'11 Bloggin' BNT by 原田和典 , CHARLIE HADEN - - report : CHARLIE...
2009/09/08
公演初日リポート:CHARLIE HADEN QUARTET WEST
チャーリー・ヘイデン率いる名門グループ“クァルテット・ウエスト”が、本当に久しぶりの来日を果たしました。
ぼくが前回、彼らのステージに接したのは、‘90年代初めのことです。今は亡き原宿のジャズ・クラブに登場した彼らは、モニターを殆ど用いることなく、あくまでも生の響きを大切にしながら、このうえなく端麗なプレイを聴かせてくれました。
それから約20年。クァルテット・ウエストの待ちに待った「ブルーノート東京」初公演が、いま実現しています。もちろんモニターは殆ど使っておりません。香り高いアコースティック・サウンドが、純度100%のジャズをクラブに満たしてくれます。
オリジナル・メンバーのヘイデン、アーニー・ワッツ、アラン・ブロードベントの連携は“鉄壁”と呼ぶしかない隙のなさ。2007年に行なわれた結成20周年ヨーロッパ・ツアーの頃から参加した若手ロドニー・グリーンも、すっかり全体のサウンドに溶け込んでいます。ビリー・ヒギンズ、ポール・モチアン、ローレンス・マラブルといった巨匠たちの後釜に抜擢されたのは相当なプレッシャーだったのでは?とも想像してしまいますが、ロドニーはクァルテット・ウエストに加わることでプレイの幅をさらに広げたようです。
演奏は「TODAY I AM A MAN」から始まりました。‘40年代にチャーリー・パーカーが書いた「CONFIRMATION」を、クァルテット・ウエストなりに再解釈したものといっていいでしょうか。いわゆるビ・バップ・タイプのナンバーです。いきなり、アーニー・ワッツのテナー・サックスが火を噴きます。いわずとしれたフュージョンの花形奏者であり、ロック〜ポップス畑でも活動している(ローリング・ストーンズのツアーに参加したこともあります)彼ですが、もともとはバディ・リッチ・オーケストラ出身、’60年代には“ロサンゼルスのコルトレーン”と呼ばれたこともあるハード・エッジなミュージシャンです。クァルテット・ウエストで演奏すると、彼の中にある“ジャズの虫”がうずきだすのでしょう。「FIRST SONG」では渾身のカデンツァ(楽曲が終わる前に、延々と独奏すること)を披露。愛用のカイルベルス社製サックス(故グローヴァー・ワシントンJr.も使っていましたね)からは、文字通り泉のごとくフレーズがあふれ出しておりました。
アラン・ブロードベントのプレイも、さすがというしかないものでした。サックスやベース・ソロのバックにおける伴奏のうまさ。ソロ・パートにおける鮮やかな起承転結。名アレンジャーとしても知られる彼は、つねにその音楽が最も美しく響く状態を想定してピアノを弾いているのでしょう。「LONELY WOMAN」では、無伴奏のソロ・パートもありました。左手で単音の4ビートを刻み、右手で和音によるソロを延々と繰り広げる箇所など、彼の師であるレニー・トリスターノが降臨したかのようでした。
しかしメンバーがここまで充実したプレイをできるのも、背後でどっしりしたビートを送りこむヘイデンの存在があってこそです。ソロ部分における歌心、これぞアコースティック・ベースというべき力強く暖かい音色。あのサウンドが耳に入ってくるだけで、ぼくは幸せになります。彼のCDを聴いていると、「パチッ」という音を耳にすることが多いはずですが、その謎もライヴでは一目瞭然です。右手の人差し指が、ベースのネックを押さえている親指に当たるときに、この音が出るのです。こういう弾き方をするジャズ・ベーシストをぼくはほかに知りません。
今月発売されたCD『ザ・ベスト・オブ・クァルテット・ウエスト』を聴いてから「ブルーノート東京」に行くか、それとも「ブルーノート東京」に行ってから『ベスト』を聴くか。もちろん「どちらも必聴!」、これに尽きます。
(原田 2009/9/8)
● CHARLIE HADEN QUARTET WEST
9/7 Mon - 10 Thu.