BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FOURPLAY - - report : FOURPLA...

2009/04/16

fourplayzenkei.jpg


- 原田和典の公演初日リポート : FOURPLAY


フュージョン〜スムース・ジャズのトップを走るユニット“フォープレイ”が、久しぶりにブルーノート東京へ帰ってきました。

ダイナミクス(メリハリ)豊かで、ニュアンスに富んだサウンドが持ち味の彼ら。アコースティックな響きを大切にするこのグループにふさわしいのは、なんといっても、親密感にあふれたクラブ公演です。

フォープレイがデビュー・アルバムを発表したのは1991年のことでした。スター・ミュージシャンが集まったグループだけあって、大変な話題を巻き起こしたことを昨日のことのように覚えています。が、そのいっぽうで“こんな売れっ子たちがレギュラーでバンドを継続できるわけがない。あっという間に空中分解してしまうのではないか”という意見も少なくありませんでした。
が、今もフォープレイは活動を続けています。さまざまなプロジェクトで多忙を極める4人がスケジュールを調整して集まり、磨きこまれた「バンドの音」を聴かせてくれます。誰もがフォープレイとして演奏することを、心から楽しんでいます。まさしく「継続は力なり」です。

メンバー4人が現れると同時に、次々とファンが立ち上がって声援を送ります。皆、フォープレイのクラブ出演を待ちかねていたのです。左からボブ、ネイザン、ラリー、ハーヴィーがステージに登場します。青いシャツを着たボブと、全身を白で決めたハーヴィーが視覚的にも素敵なコントラストを描きます。

レパートリーは、今年のグラミー賞にノミネートされた新作『エナジー』からの曲が中心でした。極上のシャッフル・リズムをキメるハーヴィー(スネア・ドラムを、聴こえるか聴こえないかぐらいの小音量で打ち続ける左手の細かな動きに、ぼくの目は釘付けになりました)、得意技であるベースと歌声のユニゾンを堪能させてくれたネイザン、ソロだけではなくバッキングでも職人技を炸裂させたラリー、そして愛用のMIDIピアノ(MIDI音源のコントロール機能を持つYAMAHA製ピアノ、ディスクラヴィアと呼ばれてます。外付けの音源モジュールからの音色を生ピアノのサウンドと一緒に発音できるもの)でワン&オンリーのサウンドを紡ぐボブ。ぼくは彼らのライヴをリー・リトナー在籍の頃から見ていますが、様式美というべきサウンド作り、全体に漂う品格は・・・カテゴリーこそ違うかもしれませんが・・・・ジャズ史上のグループ“モダン・ジャズ・カルテット”(MJQ)に通じているように思います。

アンコールでは、ボブが’76年に発表したアルバム『ボブ・ジェームスIII』からの大定番「ウエストチェスター・レディ」を、遊び心いっぱいの“フォープレイ・ヴァージョン”で楽しませてくれました。スムース・ジャズの紳士たちは、これからも味わい深いサウンドを送り届けてくれることでしょう。
(原田 2009/4/15)


4/15 wed. - 4/20 mon.
FOURPLAY
↓初日のセットリストはこちら↓



fourplay4.jpg


<< プロフィール・原田和典 >> 1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。 著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム) 『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、 『世界最高のジャズ』(光文社新書)、 『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。 共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、 監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL CAMILO - - report : "CAFE C...

2009/04/13

cafecamilo3x.jpg


- 原田和典の公演リポート:MICHEL CAMILO Piano Clinic "CAFE CAMILO"


天気は快晴。春を飛び越して今にも夏になりそうな4月11日の午後、ミシェル・カミロのクリニック「Cafe Camilo」がブルーノート東京で行なわれました。

カミロ、うれしそうです。
「Cafe Camilo、いいタイトルだね。ぼくもコーヒーが大好きでよく飲むんだよ」といいながら、おもむろにピアノの椅子に座ります。そして、「ピアノを演奏しているひとはどのくらいいるかな?」と、客席を見回します。次に「ギターは? ベースは? ドラムスは? 管楽器は?」と、順に問いかけていきます。
ゆっくりうなずいたカミロは、おもむろに語り始めました。以下、ぼくの印象に残ったところです。もっとも、カミロ本人の発言とは若干、ニュアンスが異なるかもしれませんが・・・・。

● 楽器として「完璧」なピアノは存在しない。ピアノに自分を合わせていく。そのためには、まずソフトに弾き、楽器のキャラクターを把握する。

● 指先や肩に力をこめてピアノを弾くのではなく、「腎臓」に力をこめて弾いてみよう。

● ピアノ演奏には「呼吸」が何よりも大事である。「呼吸」をコントロールすれば、精神がリラックスする。速いフレーズも難なく弾けるようになる。

●指に鍵盤を覚えさせる。そうすると、指先が「目」になるので、目を閉じても弾けるようになる。したがって、シンフォニー・オーケストラと共演しても、楽譜をみることなく、ずっと指揮者を見ていられる。

●ペダルを必ずしも完全に踏み込む必要はない。4分の1、3分の1踏むことによって、音に微妙な変化が生まれる。鍵盤を押した後にペダルを踏むのも良い。

● 自分の演奏を録音し、あとでチェックするのも良いアイデアだ。メトロノームやドラム・マシーンを敵視するのではなく、「友達」にしよう。

クリニック後半では、実に興味深い説を聞かせてくれました。♪♪♪という1小節単位のリズム・パターンが、アフリカからさまざまな地域に伝来し、「ハバネラ」(スペイン)、「ラグタイム」(アメリカ)、「ショーロ」(ブラジル)に発展、キューバでは2小節に拡大され「クラーベ」になった、というのです。それをカミロ本人がピアノを弾きながら説明してくれるのですが、いやはや、これには引き込まれました。ジャズ・ピアノの歴史的巨人であるアート・テイタムやエロール・ガーナーのスタイルの実演も聴かせてくれたのも、個人的にはすごく嬉しかったです(ぼくは彼らの大ファンでもあるのです)。

ぼくは以前、アルト・サックス奏者、スティーヴ・コールマンのセミナーを受講した(というか、紛れ込んでしまった)ことがあります。そのときにも感じたのですが、ミュージシャンの話って本当に面白くて奥が深いですね。

これからもいろんなひとが「cafe」に登場してくれることを、心から楽しみにしています!
(原田 2009/4/11)

michelcamilocafecamilo3.jpg

cafecamizen.jpg



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MICHEL CAMILO - - report : MICHEL ...

2009/04/10

michelcamilothebestofm.jpg


- 原田和典の公演初日リポート : MICHEL CAMILO TRIO "THE BEST OF MICHEL CAMILO"



公演タイトルがいいですね。「ザ・ベスト・オブ・ミシェル・カミロ」。

ドミニカから世界に羽ばたいた天才超絶ピアニスト、カミロの最高の姿をお届けしようというわけです。彼の長く豊富な活動歴を彩った数々の名曲を、目の前でご覧にいれましょうというわけです。開演前から興奮してくるではないですか。

場内が暗くなると同時に、割れんばかりの拍手と指笛が起こります。カミロは「ブルーノート東京」の常連アーティストのひとりであり、僕も毎回、彼のライヴには足を運んでいます。だけど、この熱狂ぶりはなんなのでしょう。「ザ・ベスト・オブ・ミシェル・カミロ」を味わいに、日本ベストのカミロ・ファンが集まったような印象を受けました。

黒いTシャツを着たカミロは笑顔でステージにあがり、深々と一礼します。いわゆる日本式の「おじぎ」です。ピアノを弾く姿勢の良いひとは、おじぎの姿勢も良いんですね。2本の腕は筋肉で盛り上がっています。引き締まった体つきは、まるでアスリートのようです。

演奏曲目についてはセット・リストをご覧いただきたいのですが、ほんとうに、「ベスト」です。カミロ定番のキメキメのラテン・チューンあり、メロディアスで艶やかなバラードあり、4ビートで熱くスイングするマイナー・ブルースあり、組曲風の壮大なナンバーあり、ピアニストの故ビル・エヴァンスも演奏した「ナーディス」あり、そして彼の原点ともいえる不朽の名曲「ホワイ・ノット」あり。カミロの魅力のフルコースをおなかいっぱい味わわせていただきました。

ドラムスのクリフ・アーモンドもカウベルを仕込んだドラム・セットで大きなノリを生み出し、チャールズ・フローレスのベースもずっしりとしたプレイで大きな存在感をかもし出しています。フローレスの存在は決して派手ではありませんが、カミロとアーモンドが延々と超絶技巧のやりとりを繰り広げることができるのも、彼の錨のようなベースが中央に陣取っているからなのでしょうね。ベースにしがみつくようにしながら、太い指に力をこめて強力な低音を響かせる姿に、ジミー・ギャリソン(伝説のジョン・コルトレーン・カルテットのベース奏者)をダブらせてしまったのは僕だけでしょうか?

カミロにとって、「ブルーノート東京」は特別に思い入れのある場所なのだそうです。それは決して日本のファンに向けたリップ・サービスではありません。彼は本当に、このクラブで演奏することを、心から楽しんでいます。(土曜日、11日の午後2時からはクリニックも開かれます)

今回の公演でカミロ、フローレス、アーモンドはさらに多くのファンを獲得することでしょう。
(原田 2009/4/9)


4/9 thu - 4/14 tue
MICHEL CAMILO TRIO "THE BEST OF MICHEL CAMILO"
MICHEL CAMILO TRIO width=


4/11 sat.
MICHEL CAMILO Piano Clinic "CAFE CAMILO"
MICHEL CAMILO TRIO width=


camilotrio.jpg



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , NILE RODGERS & CHIC - - report : CHIC fe...

2009/04/04

gyouzagyouzagyouza.jpg

- 原田和典の公演初日リポート : CHIC featuring NILE RODGERS


ああ、楽しかった!
これに尽きます。シック・フィーチャリング・ナイル・ロジャース公演。モーレツに盛り上がりました。ステージ両脇には大きな桜の花が飾られ、ミラーボールもぐるぐる回転。エンディングでは撮影タイムまでありました(カメラを持って会場にいらっしゃった方、本当に良かったですね)。まさに、出血大サービスです。

ナイル・ロジャースの名前をご存じないという方も、必ずどこかで彼の創り出した音に接しているはずです。「レッツ・ダンス」(デヴィッド・ボウイ)、「ザ・リフレックス」(デュラン・デュラン)、「シーズ・ザ・ボス」(ミック・ジャガー)などなど。マドンナの『ライク・ア・ヴァージン』のメイン・プロデューサーでもありました。ダイアナ・ロスの「アップサイド・ダウン」、シスター・スレッジの「ウィ・アー・ファミリー」もナイルのプロデュースですね。

しかし、ナイルは敏腕プロデューサーであると同時に“ライヴ大好き人間”でもあるのです。それが本当によくわかるのが、彼のマザーシップといえるユニット“シック”によるステージ。シルヴァー・ローガン・シャープ、フォラミ・トンプソンなど歌姫たち、踊るパーカッション奏者ジェラルド・ヴェレスを始めとする各メンバーも目と耳の両方を楽しませてくれましたが、サウンドの司令塔は言うまでもなくナイルです。ギターを持ち、ジョークを飛ばし、シンガーと共にリフレインを歌う彼の、なんと嬉しそうなことでしょう。もちろん得意技“カッティング”もたっぷり聴かせてくれました。

“カッティング”とは、いってみれば、音楽の専門用語です。と書くと、ちょっと難しく感じられるかもしれませんが、ようするにギターの和音をドラムのように演奏することです。ぼくはこう、簡単に簡単に解釈しています。だからリズム感、切れ味が命です。おいしいトンカツ屋のオヤジが刻むキャベツの千切りのように、音を歯切れよく、小気味よく刻まなければならない。ナイルのカッティングは天下一品です。この“刻み”のひとつひとつが、ぼくらファンの心と体を弾ませるのです。

ステージ後半では、今やすっかり恒例となったコーナー“君も今日からナイル・ロジャース!”(←ぼくが勝手につけたタイトルです)も開催されました。腕に覚えのあるお客さんがステージにあがりギターを借りて、ナイルの目前で「おしゃれフリーク」のイントロを弾くわけですね。ぼくが見た日は6人のお客さんが、なりきりナイル・ロジャースしていましたが、皆さん本当にうまい。しかも堂々としています。本物のシックを伴奏にギターを弾く・・・・気持ちいいだろうなあ。しかも目前にナイル・ロジャース御本人。すごいですよ、これは。孫の代まで誇れますよ。

演奏曲は、“オール・リクエスト大会”といいたくなるほど良く知られたものばかり。「ダンス・ダンス・ダンス」、「おしゃれフリーク」、「グッド・タイムス」、ダイアナ・ロスで流行った名曲「アイム・カミング・アウト」も楽しませてくれました。ライヴというよりもパーティという言葉が似合う、飛び切りにぎやかな夜をありがとう!
(原田 2009/4/3)


4/3 fri - 8 wed, CHIC featuring NILE RODGERS


chichic.jpg




<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 - - report : JAVA JA...

2009/04/01

poster2009_teaser.jpgposter-alien.jpg


原田和典のBloggin' BNT - 番外編:JAVA JAZZ レポート


3月6日から8日にかけて、インドネシア・ジャカルタで開催された「第5回 JAKARTA INTERNATIONAL JAVA JAZZ FESTIVAL」に行ってまいりました。
http://www.javajazzfestival.com/2009/


これまでマーカス・ミラー、セルジオ・メンデス、ジョン・スコフィールド、ロン・カーター、渡辺貞夫、櫻井哲夫など、数多くの人気ミュージシャンが登場してきた同フェスティヴァルですが、今年のラインナップも豪華でした。

ジェイソン・ムラーズ、スウィング・アウト・シスター、ピーボ・ブライソン、マット・ビアンコ、イリアーヌ、ダイアン・リーヴス、ロイ・エアーズ、マイク・スターン、鈴木勲、TOKU、クオシモード、SOIL & PIMP SESSIONSなどがステージを飾り、イヴァン・リンス、トム・スコット&ポーレット・マクウィリアムスにいたってはジャカルタ公演を終えてから「ブルーノート東京」に登場したのでした。

日本でいうところの「ジャズ・フェスティヴァル」とはやや異なるラインナップかもしれませんが、欧米のポピュラー音楽をここまでまとめて聴ける機会はまだ少ないのかもしれません。ぼくが見たどの公演も溢れんばかりのファンでいっぱい、1曲終わるごとに拍手と歓声の嵐です。

フェスティヴァルは「ジャカルタ・コンヴェンション・センター」内で行なわれます。千葉県にある幕張メッセのような場所といえば、規模の大きさがわかっていただけますでしょうか。とにかく広い。その中に10を超えるステージが設けられ、ほぼ同時進行で演奏が繰り広げられるのです。もちろんジャカルタ、バリ、ドバイ等のミュージシャンをたっぷり聴くこともできます。

3月でも気温が30度を超え、湿度も98%に達するジャカルタですが、会場内はとても快適です。食事コーナーのメニューも豊富で、値段も手ごろ。スタッフにもお客さんにも、なんともいえない暖かさがあるのもいいですね。これからもずっと続いてほしいフェスティヴァルです。

(写真・左:MIKE STERN, 右:ROY AYERS)
photoharadajavajzz.jpg




<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



<<前のページへ 5758596061626364656667