公演初日リポート:BOOKER T. JONES @COTTON CLUB
『ポテト・ホール』、『ザ・ロード・フロム・メンフィス』等、生きのいい近作を出しているブッカー・T・ジョーンズが自身のバンドと共に来日してくれました。ブッカー・Tといえば1960年代のスタックス・レーベルにおける大活躍が著名ですが、このところのアルバムを聴くと現在の彼は間違いなく当時に匹敵するピークを築いているように感じられます。乗りに乗っているミュージシャンのパフォーマンスを生で楽しめる快感は、何にも替えることができません。ぼくは「コットンクラブ」で行なわれた初日のステージを見ました。
まずギターのヴァーノン・アイス・ブラック(カリフォルニア州オークランド出身)、ドラムスのダリアン・グレイ(同)、ベースのジェレミー・カーティス(マサチューセッツ州ボストン出身)が登場し、演奏を始めます。そしてグレイのMCに導かれ、御大ブッカー・Tが現れます。曲はそのまま最新作からの「HARLEM HOUSE」に。彼が最初の一音をオルガンから放つだけで、クラブ中にファンキーな空気がたちこめていくようです。続く「WALKIN’ PAPER」もニュー・アルバムからのナンバーです。
続く「BORN UNDER A BAD SIGN」からは、スタックス・レーベル時代の曲が続きます。「GREEN ONIONS」(17歳のときの楽曲だそうです)、「SOUL LIMBO」、「HIP-HUG-HER」などなど永遠の定番をブッカー・T自身のプレイで聴くのは幸福以外の何ものでもないですが、決して彼は往年のレコードの再現をしません。原曲の雰囲気を生かしながらもアレンジを変え、メンバーのアドリブをどんどん入れて、さらにエキサイティングなサウンドに仕立ててゆくのです。
時を忘れて4人のサウンドを楽しんでいると、「TIME IS TIGHT」が耳に入ってきました。前半をスローで演奏し、後半をアップ・テンポで攻めるこの曲に興奮しないファンはいないでしょうが、これが演奏されるということは、もうライヴが終わりに近づいているということも、ファンは知っています。案の定、本編はここで終了し、アンコールでは『ポテト・ホール』からの「HEY YA」、オーティス・レディングが歌った名曲「I'VE BEEN LOVING YOU TOO LONG」を聴かせてくれました。
なにしろ数え切れないほどのレパートリーを持つブッカー・Tです。本日から始まる「ブルーノート東京」公演でも、日がわりのプログラムで大いに楽しませてくれることでしょう。
(原田 2011 9.9)
● 9.10sat.-9.13tue.
BOOKER T. JONES @BLUE NOTE TOKYO
公演初日リポート:BOOKER T.
2008年にMG’sを率いて登場し(忌野清志郎の飛び入りもありました)、満場を沸かせたブッカー・T・ジョーンズが、今度は自己の最新ユニットと共に戻ってきました。セット・リストは、大きく次の3つに分かれています。
最新作『ポテト・ホール』からのナンバー。
「GREEN ONIONS」や「TIME IS TIGHT」等、60年代から70年代にかけて放ったMG’s黄金のレパートリー。
オーティス・レディングが歌った「THE DOCK OF THE BAY」や、アルバート・キングで有名になった「BORN UNDER A BAD SIGN」等、かつて曲作りに携わったナンバーの自作自演(主にギターを弾きながら歌う)。
そして極めつけは、あの紅茶のTV CM で起用されたことで有名な "Jamaica Song"。
日本のファンのためだけに、特別に練習してきてくれたそうです。
とにかく盛りだくさんのプログラムで、身体中に沁みわたるような満足感を味わわせてくれました。どの曲も気持ちよかったことはいうまでもありませんが、ぼくが最も興奮したのは『ポテト・ホール』からのナンバーでした。とにかく曲がいいのです。フレーズが新鮮なのです。「WARPED SISTER」あたり、MG’sのナンバーと並べても少しもひけをとらないばかりか、むしろそれ以上では?と言い切りたくなるほど魅力的なメロディです。50年近いキャリアを持ちながら、いまもなおこんなにファンキーで親しみやすい旋律が書けて、次から次へと魅力的なフレーズを指先から生み出せるブッカー・Tは、まさしく掛け値なしの“ハモンド・オルガンの錬金術師”といえましょう。
ふたりのギタリスト(トロイ・ゴンウィー、ヴァーノン・ブラック)が、またいい味を出していました。ぼくの聴いた限り、リード・ギター、サイド・ギターという役割分担は特にないようで、互いに絡みあいながら演奏を盛り上げている印象を受けました。あえて類例を見つけ出すならば、ローリング・ストーンズのギタリストたちでしょうか(特にキース・リチャーズとロン・ウッドのコンビネーション)。彼らに通じる図太いウネリが、ブッカー・Tの骨太なオルガンをさらに際立たせているのです。今のブッカー・T・バンドの音は、MG’sのそれよりもハード・エッジでロック色が強いのが特徴ですが、こうしたサウンドこそ現在のブッカー・Tの目指すところなのでしょう。もちろんぼくは両手をあげて、これを歓迎します。
『ポテト・ホール』は、先日のグラミー賞でベスト・ポップ・インストゥルメンタル賞に輝きました。だからというわけではないですがブッカー・Tは今、真の絶頂期を迎えているのではないでしょうか。とにかく現在の彼は、いつもよりさらにノリにノっています。これを見逃さない手はありません!!
(原田 2010/2/7)
● 2.7sun.-2.10wed.
BOOKER T.
☆BOOKER T.
今年度グラミー賞で最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を獲得した、
現在公演中のブッカー・T.。初日のパフォーマンス&メッセージ映像をアップしました!
皆でブッカーのグラミー賞受賞をお祝いしましょう!!公演は2.10wed. まで。