BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SERGIO MENDES - - report : SERGIO ...

2009/03/03

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- report : セルジオ・メンデス


2007年、インドネシア・ジャカルタの「JAVA JAZZ FESTIVAL」でセルジオ・メンデスのステージに接してまいりました。

このフェスティバルは、いくつもの会場を使っておこなわれるのですが、セルジオが出演したのはインドネシア国内最大級のアリーナです。オールスタンディングだった1Fは文字通り、人の嵐。ぼくよりずっと若いファンが、押しくらまんじゅう状態でセルジオのサウンドを楽しんでいます。限られた隙間の中で踊っている人あり、メンバーの指先をジッと見つめる人あり、一緒に歌う人あり、とにかくにぎやかでした。あまりの熱気に少し酸欠状態になったぼくは、座席のある2Fに移動しました。そこももちろん満員です。1Fに比べて年齢層は高めに見えましたが、皆さん、じっくりと音楽に聴き入っています。

終演後、とびきり嬉しそうな顔をしている男性と目が合いました。ぼくは「セルジオ、良かったですねー」と声をかけました。その人は、昔からセルジオが大好きでこの日を心待ちにしていた、彼がジャカルタに来てくれて本当に嬉しい、と語ってくれました。


そのセルジオが現在、ここ「ブルーノート東京」で計6日、12セットのクラブ公演を行なっています。なんとぜいたくなことでしょう。世界中のファンのうらやむ顔が見えるようです。アリーナ・クラスを熱狂させるセルジオのショウが、息遣いが感じられるほどの空間で楽しめるのですから。

オープニングの「ヘイ・ガール(E Menina)」から、“音楽の旅”は始まりました。日本語を交えた「ルガール・コムン」、ラップ入りの「サーフボード」、ブラジル’66時代に舞い戻ったかのような「プリティ・ワールド」、誰もがお待ちかねの「マシュ・ケ・ナダ」。次から次へと必殺のナンバーが飛び出します。しかもセルジオは、演奏している曲の前奏や間奏に別の曲のメロディを盛んに挿入します。“あ、この曲知ってる! この曲大好き!”、と、声をあげたくなった瞬間が何度あったことでしょう。

もちろん、バンド・メンバーの見せ場もたっぷり。マイケル・シャピロのタイトなドラムスに体が動き、芸達者なパーカッション奏者、ギビ(カポエイラの演舞も見せてくれました)の妙技に微笑がもれます。奥方であるグラシーニャ・レポラーセの歌声がまた、実にエレガントで素晴らしい。彼女がいつもそばにいることも、セルジオの若さの秘訣なのかもしれませんね。

ジャンルの壁も言語のバリアも軽々と超え、ユニバーサルな音楽を作り続けているセルジオ。老若男女が一体となって心から楽しめるショウは、あるようで意外と少ないものです。クラブのすべてが、暖かな空気に包まれた特別な瞬間。それを味わえるのがセルジオのライヴです。音楽大使という言葉は、彼にこそふさわしいのではないでしょうか。
(原田 2009/3/2)



3/3 mon - 7 sat, SERGIO MENDES
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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , 本田雅人 - - report : 本田雅...

2009/02/26

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- report : 本田雅人 featuring ボブ・ジェームス

本田雅人とボブ・ジェームスの共演盤『アクロス・ザ・グルーヴ』→ 本田雅人 - アクロス・ザ・グルーヴはとても爽快なアルバムです。

ぼくがこのCDを入手したのは去年の9月か10月ごろだったと記憶していますが、「この2人、すごく相性がいいなあ。ずっと一緒に演奏してきたみたいだなあ」と感じると同時に、「せっかくだからレコーディングだけじゃなくて、ぜひ一緒にライヴをやってほしいなあ。絶対、聴きに行くのになあ」と強く思ったものです。
その共演ステージが、作品リリースから約半年を経て、ついに実現しました。アクロス・ザ・ユニヴァース、ならぬ『アクロス・ザ・グルーヴ』の世界が、遂にライヴで楽しめるときが来たのです。

ところでぼくは、ボブ・ジェームスの名前をきくと反射的にウィスキーのTVコマーシャルを思い出します。
確かこんな設定でした。

ピアノを弾きながら作曲しているボブ。ちょっと手を休め、グラスに手を伸ばすと、アニメで描かれた妖精がピアノのまわりに降りてくる。やがて妖精とボブが賑やかなパーティを始め、音楽がフェード・インする。
日曜日の夕方、「笑点」にチャンネルをあわせると、毎回のようにこのコマーシャルを見ることができました。今から25年も前のことです。そこで使われた曲「マルコ・ポーロ」が入ったアルバム『フォクシー』はベスト・セラーを記録しました。

そのボブ・ジェームスが今、目の前にいます。フォープレイや自己のソロ・プロジェクトなどで何度も来日している彼ですが、今回の公演ではとにもかくにも、いちキーボード奏者としての一面をたっぷり味わわせてくれました。本田を始めとするソリストをうれしそうな表情でバック・アップし、ワン&オンリーのアドリブを展開するボブ。音数は決して多くないのに、そのプレイはすごく華やかです。

アルバム収録曲がさらにワイルドでアグレッシヴに“進化”していたのはもちろんのこと、そこに入っていない本田ナンバー「Condolence」を弾くボブ、ボブの近作『アーバン・フラミンゴ』からの「Choose Me」をエモーショナルに吹き綴る本田という珍しいシーンにも接することができました。

メンバーの誰もがライヴの実現を喜び、オーディエンスの誰もがその場にいる喜びに浸っていたのではないでしょうか。
(原田 2009/2/25)


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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , SERGIO MENDES - - review : 直前!...

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セルジオ メンデス sergio mendes

原田和典の公演直前レビュー:SERGIO MENDES



セルジオ・メンデスの公演が近づいてまいりました。

ぼくは勝手に彼のことを、思いっきり敬意と親しみをこめて“セルメンさん”と呼んでいます。
おそらく、ぼくが最初に聴いた「外国の歌」はセルメンさんの音楽でした。まだよちよち歩きだった頃、「マシュ・ケ・ナダ」の入ったLPレコードが家でよくかかっていたことを覚えています。

1960年代後半から70年代初頭にかけて、セルメン・サウンドは歌謡曲並みに親しまれ、ヒットしました。多少マニアックな話になりますが、ある女性週刊誌は、「セルジオ・メンデス、日本の一日」風のタイトルで、日本庭園でくつろいだり、和室で茶を点てるセルメンさんの写真を載せた記事を作りました。もっとマニアックな話になりますが、“ピンキーとキラーズ”や“太田幸雄とハミングバーズ”などの音作りを聴けば、当時“セルジオ・メンデス&ブラジル‘66”がどれだけ日本の音楽界に影響を与えていたかがわかります(“ハナ肇とクレージーキャッツ”のシングル盤「アッと驚く為五郎」も忘れてはいけません)。たぶん彼らのフォロワーは世界各国にいたのでしょう、スウェーデンの“ギミックス”、メキシコ(?)の“ロス・ブラジリオス”などを初めて聴いたときにも、ぼくは「セルメン度」の濃さに思いっきり驚きました。

セルメンさんの魅力・・・・・・過日、『ブラジル86』の国内盤ライナーノーツにも書かせていただきましたが、それは果てしなく数多いものであり、とてもひとことでいいきれるものではありません。
が、そこをあえて圧縮・凝縮いたしますと「誰でも楽しめる、どんな人をも笑顔にするサウンド」ということになるでしょうか。ブラジル‘66時代からのファンにも、「オリンピア」(ロサンゼルス・オリンピックで使われました)等で初めて接した'80年代からのファンにも、『ブラジレイロ』やブラック・アイド・ピーズ経由から入ってきたファンにも、そしてもちろんこれから初めて実物に接しようとするファンにも、ひとしく喜びと満足感を与えてくれるのがセルメンさんのライヴです。

老若男女をとりこにするセルメン・サウンド。最高峰のエンタテインメントが、もうすぐ味わえます。

(原田 2009/2/26)



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , HANK JONES , blog - ★ P+M映像 : HANK ...

2009/02/19

★ メッセージ & 初日公演映像・"ヤルモンダ" ★

ハンク・ジョーンズ・"ザ・グレイト・ジャズ・トリオ”公演初日の模様、
そして、ハンクさんからのメッセージです。

"ピアノ・トリオによる究極のひととき、まさに夢空間でした”

昨日ご来店のあるお客様から頂いたご感想です。


御年・90歳、先日はグラミー賞にて "功労賞" を受賞されました、ハンクさん。
もはやジャズ界のみならず音楽界の世界遺産、人間国宝的な存在でありながら、
ジャズ界きっての紳士としても知られてます。
ブルーノート東京は 2/24 tue. まで、そのあたたかな人柄の伝説的ジャズピアニストが奏でる味わい深いハーモニーに包まれています。

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ハンク・ジョーンズ HANK JONES


'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , HANK JONES - - report : HANK JO...

原田和典の公演初日レポート : HANK JONES "THE GREAT JAZZ TRIO"


ハンク・ジョーンズのライヴに行くのはいつも楽しい。

きょうはいったいどんな曲を演奏してくれるのだろう。大好きなあの曲はプレイしてくれるだろうか、ソロ・ピアノは聴けるかなあ。
そう考えるだけでクラブへ向かう足取りがどんどん軽くなっていきます。

ハンクはとにかくレパートリーが幅広い。彼の脳内にはいったい何千曲がつまっているのでしょうか。ぼくもいろんな曲をハンクのプレイを通じて知りました。「ウィンドフラワー」(サラ・キャシー作)、「フェイヴァーズ」(クラウス・オガーマン作)、「オー・ルック・アット・ミー・ナウ」(ジョー・ブシュキン作)などなど・・・・・。ハンクはいつも、飛び切り素敵なメロディを届けてくれます。

この日も大スタンダード・ナンバー、渋めのナンバー、自作をとりまぜたプログラムでファンを沸かせました。個人的に嬉しかったのは、なんといっても「シックス・アンド・フォー」を聴かせてくれたことです。サックス奏者でアレンジャーのオリヴァー・ネルソンが書いた曲で、ネルソン本人の演奏はエリック・ドルフィーとの共演盤『ストレイト・アヘッド!』で聴くことができますが、決して多くのミュージシャンに取り上げられているわけではありません。
が、これをハンクは、あくまでもサラリと、優美に演奏します。実にいいのです。粋なのです。オリヴァー・ネルソンの作曲といえば「ストールン・モーメンツ」ばかり有名ですが、こういう隠れた逸品を引っ張り出すハンクは、さすが偉大なる名シェフといえましょう。

スロー・テンポで演じられた「ディア・オールド・ストックホルム」(イントロが殊に絶品)も聴きものだったし、無伴奏ソロの「アローン・トゥゲザー」も実に美しい。名匠ハンクのジャズ愛あふれるステージを満喫させていただきました。

芸術家に年齢の話を持ち出すのは野暮かもしれませんが、ぼくはいまだにハンクが90歳を超えているということが信じられません。きっと、とにかくピアノを弾くことが大好きで、それに没頭していたらあっという間に人生90年になってしまった、のでしょうね。

ジャズ界きってのジェントルマンは、無類のタフガイでもあるのです。
(原田 2009/2/18)






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1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



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