BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ANNA MARIA JOPEK - - report : ANNA MA...

2009/05/15

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原田和典の公演初日レポート:ANNA MARIA JOPEK



ポーランドの歌姫、アナ・マリア・ヨペックの公演が昨日から始まりました。

実をいうとぼくがポーランド語の歌をライヴで聴くのは今回が初めてです。ポーランドのミュージシャンのパフォーマンスに接するのも、ひょっとしたらジャズ・トランペッターのトマシュ・スタンコ(たしかポーランド大使館で演奏しました)以来かと思います。

アナ・マリアの作品では、最新作『ID』と、パット・メセニーと共作した『Upojenie』、英語詞で歌った『Secret』は聴いておりました。ライヴ映像も、いくつか見ております。この公演にそなえて、ささやかに予習してきたつもりだったのですが・・・・・。

だからライヴは面白い! CDからはうかがいきれなかった面が次々と見えてくるのです。“ポーランドのクール・ビューティ”という個人的な先入観が、歌うことの楽しさを全身から発散するようなアクション、そして彼女の多彩な表情によって溶け出していきます。2本のマイク(1本にはエフェクターがかかっています)を使いながら、ウィスパー・ヴォイスから野太いシャウト(ぼくは椎名林檎を思い出しました)までを自由自在に行き来するアナ・マリアは、まさしく声のアスリートでした。

ぼくはあいにくポーランド語を知らないので、何を歌っているかは正直わかりません。ですが、声の響き、抑揚が実に気持ちよく迫ってきます。曲の途中、日本語で“言葉の壁を越えて、私の世界を楽しんでください”というようなことを歌っていましたが(そうです、即興でメロディをつけて歌っていたのです)、つめかけたオーディエンスにランゲージ・バリアを感じたひとは誰もいなかったはずです。パット・メセニー・ナンバー「Follow Me」を待つまでもなく、ぼくもすっかりアナ・マリアの世界に引き込まれてゆきました。

異例のダブル・アンコールも飛び出した、とびきりフレンドリーな90分。ぼくはこのライヴでさらにアナ・マリアのファンになりました。ファースト・セットとセカンド・セットでは曲目をほぼ100%変えているそうです。公演中、何度もクラブに足を運ぶ方も多いのではないでしょうか。
(原田 2009/5/14)

● ANNA MARIA JOPEK
アナ・マリア・ヨペック
2009 5/14 thu. - 5/17 sun.
(↓↓ セットリストもこちらご参照ください ↓↓)
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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , OMAR SOSA - - report : OMAR SO...

2009/05/13

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原田和典の公演初日レポート:OMAR SOSA



いったい、ここはどこなんだ?

確かに「ブルーノート東京」です。南青山にあるクラブです。確かにそうです。
なのですが、目を閉じると、そこは違う世界。オマール・ソーサ・アフリカーノス・カルテットの紡ぎだす音は、ぼくをアフリカやキューバへいざなってくれました。一度も行ったことがないにもかかわらず、いろんなテレビ番組で見た光景や、書物で接した風景が脳内でミックスされて、目に浮かんできます。灼熱の太陽、ジャングル、砂ぼこり、シマウマ、ライオン、そしてなぜかアルパカ(チリの動物ですが)。こうしたサウンドが、東京にいながらにして味わえるなんて、なんだかとてもぜいたくです。

真っ赤な衣装で現れたオマールの中では、ステージに向かう時点でもう音楽が始まっていたのでしょう。待ちきれないといわんばかりに鍵盤に覆いかぶさり、自由自在に楽想を広げていきます。ピアノに加えMIDI音源、サンプラー音源、さらにはピアノにエフェクトペダルをもつないで創造される独特の音色は、ピアノの叙情とパーカッションの野性味を兼ね備えたものでした。やがて他のメンバーが登場し、演奏は更に激しく高まります。いまやオマールの右腕というべきチルド・トーマスがダブルネックのエレクトリック・ベースで重低音を響かせ(胴体はモロッコの弦楽器“ゲンブリ”なのだとか)、セネガル出身のモラ・シラが張りのある声でコブシをコロコロまわします。何を歌っているのかはわかりません。何語であるかすら、ぼくには定かではないのですが、歌声が、抑揚が、スッと心の中に入ってきます。

ドラマーは、名匠フリオ・バレットです。彼目当てのオーディエンスも多かったのではないでしょうか。‘90年代には何度かゴンサロ・ルバルカバと来日したことがありますが、その“マシンガン・ドラミング”は、ますます冴えています。バスドラの怒涛のキックは彼の得意技ですが、そうだとわかっていても、いざ目の前で繰り広げられると、やっぱり興奮せずにはいられません。フリオと盛んにアイ・コンタクトを交わしながら鍵盤に指を走らせるオマールは本当に嬉しそうでした。

この日、最も時間をかけて演奏されたであろう「METISSE」は、混血・雑種という意味を持つ曲。ああ、このバンドらしいな、と思いました。これからもオマールは音楽を通じてファンにいろんな風景を見せてくれることでしょう。

本日、最終日です。音楽の旅を、皆様もぜひ!


5/12 tue - 5/13 wed
OMAR SOSA AFREECANOS QUARTET featuring JULIO BARRETO
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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JANE MONHEIT - - report : JANE MO...

2009/05/03

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- 原田和典の公演初日リポート:JANE MONHEIT



うまいなあ!
ジェーン・モンハイトのステージに接しながら、ぼくは何度も声をあげそうになりました。

マイクを離れても会場に響き渡る“通る声”、オーディエンスに語りかけるようなMC、ほどほど加減が心地よいフェイク&スキャット、緩急自在の選曲。声域は、ひょっとしたら4〜5オクターヴはあるかもしれません。しかし彼女が使うのは1オクターヴから1オクターヴ半ぐらいです。だから歌に余裕があります。包容力があります。技巧をちらつかせることは、しません。いちばん美しく響く声のレンジを選んで、ジェーンは聴き手に歌を届けます。

かつて彼女がセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション(全米でもっとも権威のあるジャズ・コンテスト)を勝ち抜き、ファースト・アルバムを発表した頃、ぼくは雑誌の編集に携わっていました。とても楽しみな新人が出てきたものだと思い、記事を組んだ記憶があります。が、いまやジェーンは、こちらの予想を軽々と超え、ジャズ・ヴォーカル界になくてはならない存在になりました。変わらぬみずみずしさのまま、すっかり貫禄と風格を増した彼女は、1曲ごとに歌の主人公になって歌詞の世界を届けてくれます。

「BY MYSELF」、「LUCKY TO BE ME」、「MY ONE AND ONLY」など、いつしか余り取り上げられなくなってしまったスタンダード・ナンバーをじっくり聴かせてくれたのも個人的には嬉しいものでした。とくに「MY ONE AND ONLY」には、“よく取りあげてくれました!”といいたい気分です。ガイ・ウッドが作曲した「MY ONE AND ONLY LOVE」なら何度もいろんなミュージシャンのステージで聴いたことがあります。でもジョージ・ガーシュインが作曲した「MY ONE AND ONLY」は、ぼくもこれまで千本以上のライヴを見ていますが、生で味わったのは今夜が初めてです。加えて「STARDUST」、「OVER THE RAINBOW」といった超有名曲も聴かせてくれました。どちらも、数々の偉大なシンガーが名唱を残している大定番です。客席にいた誰もが知っているメロディをジェーンは真正面から伸びやかに歌い上げます。“うまいなあ!”とぼくは、またしても叫びたくなりました。

伴奏のミュージシャンが、また魅力的なのです。ピアニストのマイケル・ケイナンはジミー・スコットのバンドで何度も来日していますが、いつ聴いても趣味のいいバッキングをします。ヴォーカルのブレス(息継ぎ)の間に入れる合いの手が絶妙なのです。余談ですが、彼は自分のアルバムも出していて、これもなかなか良いので、機会があれば聴いてみてください。とくに『THE GENTLEMAN IS A DOPE』がお勧めです。

いい歌と、すてきな伴奏。いま最も輝いているシンガーのひとりから、最高のおもてなしを受けました。
(原田 2009/5/2)





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<< プロフィール・原田和典 >> 1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。 著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム) 『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、 『世界最高のジャズ』(光文社新書)、 『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。 共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、 監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , OSCAR CASTRO NEVES - - report : OSCAR C...

2009/04/27

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原田和典の公演初日レポート:
OSCAR CASTRO-NEVES
"BRAZILIAN SONGS & STORIES of BOSSA NOVA CELEBRATION"
with MARCO BOSCO, PAULO CALASANS & MARCELO MARIANO
special guests AIRTO MOREIRA & LEILA PINHEIRO



半世紀もの長きにわたって、心のこもった響きをじっくりと、大切に大切に奏であげてきた“音の詩人”。
それがぼくのオスカー・カストロ・ネヴィスに対するイメージです。

彼の名前が入っているレコードやCDを聴けば、まずハズレをつかむことはありません。それはライヴでも同様です。彼がギターを爪弾けば、それだけで周りの空気が和み、オーディエンスは皆、笑顔になります。
決して派手なことはやりません。これみよがしの技など、出しません。だけど溢れんばかりのメロディがあります。限りなく広がるハーモニーがあります。

この日のステージも、そんな彼の職人芸が満載でした。とにかく、世界が深い。プレイにコクがある。和音の使い方には、うっとりさせられるばかりでした。「ブラジル音楽はもともとハーモニーが豊かなんだよ」という声も聞こえてきそうですが、いまのぼくは、“それはわかる。だけど、オスカーの豊かさはまた一段と格別なのだ”、と胸を張って言いたい気持ちです。熱心なファンの方なら、彼が1960年代、ピアニストとしても素敵な作品を出していることをご存知でしょう。オスカーの頭の中にはたぶん、何十ものピアノやギターが棲んでいてオーケストレーションを奏でているに違いありません。

あまりにも偉大なパーカッション奏者であるアイアート・モレイラがドラマーとして、ステディなビートを刻んでいたのも印象的でした。ぼくは彼のドラミングが大好きで、サンバランソ・トリオや、トロンボーン奏者ラウル・ジ・スーザ(ハウル・ヂ・ソウサ)のレコードをむさぼるように聴いたものです。ジャズ・サンバの最高峰のドラマーだと思っています。そのアイアートが、ボサ・ノヴァを叩く。しかも鮮やかに。それを見聴きしてぼくはさらに豊かな気分を味わいました(彼のパーカッションを満喫したいファンの方も、とっておきのソロ・コーナーがありますのでご安心を)。

むくつけき男たち(失礼)の中に混じって紅一点のレイラ・ピニェイロが出てくると、ステージは花が咲いたようになりました。豊かな声量、巧みな日本語を交えたMCでファンの心をつかみます。オスカーとの二重唱も決まりすぎるほど決まっていました。

飛び切りの職人たちがおくる夕べは金曜日まで続きますが、もう一回見に行っちゃおうかと考えてます。
昨日のライブ映像がこのブログの別ページにアップされるようですので、そちらも是非見てください。
(原田 2009/4/26)


● 4/25 sun. 〜 5/1 sat.
OSCAR CASTRO NEVES "BRAZILIAN SONGS & STORIES OF BOSSA NOVA CELEBRATION
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<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , JOSHUA REDMAN - - report : JOSHUA ...

2009/04/23

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原田和典・公演レポート: JOSHUA REDMAN with REUBEN ROGERS & GREG HUTCHENSON


ジョシュア・レッドマンの登場は久しぶりのような気がします。

しかも今回は、ベース、ドラムスとの、いわゆるサックス・トリオでの公演。彼がこの編成で演奏するのは、日本では初めてのことです。

サックス・トリオは、サックス奏者にとって最もハードで、それだけにやりがいのあるフォーマットだといわれています。ピアノやギターのように和音を楽々と出せる楽器もありません。単音楽器であるサックスがメロディをリードし、ときにはハーモニーの行方を指し示さなくてはいけない。これは大変なことです。

1950年代にはソニー・ロリンズが、60年代にはオーネット・コールマンやアルバート・アイラーがサックス・トリオで素晴らしいアルバムを吹き込んでいます。70年代にはジョン・サーマンやデヴィッド・マレイが目の覚めるようなトリオ作品を残しています。こうした先人たちが登りつめた“峰”に、ジョシュアは挑んでいるわけです。

きくところによると、彼はジャズ・ミュージシャンとして活動を始めた当時、よくサックス・トリオで演奏していたそうです。ピアノの置いてあるジャズ・クラブはニューヨークに決して多いわけではなく、しかもそうした店には名のある音楽家が出るため、まだ無名だったジョシュアは必然的にピアノのない場所で演奏するしかなかったのです。'93年にワーナー・ブラザーズからファースト・アルバムを発表するまで、ジョシュアはベーシストやドラマーと共に、小さなライヴ・スポットで繰り返し演奏を重ねたのでした。今回のサックス・トリオによるワールド・ツアーは、彼にとって“原点回帰”的なニュアンスもあるのかもしれません。

最新作『コンパス』からの曲を軸に、「オータム・イン・ニューヨーク」、ロリンズの名演で有名な「マック・ザ・ナイフ(モリタート)」などのスタンダード・ナンバーも交えたステージは、緊張感とリラックスした雰囲気が絶妙に融合された、実に楽しめるものでした。ルーベン・ロジャースとグレゴリー・ハッチンソンも、あの手この手で演奏のテンションを高めてゆきます。このバンドでは、全員が対等なのです。

スマート、シャープ、そしてスタイリッシュ。ジョシュア、ルーベン、グレゴリーはサックス・トリオの新しい扉を開こうとしています。彼らの‘うた’は、会場につめかけたすべてのファンの心を射抜くことでしょう。このトリオの公演は土曜日まで続きます。どうかお見逃しなく!
(原田 2009/4/22)


4/21 tue - 25 sat.
JOSHUA REDMAN 公演
☆ 初日公演からのライブ&インタビュー映像はこちら

☆ 公演の詳細はこちら

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