BlueNote TOKYO

'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FABRIZIO BOSSO - - report : FABRIZI...

2012/05/19

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\
FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\


公演初日リポート:FABRIZIO BOSSO



最新作『ニーノ・ロータに捧ぐ〜ゴッド・ファーザー』が大好評の俊英トランペッター、ファブリッツィオ・ボッソが昨日から白熱のステージを繰り広げています。

共演者はロレンツォ・トゥッチ(ドラムス)、クラウディオ・フィリッピーニ(ピアノ)、トンマーゾ・スカナピエコ(ベース)。ロレンツォの名前は、ボッソ・ファンにはすっかりおなじみだと思います。ハイ・ファイヴ等、数多くのプロジェクトで共演を重ねてきた盟友です。

クラウディオ(1982年生まれ)はCAM Jazz他にリーダー・アルバムを持ち、イタリア・ジャズ・ピアノの重鎮であるエンリコ・ピエラヌンツィから高く評価されています。トンマーゾ(1971年生まれ)はハイ・ファイヴのサックス奏者、ダニエレ・スカナピエコの実弟。兄弟バンドでも活動するほか、ロイ・ハーグローヴとの共演歴もあります。

ジャケットを着て登場することの多いボッソですが、この日はいたってラフな着こなしです(それでも伊達男ぶりは相変らずですが)。トランペットの先にはコンタクト・マイクがつけられていて、思いのほか激しく動き回りながら演奏していました。「ボッソって、こんなにワイルドだったのか」と、ぼくは嬉しい驚きを覚えました。

オープニングは、1985年頃のウィントン・マルサリス・カルテットのサウンドをボッソ風に解釈したもの、といえばいいでしょうか。いわゆるブルース・コードなのですが、テンポが頻繁に変わり、ソリストが無伴奏で演奏するパートも盛り込まれています。ウィントンをこよなく尊敬するボッソだけに、ぜひ取り組んでみたかったフォーマットなのでしょう。

続いては新作『ニーノ・ロータに捧ぐ』を中心としたコーナーです。まず飛び出したのは「IL GATTOPARDO」のメロディです。巨匠ニーノ・ロータの名旋律を、ボッソはこれ以上ないほど優しく吹きあげます。しかしアドリブはあくまでもアグレッシヴ、ハードに迫ります。リズムは3拍子なのですが、なんといったらいいのでしょう、「メンバーそれぞれが呼吸をあわせてワルツを演奏している」というよりも、「各人がワルツ・テンポを体内に秘めながら、自由奔放に他のミュージシャンに絡んでいる」という感じなのです。それがたまらなくスリリングでした。

そして「IL VOLO」ではエフェクター(ディレイ)を使った幻想的なプレイを披露。「ゴッドファーザー 愛のテーマ」という邦題で有名な「IL PADRINO」は、最初クラウディオとのデュオによるスロー・テンポで始め、やがてメンバー全員が一丸となって燃え上がる4ビートのアップ・テンポに移行する、という二部構成で楽しませてくれました。

MCでメンバーを紹介した後、鳴り止まない拍手に応えるかのように、ボッソは右手で握ったトランペットを前に突き出し、ガッツ・ポーズをとりました。いったい彼はどこまですごくなっていくのでしょう。ボッソの“炎”を、ぜひご体感ください!
(原田 2012 5.18)


● 5.18fri.-5.20sun.
FABRIZIO BOSSO
☆ 参考:セットリストはこちら

FABRIZIO BOSSO - ファブリッツィオ・ボッソ\



'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , FABRIZIO BOSSO - - report : FABRIZI...

2010/09/21

ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO
ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO

公演初日リポート:FABRIZIO BOSSO QUARTET with ROBERTO CECCHETTO "SPIRITO LIBERO"



ニコラ・コンテ・ジャズ・コンボやハイ・ファイヴの一員としての出演で、すっかり「ブルーノート東京」に欠かせない存在となったファブリッツィオ・ボッソがついに自身のバンドで登場しました。しかも今回はボッソよりひと世代上にあたるイタリア・ギター界の中堅、ロベルト・セチェート(ボッソの発音は“シェセート”に近い)をスペシャル・ゲストに迎えてのステージです。

ぼくが今から10年近く前、エンリコ・ラヴァの『エレクトリック・ファイヴ』というCDでロベルトのギターを初めて聴きました。第一印象は、“ものすごくセンスのいい伴奏をするなあ”。彼は他にも、パオロ・フレズともよく共演しています。つまりボッソ登場以前の、最も優れたイタリアン・ジャズ・トランペット奏者とされるふたりとプレイしてきたのです。そんなロベルトが、いま最も旬なトランペッターのひとりであるボッソと、目の前でライヴを繰り広げるのですから、これが興奮せずにいられましょうか。
楽屋から客席に向かう間、“もう待ちきれない”とばかりにボッソはトランペットを吹き始めます。大きな生音がクラブ中にひびきわたり、いきなりハイトーンが炸裂します。と思ったら一転、低音でリフ(短いフレーズ)を繰り返し、バンド・メンバーたちに鋭いまなざしを向けました。やがてベースのルカ・ブルガレッリがボッソと同じフレーズをユニゾンで弾き、そこにドラムスのロレンツォ・トゥッチがアフロ風ビートで絡みます。3分ほど過ぎたところで、ぼくはようやく気づきました。これはディズニー映画の主題歌「SOMEDAY MY PRINCE WILL COME(いつか王子様が)」ではないか、と。それほどボッソのアレンジは、この曲の従来のイメージ(3拍子、可憐、ソフト)を崩すものでした。こんな刺激的な「王子様」、聴いたことがありません。

2曲目の「BOSSAND」ではロベルトのギターが炸裂します。今回のバンドにはピアニストのルカ・マヌッツァがいるからでしょうか、あえてコード(和音)のプレイを控え、単音によるアドリブに的を絞って演奏しているように感じられました。が、これがまた美味なのです。ジョン・スコフィールドをさらに辛口にしたような音色、そして粘っこいフレージングには、ロベルトの底力がたっぷり反映されていました。続く「BLACK SPIRIT」はコード部分とモード(音階)部分を巧みにミックスし、そのうえ転調が混ざるというアクロバティックなナンバー。これをボッソたちは超アップ・テンポの4ビートでこなします。疾走感あふれる展開を、余裕綽々でこなすボッソのロング・ソロは文句なしに鳥肌モノでした。

ほかにも3種類のミュート(ストレート、ハーマン、プランジャー)を駆使する曲あり、エフェクターを使う曲あり。ラストでは必殺のバラード「NUOVO CINEMA PARADISO(ニュー・シネマ・パラダイス)」で締めくくる等、とにかく盛りだくさんのステージでした。1本のトランペットでこんなに多彩な世界を創れるんだよ、というボッソの自信にあふれた声がきこえてくるようでした。客席はもちろんフルハウス状態。ボッソは、自己のグループにおいても、「ブルーノート東京」のオーディエンスを見事にノックアウトしたのです。
(原田 2010/9/20)


● 9.20mon.-9.22wed.
FABRIZIO BOSSO QUARTET
with ROBERTO CECCHETTO "SPIRITO LIBERO"

ファブリッツィオ・ボッソ - FABRIZIO BOSSO