BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHUCHO VALDES - - report : CHUCHO ...

2009/09/15

チューチョ・ヴァルデス-CHUCHO VALDES
チューチョ・ヴァルデス-CHUCHO VALDES


公演初日リポート:CHCHO VALDES


チューチョ・ヴァルデスのピアノ・プレイは魅力の宝庫です。

テクニック、歌心、ユーモア、気迫、やさしさ、くつろぎ、そのすべてが彼の指先から鍵盤に注ぎ込まれます。あの大きなからだの中に、いったいどれだけアイデアが充満しているのだろう。ぼくはいつも、そう思ってしまいます。
自身のピアノをフィーチャーした小編成のバンドとしては、約8年ぶりの「ブルーノート東京」公演。ぼくはそのステージも見ていますが、今回のそれも、実に実に楽しく素敵なものでした。

オープニングは、「ELLINGTON MEDLEY」。その名のとおり、20世紀音楽界の巨匠であるデューク・エリントンに関連した曲を次々とプレイします。「SATIN DOLL」ではスインギーかつジャジーに、かと思えば「IN A SENTIMENTAL MOOD」では切ないまでのバラード・プレイを繰り広げ、「CARAVAN」ではラテンの血を全開にしてチューチョ節を炸裂させます。オープニングからいきなり、チューチョから魅力の花束を差し出されたような気分になったのはぼくだけではないでしょう。

「TRIBUTE TO ZAWINUL」は、ブルーノート東京にも数多く出演したキーボード奏者、故ジョー・ザヴィヌルへのオマージュです。ザヴィヌルがウェザー・リポート時代に書いた名曲「BIRDLAND」を基にした即興は、まさしく自由自在。ドラムスとパーカッションが織り成す複合リズムに乗って高速プレイを展開するチューチョに、客席から何度も歓声があがります。

紅一点のマイラ・カリダ・ヴァルデスが「BESAME MUCHO」と「SAN JOSE」(「DRUME NEGRITA」のメロディが挿入されておりました)を歌ったあと、ふたたびインストゥルメンタルのパートに。「LOS GUIROS」ではベースのラザロ・リヴェロ、主にコンガを叩くジャロルディ・アブレイユがカバサ(壺状の打楽器)に持ち替えてステージ前面に登場、すさまじいバトルを聴かせてくれました。
チューチョもすごいが、バンドもすごい。このライヴは、メンバー全員のプレイに見どころ、聴きどころが詰まっています。今日を入れてあと2日間、チューチョたちはさらに灼熱のパフォーマンスで酔わせてくれるに違いありません。

もう皆様ご存知かと思いますが、チューチョ公演とエディ・パルミエリ公演両方をご予約いただいたお客様の先着200名様にチキータス(ミニ・マラカス)がプレゼントされます。2人の顔写真入り、暗闇でほのかに光るというのも妖しくていいですね。偉大なラテン系ピアニストを生で浴びて、お宝グッズをゲットしましょう!!
(原田 2009/9/14)


チューチョ・ヴァルデス-CHUCHO VALDES



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 大西順子 - - report : JUNKO O...

2009/09/12

大西順子
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公演初日リポート:大西順子トリオ


今日まで大西順子が「ブルーノート東京」に出演しています。3年連続です!

前半は「BACK IN THE DAYS」、「MUSICAL MOMENTS」など、ベスト・セラー中の最新作『楽興の時』からのオリジナル曲が続きます。CDで聴いたときにも自在な発想、怒涛の展開に引き込まれたのですが、ライヴではさらにそれが何倍にも膨らんで発展しているような印象を受けました。井上陽介のベースが低域を駆けずり回り、大西順子のピアノからガッツ、パッション、ファイアーが溢れ、そこにジーン・ジャクソンのドラムスが鋭く切り込む。とくに「MUSICAL MOMENTS」はあまりにもドラマティックに“進化”していて、音楽は生き物なのだなあ、と改めて痛感させられました。

ピアノ、ベース、ドラムスという、いわゆるピアノ・トリオの演奏は、巷ではBGMとしても活用されることが多いようです。しかし大西、井上、ジャクソンの演奏は決してそうなり得ません。すごい緊張感、尋常ではない密度を保ちながら、強靭にスイングするからです。ビリー・ストレイホーンの名曲「Lush Life」をイントロ代わりに挿入したスロー・テンポの「PORTRAIT IN BLUE」でも、それは替わりません。

プログラム後半では、今から30年前に亡くなったベース奏者/作曲家のチャールズ・ミンガスが書いた「SO LONG ERIC」も演奏されました。これも単なるミンガスのカヴァーというよりは、しっかり“大西順子の「SO LONG ERIC」”になっているところが、さすがです。生前のミンガスはとにかく“模倣”を嫌ったといいます。チャーリー・パーカーのフレーズを吹いてしまったジャッキー・マクリーンは“お前はパーカーじゃないんだ。マクリーン自身を演奏しろ”と殴られ、ケニー・バレルは“Be Yourself”とハッパをかけられました。が、この日の大西順子トリオの演奏を聴いたら、さすがのミンガスも巨体を揺らしてニンマリするに違いありません。

考えてみれば、この日のバンド・メンバーは全員“ミンガス”というキーワードで結びつきます。井上陽介は自身のアルバム『ドリフティング・インワード』でミンガスの「Pithecanthropus Erectus(直立猿人)」を取り上げていましたし、ジーン・ジャクソンはミンガス未亡人が携わるミンガス・ビッグ・バンドのメンバーでもあります。同じフレーズを執拗に繰り返しながらテンションを高めていく大西のプレイには、かつてミンガス・バンドで活動したホレス・パーランに通じる粘っこさがありました。
と思ったら、アンコールでは、そのパーランの代表曲「Us Three」が飛び出したではないですか。もちろんこれも、“大西順子の「Us Three」”になっていることは、いうまでもありません。パーランのヴァージョンではアル・ヘアウッドがブラシでドラムスを叩いていましたが、ジャクソンはスティックを使って大西のピアノを煽りに煽ります。

スケールの大きな、実に気持ちいいステージでした。きくところによると、この日のセカンド・セットでは演目の殆どを入れ替えて、エリック・ドルフィーの「SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER」や、ライチャス・ブラザーズがヒットさせた「YOU'VE LOST THAT LOVING FEELIN'(ふられた気持ち)」も演奏されたといいます。今日はいったい、どんなプレイが飛び出すか。大西順子トリオは文字通りの絶好調、痛快なスリルに溢れています。
(原田 2009/9/11)


● 大西順子トリオ
9/11 Fri - 9/12 Sat.

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<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。
ブログ:http://haradakazunori.blog.ocn.ne.jp/blog/



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHARLIE HADEN - - report : CHARLIE...

2009/09/08

チャーリー・ヘイデン・クァルテット・ウェスト-CHARLIE HADEN QUARTET WEST
チャーリー・ヘイデン・クァルテット・ウェスト-CHARLIE HADEN QUARTET WEST 



公演初日リポート:CHARLIE HADEN QUARTET WEST



チャーリー・ヘイデン率いる名門グループ“クァルテット・ウエスト”が、本当に久しぶりの来日を果たしました。

ぼくが前回、彼らのステージに接したのは、‘90年代初めのことです。今は亡き原宿のジャズ・クラブに登場した彼らは、モニターを殆ど用いることなく、あくまでも生の響きを大切にしながら、このうえなく端麗なプレイを聴かせてくれました。

それから約20年。クァルテット・ウエストの待ちに待った「ブルーノート東京」初公演が、いま実現しています。もちろんモニターは殆ど使っておりません。香り高いアコースティック・サウンドが、純度100%のジャズをクラブに満たしてくれます。

オリジナル・メンバーのヘイデン、アーニー・ワッツ、アラン・ブロードベントの連携は“鉄壁”と呼ぶしかない隙のなさ。2007年に行なわれた結成20周年ヨーロッパ・ツアーの頃から参加した若手ロドニー・グリーンも、すっかり全体のサウンドに溶け込んでいます。ビリー・ヒギンズ、ポール・モチアン、ローレンス・マラブルといった巨匠たちの後釜に抜擢されたのは相当なプレッシャーだったのでは?とも想像してしまいますが、ロドニーはクァルテット・ウエストに加わることでプレイの幅をさらに広げたようです。

演奏は「TODAY I AM A MAN」から始まりました。‘40年代にチャーリー・パーカーが書いた「CONFIRMATION」を、クァルテット・ウエストなりに再解釈したものといっていいでしょうか。いわゆるビ・バップ・タイプのナンバーです。いきなり、アーニー・ワッツのテナー・サックスが火を噴きます。いわずとしれたフュージョンの花形奏者であり、ロック〜ポップス畑でも活動している(ローリング・ストーンズのツアーに参加したこともあります)彼ですが、もともとはバディ・リッチ・オーケストラ出身、’60年代には“ロサンゼルスのコルトレーン”と呼ばれたこともあるハード・エッジなミュージシャンです。クァルテット・ウエストで演奏すると、彼の中にある“ジャズの虫”がうずきだすのでしょう。「FIRST SONG」では渾身のカデンツァ(楽曲が終わる前に、延々と独奏すること)を披露。愛用のカイルベルス社製サックス(故グローヴァー・ワシントンJr.も使っていましたね)からは、文字通り泉のごとくフレーズがあふれ出しておりました。

アラン・ブロードベントのプレイも、さすがというしかないものでした。サックスやベース・ソロのバックにおける伴奏のうまさ。ソロ・パートにおける鮮やかな起承転結。名アレンジャーとしても知られる彼は、つねにその音楽が最も美しく響く状態を想定してピアノを弾いているのでしょう。「LONELY WOMAN」では、無伴奏のソロ・パートもありました。左手で単音の4ビートを刻み、右手で和音によるソロを延々と繰り広げる箇所など、彼の師であるレニー・トリスターノが降臨したかのようでした。

しかしメンバーがここまで充実したプレイをできるのも、背後でどっしりしたビートを送りこむヘイデンの存在があってこそです。ソロ部分における歌心、これぞアコースティック・ベースというべき力強く暖かい音色。あのサウンドが耳に入ってくるだけで、ぼくは幸せになります。彼のCDを聴いていると、「パチッ」という音を耳にすることが多いはずですが、その謎もライヴでは一目瞭然です。右手の人差し指が、ベースのネックを押さえている親指に当たるときに、この音が出るのです。こういう弾き方をするジャズ・ベーシストをぼくはほかに知りません。

今月発売されたCD『ザ・ベスト・オブ・クァルテット・ウエスト』を聴いてから「ブルーノート東京」に行くか、それとも「ブルーノート東京」に行ってから『ベスト』を聴くか。もちろん「どちらも必聴!」、これに尽きます。
(原田 2009/9/8)


● CHARLIE HADEN QUARTET WEST
9/7 Mon - 10 Thu.

チャーリー・ヘイデン・クァルテット・ウェスト-CHARLIE HADEN QUARTET WEST 



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SADAO WATANABE - - report : SADAO W...

2009/09/03

SADAO WATANABE-渡辺貞夫
SADAO WATANABE-渡辺貞夫 


公演初日リポート:渡辺貞夫 "INTO TOMORROW"



渡辺貞夫にとって6年ぶりのスタジオ録音、そして通算70枚目のリーダー・アルバムとなる『イントゥ・トゥモロー』。そのリリースを記念して、昨日9月2日(CDの発売日です)から5日まで、飛び切り充実したライヴが繰り広げられています。

共演メンバーはCDと同じく、ジェラルド・クレイトン(ピアノ)、ベン・ウィリアムス(ベース)、ジョナサン・ブレイク(ドラムス)。いずれもジャズ・シーンで注目を集めている新世代です。思えば渡辺貞夫は常に若手ミュージシャンとの共演で前進し続けてきました。海外の演奏家に限っても、70年代にはリー・リトナー、80年代にはバーナード・ライトやチャーネット・モフェット、90年代にはニコラス・ペイトンやサイラス・チェスナット等、つねに“次代の逸材”を迎えながら、その時代時代の“ナベサダ・ミュージック”をクリエイトしてきました。

ステージに登場した4人は、ちょっと見た感じ“先生と生徒たち”です。しかし演奏が始まると一転、まだあどけなさを残すメンバーたちの表情がキュッと引き締まり、文字通り一丸となって渡辺貞夫を鼓舞します。そこにぼくは、彼らの“ボス”に対する尊敬の念を感じました。

いつものアコースティック・ジャズ・ライヴなら演奏されるであろうチャーリー・パーカーゆかりの楽曲も登場せず、いわゆるスタンダード・ナンバーはアンコールで演奏された「YOU BETTER GO NOW」のみ。しかしこれも、カーメン・マクレエやジェリ・サザン等、シンガーに愛されているバラードであり、インストゥルメンタルではとりあげられる機会は殆どありません(ぼくもライヴで初めて聴きました)。他には盟友チャーリー・マリアーノ(惜しくも、この6月に亡くなりました)のオリジナル曲も演奏されましたが、基本レパートリーはあくまで『イントゥ・トゥモロー』からのもの。この最新作の世界を、徹底的に生で味わわせてくれました。超アップ・テンポによる「STUDY IN PIT INN」の力強さ、そして繊細このうえない「IF I COULD」「TIMES AGO」のバラード2連発。客席から熱狂的な拍手、かけ声、そして深いため息が沸き起こりました。

終演後、1FクロークにあるCD売り場には人だかりができていました。列に並んだファンが口々に「良かったね」「楽しかった」と感想を語り合いながら、発売されたばかりの『イントゥ・トゥモロー』を買い求める光景は、他のどのアーティストのライヴでも見たことのないものでした。この日、このステージを味わった誰もが、渡辺貞夫の音楽から強力なエネルギーをもらったことでしょう。
(原田 2009/9/2)


● SADAO WATANABE " INTO TOMORROW"
9/2 - 5


SADAO WATANABE-渡辺貞夫



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - 名門クァルテット

2009/09/01

チャーリー・ヘイデン・クァルテット・ウェスト-CHARLIE HADEN QUARTET WEST

チャーリー・ヘイデン・クァルテット・ウェスト-CHARLIE HADEN QUARTET WEST width=



CHARLIE HADEN QUARTET WEST - 名門クァルテット



「ジャズを土台として、さまざまな方面に触手を広げる音の旅人」、
「稀代のメロディ・メイカー」、
「愛と平和の人」、
「反骨精神と優しさを併せ持つ真のアーティスト」、
「大のミステリー小説愛好家で、映画マニア」
そのどれもがチャーリー・ヘイデンです。

彼の参加している作品は本当に幅が広い。オーソドックスなジャズから、ちょっと前衛的なものまで。エスニック〜ワールド・ミュージック的なものから、ロック的なものまで。とろけるようなラヴ・ソングから、社会への願いをこめたポリティカルな曲まで。クリント・イーストウッド監督の映画「真夜中のサバナ」のサウンドトラックにも参加していました。

そのどれもがサマになっているのは、つねにヘイデンが誠実に、真摯に音楽を紡いでいるからでしょう。だからエルヴィス・コステロも、リッキー・リー・ジョーンズも、パット・メセニーも、キース・ジャレットも、ゴンサロ・ルバルカバも、彼のプレイを必要とするのです。



● Charlie Haden Quartet West - ♪First Song




● Egberto Gismonti & Charlie Haden - Sao Paulo - 1999




● Charlie Haden Quartet West with Strings Orchestra




● Charlie Haden Quartet West at Umbria Jazz 2008







ヘイデンの魅力は尽きません。が、ぼくは、何よりも第一に彼のベースの音を愛しています。地の底から響くような低音、ガット弦ならではの唸り(殆どのベーシストはスチール弦を使っています。ちなみにロン・カーターはナイロン弦です)。ヘイデンの音色からは、楽器全体の鳴りが聴こえて来ます。乗ってくると彼は、楽器を振り回しながら演奏します。まさしくベースと一体となって、全身でプレイするのです。

ヘイデンは幼い頃から両親のバンドでカントリー&ウエスタンを歌っていたそうです。少年時代にベースへ転向し、’57年ごろからアート・ペッパーやチェット・ベイカー等、ロサンゼルスのトップ・ジャズ・ミュージシャンと共演します。そして’59年にはオーネット・コールマンのバンドに参加、雄弁で重量感のあるベース・プレイでジャズ界に新風を吹き込みました。’66年からはキース・ジャレットと共演、’69年には伝説のアルバム『リベレイション・ミュージック・オーケストラ』を発表しています。今回、来日公演を行なうクァルテット・ウエストは’87年にファースト・アルバムを発表し、2007年に発足20周年ヨーロッパ・ツアーを敢行。来日は’90年代初頭の原宿「キーストン・コーナー東京」公演以来、約20年ぶりです。

名門グループ、クァルテット・ウエストが日本で聴ける。これは事件です。

最後に、例によって独断と偏見で、ヘイデンの“おいしいベース”が特にタップリ味わえるアルバムをいくつか紹介させていただきましょう。


● オーネット・コールマン「ジャズ来るべきもの」
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:邦題は難しめですが、決して怖い音楽ではありません。徹底的にナチュラルなオーネットのサックスに、流れるようなヘイデンのベースが絡みます。わずか22歳にして、これほどスケールの大きなビートを送り出すヘイデンは、まさしく天才。


● チャーリー・ヘイデン「リベレイション・ミュージック・オーケストラ」
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:戦争、貧困、差別のない世の中を願って制作したコンセプト・アルバム。アレンジはカーラ・ブレイが担当しています。「勝利を我らに」(元はゴスペル曲)、チェ・ゲバラに捧げた自作「ソング・フォー・チェ」、オーネットの書き下ろした「戦争孤児」等を収録。


● オーネット・コールマン「サイエンス・フィクション」
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:オーネット、‘70年代の代表作。「ロー・イヤーズ」をはじめ、名曲満載です。ヴォーカルや詩の朗読も聴くほどに味わい深いものです。ヘイデンは曲によってベースにエフェクターを通し、まるでジミ・ヘンドリックスのギターのように弾きまくっています。

  
● キース・ジャレット「シェイズ」
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:通称“アメリカン・クァルテット”の末期を飾る1枚。いったいどこまで登り詰めるのか、ハラハラしてしまうほど熱い演奏が聴けます。1曲目「シェイズ・オブ・ジャズ」と2曲目「サザン・スマイルズ」の、「繋ぎ」のかっこよさにのけぞってください。


● チャーリー・ヘイデン「クロースネス」
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:キース・ジャレット(ピアノ)、オーネット・コールマン(アルト・サックス)、アリス・コルトレーン(ハープ)、ポール・モチアン(パーカッション)とのデュオを、1曲ずつ収録。デュオとは音の会話であるということが、とてもよくわかる‘70年代ヘイデンの傑作。


● ハンプトン・ホーズ&チャーリー・ヘイデン「アズ・ロング・アズ・ゼアズ・ミュージック」
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:’40年代から活動するベテラン・ピアニスト(’77年死去)との、限りなく内省的なデュオ。心の奥に染み入るようなバラード・プレイを満喫できます。「アイリーン」、「レイン・フォレスト」の美しさには、どんな言葉も及ばないのではないでしょうか。


● チャーリー・ヘイデン&クリスチャン・エスクーデ「ジタン」
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:ボリュームをあげるごとに、ヘイデンがスピーカーから飛び出して、目の前でベースを弾いているような錯覚に陥ります。それほど生々しいサウンドが味わえる録音名盤です。ジャンゴ・ラインハルトの流れを汲むエスクーデのギターも極上。


● パット・メセニー「80/81」
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:メセニーにとっても、マイケル・ブレッカーにとってもエポック・メイキングなものとなった“ジャズ・アルバム”。ヘイデンのベースはソリストを包み込むように暖かく響きます。メセニーとのコンビは、のちにヒット作『ミズーリの空高く』を生みます。


● デニー・ザイトリン&チャーリー・ヘイデン「タイム・リメンバーズ、ワン・タイム・ワンス」
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:通好みの名ピアニスト、デニー・ザイトリンとのガチンコ・デュオ。ただ弦を弾くだけではなく、ベースのあらゆる箇所を使って音楽を表現するヘイデンの神業を味わうことができます。ジョン・コルトレーンの作曲した「サテライト」が、殊に鮮やかです。


● チャーリー・ヘイデン「クァルテット・ウエスト」
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:今回来日するクァルテット・ウエストの第1作(ドラムスは故ビリー・ヒギンズ)。ヘイデンがリーダーとして初めて本格的に取り組んだオーソドックスなスタンダード・ジャズです。フュージョンの人気者、アーニー・ワッツのジャズ・プレイも評判を呼びました。


● チャーリー・ヘイデン&エグベルト・ジスモンチ「ライヴ・イン・モントリオール」
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:いまや伝説となっているカナダでのライヴです。ギター、ピアノ、作曲等に豊かな才能を発揮するブラジルの鬼才ジスモンチとのデュオ。彼の弾く一音一音に素早く対応し、演奏を高いレベルに持っていくヘイデンの驚異的な耳の良さが味わえます。


● チャーリー・ヘイデン・リベレイション・ミュージック・オーケストラ「ドリーム・キーパー」
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:20数年ぶりに発表されたリベレイション・ミュージック・オーケストラ名義の作品。アレンジは引き続きカーラ・ブレイが担当、人気サックス奏者ジョー・ロヴァーノ他が入魂のプレイを聴かせます。名曲「サンディーノ」、「スピリチュアル」収録。


● ヘレン・メリル「あなたと夜と音楽と」
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:今年も来日し、印象的なステージを披露したヘレン・メリルの近作。ピアノは菊地雅章、ドラムスはポール・モチアンなのですから、ありきたりのジャズ・ヴォーカル作品になるわけがありません。ヘレンのチャレンジ精神と、ヘイデンのベースが見事に呼応します。


● チャーリー・ヘイデン「ノクターン」
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:南米で生まれたロマンティックなナンバーを中心に演奏。ヴァイオリンやサックスのひなびた響きを、ヘイデンのベースはどっしりとサポートします。音数を抑え、語りかけるようにピアノを弾くゴンサロ・ルバルカバのプレイも聴きものです。


● チャーリー・ヘイデン・リベレイション・ミュージック・オーケストラ「ノット・イン・アワ・ネーム」
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:リベレイション・ミュージック・オーケストラ名義では最新作。カーラのアレンジは相変わらずカラフルで奥深く、トニー・マラビーをはじめとする若手メンバーも絶好調。デヴィッド・ボウイのヒット曲「ジス・イズ・ノット・アメリカ」のカヴァーも見事です。




来日直前の9月2日には、これまでの名演を集めた『ザ・ベスト・オブ・クァルテット・ウエスト』というアルバムも発表されます(解説は不肖ぼくが書かせていただいております)。この秋、日本のジャズ界はクァルテット・ウエストのロマンティックな響きに染まることでしょう。
(原田 2009/8/30)



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