BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , RACHAEL YAMAGATA - - report : RACHAEL...

2009/02/17

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原田和典の公演初日レポート : RACHAEL YAMAGATA


レイチェル・ヤマガタは以前から気になっていたシンガー・ソングライターのひとりです。

キャロル・キングやジェームズ・テイラー、ロバータ・フラックなどに影響されて音楽活動を始めたとのことですが、ぼくの聴くかぎり、この3人にはまったく似ていない。ノラ・ジョーンズやサラ・マクラクランの名前を引き合いに出されることも多いようですが、ぼくの聴くかぎり、この2人にもまったく似ていない。

そこが琴線に触れました。興味深いなあ、ぜひ生で味わいたいものだなあ、と数年来、思っていたのです。
ライヴは2部構成で行なわれました。

まずケヴィン・ディヴァインがギターの弾き語りを始めます。たまにわざとマイクから離れてシャウト気味に歌いながら、会場を盛り上げていきます。ニューヨークには、コーヒーハウスと呼ばれる、“一人立つのがやっと”というぐらい狭いステージを持ったカフェがあります。気のおけない雰囲気の中、若手シンガーが自作の歌を、ギターをかき鳴らしながら表現するのです。ケヴィンの真摯な弾き語りは、いつか訪ねたグリニッチ・ヴィレッジのコーヒーハウスを思い出させてくれました。

続いてレイチェル・ヤマガタがバンド・メンバーと共に登場します。
彼女の作風は、けっして「明るい」ものではありません。内省的、といっていいでしょう。歌詞も、いわゆるラヴ・ソングとは一味異なるものが目立ちます。手拍子をとって一緒に盛り上がる、というタイプの音楽とも違います。
とにかく、じっくりと聴かせる。丁寧に丁寧に、音の世界を紡ぐ。ギターとピアノを持ち替えながら、徹底的にニュアンスに富んだステージを届けてくれます。バンド・メンバーではチェロのオリヴァー・クラウスが印象に残りました。伸びやかで、たくましささえ感じさせる彼女のヴォーカルに、そっとチェロが重なると、響きに一層の奥行きが生まれます。

「Worn Me Down」、「The Reason Why」等の定番とニュー・アルバムの曲を交えながら、レイチェルとその仲間たちは“白い炎”というべきパフォーマンスで、冬の夜を暖めてくれました。
(原田 2009/2/16)




'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PEABO BRYSON - - report : PEABO B...

2009/02/11

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原田和典の初日公演レポート : PEABO BRYSON with special guest DENIECE WILLIAMS



ピーボ・ブライソンの公演に行ってまいりました。

ぼくが彼のライヴを見るのは2度目です。昨年の、やはり2月に「ブルーノート東京」で、飛び切りのエンタテインメント・ショウを味わって以来です。
その日はテレビ・カメラも入っていて、ステージが始まる前から華やかな雰囲気に満ち溢れていたことを覚えています。青いスーツをまとったピーボはオープニングからノリノリで、アップ・テンポのナンバーで会場を沸かせつつ、時おり必殺のバラードを挟んで、クラブじゅうを歓声の渦に巻き込んでいました。

今回の公演も、彼の幅広い魅力をまんべんなく伝えるものです。いきなり客席をまわり「こんばんは」と挨拶しながらファン全員と握手、心をガッチリと掴んだ後、「愛をもう一度」ピーボ・ブライソン - Bedroom Classics, Vol. 2 - If Ever You're In My Arms Again等の定番、ニュー・アルバムからの曲、ギターの弾き語り、たまらなくソウルフルなカヴァー(ぼくが見たセットでは、スティングやシャーデーの曲を取りあげました)等を、約90分にわたって楽しませてくれました。
なにしろ何百ものレパートリーを持つピーボです。今回の来日用に、新しいレパートリーも用意しているという情報もあります。どのセットでどんな歌が飛び出すか、それはピーボ本人しか知りません。このスリルを、ぜひ皆さん自身にご体験していただけたらと思います。

スペシャル・ゲストのデニース・ウィリアムスも、まさに貫禄のステージングでした。よく通るヴォーカルがまた、ピーボの声に合うのです。「愛のセレブレーション」、「ホール・ニュー・ワールド」では、イントロが出るや否や場内が沸きに沸きます。“デニースとは昔からの友達なんだ。皆さんの前で一緒に歌えることができて嬉しいよ”と、ピーボもMCで語っておりました。デニースはソロで、代表曲「フリー」、「レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ」も聴かせてくれました。

ピーボにしてもデニースにしても世界中で同じヒット曲をリクエストされ、何百回何千回と歌ってきたに違いありません。が、「この曲の人気があるからサービスとして歌っているんだな」ではなく、「この曲を本当に好きで、だからこそ繰り返し歌い続けているんだろうなあ」と思わせてくれる、隅々にまで心配りのある歌唱を聴かせてくれるのです。音楽に対してとことん誠実。その姿勢が伝わってくるから彼らには根強いファンが多いのでしょう。

ピーボを堪能できたうえに、デニースの健在ぶりにも接することができて、ぼくはとにかく嬉しかった!
(原田 2009/2/10)


◆ 始まりました!
2009 2/10 tue. - 2/15 sun.
PEABO BRYSON
with special guest DENIECE WILLIAMS
"Sweet Valentine Nights"

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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , PEABO BRYSON - - review : PEABO B...

2009/02/05

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原田和典の公演直前レビュー:PEABO BRYSON with special guest DENIECE WILLIAMS


ピーボ・ブライソンの公演が迫ってまいりました。
彼は本当に歌がうまい。「美女と野獣」や「愛のセレブレイション」などバラード方面に強い歌手という印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、オールマイティです。なんでも、いけます。それにリズム感が抜群にいい。だからバラードでも決してベタつくことなく、喉ごし(耳ごし)さわやか。シャキッと聴かせてくれるのです。

ぼくが彼の歌声を初めて意識したのは1980年代の中ごろだったと記憶しています。ロバータ・フラックと共演したライヴLPに接して、これはいい歌手が出てきたなあと思ったものです。
ロバータと男性シンガーの顔合わせといえば、なんといってもドニー(ダニー)・ハサウェイとのコンビネーションが歴史的です。そのダニーが若くして亡くなった後、ポッカリ開いた穴を埋めてあまりある歌唱を聴かせてくれたのがピーボなのです。

ソロ・シンガーとしても素晴らしい存在であることはいうまでもありませんが、彼の深く、広がりのある声は女性歌手との組み合わせでもまた、最大限に魅力を発揮します。女性シンガーの高らかな歌声を、優しく、ときに力強くエスコートするピーボは、「男のあるべき姿」のひとつをぼくたちに歌で示してくれます。
今回、ピーボのパートナーを務めるのはいくつもの全米ヒットを持つ偉大なディーヴァ、デニース・ウィリアムス。個人的には中学時代、大ヒット映画『フットルース』の挿入歌である「レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ」が好きで、繰り返し聴いたものでした(ケニー・ロギンズの主題歌より気に入っています)。近年はゴスペル畑での活動が多いデニースですが、今回は久々(といっていいでしょう)、R&Bステージです。あの輝かしい歌声をナマで聴ける我々はラッキーです。ピーボも共演を心から楽しみにしているに違いありません。
まわりのピーボ・ファンたちに“生ピーボの魅力”をききましたので、最後にそれを紹介しましょう♪

★ バラードからファンキーなものまで、盛りだくさんのステージ。とにかく歌がうまい。

★ オーディエンスに対する素晴らしいショウマンシップ。日本のファンを心から愛している。

★ あの客席全部にまわって握手する姿を見て、涙が出た。

★ 練りに練られた選曲と構成。常にファンを楽しませる本物のエンターテイナー。

★ 情熱的なラヴ・ソング。バレンタインに最高!


(原田 2009/2/5)





'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHICK COREA & JOHN McLAUGHLIN - - report : CHICK C...

2009/02/03

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ただ今公演中!:CHICK COREA & JOHN McLAUGHLIN "FIVE PEACE BAND"

ジョン・マクラフリンとチック・コリアがバンドを組んで、ツアーに出る!
昨年の夏だったと思いますが、この情報が解禁されたとき、多くのファンが予想外の出来事に驚き、同時に「よくぞ共演してくれた、一刻も早く来日を」と喜びの声をあげたのではないでしょうか。なにしろふたりが顔を合わせたレコーディングは、ぼくの知る限りマイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』(‘69年)と、マクラフリンの『エレクトリック・ギタリスト』(’78年)があるだけなのですから。

2008年10月にスタートした“ファイヴ・ピース・バンド”は、ヨーロッパ22都市ツアーを大好評のうちに終え、いま、まさに東京にいます。クラブでの公演は、ここ「ブルーノート東京」が唯一。欧州では連日、大ホールを満員御礼にし、たとえばロンドン公演はロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行なわれました。このドリーム・チームの生演奏をメンバーの息遣いが伝わってくるような距離で楽しめるのは、日本にいるファンだけが得た特権といえます。

それにしてもジョン・マクラフリンの凛々しかったこと。本当に美しくて骨太な音色を味わわせてくれました。ぼくはアコースティック・ギターを弾くマクラフリンも、ガット・ギターの穴にエレクトリック・ギターのピックアップをつけて弾くマクラフリンも好きですが、ゴダン・ギターを手にした彼もいいなあ! トレモロ・アームの用い方がまた、心憎いんですよねえ。ぼくはジェフ・ベック(マクラフリンの友人です)のアーミングも大好きなのですが、空間を切り裂くようなベックのアーム使いに対し、マクラフリンのそれには限りない余韻があります。ソロ・フレーズの語尾にさりげなくアームを使って、音をベンドさせていくあたり、もうマクラフリン濃度120パーセントという感じで、ただただうっとりさせられるだけでした。

巨匠ふたりの脇を固めるのは、ケニー・ギャレット、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイドという若手たち(ギャレットは、もう30年選手ですが)。この3人がまた、いいのです。長いキャリアと安定した地位を持つ2大カリスマとの共演に、少しもビビることなく、ガンガン攻めていくのです。マクラフリンとチックは、自分たちをとことん燃え上がらせるために彼らを共演者に選んだのかもしれないな、とぼくは勝手に想像しています。

とくにブレイドが叩き出すリズムの、うねることうねること。これまでにもウェイン・ショーター、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェルなどと共演してサポートの域を超えるプレイで彼らを活気づかせると共に、自身の“フェロウシップ・バンド”でジャズの未来を拓き続けてきた彼は、ファイヴ・ピース・バンドにおいても呆れるほど巨大なダイナモ(発電機)でした。ラグビーボールをとんでもない高速で転がし続けているかのようなグワングワンした“うねり”をバンドに与え続けるブレイドのドラムスを軸にして、ソリストの超絶技に浸る・・・・。

なんともスリリングで、しかも贅沢なひとときを満喫させていただきました。
(原田 2009/2/2)
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'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHRISTIAN SCOTT - - report : CHRISTI...

2009/01/31

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クリスチャン・スコットが自身のグループで遂に来日しました。

過去「ブルーノート東京」にはソウライヴのホーン・セクションとして出演していますし、マッコイ・タイナー・トリオのゲストとして登場したこともあります。この2バンドと共演し、存在感をアピールしたというだけでも、クリスチャンの幅広い適応力がわかろうというものです。
が、今回は、自身のグループでの上陸です。「自分の音楽をやりに」、来たのです。

これまでの来日では、ひとりのトランペット奏者に徹してベストを尽くせばよかった。しかし今回はトランペッターとしてはもちろん、バンド・リーダー、作曲家、編曲家、音楽監督として体を張らねばならないのです。
楽屋からステージに向かう途中、クリスチャンは何度も武者震いしたのではないでしょうか。
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演奏は、‘迫真’という言葉がふさわしいものでした。
いわゆる、テーマ→アドリブ→テーマという展開ではありません。ドラムスが一定のリズムを刻み、そのうえでソリストがアドリブをとる、というものでもありません。演奏の様相が刻々と変化しているのにもかかわらず妙なる統一感があり、時おり曲やメンバーの紹介はあるものの、ワン・セットがひとつの組曲になっているように感じられました。

ものすごい気合いです。メンバーの誰もが全身全霊をこめて、音楽に立ち向かっています。最初から最後まで徹底してガチでぶつかってきます。彼らのプレイに没頭しているうちに、ぼくは、思いっきりおなかがすきました。エネルギーにあふれる音楽は、聴く側にもエネルギーを求めます。これからクリスチャンのライヴを体験される方は、余裕を持って早めにご来店して腹ごしらえされることをお勧めいたします。

とにもかくにもぜひ実際のステージを接していただきたい、ぼくの願いはそれに尽きるのですが(あと2日あります)、まさしく今を進行するジャズをクリスチャン・スコットは聴かせてくれました。こういう音が日本で味わえて、しかも多くのリスナーから拍手を浴びているという事実に触れて、ぼくは思わず心の中でガッツポーズをとりました。


ところでクリスチャンは2008年夏、「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」に自身のグループで出演しています。1958年、このジャズ祭で若きマイルス・デイヴィスが演奏しました。それから半世紀経ったことを記念して、主催者側はクリスチャンにマイルスにちなんだ曲を演奏してはどうかと提案したそうです。しかしクリスチャンはこれを断り、「最新の自分の音楽」を展開しました。それこそが、常に未来を追い求めていた帝王マイルスへの最高の献花である、といわんばかりに。
久しぶりにジャズ界に鼻っ柱の強いやつが現れた、お前なかなかいいぜ、とマイルスも天国でニヤリとしているのではないでしょうか。
(原田 2009/1/31)
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