BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHRISTIAN SCOTT - - クリスチャン・ス...

2009/01/26

● July '08、BLUE NOTE TOKYO
SOULIVE with special guest CHRISTIAN SCOTT & SAM KIININGER
:ソウライヴの放つグルーヴの中、クリスチャンの "個性" が非常に際立っていたシーンのひとつ。


クリスチャン・スコットの公演が近づいてきました。
わくわくしています。なにしろ彼は現代ジャズ・シーン、希望の星なのですから。



大御所フレディ・ハバードが亡くなったのも記憶に新しいジャズ・トランペット界ですが、いつも覇気に溢れた若手が群雄割拠しているのもこのフィールドです。アヴィシャイ・コーエン(ベース奏者とは別人です)、アンブローズ・アキンムシーレ、キーヨン・ハロルド、コーリー・ウィルクス、モリース・ブラウン、マイケル・ロドリゲス、ジェレミー・ペルト、ダレン・バレットなど、本当に数多くの逸材がいます。ウィルクスとロドリゲスは昨年、それぞれウィル・カルホーン、ゴンサロ・ルバルカバのバンドで「ブルーノート東京」に出演しましたね。

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Corey Wilkes / Michael Rodriguez


が、大手レコード会社と契約し、自分のグループで世界を回り、いっぽうでプリンスやモス・デフにも招かれ、しかも映画俳優としても活躍している存在はクリスチャンしかいません。つまり、彼には並外れたスター性があるのです。

2006年夏のシカゴ・ジャズ・フェスティバルで、ぼくは初めてクリスチャンに接しました。あとで調べたところ、彼のファースト・アルバム『リワインド・ザット』が発表された直後ということがわかったのですが、この時点ではまだその作品を聴いていませんでした。

クリスチャンは、彼の叔父であるドナルド・ハリソン・グループの一員としてステージにあがりました。ハリソンは伝説的バンド“アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ”出身のサックス奏者で、いわゆるハード・バップと呼ばれるタイプの演奏を得意にしています。が、クリスチャンの演奏は、どこか違うのです。フォーマットこそハード・バップなのですが、そこを突き破って新たな地平に突入していくかのように、次から次へと新鮮なフレーズをたたみかけてゆくのです。

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◆ ドナルド・ハリソン\nhttp://www.donaldharrison.com/


「これはえらいトランペッターがあらわれたなあ」、と僕は五大湖に向かってシャウトしたくなりました。

そのときハリソン・グループでベースを弾いていたのはエスペランザ・スポールディングです。
いまや“今をときめく”存在となった彼女も、当時はたんなる一介のベーシスト。ぼくは既にファースト・アルバム(Ayvaというレーベルから発売されました)を聴いていましたから、彼女のプレイをナマで聴いても格別驚かなかったのですが、強靭なビートは明らかにグループの要となっていました。

2006年夏なんて、まだ2年半前のことです。
しかし、伸び盛りの若手ミュージシャンにとってそれは、十分すぎるほどの歳月なのでしょう。一本立ちしたクリスチャンは、見事なトランペット・スタイリストになりました。スーツを脱ぎ捨て、ベル(朝顔)が上に向いた楽器に持ち替えた彼には、貫禄とりりしさが溢れています。

昨年7月にソウライヴのホーン・セクションの一員として「ブルーノート東京」初登場。人気ジャズ・ファンク・ユニットに新鮮な息吹を与えました。また9月には、マッコイ・タイナー・トリオとの共演で再び「ブルーノート東京」のステージに立ち、伝統的なアコースティック・ジャズを聴かせてくれました。

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そんなクリスチャン・スコットが、遂に自己のバンドを引き連れて上陸します。
スリル満載、やけどするほど熱いステージが繰り広げられることでしょう。





◆◆◆ INFO ◆◆◆

◆ more'bout CHRISTIAN SCOTT, check these out !!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
-公演blogページ : http://www.bluenote.co.jp/jp/movie/2009/01/post_2.html
-公演詳細ページ : http://www.bluenote.co.jp/jp/sp/247.html
-アーティスト・オフィシャル : http://www.christianscott.net/


◆ BS フジ 放映予定(再放送):

『SOULIVE Live at BLUE NOTE TOKYO』

2/3 Tue 24:00〜24:55
2/8 Sun 26:00〜26:55



<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , THE MANHATTAN TRANSFER - - report : THE MAN...

2009/01/23

tonight_mantra.jpg


いま午前1時半を少しまわったところです。
まだ、わくわくしています。からだが暖かいです。
超一流の、豪華で、洒脱な、極上のアメリカン・エンタテインメントを満喫してしまったなあ、という興奮と満足感がこみあげて止まりません。

マンハッタン・トランスファー。もちろん世界最高峰のコーラス・グループです。日本でもとても高い人気があります。
が、どういうわけか、ぼくは彼らのライヴに接する機会にこれまで恵まれなかったのでした。自分でも不思議ですが・・・・。
なので今日はなんだか、長いあいだ慕い続けてきた人にばったり会ってしまったような気持ちなのです。

ぼくがはじめてマントラを聴いたのがいつだったか、あいにく覚えていませんが、初めて“見た”のはテレビの中でした。
月曜日、午後8時から放映されていた「ザ・トップテン」という番組です。
ようするに売れている歌謡曲(当時はまだJポップという言葉はありませんでした)の上位10曲を、その歌手本人がナマで歌うという内容なのですが、この番組は一時期よく、海外のシンガーをゲストに招いていました。マントラが出たのは、デビュー間もない頃のワム!(ジョージ・マイケルがいた男性二人組)が出演した翌月か翌々月のことだったと思います。ウィスキーのテレビCMに使われていた「アメリカン・ポップ」という曲を、フリ付きで披露してくれたのでした。

マンハッタンというグループ名、アメリカンという曲名。まだ田舎の洟垂れ小僧だったぼくにとっての“USA”が、そこにありました。

それからもう25年が経ってしまいましたが、マントラは今も不動のメンバーのまま、鉄壁のハーモニーで楽しませてくれます。

演目については、もう、「満漢全席状態」とだけいっておきましょう。ノスタルジックなスイング・ナンバー、ブラジルもの、ブルース、ロックンロール、ヴォーカリーズ(ジャズメンのアドリブ・ソロに歌詞をつけて歌う)、メンバーのソロ・コーナー、そしてもちろんア・カペラも。見事なチームワーク、キラリと光るユーモアのセンス(MCがまた、うまいのですよねえ)、オーディエンスとの一体感・・・・心から敬意をこめて、“芸人ばんざい!”といわせていただきたいものです。

きくところによると、最新アルバムのリリースも間近いとか。マンハッタン・トランスファーの冒険旅行は、まだまだ続きます。



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MACEO PARKER - - Report : MACEO P...

2009/01/14

はじめまして。音楽ライターの原田和典です。
今回から「Bloggin' BNT」と題し、ブルーノート東京で行なわれる
ライヴのリポートを中心にお届けすることになりました。
リラックスしてお楽しみいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします!


Maceo_Top.jpg (← こちら、メイシオご本人様です、ぼくではありません)

メイシオ・パーカーの真髄はライヴにあり、といわれます。

一度体験するとたちまちとりこになり、ステージが終わる頃にはすっかり中毒状態に。彼が来日するごと、公演に足を運んでいるというファンも数多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ぼくもそのひとりです。

とにかく、楽しい。そしてかっこいい。あのサックスの音色が耳に飛び込んでくるだけで、自然に体が揺れて、目じりが下がり、ほほがゆるみます。

ステージでのメイシオは本当に表情豊かです。サックスを吹くだけではなく、歌い、踊り、ファンに語りかけ、とことんまで盛り上げてくれます。だけど、けっして音楽自体が荒っぽくなることはない。締めるところはビシッと締める。それこそメイシオ、真のプロフェッショナルである所以です。
この日のプログラムは、かつて彼のボスであったジェームス・ブラウンのあの曲あり、ポール・マッカートニーの名曲あり、もちろんソロ・アルバムからの人気曲もてんこ盛り。「ジョージア・オン・マイ・マインド」では、あの人(ジニアス・オブ・ソウルと呼ばれる巨匠です)のモノマネまで見せてくれました。

バンド・メンバーも以心伝心といいましょうか、頼もしいリーダーの手足と化したかのように小回りを利かせて動きます。11人の大所帯が一丸となったときの濃さ、力強さはまさに“ソウル・パワー”ですね。

トロンボーンのデニス・ロリンズが参加していたことも個人的には大きなポイントでした。かつてスティーヴ・ウィリアムソン(‘90年代初頭に、ものすごい勢いで売り出したサックス奏者です。近況をきかないのが残念ですが・・・・)やコートニー・パインのバンドで怪物ぶりを印象づけた彼が、さらに貫禄を増して日本に戻ってきたのですから、これはもう、実に心憎い人選であると言ってよいでしょう。
あともうひとつ、このステージで嬉しかったのはルイ・ジョーダンの曲を取り上げてくれたことです。

ルイ・ジョーダン、ご存知でしょうか。ロックやR&Bも元をたどればこの人に行き着くといわれる大エンターテイナーです(B.B.キングやチャック・ベリーにも大きな影響を与えています)。クリクリした目、華やかなたたずまい、力強いサックス・プレイ、粋な歌声などジョーダンとメイシオの間には共通点がいっぱいです。もっともジョーダンが大ヒット曲を連発したのは1940年代なので、メイシオはまだ生まれたか生まれていないかの頃ですが、彼がノリノリで歌い、サックスを吹く「ラン・ジョー」にぼくは、強くて分厚い“エンタテインメントの血脈”を感じて、なんだかとてもいい気分になりました。




<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



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