BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MARLENE - - report : MARLENE...

2009/06/06

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原田和典の公演初日リポート:マリーン sings 熱帯JAZZ



歌姫マリーンが、2年ぶりにブルーノート東京に登場しています。
しかも今回は、日本のトップをいくラテン・ジャズ・ビッグ・バンドとの共演です。ゴージャスです。トロピカルです。この日も、梅雨空を吹き飛ばすような爽快なパフォーマンスをたっぷり楽しませてくれました。

ぼくが本格的にジャズ〜フュージョンを聴き始めたのは1980年代のことです。当時は今以上に日本全国でジャズ・フェスティヴァルが盛んで、よくテレビやFMで放送されてもいました。その常連シンガーとして登場し、会場をひときわ熱狂させていたのがマリーンです。当時を過ごした音楽ファンは誰も、彼女の歌う「IT'S MAGIC」や「ZANZIBAR NIGHT」に心を惹かれたのではないでしょうか。

結婚後はしばらく活動を控えめにしていたとのことですが、2005年に久々の作品『ジャズ&アウト』を発表。今年4月には『マリーン sings 熱帯 JAZZ』をリリースしました。このアルバム、ジャズ・ヴォーカル・チャートで首位を独走しているそうです。おめでとうございます。

ライヴは「AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」から始まりました。
マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルやダイアナ・ロス&テンプテーションズで有名な曲ですね。個人的には男女デュオの歌という印象が強いのですが、マリーンはこれをひとりで歌います。どんなに高い山も低い谷も広い川も私たちをさえぎることはできない、私の名前を呼んでくれたらすぐあなたのもとにかけつけるから・・・・という熱いラヴ・ソングを、ラテン風味満載のサウンドに乗って歌うマリーンは実に姉御肌で、とにかくかっこいい。レンジの広い表現力、歯切れ良い発音。カルロス菅野のパーカッションも小気味良くリズムを彩ります。これ1曲で梅雨のうっとうしさは、どこかに消えてしまいました。

ステージの前半はピックアップ・メンバーとのセッションでしたが(ラテン・ジャズ・バンド“GUANABARA”のメンバーだったスティーヴ・サックスが大活躍)、後半はビッグ・バンド全員がバンドスタンドに上がります。ぼくの席はバリトン・サックスやバス・トロンボーンに近かったので、重低音がガンガン響いてきて、これまたすっかり気持ちよくなってしまいました。マリーンのテンションも、さらにあがっているようです。おなじみの「IT'S MAGIC」で沸かせた後、「MAIS QUE NADA」はオーディエンスを巻き込んでのカーニバル状態。「SMILE」ではカルロス菅野とのヴォーカル・デュオも聴かせてくれました。

華やかなマリーンと、夏の日差しを感じさせる熱帯サウンド。出会うべくして出会った両者のセッションは、どこまでも歓喜にあふれています。
(原田 2009/6/5)


6/5 fri - 6/7 sun
MARLENE sings NETTAI JAZZ



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , TERRI LYNE CARRINGTON - - グレッグ・フィリ...

2009/06/05

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テリ リン キャリントン terri lyne carrington width=



原田和典の公演レビュー:TERRI LYNE CARRINGTON ... Vol.2
- Everette Harp (sax) & Greg Phillinganes(key)



本日はテリ・リン・キャリントン・バンドで来日予定の2人のミュージシャンについて紹介しましょう。

まずはサックス奏者のエヴァレット・ハープです。1961年、テキサス州ヒューストンに生まれた彼は、名門ノース・テキサス州立大学(ジャズ・ビッグ・バンドに異様に力を入れていることでも知られています)卒業後、‘88年からロサンゼルスで活躍。アニタ・ベイカーのツアーでも演奏しました。

初来日は、ぼくの知る限り‘91年の野外フェスティヴァル「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」に、マーカス・ミラーのバンドの一員として出たときではなかったかと思います。そのときは、正直いって“デヴィッド・サンボーンの代役”という印象を受けたのですが、演奏曲が「ラン・フォー・カヴァー」や「シカゴ・ソング」なのですから、あえてそういうアプローチをとっていたのかもしれません。ソロ・アルバムでの彼は、けっして“誰だれのよう”と形容できるようなミュージシャンではないからです。2006年発表の『イン・ザ・モーメント』は、とあるコンテンポラリー・ジャズ・チャートで1位を獲得しました。


● Live Under The Sky '91




ぼくは今年3月、「JAVA JAZZ FESTIVAL」でハープのグループを楽しんでまいりました。「ジャカルタ・コンヴェンション・センター」という、とてつもなく広い建物の中で2番目に大きなホールで演奏しましたが、もちろんオールスタンディングのすし詰め超満員です。そこでは踊りながらサックスを吹き、いわゆるスムース・ジャズ的なプレイに徹していましたが、そんなエヴァレットが、テリ・リンのドラムスをバックにどんなブロウを聴かせてくれるのか、興味しんしんです。



キーボードのグレッグ・フィリンゲインズは、“アメリカのポピュラー音楽界にこの人あり”といわれるほどの重鎮です。

1956年、ミシガン州デトロイトに生まれた彼は、20歳のときにスティーヴィー・ワンダーのバック・バンドに参加。この天才と5年間、活動を共にします。その後はクインシー・ジョーンズとの交流を深め、当時の“クインシー・ファミリー”というべきマイケル・ジャクソンやジョージ・ベンソンのサポート、さらにポール・マッカートニー、アレサ・フランクリン、アトランティック・スター、パティ・ラヴェル、エリック・クラプトン等ともコラボレーションを展開しました。マイケルの「BAD」と「Dangerous」のツアーでは、音楽監督も担当しています。そして2005年からはTOTOに正式参加、先日の活動休止まで多彩なキーボード・プレイでバンドの音作りに貢献しました。
重鎮グレッグの生演奏を、しかもクラブで楽しむことができるのは世界的にもレアなことではないでしょうか。

http://www.youtube.com/watch?v=7mSq4mjItLI


● ♪ 愛のコリーダ
:'81 のクインシー・ジョーンズ来日公演、しっかり出てきます!




● マイケル・ジャクソン\n:あの "スリラー"のキーボード・パートを奏でていた張本人です。





● TOTO のメンバーとして、歌ってます。





テリ・リンとグレッグが「ブルーノート東京」で出会い、果たしてどのようなケミストリーを生み出すのか、こちらも興味が尽きません!
(原田 2009/6/5)


6/13 sat - 16 tue
TERRI LYNE CARRINGTON GROUP
テリ リン キャリントン terri lyne carrington width=


〜・〜プロフィール・原田和典 〜・〜
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HAYNES - - ROY HAYNES の小...

2009/05/30

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ROY HAYNES と言えば。。。思い出した小話



アメリカに「ダウン・ビート」というジャズ雑誌があります。第1号が出たのは1934年7月だそうですから、今年で創刊75周年を迎える、超の字のつく老舗です。

その名物ページに、「ブラインド・フォールド・テスト」という企画があります。ミュージシャンに何のインフォメーションも与えずにレコードやCDを聴かせ、ざっくばらんに感想を語ってもらうというものです。2001年4月号の同コーナーには、ロイ・ヘインズが登場しました。

編集者は、リード文(本題に入る前の短い文章)で、こう驚いています。
“彼(ロイ)は、ステレオの片チャンネルから音を聴いただけで、若いミュージシャンであれヴェテランであれ即座に聞き分け、言い当てられるのである”。

なるほどたしかに、この記事でのロイは、持ち前の耳のよさを最大限に発揮し、演奏ミュージシャンの名前を当てて、彼らのスタイルの特徴に言及しています。

最初にかかったのは“ジャズ・ドラムスの父”、ジョー・ジョーンズのレコード。ジョーンズはカウント・ベイシー・オーケストラのドラマーを長く務めていた名手です。ロイは彼をものすごく尊敬していて、昔からしょっちゅう“プレイが似ている”といわれていたそうです。

マックス・ローチやアート・ブレイキーにも多大な影響を与えた巨星、ビッグ・シド・カトレットの演奏もかかりました。ロイはいいます。
“俺は初めて買った車で、彼をハーレムの家まで送っていったことがあるんだよ。シドはこの世で生まれた最も偉大なドラマーのひとりなんだ”。

最後にかかったのは、当時、若手ドラマーのトップと目されていたマーヴィン・スミッティ・スミスの演奏です。
もちろんここでも、ロイは即座に演奏者を当てました。
“スミッティだ。何で分かったかって言えば俺はちゃんと彼を聴き込んでるからさ...... 評論家はロイ・ヘインズの奥の深さを知らないんだな!”


今回の公演でもロイ・ヘインズはジャズの醍醐味を存分にアピールしてくれることでしょう。
その奥深いドラム・プレイと共に・・・!
(原田 2009/5/29)


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ROY HAYNES
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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , HELEN MERRILL - - report- : HELEN ...

2009/05/27

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原田和典の公演初日リポート:HELEN MERRILL


ヘレン・メリルについてのキーワードは、いくつもあります。

ひとつは、とにかく長く豊富なキャリアを積んだアーティストであること。クリフォード・ブラウン(トランペット)、ビル・エヴァンス(ピアノ)、ギル・エヴァンス(アレンジ)、スタン・ゲッツ(テナー・サックス)、ジョン・ルイス(ピアノ)など、数々の伝説的ジャズ・ミュージシャンと歴史に残るレコーディングを行なったシンガーは、ヘレンしかいません。

もうひとつは、大の親日家であること。60年代後半から70年代前半にかけては、日本に住んでいたこともありました。ヘレンと我が国のファンは相思相愛なのです。

さらにもうひとつは、とにかくレパートリーの幅が広いこと。フォーク・ソング、映画主題歌、ポップス、日本の歌謡曲もすべて彼女の色に染めてしまいます。近年のアルバム『ライラック・ワイン』では、“レディオヘッド”の「ユー」も歌っていましたね。

そのヘレンが、久しぶりにクラブに戻ってきてくれました。バック・メンバーはテッド・ローゼンタール(ピアノ)、ショーン・スミス(ベース)、エリオット・ジグムンド(ドラムス)。エリオットはピアニストのビル・エヴァンスのバンドで活躍したことのある左利きの名手です。ぼくはエヴァンスの作品の中でも『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』が、ことのほか好きなのですが、そこで泣けてくるほど素晴らしいブラッシュ・ワークを聴かせていたエリオットを間近で見ることができて、なんだか感無量です。

この日のヘレンは、スタンダード・ナンバーを中心に選曲していました。スキャットはしませんが、メロディは自在に変化し、歌詞もところどころ変わります。ああ、ジャズ・シンガーだなあ、と思いました。

とくに「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が圧巻でした。ぼくなど妙にスレてしまったところがあり、“マイファニー”ときくだけでもうこの曲は耳タコだよ、といいたくなるところもあるのですが、ヘレンの解釈にはハッとさせられました。普通なら“Stay little Valentine stay、Each day is Valentine's day”と来るところを、“Stay funny Valentine stay、I love you more and more”と歌い、しかも最後の“more”で声のトーンをグッと落とすと同時に、テッドがこの世でこれ以上悲しいものはないと思えてくるような短調の和音をぶつけてくるのです。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はちょっと風変わりな歌詞を持つラヴ・ソングなのですが、ヘレンとテッドの解釈はまるで、この恋は成就することがないのだ、永遠に続く恋など果たしてあるのだろうか、と暗示しているかのように感じられました。
「ワイルド・イズ・ザ・ウィンド」も良かったし、「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」も深かったし、と、ほかにも書くところはいっぱいあるのですが、続きはぜひ、皆さんに実際のステージを体験していただければと思います。

なお、ヘレンについては、2006年に発売されたCD『ヘレン・メリル・ウィズ・ゲイリー・ピーコック・トリオ スポージン』、『ヘレン・シングス,テディ・スウィングス』、『ヘレン・メリル・シングス・ビートルズ』のライナーノーツの中でも書かせて頂いておりますので、そちらもご覧くださいませ・・・。
(原田 2009/5/26)


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HELEN MERRILL


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MADELEINE PEYROUX - - report : MADELIN...

2009/05/19

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原田和典の公演初日リポート:MADELEINE PEYROUX

オルガンのポヨポヨした響き、エレクトリック・ギターの柔らかな和音、ドラムスが刻むゆるやかなシャッフル・リズム。そこに、語りかけるようなヴォーカルと、歯切れ良いアコースティック・ギターが乗る。

この音作りは、ぼくにとってマデリン・ペルーの名前とイコールです。彼女の来日公演が決まったという知らせをきいたとき、“ああ、あのサウンドが生で味わえるのか!”とすっかり嬉しくなりました。昨日のステージでも、マデリン独特の音世界を満喫できました。ニュー・アルバム『ベア・ボーンズ』収録曲ばかりではなく、前作『ハーフ・ザ・パーフェクト~幸せになる12の方法』からの「LA JAVANAISE」、前々作『ケアレス・ラヴ』からの「BETWEEN THE BARS」なども交えた選曲は、ちょっとした“ベスト・オブ・マデリン・ペルー”風。初めてのブルーノート東京公演に寄せる彼女の意気込みが伝わってきました。

いつも良いバンド・メンバーに恵まれているマデリンだけに、今回の顔ぶれも凄腕ぞろいです。重鎮ジム・ビアードが参加しているのですから。個人的にはフュージョン系のシンセサイザー奏者というイメージが強いのですが、この日はオルガン、アコースティック・ピアノ、そしてメロディカ(ピアニカ)でチャーミングなプレイを披露してくれました。そしてジョン・へリントンはスティーリー・ダンやボズ・スキャッグスからも愛されている、オールマイティなギタリスト。自分のアルバムではけっこうハード・エッジな音を出していましたが、ここではリーダーの歌に寄り添うようなサポートで名手ぶりを発揮していました。マンドリンも良かったですねえ。

4、5年前でしょうか、ぼくはマデリンのライヴを渋谷で聴きました。正直言って、あまりにも硬いステージングに、こちらのほうが緊張した覚えがあります。しかし昨日のライヴは余裕、貫禄、くつろぎ、ユーモアにあふれ、“もう終わりなの?”というぐらい、時間が一瞬で過ぎました。見事なパフォーマンスに接しながら、これからも彼女を聴き続けていこう、とぼくは強く思ったのでした。
(原田 2009/5/18)


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MADELEINE PEYROUX
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