ルナ・ネグラのメンバーはごく自然に、実に気持ちよさそうに生ギターと電気ベースを混ぜ合わせてゆきます。

スパニッシュ・ボサ・ノヴァと形容したくなる「SAO PAULO」、手拍子が飛び出した「BARCELONA NIGHTS」は特に圧巻でした。静かめのオープニングから始まり、徐々に白熱していく曲順も見事。ぜひ間近で味わっていただきたいステージです。とくにチコ&ザ・ジプシーズの公演にいらした方は、必ず大満足していただけることと思います。
(原田 2009/11/15)


● 11/16mon.-11/18wed.
OTTMAR LIEBERT & LUNA NEGRA

オットマー・リーバート-OTTMAR LIEBERT


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MATTHEW GARRISON - - report : MATTHEW...

2009/11/13

マシュー・ギャリソン-MATTHEW GARRISON
マシュー・ギャリソン-MATTHEW GARRISON


公演初日リポート:MATTHEW GARRISON TRIO


いやー、すごいライヴです。まだ興奮から醒めません。SPECTACULAR!と、慣れない英単語を使いたい気分です。

現ホイットニー・ヒューストン・バンドのレギュラーであり、ハービー・ハンコックやジョン・マクラフリンのバンドにも在籍経験があり、そして何よりもジョー・ザヴィヌル率いる“ザヴィヌル・シンジケート”のメンバーであったマシュー・ギャリソン。

少年時代にディジー・ガレスピーを驚かせ、その後もミシェル・カミロ、パキート・デリヴェラ等、数多くのミュージシャンと共演。ロビー・アミーンとの2ドラムス・ユニット“エル・ネグロ&ロビー・バンド”でも素晴らしいプレイを聴かせたオラシオ・エル・ネグロ・エルナンデス。
晩年のジョー・ザヴィヌルの友人であり、あのシンセサイザーの音色の殆どをプログラミングしていたキーボード奏者のスコット・キンゼイ。
この3人が集まったザヴィヌル・トリビュートなど、海外でもなかなか聴く機会はないでしょう。
それが今、日本にいながらにして聴けるのです!

正直言って開演前のぼくには、ちょっと不安もありました。「こっちはガキの頃からザヴィヌルの音楽を聴いてるんだ、ぬるいトリビュートなんかやったら承知しないぜ」という気分で、いささか興奮しながらクラブに足を運んだのが正直なところです。
が・・・そこはさすがマシュー、オラシオ、スコットです。むちゃくちゃかっこよくてクールです。ザヴィヌルの当たり曲を並べたり、ザヴィヌルのレコードやCDみたいな演奏をすることはゼロでした。ぬるいなんてとんでもない、火花の散るようなパフォーマンスです。ザヴィヌルへの愛を根底に持ちながら、彼らは未来に向かって音を出します。

チョーキング、ハーモニクスも思いのまま、まるでベースとギターと管楽器を兼ねているようなサウンドで雄弁かつ図太く迫るマシューの5弦ベース。本当に2本の手足で演奏しているのか目を疑わずにはいられないオラシオのドラムス(バスドラ、カウベル、ハイハットを瞬時に踏み分ける左足がとくに凄い!)、そしてなまめかしい音色で鍵盤をかけめぐるスコットのキーボード。いいです、すごいです。

そしてぼくは思いました。この公演を、ひとりでも多くのひとに聴いてもらえたら、と。近くの席で見れば、メンバーの指使いもじっくり見ることができます。後ろの席で3人の音色のブレンドに酔いしれるのも趣があります。でも、まず聴かなければ彼らの真髄は体感できません。
マシュー、オラシオ、スコットの名前になじみのない方もいらっしゃるでしょう。ですが、ぜひとも時間をやりくりして聴きに行っていただければと思います(ライヴは土曜日まで続きます)。「ああ、行ってよかった」、「聴いてよかった」という気分になるはずですから。
(原田 2009 / 11/12)

● 11/12thu.-11/14sat.
MATTHEW GARRISON TRIO

ジョー・サンプル-JOE SAMPLE


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