BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CLEMENTINE - - report : CLEMENT...

2009/07/23

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クレモンティーヌ-CLEMENTINE



原田和典の公演初日レポート:CLEMENTINE



フランスの歌姫、クレモンティーヌさんの公演が始まりました。

僕は初めて彼女の歌を聴いたのは1980年代の半ばだったと記憶します。FM放送でアルバム『コンティノン・ブリュー』からの曲を耳にして、“フランス語でジャズを歌う、渋い新人が出てきたな”と思ったものです。そうです、デビューしたてのクレモンティーヌは、ストイックとすらいえるジャズ・シンガーでした。それに当時の日本では、フランス語の歌は現在ほどポピュラーではなかった気がします(シャンソンは別として)。

しかし今は、TVコマーシャルひとつとってもフランス語の歌がごく当たり前に聴こえてくる世の中です。クレモンティーヌも活動を続けるうちに、領域をどんどん広げていきました。いわゆるJ-POP系ミュージシャンとのコラボレーションを始め、ボサ・ノヴァへの取り組み、シャンソンの再解釈などなど、そのすべてを彼女は、あの一度聴いたら忘れられないウィスパー・ヴォイスで鮮やかにこなしてきました。最近はNHK教育テレビのフランス語講座でもおなじみですね。

いまやクレモンティーヌは日本のファンに最も親しまれているフレンチ・アーティストのひとりです。彼女の歌を聴いて、自分とフランスとの距離が一気に狭くなったという方は、ぼくのほかにもたくさんいらっしゃるはずです。

この日のライヴも、“フランス大使”クレモンティーヌの魅力満開でした。ボサ・ノヴァ調にリメイクされた「ラ・メール」、ジャジーな「枯葉」、8ビートの「バラ色の人生」、流暢な日本語MCに続いて歌われた「サン・トワ・マミー」、合唱が巻き起こった「オー・シャンゼリゼ」・・・・。フランスの曲っていいなあ、心ときめくなあ、と、ぼくは改めて、その響きに酔いしれるのでした。ライヴ中盤では「クレモンティーヌのフランス語講座」というコーナーも飛び出して、選ばれたオーディエンスがステージで彼女にフランス語の特訓(!?)を受けるという場面もありました。

かと思えばマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」や中島みゆきの「悪女」をカヴァーしたり、槙原敬之やゴンチチの提供曲を歌ったり。エンターテイナー=クレモンティーヌの多彩な輝きが、ひとつのプログラムにギュッと凝縮されている。この日のステージに接して、ぼくはそんな印象を持ちました。

もちろんバック・バンドも極上です。なかでもぼくはピアノ&フェンダー・ローズのローラン・ジ・オリヴェイラ、ジョー・ザヴィヌルと来日したことのあるジョルジ・ベゼーラのパーカッションに惹かれました。クレモンティーヌのウィスパー・ヴォイスを巧みに引き立てる彼らの熟練の技に乾杯です。

公演開催中には、彼女の新作にちなんで“ショコラ・エ・スイーツ2009”というデザートプレートも用意されております。ショコラをふんだんに取り入れたデザートを味わいながら、甘くスタイリッシュな音楽に浸ると、どこからかパリのそよ風が吹いてくるような・・・・
(原田 2009/7/22)

7/22 wed. - 7/25 sat.
CLEMENTINE

クレモンティーヌ-CLEMENTINE



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 小曽根真 - - report : MAKOTO ...

2009/07/15

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MAKOTO OZONE-小曽根 真


原田和典の公演初日リポート:小曽根真 featuring NO NAME HORSES



日本ジャズ界きっての凄腕が集まった“夢のビッグ・バンド”、小曽根真 featuring NO NAME HORSES。通算3枚目となる最新作『ジャングル』では、ラテン・フレイバーを大きく取り入れて、また新しい一面を聴かせてくれました。このアルバムを耳にしたら、誰もが、収録曲をライヴで思いっきり浴びてみたくなることでしょう。

オープニングの「B&B」から、クラブ内はカーニバルとフェスティバルが一緒になったような大騒ぎです。切れ味ばつぐんの小曽根のピアノと豊かなホーン・アンサンブル、怒涛のリズムが一体となって迫ります。客席からは手拍子や掛け声が沸き起こり、まるでビッグ・バンドとオーディエンスが共同でひとつの音楽をつくりだしているかのようです。

加えてソリストが、またすごい。ぼくが見た初日のファースト・セットでは、小曽根のほか、中川英二郎(トロンボーン)、池田篤(アルト・サックス)、奥村晶(トランペット)、近藤和彦(アルト&ソプラノ・サックス)、中村健吾(ベース)等のアドリブがフィーチャーされました。彼らのゴリゴリのプレイにラテン・リズムが絡み合うさまは、実にエキサイティングであると同時に、どこか妖艶です。キューバ出身のサックス奏者、パキート・デリヴェラの推薦で加わったパーカッション奏者パーネル・サトルニーノのプレイも、さすがというしかないものでした。

途中、ピアノ、ベース、ドラムスで演奏された「OP-OZ」(中村健吾のオリジナル)も含む、約90分のステージ。途中でテンポがどんどん変わる曲もあるし、あっと驚くような“仕掛け”も多いです(エリック宮城の書き下ろし「LA VERDAD CON LOS CABALLOS」における怒涛の展開には開いた口がふさがりませんでした)。しかしそれを余裕タップリに楽々とこなし、オーディエンスを笑顔にするのがノー・ネーム・ホーシズのすごさ。嬉しさを隠せないといった感じのメンバーの表情からも、彼らがどれほど、このバンドでプレイすることを楽しみにしているのかが伝わります。

セカンド・セットでは、遊びに来られていた塩谷哲さんの飛び入りがあったようですね、見たかったです。。。
テクニック、楽しさ、エンタテインメント性を併せ持った、本当に素敵な音楽集団。小曽根真 featuring NO NAME HORSESのライヴは20日まで続きます。
(原田 2009/7/14)

7/14 Tue - 7/20 mon (7/23 thu - off)
MAKOTO OZONE featuring NO NAME HORSES

MAKOTO OZONE-小曽根 真



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MARCOS VALLE - - report : MARCOS ...

2009/07/11

マルコス・ヴァーリ-MARCOS VALLE



原田和典の公演初日リポート:MARCOS VALLE


ブラジルを代表するグルーヴ・マスター、天下一品のメロディ・メイカーであるマルコス・ヴァーリが、ここ「ブルーノート東京」に夏を運んできてくれました。

オープニングからいきなり、あの大ヒット・ナンバー「SAMBA DE VERAO」(サマー・サンバ)。本当に惜しげもなく、“定番”登場です。マルコスの世界に、最初の1小節で引き込まれます。前半はポルトガル語、後半は英語で。どっちの言葉が乗っかっても、軽やかさは少しも変わることないのは、この曲がとことん素敵なメロディだからでしょう。マルコスは本当に“いい曲”を書きます。しかもそれを今日まで、半世紀近くも続けているのですから(ルックスは本当に若々しいのですが)、その才能と留まることのない精進には、あっぱれという言葉しか見当たりません。

マルコスは曲によってフェンダー・ローズ、キーボード、ギターを弾きながら歌います。これがまた、ものすごくリズミカルなのです。あるときは歌に寄り添うように、またあるときは歌に相槌を打つように、マルコスのプレイが響きます。特にフェンダー・ローズの音色は絶品でした。マルコスがコード(和音)をそっと抑えると、音楽全体に、なんともいえない甘みが増します。“メロウ”というフレーズは、こういうときにこそ使うものなのだろうと、ぼくは思いました。

ラテン・テイスト満載の「BRASIL × MEXICO」における白熱したソロのやりとり、「CRICKETS SING FOR ANAMARIA」という別名でもおなじみの「OS GRILOS」、「BATUCADA」(セルジオ・メンデスのパフォーマンスでも有名ですね)など、名曲の大盤ぶるまいが続きます。個人的にはディスコ時代の作品というイメージがある「A PARAIBA NAO E CHICAGO」も、すっかりシックに衣替えされ、これもまた粋でした。

名曲の数々を、それを作った本人の自作自演で、しかも手の届くような距離で味わう。
こんな贅沢なひとときは、そうあるものではありません。
(原田 2009/7/10)

● MARCOS VALLE
7/10 fri - 7/13 mon


マルコス・ヴァーリ-MARCOS VALLE



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PHAROAH SANDERS - - report : PHAROAH...

2009/07/07



原田和典の公演初日レポート : PHAROAH SANDERS

PHAROAH SANDERS ファラオ・サンダース


「夏の大三角形」が光り輝く夜に、巨星ファラオ・サンダースが炸裂しました。

“ジョン・コルトレーンの後継者”、“スピリチュアル・ジャズの王者”、“クラブ・ミュージックのカリスマ”など、いろんなキャッチフレーズで親しまれているファラオ。彼はファン層が広いことでも知られています。先日もぼくは動画サイトで、彼の「LOVE IS EVERYWHERE」が、日本のエレクトロ系グループの曲にサンプリングされている音源を発見しました。もちろん違和感まったくなし、ファラオ・サウンドにジャンルの壁はありません。

「YOU’VE GOT TO HAVE A FREEDOM」、
「THE CREATOR HAS A MASTER PLAN」、
「PRINCE OF PEACE」
などなど、多数の定番があるのもファラオの強みです(ぼくがダントツで好きなのは「THE LIGHT AT THE EDGE OF THE WORLD」です)。どの曲が演奏されるかは、当 日、ステージ上でファラオ自身の意思によって決められます。数多いレパートリーから、そのときの気分で演目が選ばれていくのです。

ぼくが見た初日のファースト・セットは意外や意外、バラードから始まりました。
ファラオのライヴの一発目というと、激しいブロウものというイメージが個人的には強いのですが、このときの1曲目は「THE GREATEST LOVE OF ALL」。
確かモハメド・アリのドキュメンタリー映画の挿入曲で、ジョージ・ベンソンが歌っていたはずです(ホイットニー・ヒューストンのヴァージョンも有名です)。ファラオは’87年のアルバム『A PRAYER BEFORE DAWN』の中でこの曲をカヴァーしていました。それをいきなり生で聴けるとは、なんだかいきなりすごい贈り物をもらったような気分です。

次はメンバー全員のロング・ソロをフィーチャーした「LAZY BIRD」。
恩師ジョン・コルトレーンの曲です。コルトレーン自身の演奏は名盤『BLUE TRAIN』に収められていますが、そこでテーマ・メロディを吹いているのはコルトレーンではなく、トランペット奏者のリー・モーガン。なのでテナー・サックスで聴くこの曲の旋律は実に新鮮です。ファラオとは20年以上のつきあいになるウィリアム・ヘンダーソンのピアノも力強いものでした。

続いては、スタンダード・ナンバーの「A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE」。ローランド・カークやデクスター・ゴードンも演奏した、しみじみしたメロディを持つ1曲です。ファラオの美しいロング・トーンが深い余韻を残します。

バラードから一転、次の「JUST FOR THE LOVE」はアップ・テンポのブルースです。
コルトレーンが最初の奥さんであるファニータ(回教徒名ナイーマ)に捧げた曲ですね。コルトレーンの書いたなかでも、おそらくは最も通好みであろうナンバーを持ってくるあたり、さすがファラオというしかありません。

ラストはお祭り気分いっぱいの「AFRICAN HIGH LIFE」。
ファラオは途中、「THECREATOR HAS A MASTER PLAN」の歌詞を歌ったり、ダンスをしたり、ごきげんです。そして最後の最後にサックスのキーをパタパタと動かしてパーカッションのような音を出し、笑顔のままステージから去っていきました。

とにかく何が飛び出すかわからないのがファラオのライヴです。皆さんの聴きたいあの曲は、本日、演奏されるでしょうか。

7/7 Tue. 、七夕 x 満月。。。。今宵、ファラオのパフォーマンスはいかに。。。?
(原田 2009/7/6)


7/6 mon - 9 thu
PHAROAH SANDERS
ファラオ・サンダース-PHAROAH SANDERS width=


PHAROAH SANDERS ファラオ・サンダース



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHINA MOSES - - report : CHINA M...

2009/07/05

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原田和典の初日公演レポート:CHINA MOSES


話題沸騰中のディーヴァ、チャイナ・モーゼスが最新アルバム『フォー・ダイナ』を引っさげて、待望の初登場を果たしました。

ジャズ界ではまったくの新人といっていい彼女ですが、実は10年選手です。R&B〜ソウル・ミュージック界で華々しくデビューし、プロデューサー、MTVの司会者としても人気を集めるスターなのです。母親はご存知、ディー・ディー・ブリッジウォーター。ハンス・ダルファーとキャンディ・ダルファーなど、ひとつのバンドで一緒に出演した親子アーティストはいますが、親子それぞれが別個にリーダーとしてブルーノート東京に登場するケースは本当に稀といえましょう。

そんなチャイナがトリビュートした“ダイナ”とは誰のことでしょう? そうです、伝説のシンガー、ダイナ・ワシントンのことです。日本に一度も来ることなく1963年に亡くなってしまったので、われわれにとっては正直言って身近な存在とはいえません。が、アメリカの後進たちに与えた影響力はとても大きく、あのアレサ・フランクリンもナンシー・ウィルソンもデビュー当時は“ダイナ・ワシントンの再来”といわれたほどでした。また、ダイナは常に才能のあるジャズ・ミュージシャンを伴奏バンドに加えていたことでも知られていて、ウィントン・ケリー、ジュニア・マンス、ジョー・ザヴィヌル、ジミー・コブ等は彼女の許から巣立っています。あだ名は“ザ・クイーン”(女王)。在命中は“ザ・レディ”(淑女)ことビリー・ホリデイと評価を二分しました。

ステージにあらわれたチャイナは、次々とダイナゆかりのナンバーを歌います。“遠慮しないで、どんどん手拍子したり、スクリームしたり、足踏みしてくださいね”という彼女の言葉に導かれるように、客席からはごく自然に手拍子や掛け声が沸き起こります。個人的には「IS YOU OR IS YOU AIN'T MY BABY」を歌ってくれたのが嬉しかったですね。ぼくはすごく子供のころ、この曲を「トムとジェリー」で覚えました。トムがベースを弾きながら、メス猫の前で歌うシーンは忘れられません



どちらかというとダイナよりはルイ・ジョーダン(サックス兼ヴォーカル奏者、ロックンロールの誕生にも大きな影響を与えました)で有名な歌なのですが、チャイナは女性ですからルイが歌った“I love her”“ask her”という箇所を“I love him”“ask him”と直して、より艶っぽく迫ります。

後半は「DINAH'S BLUES」、「FINE FINE DADDY」など、ブルース大会の様相を呈しました。ラストの「EVIL GAL BLUES」では、クオシモードのメンバーも飛び入りして、セッションはさらに白熱。歌といい、MCといい、アクションといい、チャイナは本当に母親ディー・ディーゆずりのエンターテイナーです。

今後のチャイナのさらなる活動を心から楽しみにすると共に、ひとりでも多くのひとにダイナ・ワシントンのCDも聴いてもらえたら・・・そう思いながらぼくは、クラブを後にしたのでした。
(原田 2009/7/4)

7/4 sat. - 5 sun.
CHINA MOSES


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