'11 Bloggin' BNT by 原田和典 , CLAUDIA ACUNA - - report : CLAUDIA...
2009/03/10
- report : CLAUDIA ACUNA
チリ出身の歌姫、クラウディア・アクーニャがブルーノート東京で公演中です。
スタンダード・ナンバーもポップ・チューンもオリジナル曲も自由自在、歌詞のある曲(英語、スペイン語)もそうでない曲も見事に歌いこなす彼女はジャズ界になくてはならない存在です。ルシアーナ・ソウザ、グレッチェン・パーラト、レベッカ・マーティン、シンシア・スコットなど、近年のニューヨーク・ジャズ・ヴォーカル・シーンは百花繚乱ですが、それでもクラウディアの地位は揺るぎません。
サックス奏者で評論家のドン・ヘックマンは「20代で初めてアメリカに来たというのに、どうして彼女はこんなにジャズを知り尽くしているのだろう」と驚き、伝説的ジャズ・シンガーであるアビー・リンカーンも「クラウディアは過去の偉大なシンガーたちに連なる存在である。なぜなら、彼女には他の誰にも真似できない独特のヴォイスがあるからだ」と絶賛しています。
2002年には小曽根真トリオのライヴにゲスト出演したクラウディアですが、今回は自己のバンドでの登場です。ぼくはクラウディア聴きたさに、海外出張の日程を繰り上げて帰国いたしました。
この日のステージは、4月に発売されるアルバム『En Este Momento』からのレパートリーが中心。つまりぼくたちは、CD発売よりもひと足早く新作からのナンバーを満喫できたわけです。スペイン語と英語を使い分けながら、クラウディアは力強く、伸びのあるアルト・ヴォイスを響かせます。彼女が取り上げる曲は自作もスタンダード・ナンバーも本当にメロディアスです。メキシコ生まれのボレロ「Cuando Vuelva A Tu Lado」を歌ってくれたのも嬉しかったですね。この歌、アメリカに渡って「What A Difference A Day Makes(Made)」と改題され、ダイナ・ワシントンが英語で歌って世界的に流行するのですが、クラウディアはスペイン語と英語の両方を用いて、まるでメロディをいつくしむようなアプローチでシットリと聴かせました。もとから持っていたスケールの大きさが、さらに深まり、広がったという印象を抱かせてくれました。
しかもこのステージ、バック・メンバーも充実しています。カホン(主にフラメンコで使われる箱状の打楽器)をドラム・セットに仕込んで、スティックと手の両方で巧みにヴォーカルを盛り立てるヤヨ・セルカのプレイにも目と耳を奪われましたし、才人ピアニスト、ジェイソン・リンドナーの参加も適材適所というしかないものでした。ぼくがジェイソンに初めて魅了されたのは、チック・コリアのレーベル‘ストレッチ’から発表されたアルバム『Premonition』を聴いたときでした。なんとスケールが大きくて風通しのいい音楽を作るピアノ奏者であり作曲家なのだろうと思ったものです。それ以降も彼は『Live UK』、『Live At The Jazz Gallery』と、驚くような力作を発表しづけています。
これからライヴにいらっしゃる方は、クラウディアの歌声はもちろんのこと、バンドのアンサンブルもぜひしっかり楽しんでいただければ幸いです。クラウディア・アクーニャ・バンドの魅力を、どうか味わい尽くしてください!
(原田 2009/3/9)